写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2007.09.07
ちょっとした撮影のコツや本格的な撮影方法、最新の写真・カメラ用語解説など写真とカメラに関する最新の話題を毎週さまざまな角度から取り上げていく「写真何でも情報 EXPRESS」。これを読んでスキルアップ!
どのメーカーの製品でも、一眼レフカメラに装着して使う交換レンズには、前面に市販の写真用フィルターを取り付けるための溝(ネジ山)が切ってあります。この点は、大多数のコンパクトデジカメと、大きく異なるところ。コンパクト機では、フィルターを使った撮影ができる機種は少ないですが、一眼レフであれば、自在にフィルターを駆使して、個性的な表現が楽しめます。今回は、そんなフィルターのうち、風景撮影で使う機会が多い「偏光フィルター」または「PLフィルター」と呼ばれる特殊効果フィルターについて紹介します。
写真撮影で使うフィルターには、大別して、レンズの保護用、色の調整用と、特殊効果用の3つがあります。このうち、色の調整用については、デジタル一眼レフの場合、ホワイトバランスの設定を変えるだけでも同じような効果が得られるので、フィルムしかなかった時代に比べれば、出番は少なくなりました。そして、撮影した画像をRAWモードで記録しておけば、後でパソコンを使って色調整することもできるので、あえて撮影現場で色に悩む必要は薄れつつあります。
その一方で、特殊効果用フィルターは、デジタル時代の現在でも比較的、頻繁に利用されています。特殊効果用フィルターには、撮影目的別にいろいろなタイプが用意されていますが、パソコンを使って後から画像処理できない画面効果を現場で引き出せる製品の代表が、主に風景写真の撮影で使われる「PLフィルター」(偏光フィルターとも言う)です。現在のデジタル一眼レフは、オートフォーカス&自動露出なので、「PLフィルター」にもデジタル用のAF対応タイプが発売されています。
このフィルターの光学的な効果は、「反射除去」と説明されることが多いですが、細かく言えば、被写体に見られる光の乱反射を抑えて、レンズに入ってくる光の向きを一定に揃えること。ある方向からの光だけを透過して、それ以外の光を遮る機能があります。PLフィルターの原理は、光を微細な格子に通すような構造。その格子を通り抜けられる、進行方向の揃った光を残して、それ以外はフィルターでカットされます。よって、水面などの反射光を遮断するように使えば、「反射除去」の効果が得られます。また、風景写真では、空の青色を濃く写すためにも使われます。
実際に撮影すると、画面全体にわたる光の拡散が抑えされて、粒がそろったような状態になるので、PLフィルターを付けない場合に比べて、写真のコントラストが高くなります。そして、PLフィルターが一部の方向から来る光しか通さない性質を利用すれば、被写体のテカリ(光沢)を抑える目的で使うことも可能です。例えば、広葉樹の葉っぱが空の光を反射してテカテカしているところに使えば、その反射を除去して、もともと植物が持っている緑色をとらえることもできます。この効果は、ファインダーで見ているだけでも使用実感があるので、一度でも使ってみると、興味を引かれる方が多いかもしれません。
PLフィルターは、フィルムカメラの時代からありましたが、デジタルカメラでも、PLフィルターとの相性は良好なようです。デジタルカメラで使われる画像センサーは、受光素子が平面の上に格子状に並んだもので、その構造から、原則的には直進してくる光しかとらえることができません。フィルムは斜めから入る光にも感光しますが、その点で、もともとデジカメは感光特性が異なるわけです。したがって、デジカメの画像センサーは、フィルムに比べれば、最初から偏光と似た特性を持っているとも考えられるでしょう。だとすれば、PLフィルターとデジタル一眼レフは、構造的には相性がいいはず。PLフィルターを通った像を写す場合は、もともと光の方向を揃える意図があるので、拡散した光線をとらえるのが苦手なデジカメにとっては、撮影状況的に都合が良いと思われます。
ほぼ同じアングルで港の風景をとらえて、PLフィルターを使った写真と、使わない写真を撮影し、その効果を比べてみました。PLフィルターを使用したのは、小さな船が横切っているほうの写真です。PLフィルターなしの写真は、レンズ保護用のUVフィルターを装着しています。
両方の写真を比較すると、PLフィルターを使っているほうが、海と空のコントラストが高くなって、青色に深みが出ています。そして、海面の照り返しもないので、海の色が濃く再現されました。一方で、PLフィルターを使っていないほうは、肉眼での見た目に近い正確な色再現ですが、海面が空の光を反射しているので、やや色が白っぽく写っています。さて、どちらがお好みでしょうか? 風景のみの写真として判断した場合には、PLフィルターを使ったほうが派手な発色になって、より主張のある作品になりますね。ただし、色ヌケ(透明感)では、PLフィルターがないほうが良いと考えることもできます。
PLフィルターは、主として趣味の写真愛好家や、自然風景専門のプロ写真家が風景写真の撮影に使うもので、本当に景色だけの写真を撮るのであれば、作品の芸術性や、撮る人の創造力を引き立てる上で、期待した通りの効果を発揮します。しかし、それがフィルターである以上、PLフィルターの存在によって、写真に余計な色が1つ乗ることにもなるので、人物撮影の場合では、発色が偏って逆効果となることもあります。例えば、自然の景色をバックに記念写真を撮るようなときには、PLフィルターは使わないほうが良い結果になるかもしれません。わずかながらPLフィルターそのものにも色が付いているので、その色が人物の肌色と混ざってしまうからです。このフィルターを使うか使わないかは撮影シーンに合わせて、その都度、判断してください。
PLフィルターは、2枚のフィルター(偏光版)を重ねて1組にした構造。レンズに装着した状態で、前側のフィルター枠をクルクルと回転させることができます。撮影するときは、カメラのファインダーを覗きながら、フィルターの前枠を回転させ、色と明るさの見え方が、主観的に最適と思えるポジションを探します。ファインダーを見た感じで、最も画面が暗くなる位置で、PLフィルターの効果は最大となります。なぜなら、反射光を遮断する効果が最大になれば、物理的な光量も減って、いちばん画面が暗くなるからです。実際の撮影時でも、最大の偏光効果を引き出して使うのが基本ですが、最大より少し外したポジションを選んで、好みの色合いを出すという使い方もあります。特に、空の青色を強調するときは、少し控えめな表現のほうが自然に見えて、好印象かもしれません。
このフィルターは、見た目でわかる通り、画面が暗くなります。ということは、フィルターなしの状態と同じ明るさの写真となるように、適正露出を得るには、絞りを開ける、もしくはシャッター速度を低速に設定して、明るさを確保しなくてはなりません。露出の差は、だいたい2段分程度です。デジタル一眼レフの場合は、感度を上げて対応する方法もあります。いずれにしても、フィルターがない状態とは違う露出になるので、マニュアルモードの場合(特に単体露出計を使っているときなど)は注意が必要です。もっとも、PLフィルター(AF対応のもの)を付けていても、カメラの内蔵露出計は正常に動作し、プログラムAEなどの自動露出はそのまま使えるので、実際は、あまり気にしなくても大きな問題はありません。
PLフィルターは、どんな場合でも効果が均一に現れるのではなく、光線状態や天候によって効果に差が付きます。例えば逆光では、PLフィルターを付けても、ほとんど良い効果がありません。フィルターの効き具合は、一眼レフなら光学ファインダーで事前に確認できるので、実際に効果を見極めながら撮影してください。なお、PLフィルターを装着しながら、前枠を回転して効果を調整する作業を忘れると、使っている意味がなくなってしまうので、これから初めて使用する方はご注意ください。
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