腕自慢部門 総評: 良い作品からは、構図、シャッターチャンス、露出などの表現方法により、作品に込められた写真家と被写体のメッセージが伝わってきます。今回は応募点数は6,497点あり、昨年より3割増えました。しかし残念なことに約1/3にわたる作品が最終仕上がりであるプリントの調子(色あい、露出など)が良くないために、その十分なメッセージが伝わってきません。2日間厳正なる審査をおこない、最終審査に残った作品はどれも完成度の高いプリントで、作品からは強烈な被写体と写真家のメッセージが放たれています。グランプリの「ササラの舞い」金子敏己氏は、富山県五箇山の「こきりこ祭り」での田楽舞で、こきりこという楽器を地方(じかた)に108の木片でつくられたササラを持ち、秋の豊かな収穫を願い優雅に舞います。シャッシャッというササラの音と場の透明な空気が見事に表現された美しい作品です。今回は特選で初めてモノクロの作品が入賞。裸男による「蘇民祭」の後ろ姿は村上 秋氏の作品。モノクロネガフィルムを使い、雪の中の光景を情緒的に表現するというメッセージが伝わりました。
腕だめし部門 総評: 腕だめし部門では、4,631点の応募があり昨年に比べて1割増えました。審査では素朴な民間信仰や祭りを家族の視線で表現したものに票が集まりました。こちらの部門でも上位を占めた作品はプリントの質が良いものとなりました。どちらの部門においてもプリントづくりは写真家の最終過程で大切なものです。応募前に知人やプリント店の店長に見てもらうのも良いでしょう。グランプリは「祭の日」浅岡香代子氏。祭りに向かうお稚児さんとお母さんとの触れあいの光景。光線が美しく会話が聞こえるようです。秋の収穫を祝い宴会場に持ち込まれた田の神様はまさに鹿児島の心であり、「土下座まつり」の行列を拝む女性たちの表情にも日本の心を感じました。子供歌舞伎の出番前のひとときや、伊勢神楽の門付けなど、腕だめし部門入賞作品は、大きな祭りのハイライトの場面よりは、わが街の祭りでの生き生きとしたスナップ作品です。いつも見ている祭りや民間信仰にあなたならではの新しい発見をして、ぜひ今年も素晴らしい作品の応募を楽しみにお待ちします。 |