総評:今回も高い水準の作品が多数集まったことに、審査員の一人として喜びを感じる。今年のテーマは「ニッポンを歩こう心の風景を撮ろう」だった。私たち日本人にとって「心の風景」の原点は、子供のころに歌った童謡や唱歌にあるのではなかろうか。「赤とんぼ」や「メダカの学校」、「浜辺の歌」、「ふるさと」など枚挙にいとまがない。これらの歌詞が現実の風景と重なり合い、その人の人生とともに生きつづけるのだと思う。今回の上位入賞作はすべて子供のころに口ずさんだ歌詞の心象を映し出している。最も大切なことは、撮影者自身が一つの風景を見て感動し、心にひびいたものを写真に表現すること。本人が感動していないもの、心を動かされていないものは、いかに技術的にすぐれていても、やはり第三者に感動を与えることなどできない。自分が足で稼いで、自分が感じた感動を写真に表現していく。これが良い写真を作るコツだと思っている。(田沼武能氏談) |