写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2005.03.05
ちょっとした撮影のコツや本格的な撮影方法、最新の写真・カメラ用語解説など写真とカメラに関する最新の話題を毎週さまざまな角度から取り上げていく「写真何でも情報 EXPRESS」。これを読んでスキルアップ!
古い写真に味わいがあるように、古いカメラにも、歳月を経て熟成されたモノだけが持つ「風格」があります。これまでカメラが発展してきた歴史の中で、一つの時代を築いた「銘機」とも言えるクラシックカメラ。いまではもう生産されていない、そんな古いカメラを手に取って、のんびりと撮影を楽しむ魅力を、ある写真家の方に聞いてみました。
今回、登場してもらうカメラは「ローライ35」。1966年にドイツで開発された、コンパクトカメラの元祖と呼ばれるカメラです。絞りとシャッタースピードのダイヤルが前面に配置され、ボディのまわりに突起物がほとんどない、完璧とも言える「箱型」のデザインが特徴。車に例えればミニクーパーのように、小さなボディにギュッと機能を凝縮した雰囲気を漂わせます。コンパクト設計とは言え、重量が手にずっしりくるのは、この時代の金属素材ならではのご愛嬌。こう見えて、ハーフサイズではなく、35ミリフィルムのフルサイズ仕様。レンズは、40ミリF3.5で、なんと高画質で有名なカールツァイス製です。
レンズは沈胴式で収納時は最近のデジカメと同様、ボディ内にレンズが引っ込むので、使用するときには、レンズをまず手動で引っ張り出して、撮影を準備します。そして、ピントは「目測」。自分で適当に考えて、調整する方式です。ドイツ製なので、距離目盛りはフィート表示が基本ですが、カメラの上下をひっくり返すと、レンズ下部にメートル表示も書いてあるので、戸惑うことなく使えます。ファインダーは、画角だけはわかりますが、ピントが合っていなくてもボケたり、線がズレたりしないので、距離を自分の頭で考えて、忘れずにレンズのピントリングを自分で回して、距離目盛りをセットします。
こんな、いいかげんな(?)ピント合わせでも、絞りを効かせて撮れば、被写界深度の範囲内に収まるので、風景やスナップでは問題ありません。しかし、近接撮影時は、やはりちょっと難しいです。「ローライ35」オーナーの写真家氏は、「自分の身長を基準に三角測量でピントを合わせる」そうです。つまり、三角定規を思い出してみて、自分の立ち位置の見た目から、被写体が地面に接している部分までの角度が45度になったときには、直線距離=自分の身長といった具合。角度が60度や30度になった場合は、「さすがに計算がややこしくなる」そうです。
露出は、もちろんマニュアル設定。内蔵の追針式露出計で測光するか、フィルムを買ったとき箱に書いてある基本露出値を参考に、絞りとシャッタースピードを決めて、ダイヤルを回してセットします。そして、ようやく撮影! という流れになるので、あまり忙しい撮影はできるはずもなく、のんびり撮影専門が、このカメラの身上です。
肝心の写真の仕上がりはというと、レンズの性能が良いので、ピントが合ってさえいれば、コンパクトカメラとは思えないほどシャープに写ります。
撮影後は、フィルムを左方向に巻き上げて、次の回のシャッターをチャージ。このときは左手で、巻き上げレバーを操作します。カメラをしまうときにも、先にシャッターをチャージしないと、レンズがボディ内に引っ込みません。小型化のため、フィルムを上下逆にして装てんする形になっているので、巻き上げ方向が、普通のカメラと反対の左向きになるわけです。結果として、撮影したフィルムも、スリーブに入れると上下逆像になります。ちなみに、フィルムを替えるときには、現代のカメラのような蝶番の開閉ではなく、裏ぶた部分を、全部ぽっかりと外して入れ替えます。慣れないと、結構ややこしいです。
こういった感じで、まあ一言で表現すれば、「使いにくいカメラ」なのですが、個性的なデザインと携帯性、そして、いざというときには確実にカメラとしての役割を果たしてくれる機能を持っていることが、やはり最大の魅力でしょう。オーナーの写真家氏は、写真を撮ることが目的ではない外出のときには、このカメラをいつも持ち歩くそうです。「写真を撮っておきたい場面には、いつも決まって、カメラがないときに出会うことが多い」のだそうで、このカメラが活躍する機会も意外にたくさんあると言います。また、個性的なデザインのカメラは、カメラマニアではない一般の人からも興味を引くので、持っていると話題作りにもなります。
今回は、一例として「ローライ35」を取り上げてみましたが、ほかにも魅力的なクラシックカメラは、数え切れないほど存在します。読者の皆さんも、自分と相性のいいクラシックカメラを見つけて、古いゆえの「使いにくさ」も楽しみながら、のんびり写真を撮ってみてはいかがですか? デジタルにはない、写真の「味わい」を感じることができると思います。
キタムラでは、中古カメラも、各種取り揃えて販売しています。詳しくは、「ネット中古.com」のWEBサイトをご覧ください。
●ネット中古.com●ちなみに、「ローライ35」は、オーナーの写真家氏も中古で手に入れたそうですが、キタムラで扱っている中古カメラの中にも、色違いで在庫があるようです。(このWEBページの制作時現在)
クラシックカメラを使うとき、もし、絞りやシャッタースピードの精度について心配に思うなら、ポジフィルムより露出値の許容度が広いネガフィルムを使用し、さらに、同じ被写体に対して、露出を変えて何枚か撮影しておけば、大きな失敗を防止することができます。また、クラシックカメラには、自動露出機能がないので、より確実な露出の決定には、単体露出計の使用もおすすめします。
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