写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2005.06.25
ちょっとした撮影のコツや本格的な撮影方法、最新の写真・カメラ用語解説など写真とカメラに関する最新の話題を毎週さまざまな角度から取り上げていく「写真何でも情報 EXPRESS」。これを読んでスキルアップ!
夏といえば花火大会。今年も、全国各地で、夜空に大輪の花が咲き誇ることでしょう。打ち上げ花火の撮影というと、一般的には、三脚にカメラを固定し、花火の上がりそうな方向に向けて、シャッターはバルブで数発分の花火を、1カットの同じ画面に写し込むのが相場。しかし、ここまで気合いを入れないで“適当”に撮っても、明るい花火は、そこそこに写ってくれるので、機会があったら臆せずカメラを向けてみてください。今回は、三脚を使わない手持ち撮影で、花火を撮ったらどうなるか、というお話です。
打ち上げ花火を写真に写すには、ある程度、長い露出時間が必要です。当然、手持ち撮影すれば、カメラブレは起きてしまいます。ならば、中途半端にブレを抑えるよりも、あえてブレを逆手に取り、それなりの表現技法として利用するのも一手。趣味で撮る写真なら、べつに教科書通りでなくたって構いません。デジタルカメラだったら、失敗しても消して撮り直せばいいだけだし、ここは「遊び心」で、気軽に撮影してみましょう。1発で気に入った写真を撮るのは、さすがに難しいので、たくさんシャッターを切って、その中に面白い作品があればいいかな、といった感じでトライしてみてください。花火の撮り方も「いろいろ」です。何度か花火大会に通ってみれば、夏が終わるころには、撮影も最初のころより上手になっているはずです。
200~300ミリクラスの望遠レンズまたは望遠ズームレンズが、マニュアルフォーカスとマニュアル露出で利用できるカメラ機材一式。基本的には、一眼レフが何かと便利です。デジタル一眼レフの方が、すぐに撮影結果を確認できるので、使いやすいかもしれません。フィルムで撮影する場合は、一般的なISO100のポジフィルム(スライドフィルム)またはネガフィルムでOK。望遠レンズは、大口径タイプよりも軽量タイプの方が、重量が軽いので、撮影時に疲れずに済みます。重いレンズを長時間振り回していると、疲労のため、後で腕が上がらなくなることもあるので要注意。撮影に疲れたら、休むくらいでちょうど良いでしょう。あくまで趣味なので、あまり無理せずに撮影を楽しんでください。
カメラの露出はマニュアルにセット。シャッター速度は、ボタンを押している間は、ずっとシャッターが開きっぱなしになるバルブ(B)に設定。レンズの絞りは、F5.6~11くらいを選びます。絞りは、花火の種類や背景となる空の明るさに合わせて調整するか、露出を変えて段階露光します。デジタル一眼レフなら、試しに1枚撮った後で絞りを微調整する方法もあります。ピントは、オートフォーカスではなく、マニュアルフォーカスに切り替えて、無限大(レンズの∞マーク)にセットします。
花火の打ち上げが始まったら、上がる方向と花火が開く高さに、およその見当を付けておきます。花火が地上から上がって行く様子は、望遠レンズを覗いているとよく見えるので、画面内にキャッチできるように、花火の玉の動きを把握しておきます。
だいたい、花火のポジションがつかめたら、いよいよ撮影開始。野球やゴルフのテレビ中継で、カメラがボールを追いかけるような感覚で、地上から上がる花火を、ファインダーで追跡します。慣れると、花火の玉を、画面の中央でキャッチできるようになります。それで、花火の上昇がピタッと停止した瞬間に、その位置でカメラの追跡もストップして、同時にシャッターボタンを押し込み、バルブ露光開始。夜空に描かれる光の軌跡を、画面に写し込みます。バルブ撮影なので、シャッターボタンは、一定時間まで押しっぱなしにします。ちなみに、ファインダーで花火が開くのが見えてからシャッターを切ったのでは、タイミングとしては遅すぎです。
ここでひとつ、問題が。シャッターが開いている最中、一眼レフカメラはファインダー内が真っ暗になります。カメラ内のミラーを上げて、フィルムに光を当てているので、ファインダーでは何も見えない状態になるのです。でも、ここで真っ暗になったからと言って、あわてて露光を中止しないこと。基本的に、カメラ位置は、シャッターを押した時点のポジションから動かす必要はないので、とりあえず、じっと待っていればOKです。
そして、いいタイミングで露光を停止すれば、1枚の撮影が完了。では、そのタイミングをはかるにはどうするか? これは、花火の「音」を聞いていると、だいたい狙いが付きます。音のスピードは、秒速331.5m。これは気温0度の場合なので、夏なら正確にはもう少し速くなるでしょう。対して、光のスピードは秒速30万km。上空高く上がる花火は、光の見た目よりも、音の方が少し遅れて聞こえるのです。よって、花火の音が聞こえるタイミングでは、すでに花火は開き切っているので、それ以上は露光する必要がありません。「ドン」という音が聞こえたら、シャッターボタンから指を離してOK。デジタル一眼レフなら、撮った写真を確認して、タイミングを微調整すれば、より細かく感覚がつかめるでしょう。
実際の露光時間は、花火の大きさによりますが、だいたい1秒前後くらい。花火そのものも、同じ時間だけ、空中を振動しながら浮遊しているので、手持ち撮影で多少のブレがあっても、それはそれで面白い写真になります。
手持ちで打ち上げ花火を撮れば、必ず手ブレはするので、どうせブレるなら、いろいろと画面に“細工”をして、変わった表現方法を試してみるのも面白いでしょう。バルブで露光中に、レンズのピントを無限大から外してソフトフォーカスにしたり、ズームレンズなら焦点距離を変えて露光間ズームにしたり、同じ画面で2発の花火を多重露光するなど、いろいろなテクニックがあります。2つ以上のテクニックを組み合わせて撮るのも、斬新なイメージで良いかもしれません。どんな写真が撮れるかは、見てからのお楽しみということで、いろいろとチャレンジしてみてください。
デジタル一眼レフなら、撮影した写真を現場で確認できるので、それほど大きな失敗はないと思いますが、フィルムの場合、露出の設定を間違えると、露出オーバーで色カブリを起こしてしまうことがあります。花火そのものは相当に明るく、露出アンダーになることは少ないので、失敗の大半は露出オーバーでしょう。花火大会は、日没後かなり早い時間にスタートする例も多いので、この場合、まだ空に明るさが残っているため、背景となる空の色を拾って、露出オーバーにならないよう、絞りの調整に気を配る必要があります。
それでも、どうしても露出の調整がわかりにくい場合には、フィルムならではの裏ワザがあります。それは、同じ露出で、フィルム2本以上を撮影。現像段階で、1本だけ“犠牲”にしてテスト現像を行い、その結果が良ければ、同じ条件で残りのフィルムを現像。露出オーバーまたはアンダーであれば、テスト現像の結果から判断して、残りのフィルムは減感または増感を指定して現像処理します。
こうしてやれば、たとえ撮影時に露出設定を間違っていても、その誤差が許容範囲内に収まっていれば、フィルムと撮影の労力をムダにしなくて済むというわけです。デジタル一眼レフの場合は、撮影現場で1枚テスト撮影後、すぐに絞りや感度設定を調整すれば、露出の設定ミスは解消できます。ただし、デジタルの場合、フィルムと同様の増減感処理を後で行うことは難しいので(特にJPEGで撮影している場合)、現場でしっかり確認してください。
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