写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2006.09.16
ちょっとした撮影のコツや本格的な撮影方法、最新の写真・カメラ用語解説など写真とカメラに関する最新の話題を毎週さまざまな角度から取り上げていく「写真何でも情報 EXPRESS」。これを読んでスキルアップ!
写真撮影が趣味ではない一般の方でも、旅行で訪れた街などでは、人物が画面に入っていない景色だけの写真を撮ることがあるでしょう。その写真は、「風景写真」であることに間違いはありませんが、でも、趣味で写真を撮る方が考える「作品としての風景写真」とは、多少、違ったニュアンスがあるようです。フォトコンテストなどで作品を発表するための写真ではなく、記念写真と一緒にアルバムに貼って、自分で後になってから眺めたり、友達に見せて楽しむことが目的の風景写真は、どうしたら上手に、なおかつ面白く撮れるか?
今回は、観光地で見かけることが多く、また一般の方がしばしばカメラを向けているような被写体を例に、その撮り方のコツを探ってみたいと思います。
観光地では、銅像や記念碑などのモニュメントが屋外に設けられていることが多く、それと一緒に、家族や友人と並んで記念写真を撮る方の姿をよく見かけます。そして、このモニュメントを、人物を入れない風景写真として撮る観光客の姿も多いように思われます。芸術志向で作品としての風景を撮る写真愛好家の場合、自然風景や建築物を被写体に選ぶことが大半で、こうしたモニュメントを題材として撮ることのほうが少ないのですが、写真が趣味というほどではない一般の方が、旅の思い出として景色を撮る場合には、観光地にあるモニュメントも、好まれる被写体の一つになっていると考えることができるでしょう。
そこで、具体的な例として、横浜の港に最も近い定番観光スポット、山下公園の中にある幾つかの銅像を例に、その周囲の景色まで画面に収めた構図での写真の撮り方を解説したいと思います。作例写真の撮影に使用したカメラはデジタル一眼レフですが、この種の撮り方は、コンパクトデジタルカメラでも最も得意とするので、いずれのカメラでもまったく問題なく、実践は可能。これを、観光地で風景を撮る方法の参考として、横浜だけに限らず、どこかへ旅行に出かけたときには気軽にトライしてみてください。
なお、個人的に楽しむためのアルバムでは、撮った写真に付ける説明も、堅苦しくガイドブック通りの観光情報を羅列するよりも、自分なりの言葉でユーモアのある書き方にしたほうが、後で見て面白くなります。芸術作品としての風景写真や公式な記録を残すことが目的の写真では、シリアスな雰囲気のほうが歓迎されやすい傾向もあるようですが、プライベートで友達に見せて楽しむアルバムなら、「こんなところを見つけたよ」という感じで、好奇心や笑いを誘うような書き方にするのも良いでしょう。
全国的におなじみの童謡の中で歌われている、「赤い靴はいてた女の子」がモデルの銅像。歌詞にも出てくる「横浜の波止場」へ向かって、遠く異国へと続く海の彼方を見つめるように座っている姿が彫刻として表現されています。
後ろ側から横顔を眺めるようにカメラを向けると、山下公園のシンボルである保存客船の氷川丸も、一緒に画面内にとらえて撮ることができます。銅像だけを撮るなら、「日の丸構図」(主要被写体を中央に配置した超・基本の構図)でOKですが、ちょっと違ったイメージの写真を狙うなら、銅像を画面端に寄せた構図で、(銅像の)視線方向に空間を作って、そこに背景となる景色が収まるようにするのも良いでしょう。このとき、背景となる氷川丸の位置までピントがしっかり合った写真にするには、手ブレしないシャッター速度の範囲で、絞り値を大きな数字に設定して被写界深度を稼げるように露出を調節します。絞りを開けて小さな数字に設定すると、背景がボケて、手前の銅像だけが浮かび上がったような写真になります。ピントを合わせる位置は、メインの被写体である、銅像のほうです。
ちなみに、歌の歌詞(野口雨情・作詞)に出てくる、女の子を連れて行った人は、「異人さん」。古典文芸だけでしか見かけない表現ですが、明治時代特有の言い回しで外国人のことです。「いい爺さん」とか「イージーさん」(って誰?)ではないので、お間違いなく。それから、「波止場」は、船が発着する埠頭という意味で、具体的には大桟橋のこと。読みは、「ハトバ」です。歌を耳で聴いて、鳩がいっぱいいる“鳩場”だと思ってた人もいるのかな?
