写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
※掲載されている情報(製品の価格/仕様、サービスの内容及びお問い合わせ先など)は、ページ公開日現在の情報です。予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
2005.08.06
ちょっとした撮影のコツや本格的な撮影方法、最新の写真・カメラ用語解説など写真とカメラに関する最新の話題を毎週さまざまな角度から取り上げていく「写真何でも情報 EXPRESS」。これを読んでスキルアップ!
カメラを構えてシャッターを押せば、簡単に写真が撮れる…。では、レンズから入った光は、カメラの中で、どうやって写真になるのだろう? そんな疑問を解決しようというのが、今回の企画。簡単にできる手作りの「ピンホールカメラ」で、カメラの仕組みについて考えます。小中学生の皆さんには、自由研究や工作の宿題ネタにもなると思いますので、ぜひ活用してください。
「ピンホールカメラ」は、日本語で言うと「針穴写真機」。レンズの代わりに、針で開けたくらいの小さな「穴」を使って、画像を映し出す装置のことです。ここで手作りするピンホールカメラは、実際の撮影用ではなく、カメラの原理を観察、体感するのが目的のものなので、それほど工作に精密さは必要ありません。家庭の廃品をリサイクルして、原価10円以下で製作可能なので、気軽にチャレンジしてみてください。
フィルムカメラが全盛のころには、カメラの裏ブタを開けて、フィルムを入れずに空シャッターを切っていれば、写真の撮れる仕組みがなんとなく理解できたものですが、デジカメでは中身を見ることができません。そこで、ピンホールカメラを使って、光が写真になるプロセスを見てみようというわけです。
食品の缶詰めなどの空き缶(缶切り不要タイプの缶が便利)、トレーシングペーパー(なければ習字用の半紙や障子紙などの薄い用紙)、色付き画用紙などの柔らかい厚紙(黒色があれば最適)、セロテープ、細いクギ、トンカチ、ハサミ
※空き缶は、予め洗って、よく乾かしておきます。
(缶のフチが鋭利になっているので、手を切らないように注意しましょう。)
空き缶の底に、クギとトンカチを使って、外側から直径1ミリ前後の穴を開けます。位置は、缶の中心部分。今回は、撮影はせず観察のみなので、あまり精密でなくても構いません。ケガをしないように、気をつけて作業してください。クギが貫通したら、穴がしっかり開いているかどうか、空き缶の裏側からも確認しましょう。
空き缶の開け口の方(底と反対側)に、トレーシングペーパーを貼ります。ペーパーを空き缶の直径よりも少し大きくカットして、セロテープで貼り付ければOK。ペーパーがたるまないように、「ピン」と貼りましょう。これが、画像を映すスクリーンになります。空き缶の円周からハミ出した部分のペーパーに、適宜、切り込みを入れると、貼りやすくなります。
トレーシングペーパーを貼った方に、厚紙を巻いてフード(覆い)を作ります。空き缶の高さに対して、2倍くらいの紙の幅を確保できれば十分です。厚紙を必要な分だけカットして、缶のまわりに巻きつけ、セロテープで止めれば、観察用ピンホールカメラの完成です。
観察するときには、フードを通してトレーシングペーパーを覗く形になります。フードは、スクリーンに映った淡い画像を、周囲の明るさに影響されることなく観察するためにあります。作例では、解説しやすいように色紙を使っていますが、実際には黒い紙の方が、周囲の明るさに影響されないので、観察しやすいでしょう。
ピンホールがある方、つまり空き缶の底の方を明るい被写体に向けて、厚紙のフードの中を覗いてみると、淡い画像がトレーシングペーパーに映っているはずです。画像が確認できれば、観察用ピンホールカメラの製作は成功です。
被写体は、晴れた日の屋外にある、直射日光が当たっている風景などが適しています。ピンホールカメラは光量が少ないので、室内などにある暗い被写体だと、画像がはっきり見えません。また、ピントが甘いので、小さな被写体では、はっきりした画像として映らないことがあります。
ピンホールカメラの画像は、よく観察すると、上下が逆になっているのがわかります。これが最も原始的なカメラの仕組みで、「針穴を通った光がスクリーンに倒立の画像を作る」という物理現象が、カメラで写真が撮れる原理になっているわけです。
ピンホールカメラをもっと精密に作って、スクリーンの代わりにフィルムか印画紙を入れれば、針穴だけでも本当に写真を撮ることができます。ただし、ピンホールカメラの画像は非常に淡いので、高感度フィルムを使用しても最低1分くらいは露光する必要があるようです。
このようなカメラの原理をもとに、より明るく、ピントがはっきりとした画像を映す役目を果たしているのが光学レンズ。ピンホールカメラでは、言ってみれば「絞り」だけで画像を作るわけですが、レンズを組み合わせると、より高画質ではっきりした画像をスクリーンやフィルムに映すことができます。高級一眼レフも、最新のデジタルカメラも、原理的にはピンホールカメラとまったく同じ。カメラの中では、こんな感じで、写真の画像ができているわけです。
ピンホールカメラを観察するだけでなく、フィルムを使って写真を撮影したい場合、針穴の大きさや形状、露光時間の調整などを、精密に行う必要があります。そのため、実際に写真が撮れるピンホールカメラを自作するには、相当の手間と、撮影を試行錯誤するコストがかかってしまいます。
そこで、ピンホールカメラを使った写真撮影を手軽に体験したい方には、市販されている実験キットの使用をおすすめします。ポラロイドや、雑誌出版社の学研から発売中の製品を使えば、説明書に従って確実にピンホール撮影が可能です。
今回ご紹介した自作の観察用ピンホールカメラが上手く作れなかったという方も、ご関心があれば、撮影が可能な市販品のピンホールカメラを参考にしてみてください。
インスタントカメラのフィルムを使用する、市販のピンホールカメラ。
撮った写真を、その場ですぐに確認できます。
撮影した写真は、被写体の輪郭や色彩に微妙なにじみのある、独特の雰囲気で再現されます。
(メーカー希望小売価格/12,390円)
「ピンホールカメラ現像セット」が付録のムック本。
モノクロ印画紙と現像薬も同梱されていて、実際に撮影と自家現像が楽しめます。市販の35ミリフィルムも使用可。
マガジン本誌の方には、ピンホールカメラの特集が掲載されていて、
カメラの原理をわかりやすく解説しています。
(付録込みの価格/1680円)
あなたの大切なお写真の現像・保存・プリントは写真専門店カメラのキタムラにおまかせください。