写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2005.06.18
ちょっとした撮影のコツや本格的な撮影方法、最新の写真・カメラ用語解説など写真とカメラに関する最新の話題を毎週さまざまな角度から取り上げていく「写真何でも情報 EXPRESS」。これを読んでスキルアップ!
デジタル一眼レフカメラは、オート・フォーカスが当たり前…と思っていたら、なんと自分の手でピントを合わせるデジタル一眼レフが存在するらしい!? そんな噂の真相を探ってみました。
マニュアル・フォーカス(MF)とは、カメラを構えてファインダー像のボケ具合を目で確認しながら、レンズのピントリングを撮影者が手動で回して焦点を合わせる仕組みこと。ひと昔のカメラは、このようにして自分でピントを合わせるものが主流で、それゆえに、フィルムに露光する画像と同じイメージを、レンズを通してファインダーで確認できる一眼レフカメラが、シャープにピントが決まった写真を撮るためには不可欠でした。フィルム全盛時代の一眼レフカメラは、1980年代までは実質的にMFしかなく、戦後長い間にわたって、メーカー各社は、マニュアル主体の壮大なレンズシステムを作り上げてきたのです。
この流れを変えたのが、1985年にミノルタ(現コニカミノルタ)が発売した、本格的AF一眼レフカメラ第1号機(当然ながらフィルム用)の「α-7000」。以後、メーカー各社は競って、一眼レフカメラのAF化を進めました。この'80年代のAF革命期において、それ以前にあったMF主体のレンズシステムを、オートフォーカス(AF)対応のレンズシステムに変更するために、各社は、それぞれ別々の道を選び、このときの選択が以後の運命を左右することになりました。
ミノルタとキヤノンは、AF一眼レフの開発時に、それ以前のMFレンズとの互換性を廃して、電子接点などの設計自由度を優先し、まったく新しいAF専用マウントを採用。レンズシステムを、すべて一新しました。一時期は両社とも、従来のMFシステムと、新しいAFシステムの商品ラインが、2つ並行して発売されていたものです。
これに対して、ニコンとペンタックスは、まったく違う方法を選びます。この2社は、カメラをAF化する際にも、既存のMFレンズとの互換性を確保。基本的なレンズマウントは変更しないまま、AF機能を組み込みました。AF一眼レフが登場したばかりのころは、AFに対応する新レンズのラインアップが、MFのレンズシステムに比べて、まだかなり少なかったのですが、MF互換を守ることで、ユーザーはAF一眼のボディを買っても、なんとか焦点距離の選択で制約を受けずに済んだわけです。
それから時は流れて、21世紀。一眼レフカメラは、フィルムからデジタルへと、主流が移りつつあります。近年になってから登場したデジタル一眼レフカメラは、フィルム一眼レフカメラが、すべてAF化した後で開発されているので、当初からピント合わせはすべて自動(切り替えでマニュアルによるピント合わせも可能)。“マニュアル・フォーカス限定”のデジタル一眼レフというものは、そういう発想すら存在し得ないと考えるのが普通でしょう。
しかし、1980年代のAF革命で、レンズマウントを変えなかったニコンとペンタックスの2社に限っては、デジタル一眼レフが主流となった今日であっても、かつてのMF用レンズとの互換性が保たれているのです。最新機種で通常使用するレンズと比べて、昔のレンズの場合では、もちろん機能的な制約はありますが、デジタル一眼レフに昔のMFレンズを付けて撮影することは、理論的には十分可能となっています。したがって、“MFのデジタル一眼レフ”というものは、ニコンとペンタックスでは、一応、存在すると言えるわけです。ただし、MFレンズを付けても、AFが動作しないほか、絞りの制御方式が異なり自動露出も使えないので、基本的にはマニュアル露出でしか撮影はできません。
では、MFレンズとの互換性があることで、デジタル一眼レフとして、どんなメリットがあるか? 通常の撮影では、最新のAFレンズを使えばAF/MFどちらの撮影もできるので、あえて古いMF専用レンズを選ぶ必要はありませんが、レンズメーカー製レンズや、中間リングなどの接写用アダプター、あるいは望遠鏡や顕微鏡などをカメラに接続するときに、比較的、有利な場合があります。ニコンとペンタックスは、同じレンズマウントが提供されている期間が極めて長いということになるので、望遠鏡、顕微鏡などが多少古い機種であっても、対応するカメラ接続アダプターが用意できる可能性が高いのです。つまり、自社製品以外の光学機器に対応する汎用性が非常に高いので、デジタルカメラを特殊撮影にも活用したい、研究者の方などにとっては便利かもしれません。
また、昔のMFレンズは、絞りをレンズ側にある「絞りリング」を回して設定する構造になっていたので、MFレンズとの互換性を想定しているメーカーのデジタル一眼レフなら、各種の光学機器を接続した場合に、カメラ側の測光系統が誤作動してシャッターがまったく切れなくなるという心配は、まずありません。MF互換のないデジタル一眼レフでは、レンズの絞り値はすべてカメラ本体側で設定する構造になっているので、純正以外のレンズを取り付けた場合に、絞り制御が効かない=故障と判断して、正常な動作が保証できない可能性もあります。
おそらく、大多数の皆さんにとっては、特殊なレンズを使う機会などはないでしょうから、どのメーカーのデジタル一眼レフを選んでも、通常の撮影には十分対応可能です。ですが、MFのフィルム一眼レフ全盛時代のレンズをたくさん持っている方や、学術研究などの特殊撮影にデジタル一眼レフを使いたい方は、ニコンとペンタックスのデジタル一眼レフを選べば、重宝することもあるかもしれません。商品選択の際は、覚えておいて参考にしてください。
デジタルカメラとして初めて、歴史あるMマウント、Lマウントレンズの装着を実現した変わり種。往年のライカレンズが使えます。一眼レフとは異なりますが、これもMFレンズが使えるデジタルカメラの一つです。(カメラグランプリ2005・カメラ記者クラブ特別賞)
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