山下公園のちょうど中央にある、円形の噴水の中に立つ彫像。横浜市と姉妹都市関係にある、米国カリフォルニア州のサンディエゴ市からプレゼントされたもので、昭和35年から、この場所にあり、“山下公園の守護神”といった感じです。とはいえ、県外の方には、人気テレビアニメの「ああっ女神さまっ」(TBS系全国放送)に、よく出てくる公園の噴水と言ったほうが、わかりやすいかもしれません。ちなみに、この彫像も「女神さま」であるようです。
山下公園は陸側が南なので、銅像の多くは正面から撮ると、日中は必ず逆光になってしまいます。そこで、この写真は斜めのカメラポジションから撮影しました。ローアングルから見上げるように撮ると、後方にあるマリンタワーの展望台まで画面に収めることができます。噴水の水があって被写体に近付けないので、構図を決める場合の選択肢は、あまり多くありません。彫像だけを撮るなら望遠レンズが必要ですが、広角レンズで背景を取り込んだ絵柄にすると、どんな場所なのかも写真でよくわかります。
このように、メインの被写体が小さく、背景が広く写る場合は、画面全体のバランスを考えて撮ると構図として安定感が出せます。これは日の丸構図のアレンジですが、もう少し望遠側にズームアップしたり、縦位置にカメラを構え直して撮ることもできるので、パターンを変えて何枚か撮っておくと、後でアルバムに貼るときに写真が選べて便利。構図に迷ったら、とにかくいろいろ撮って複数枚を押さえるのが、撮り逃がして後悔しないためのコツです。
明治維新後、日本人は多くの西洋文化を取り入れて、男性はみんな頭のチョンマゲを切り、なんと国策として現在と同じ西洋風の髪型に変えることになりました。この新しい髪型のことを、チョンマゲをざっくり切り落としたので、「ザンギリ頭」と呼びます。この彫像は、その「ザンギリ頭」を表現したもの。横浜は、日本で最初に開かれた本格的な国際貿易港で、海外の文化が最初に上陸する窓口となった場所なので、この西洋風の髪型も、横浜が国内での発祥地となった史実があります。当然、髪をカットした理髪店も横浜に起源があるわけで、西洋理髪発祥の地と彫像の前にある説明に書かれています。
歴史の教科書で「ザンギリ頭」という言葉だけ見たことはありますが、実際の髪型を見ると、ちょっと長めの真ん中分けのことのようですね(元祖ツーブロックかな?)。この彫像は、以前は大桟橋に近い公園端の波打ち際に建っていたのですが、いつの間にか公園陸側の木陰に移っていました。「ドクタースランプ」(昔のフジテレビ系アニメ)に出てくるニコちゃん大王ではあるまいし、夜中に歩いて引っ越すわけがないだろうから(笑)、わけあって移設したのでしょう。
現在、この像は大きな木の陰にあって、光線状態が複雑なので、背景を取り入れて撮影するのはかなり難しいです。こんなときは、メインの被写体を画面いっぱいのサイズにとらえ、ストレートに日の丸構図で撮るのがベスト。あまり撮り方に工夫の余地がないときは、迷わず日の丸構図を選びましょう。ただし、ある程度大きい被写体なら、カメラを向ける角度や視点の高さなどで、変化を付けることはできます。彫像の色が真っ白で、自動露出のままアップで撮ると露出結果がアンダーになってしまうため(画面が暗くなる)、シャッターを切る前にプラス側に露出補正しながら、段階露光で何枚かのカットを撮影したうちの1枚です。露出補正機能を使ったら、撮影完了後の解除をお忘れなく。
以上、3つの作例をご紹介しました。皆さんも、学生時代の修学旅行などで、こんな感じの風景写真を無意識に撮っていた記憶はありませんか?
本当に海や建物の景色だけしかない風景写真では、どのあたりをどう撮っていいのか、構図や露出の決め方がよくわからないという方も多いと思いますが、銅像など具体的な形を持つものが1つあると、風景撮影が得意ではなくても、格段にフレーミングがスムーズになるはずです。また、これを逆説的にとらえると、作例の定石を外して風景を撮影すれば、芸術作品的な印象の強い写真になります。ここでは、1つの例として横浜の風景を取り上げましたが、ほかの観光地でも、こんな感じで、気軽に風景の写真も撮ってみてください。
人物だけの記念写真ばかりだと、後でアルバムに貼ったとき、どこで撮った写真かわからなくなってしまうことがよくあります。でも、風景写真もついでに何枚か撮っておくと、写真の整理に役立ち、きっと、いい思い出にもなるでしょう。デジタルカメラなら、フィルムの消費をケチる必要はないので、興味のある景色はどんどん撮影してOK。このタイプの写真に「失敗」はありませんから、機会があれば、ぜひ気軽に試してみてください。
あなたの大切なお写真の現像・保存・プリントは写真専門店カメラのキタムラにおまかせください。