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審査員 丹地敏明氏
たんじ としあき/1936年広島県福山市生まれ。広島県福山工業高校染色科卒業。出版社の写真部勤務を経て、1963年フリーランスとなる。風景写真を中心に、民家、伝統工芸、職人、刀剣などへの関心も高く、撮影対象は多岐にわたっている。活動も、国内の出版物や展覧会ばかりでなく、中国、オーストラリアでの写真展は話題を呼んだ。後進の指導にも熱心で、撮影会に写真教室にと、車で日本中を駆け回っている。ビデオアドバイスによる通信講座、フォトパラダイスアカデミーの専任講師でもある。主要著書および共著には『丹地敏明写真集 沖縄』(主婦と生活社)、『日本の民家』(山と渓谷社)、『美しい日本の旅』(学習研究社)、『日本の伝統工芸』(ぎょうせい)、『森の水音をきく』(世界文化社)、『変幻譜・The Microcosm of Freeze』(芸文社)、『水の調べ』(DDN)などがある。

 



今回は応募総数が増え、審査も楽しく行なうことができました。コンテストに応募して評価されることで、撮影者も自分を切磋琢磨することができます。しかし、今回の応募作品で気になった点が二つありました。一つはピントが甘い作品が多くあったこと。ピントが合っていれば上位に入る素晴らしい作品も多く、とても残念なことでした。それともう一つは、季節を間違えた応募が見られたこと。素晴らしい作品に仕上がっていますが、冬ではない季節のコンテストに出した方がいいのではと思えるものもありました。もっと冬のイメージを自分なりにつくり上げて応募していただきたいと思います。その中でも上位に選ばれた作品は、撮影者の考え方が画面から感じられ、人に訴えかけるものを持っていました。これからも自分の中で季節を発想したり、発見したりしながら、自分ならではの写真を応募していただきたいと思います。

グランプリ寸評
この作品からは郷愁が感じられました。何ともいえない冬の寒々しい雰囲気の中で、列車に陽の光があたる時間帯を選んで撮影されています。列車がオレンジ色に輝いて、とても温かみが感じられる作品になっています。背景に垂れ込めている冬雲が効果的で、フレーミングも良かったと思います。撮影者がいつもこの場所を観察している証だと思います。地元の風景を撮ることの大切さを教えてくれる一枚ではないでしょうか。



“自由”テーマではいろいろな写真があっていいのですが、“冬の風景”テーマに応募した方がいいのではと思えるものもありました。このように応募テーマが区分けされている場合は、たくさんプリントしたものをじっくり眺め、どちらに応募した方がいいのかをよく考えて欲しいと思います。たくさんプリントして比較してみることが、自分のレベルアップにつながります。それと最近の傾向として、ホームプリントによる応募作品を目にしますが、かなりのプリントテクニックがないと、ホームプリントは難しいと思います。やはり銀塩プリントと比べて、深さや黒の締まり方に違いが出ます。ホームプリントがすべて悪いというのではありませんが、デジタルカメラで撮影した場合でも銀塩プリントをお薦めします。

グランプリ寸評
日本の伝統文化がどんどん消えてしまう中で、この作品は名残惜しい風景をとらえた写真の一つになると思います。炭焼き小屋で炭を焼いている夫婦の顔が汚れて、ススだらけになっている感じが何ともいえない雰囲気を醸し出しています。大変な作業現場ですが、にこやかにカメラ目線で笑っています。これは撮る人の優しさがあってこその表情。撮る人に気を許している証拠です。和やかな雰囲気が伝わってくる素晴らしい作品です。

