「日本の祭り写真コンテスト2007-2008」は、全国より12,341点の応募が寄せられました。これは私の知っている限りでは祭りのフォトコンテストとして最多の応募点数です。審査当日は板見氏と10時間に渡りすべての写真に目を通し、厳正な審査をしました。腕自慢部門は画面の構成力、表現力を中心に審査し、腕試し部門は、アマチュアならではのシャッターチャンスを重視しました。
 小さな村祭りから大きな祭りまで日本全国津々浦々、四季折々の祭りの写真が一斉に審査会場を埋め尽くし、一枚一枚の写真から発せられる祭りのエネルギーが満ちあふれ、壮絶ともいえる雰囲気でした。日本の祭りは日本の心。審査では祭りの感動が素直に写真に表れる作品に自然と票が集まりました。
 また今回は、応募作品のレベルが高く、プリントの仕上がりも大切なポイントとなりました。被写体や構成力など写真として内容の良いものであっても、色の調子が適切でない作品は作品としては未完結です。銀塩プリント、デジタルプリントともに撮影者が最後まできちんと納得した色に仕上げた作品に力強さが表れていました。
 入賞作品は、決して大きな派手な祭りばかりが選ばれたのではありません。写真から伝わる感動と一瞬のシャッターチャンスの素晴らしさが見事に表現されたものが入賞しました。
 2009年の応募も楽しみにしています。今年の入賞作品をよく見ていただき発想、撮影技術において本年以上であることを望みます。

はが ひなた/日本・世界の祭りの写真家。1978年成蹊大学法律学科卒業、1983年米国西イリノイ州立大学文科人類学科卒業。朝日新聞社「週刊日本の祭り」全30巻に「祭りを撮る」を連載。日本経済新聞社水曜夕刊「地球ハレの日」連載。2007年-2008年全国5都市のキヤノンギャラリーにて「世界のカーニバル」写真展開催。鹿児島市おはら祭審査委員長。(社)日本写真家協会、日本旅行作家協会会員。

 全国から寄せられた1万2千点にも上る「祭り」の写真は、ひとことで言えばやはり圧巻というほかはありません。この日本にいかに行祭事が多いか、あらためて知らされた思いがします。これだけ狭い国土に、これだけ多様な祭りや伝承行事がひしめき合っている国はそうはないと思います。お祭り好きで、写真好き、その二つの要素がぶつかって第1回目からこのコンテストをすごいパワーで盛り上げている…そんな印象を持ちました。
 祭りと伝承行事は写真のテーマとして実に面白くかつ奥が深い、アマチュアとして取り組むにも価値のある、素晴らしい題材だと思います。ただし忘れてならないのは、撮影対象はすべて、日本人にとっての「神様」だということ。「撮らせてもらう」という気持ちを忘れず、祭事に敬意を払い、地元の人々とコミュニケーションを持つことが大切でしょう。
 今回、上位に残った作品は、みな日本の祭りの現実をリアルに捉え記録した素晴らしい写真ばかりだと思います。応募される方々に望みたいのは、撮影する祭りのことをいろいろ調べ、その祭りの本質や風土の歴史などもできる限り勉強していただきたい、ということ。それによって、撮影の興味も深まり、ものを見る目も変わってくると思うのです。
 祭りを撮るということは、日本の風土や歴史を知るということ。このコンテストに毎年参加することによって、そうした興味や知識がさらに増し、自分自身の「学び」や日本人としての「絆」を深めていくとしたら、こんなに素晴らしいことはないと思います。
 来年も力作のご応募をお待ちしています。

いたみ こうじ/福岡県生まれ。法政大学法学部卒業。写真愛好家向けの月刊誌「日本フォトコンテスト」の編集長を約20年務めたのち2004年に独立。長い編集者生活の中で、多くの写真作家と交流を持ち、写真界やカメラ界に詳しい。フォト・エディターとして、多くのコンテストや写真の審査にも参加。また、カメラ・光学・フィルムメーカーや写真雑誌編集者などで作る「業界写真クラブ」メンバーとして自らも撮影を楽しむ。社団法人日本写真協会(PSJ)会員。写真関連の企画・制作会社「Jophy Communications」代表。
 

 
SNAPS!賞
カメラのきむら賞
田中昭三
(広島県広島市)
撮影地:山口県・岩国市
錦川
ウェイン・ディオン
(鹿児島県鹿児島市)
撮影地:鹿児島県・鹿屋市
スタジオマリオ賞 カメラのキタムラ賞
松本十郎
(群馬県多野郡)
撮影地:群馬県・中之条町
伊藤儀一
(滋賀県草津市)
撮影地:滋賀県・大津市
 
 
 
SNAPS!賞
カメラのきむら賞
福田 悟
(奈良県奈良市)
撮影地:滋賀県・八日市市
高瀬 壽
(島根県益田市)
撮影地:島根県・平原
スタジオマリオ賞 カメラのキタムラ賞
正法地 幸子
(千葉県船橋市)
撮影地:千葉県
河野芳美
(京都府城陽市)
撮影地:福井県・小浜市
※敬称は略させていただきました。