「写る」と「写す」は違うことを知り
被写体を探し出して感動し、表現することが大事
コンテストも7回目を迎え、撮影場所に偏りが見られるかなという印象も受けたが、最終的に選ばれたものはそれぞれ自分の主張を生かした優秀な作品であった。県別に見ていくと、地域によってレベルの差が見られる。北海道、九州にレベルの高い応募作品があったように思う。それらの地方に良い被写体が多いと思われがちだが、何も遠くに行かなくても身近にもすばらしい被写体は必ずある。
私も東京に住み、車で1時間ほどの武蔵野に通って撮影を続けているが、よく見ればいろんな被写体が点在している。それを発見するかしないかは人それぞれの感性による。感性を豊かにしていけば、被写体が見えてくる。それには人の作品を見ることも大切だし、三度四度と同じところに通う努力も必要だ。ただ、お手本と同じように撮った写真では、きれいだけれど心をとらえるものに至らない。自分が探し出して感動し、表現するということを考えていただきたい。
今回10歳の小学生の作品が入選し、応募者の層も広がりが見られるが、同じ一つの土俵なので、初心者がいきなり入選するには難しいところもあるように思う。初心者の方には「写る」のと「写す」のは違うということを知っていただきたい。見えている風景の中で、自分がすてきだなと思うのはどの部分なのかを見極めることが必要だ。レンズではファインダーの中のものすべてが写るが、人間の眼は全体から部分を切り取って見ている。カメラは勝手にズームアップはしてくれない。
賞を取るために写真を撮るのでは、心がさびしいではないか。被写体にほれ込み、楽しんで撮ったものがたまたま入選したという方が、はるかに人生の喜びになる。競争も一つの手段だが、その人の生涯を通じて考えをまとめられるものを作るという、トータルで考えていただきたい。そうすれば写真は人生の良き伴侶となり、夢と希望が湧く。 |