写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2005.10.08
ちょっとした撮影のコツや本格的な撮影方法、最新の写真・カメラ用語解説など写真とカメラに関する最新の話題を毎週さまざまな角度から取り上げていく「写真何でも情報 EXPRESS」。これを読んでスキルアップ!
コンパクトデジタルカメラでは、シーンモードやプログラムモードなど、被写体の種類によって撮影モードを選び、絞りやシャッター速度などを数値で設定しないタイプの機種も、たくさんあります。このようなコンパクト機からステップアップして、デジタル一眼レフカメラを使いこなすためには、「絞り(しぼり)」とシャッター速度の関係を知っておくと、カメラの搭載機能を有効に活用し、写真を撮影することができます。デジタル一眼レフでもプログラムモードでのフルオート撮影は可能ですが、絞りとシャッターを自在に操ることができれば、そのときどきの気分や好みの表現・描写に合わせた写真を撮ることができるというわけです。
「絞り」については前回解説しましたので、引き続いて、「シャッター速度」と「露出」について解説します。
フィルムまたは撮像素子に当たる光の量を、露光する時間によって調節する機構が「シャッター」で、これで調整される露光時間を「シャッタースピード」あるいは「シャッター速度」といいます。実際のカメラでは、「○○分の1秒」というように秒数で表示されます。瞬間的な時間であり、通常の撮影では1秒以下の「分数」だけが見られることが多いため、カメラの表示では分数の分子部分は省略されています。よって、分母に当たる「○○」に入る数字が大きいほうが、速いシャッタースピードになります。フィルムや撮像素子で記録できる光の量は、基本性能として一定不変(ISO感度)なので、シャッター速度で露光時間を変えて、被写体ごとに変わる光の量の過多を調整しています。
シャッタースピードにも、決まった数字が付けられていて、カメラのシャッタースピード調整ボタンまたは調整ダイヤルを操作して、数字を選ぶことで露出をコントロールできます。
シャッタースピードの数字(単位=秒)は、通例、次のように並んでいます。
これは、順に数値が1/2になっていく(速度は2倍に速くなる)数列です。カメラの表示では、正確な倍数ではなく、近似値が書いてありますが、実際には「2」を基準に1/2(あるいは速度2倍)ずつ変化しているものと思ってください。この数列に合わせて、シャッタースピードの値を1つずらす量を、通例「1段」と呼んでいます。この数字は時間の単位なので、そのままの数列で絞りの「1段」と対応します。シャッタースピードの場合も、現在発売されている多くのカメラでは、より細かな露出設定ができるように、数値を1段刻みではなく、1/2段あるいは1/3段刻みで操作できるようになっています。
なお、シャッタースピードは、動くものの写り方に影響し、高速シャッターで撮影した場合には動くものは瞬間的に静止した画像となり、低速シャッターでは動くものがブレた画像になります。手ブレの発生にも大きく関係しており、三脚を使用せず、手持ちで撮影する場合は、使用するレンズの「焦点距離分の1秒」(50mmレンズであれば60分の1秒)より速いシャッタースピードを選ぶ必要があります。
絞りとシャッタースピードは、必ず2つセットでカメラに設定し、これらの数字を操作することで、露出が自在にコントロールできます。フルオートでの撮影でも、カメラが自動的に、これらの数値を設定しています。
フィルムや撮像素子は、それぞれの製品がもともと持っている基本性能として、記録できる光の絶対量が決まっています(ISO感度、デジタルの撮像素子では設定変更も可能)。その性能に合わせて、被写体ごとに異なる光の量を、フィルムや撮像素子に正しく記録できるように調整するのが、絞りとシャッタースピードの持つ役割です。絞りとシャッタースピードの調整量(段数の変化)は、同じ光の量(露出値)であれば逆相関の関係が成り立つので、絞りとシャッタースピードの組み合わせは、いくつものパターンで自由に作り出すことができます。この特性を利用すれば、写真に表現の幅を持たせることができ、コンパクト機のフルオート撮影にはない演出も実現できます。
写真の技術解説書では、露出は、『バケツに水道の蛇口から水を溜める話』として、しばしば例えられます。
ここで、バケツいっぱいに水を溜めようとすると、蛇口の開き具合に応じて、水を出す時間が変わります。そのとき、蛇口の開き具合と、水を出す時間は、どちらかを増やせば反対のどちらかが減る関係になりますが、結果的にバケツがいっぱいになれば良いので、これら2つの調整は自由にできます。これと同様に、同じ露出結果を出すために選ぶことができる、絞りとシャッタースピードの組み合わせも、撮影者が自由に決めて良いというわけです。
例えば、絞りを1段開いて、シャッタースピードを1段速くしたときには、その露出は設定を変える前と同じです。よって、画像の明るさとしては、何ら変わりはありません。この特性を利用すれば、背景をぼかしたいときには、絞りを開放近くまで開いて、その分だけシャッタースピードを速くするといった表現技法が利用できます。
一方で、絞りを1段開いても、シャッタースピードを変えない場合は、フィルムや撮像素子に記録される光の量そのものが1段分多くなるので、画像は少し明るくなります。これが「露出補正」と呼ばれる効果で、写真の明るさを調整できます。
絞りとシャッタースピードの効果を、一眼レフカメラの実践的な撮影で活用したいときには、次の3つの方法が選べます。
撮影者が表現の意図に合わせた絞り値をあらかじめ選んで、対応するシャッタースピードの設定はカメラにまかせる方法
シャッタースピードをあらかじめ選んで、対応する絞りの設定はカメラにまかせる方法
絞りとシャッタースピードを、両方とも撮影者が自分で選んで手動設定する方法
優先モードを使えば、一方をセットしたとき、対応するもう一方の設定を忘れてしまう、うっかりミスが防止できます。また、マニュアル露出モードでは、構図を変えても、絞りやシャッタースピードがつられて変わることがありません。撮影モードは、撮影状況に応じて適宜、選択しましょう。
なお、一眼レフの場合では、プログラムモードを選んだ際にも、カメラが自動的にセットした露出値をモニター表示できる機種が多いので、絞りとシャッタースピードの関係を知っておくと、カメラの動作状況の正確さを確認する上で役立ちます。一般に、写真を勉強するなら一眼レフが良いとされることには、こんな理由もあるのです。
(このシリーズは今回で完了です)
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