気に入った撮影地を何度も訪れることも重要
思い入れの強さが感じられる作品が上位に残る
今回、初めて審査をさせていただいたが、ダイナミックな風景写真ばかりではなく、身近な風景も多く、面白いコンテストだと思う。「こんな所に行ってみたい」と思わせる写真が多く、見ごたえがあった。審査にあたっては、まず、撮影に訪れてみたい気持ちにさせてくれる(誘われるような)作品、以前行ったことがある場所でも、光の使い方、撮影アングルやシャッターチャンスが新鮮な作品を選んだ。中には同じ場所に何度も通わなくては撮れないようなものもあり、思い入れの強さが感じられる作品が、最終的に上位に残ったのではないかと思う。日本の風景は海外とは違い、四季折々のバリエーションが実に多く、その美しさに改めて気づかされた。
デジタルカメラの普及とともに、年々デジタル写真が増え、今年は入賞作品の半数以上を占めた。写真愛好家の人たちもデジタルに慣れて、その特長を積極的に生かした作品が増えてきたように思う。たとえば、フィルムでは表現できないような高感度を利用した星空や夜景の写真、階調などをコントロールして、見た目より鮮やかにした虹の写真も見られた。彩度やコントラストを上げるのは、目に見えたままの色を再現するというより、被写体に対して自分がどう感じたのか、「心に映った色」を相手に伝えるためである。しかし、風景写真ではあまり作為的に極端な加工を施すことはいかがなものだろう。仮に色を調整するにしても、全く作り上げるのではなく、良い部分を引き出すという感覚で、「いかに自然に見せるか」が大切だと思う。今回グランプリになった作品は、紅葉の部分をかなり焼き込んではいるが、黒い枠を使った構図とのバランスがよく、狙いが伝わってきた。狭い枠の中から見える紅葉が、作者にはとても鮮やかに見えたのだろうと想像させてくれた。
写真は、自分の気持ちが映るので、撮影時の高揚した気持ちを一枚の写真に込められるよう、普段から感性を磨いておいてほしい。何事にも好奇心を持って、面白い被写体に遭遇したら、素早くとらえられるよう、カメラを持たない時でも、どう撮るかを常に考えておくことが上達のコツである。自分の気持ちを込めて、他人とは違った切り取り方をしないとコンテストでの入賞は難しいだろう。 |