以前よく見られた動物の頭や尻尾が切れたような作品は減りましたが、色が気になる作品が目立ちました。自分の写真には最後まで責任を持っていただきたいと思います。普通にプリントする分にはホームプリンターでもいいのですが、コンテストには銀塩プリントをお薦めします。それにより自分の中に色の基準を持つことが大切です。また、今回は同じような作品が多く見られましたが、作品から何らかのメッセージが感じられるものを上位入賞に選びました。
審査員 増田勝正氏
 ますだ かつまさ/1945年東京都出身。
愛犬雑誌のカメラマンを経て現在フリーの動物カメラマン。アイメイト(盲導犬)のボランティア活動にも参加し、自ら犬、猫の繁殖・育成にかかわっている。
グランプリ寸評
このように正面から撮ってしまうと、意外と動きがなく面白味に欠けてしまうことが多いもの。普通ならもう少し斜めから撮って表情を出したいところですが、この作品は見た瞬間に、犬のやんちゃな感じや陽気さが伝わってきました。さらに、冬の寒さも表現されています。シャッターのタイミングもよく、犬の元気さが出ています。
今回はズバ抜けた作品はありませんでしたが、全体のレベルは高くなっています。何を撮りたいのかが表現されている作品は上位に入りますが、何を撮っているのかがわからないものは入賞することが難しいでしょう。ただの記念写真では上位に入ることはできません。こどものイキイキとした表情や緊張しているところなど、自然な表情の一瞬を狙うことが、いい作品になるコツだと思います。そのためにも、常にカメラを持ち歩くことは大切なことです。
審査員 沼田早苗氏
ぬまたさなえ/1968年大竹省二氏に師事。1978年フリーの写真家となり商業写真、取材写真を手がけ、ライフワークとして著名な男性のポートレイトを撮影。写真展には「私の写交録」「みんな・みんな・蒼き狼」「もう一人の日本人」などがある。
グランプリ寸評
今回は雪の中の写真が多く集まりましたので、このような足湯で撮影された作品に新鮮さを感じました。こどもの嬉しそうな表情がよく表れています。背景には等間隔に年配の男性3人が写っていますが、表情も対照的で、一層こどもの笑顔が引き立っています。立ちのぼる湯気や差し込む光も効果的で、冬ののんびりとしたひと時が伝わってくる、優しい作品です。
インクジェットプリントは、単調な色のものを派手にしたい時にはとてもいい方法ですが、いじりすぎると変な色になってしまいます。派手な色にすると、その瞬間はいい色に思いがちですが、やはり写真は長い時間をかけて見極めることが必要です。普段から自分の写真をしっかりと見ていないと、派手すぎる色に気がつかないものです。それに比べると銀塩プリントは、写真本来の色を再現することができますので、その違いをよく理解して使い分けていただきたいと思います。
審査員 サンダー平山氏
サンダーひらやま/1956年千葉県出身。日本大学文理学部物理学科自主卒業後、日本写真芸術専門学院発展的除籍。CMカメラマン、ファッションカメラマンなどの助手を経験した後にテレビ屋もかじる。つまり助手経験めちゃくちゃ豊富。そしていつのまにかサンダー平山となる。著書とっても多数。

グランプリ寸評
トラ猫が覗き込むような視線が面白くて選びました。オブジェ自体にも面白味はありますが、この雑然とした風景の中にあるからこそ引き立っています。写真はどのような被写体と出会えるかも重要な要素です。このような風景というのは、ちょっと角度を変えるだけで、面白く見える時とそうではない時があります。撮る人が面白いと思い、それが見る人に伝わることが大切だと思います。


※敬称は略させていただきました。
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各種グランプリ



※腕自慢部門
テーマ1 冬の風景:特選/準特選/入選/キタムラグループ賞

テーマ2 自由:特選/準特選/入選/キタムラグループ賞
ナショナルジオグラフィック賞
 
※腕だめし部門
テーマ1 いきもの:特選/準特選/入選
テーマ2 こども&赤ちゃん:特選/準特選/入選
テーマ3 自由:特選/準特選/入選
テーマ1 いきもの:佳作/キタムラグループ賞
テーマ2 こども&赤ちゃん:佳作/キタムラグループ賞
テーマ3 自由:佳作/キタムラグループ賞