写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2005.11.05
ちょっとした撮影のコツや本格的な撮影方法、最新の写真・カメラ用語解説など写真とカメラに関する最新の話題を毎週さまざまな角度から取り上げていく「写真何でも情報 EXPRESS」。これを読んでスキルアップ!
レンズ付きフィルム、通称“使い捨てカメラ”。このお手軽な撮影機材は、誰でも使ったことがあると思います。この「カメラ」、フィルムを巻き上げてシャッターを切るだけで、ピントも露出も設定は不要なのですが、あのリーズナブルなお値段で、オートフォーカスやプログラム露出が付いているはずもありません。でも、撮った写真は、サービスサイズのプリントなら、実用上まったく問題のないレベルの高画質。デジタルカメラのように「画素数」という概念を持ち込むなら、レンズ付きフィルムの“画素数”は、高級一眼レフで撮影した場合と同じです(粒状性はフィルム固有の性能なので)。その写りの秘密は、デジタルにはないフィルムならではの感光性能と、絶妙のバランスでチューニングされた、固定焦点レンズ、そして固定露出にあります。普段、製品を使っているときには気が付かない、その微妙な設定の加減を、過去に発表されたニュースリリースをもとに探ってみました。スペックを理解して使えば、レンズ付きフィルムでも、より美しい写真が撮れるはずなので、実際の撮影にも活用してみてください。
レンズ付きフィルムは、富士フイルム、コニカミノルタ、およびコダックの国内フィルムメーカー3社から発売されています。各社ともノーマルタイプに加えて、高感度タイプや、望遠撮影用、水中撮影用など、いろいろな製品バリエーションがあり、レンズと露出のチューニングも、皆それぞれ微妙に異なっています。今回は、一般の方が最も使用する機会が多いと思われる、35ミリ判フィルム内蔵・感度ISO800のノーマルタイプに注目して、基本性能を比べてみましょう。
名称 | フジカラー「写ルンです 800プレミアム」 | コニカミノルタ 「撮りっきりコニカMiNi NEO ps800」 |
コダック 「スナップキッズ フラッシュ スーパー ピカキレ」 |
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内蔵フィルム | 専用ISO800フィルム | CENTURIAズームスーパー800 | MAX beauty 800 |
レンズ | 32mm F10/プラスチックレンズ1枚 | 30mm F9.0 | 30mm F10/2群2枚構成(プラスチック非球面レンズ使用) |
シャッター速度 | 1/140秒 | 1/150秒 | 1/100秒 |
撮影距離範囲 | 1m~無限大(フラッシュ到達距離1~5m) | 1m~無限大(フラッシュ到達距離1~4m) | 1.2m~無限大(フラッシュ到達距離1.2~5m) |
ファインダー | 逆ガリレオ式プラスチックファインダー | 光学式透視ファインダー(逆ガリレオタイプ) | データなし |
フラッシュ用電池 | 単4型アルカリマンガン乾電池内蔵 | 単4型アルカリ乾電池1本内蔵 | 単3型アルカリ乾電池1本内蔵 |
コメント | 【人物主体の汎用型】絞り値F10で、フラッシュが5mまで届くのは立派。意外に発光量の大きなフラッシュが付いている。被写界深度を稼げる絞り値で、背景までくっきりピントが合い、夕方~夜の屋外撮影にも強みあり。シャッター速度は、明るい場所での撮影や手ブレの防止にも配慮した、人物撮影に向く平均的な設定。 | 【旅行・レジャーに便利】シャッタースピードは、この中では最速で、フラッシュを使わない屋外撮影にも適する。手ブレが心配な人にとっても心強いか。その代わり、絞りは少し開き気味。やや広角傾向を強めたレンズは、屋外・室内を問わず幅広い用途に適応可能で、並んで記念写真を撮るとき、隅にいる人が画面から切れてしまう心配が減るほか、風景の撮影にも向く。 | 【フラッシュ撮影に強み】“使い捨て”とは思えないほど、ぜいたくなレンズを使用。シャッター速度がややスロー気味なので、どちらかというと、夜の撮影や暗い場所に強そうなチューニング。シャッター速度が遅ければ、シンクロ撮影で背景がはっきり写る。電池が単3型のためやや重いが、大きい分だけ電源容量には余裕があり、連続したフラッシュ撮影には有利。 |
レンズ付きフィルムの固定露出は、内蔵しているネガフィルムが持っている、広い露出許容度(ラチチュード)によって支えられています。露出許容度とは、撮影する被写体を正確に測光したときの本来あるべき露出値から、どれくらい外れてもキレイに写ってくれるかという、吸収できる誤差の範囲のこと。内蔵しているカラーネガフィルムでは、絞り3~4段分くらいは、露出オーバー・アンダーとも十分カバーできているようです。ちなみに、スライドフィルムやデジタルカメラの露出許容度は、絞り1つ分もないので、カメラによる精密な露出制御が欠かせません。よって、レンズ付きフィルムの露出は、想定される露出パターンの平均に近いところに設定されており、絞りとシャッターの組み合わせを、どうチューニングするかで各社製品の特色が出ています。
また、ネガフィルムは、撮影後に店にオーダーして現像・プリントするときに、プリント画像の濃さや色調を、ある程度自在にコントロールできるので、ネガに画像が写ってさえいれば、プリント段階で露出の過不足をカバーすることもできます。このような特性が、レンズ付きフィルムで撮影した写真の美しさを支えているのです。
ただし、極端に画像が暗い(淡い)場合には、現像段階でカバーすることが難しくなるので、撮影しているとき「ちょっと暗いかな」と思ったら、必ずフラッシュを点灯して撮影しておくのが、キレイな写真に仕上げるテクニックと言えるでしょう。なお、フラッシュ撮影する場合は、光の届く範囲が絞り値によって制限されているので、表示されているフラッシュ到達距離の範囲まで、被写体に近付かなくてはなりません。夜景や、野球場のグラウンドなど、遠い被写体に向かってフラッシュをたいても、まったく意味がないので、ご注意ください。
設定されているシャッター速度は、止まっているものを撮るには十分ですが、決して速いとは言えないので、動いているものを撮るときは注意。どうしても止めて写したいときは、フラッシュを併用するテクニックもあります。ただし、フラッシュが届く範囲内のみ有効。また、シャッターを押し込んだ瞬間にカメラが動くと手ブレの原因になるので、両手でしっかり構えて撮影しましょう。
レンズ付きフィルムの内蔵レンズは、各社とも30mm程度の広角レンズを使用していて、絞りはF9~10程度に固定されています。広角レンズは被写界深度(ピントの合う範囲)が広くなる特性があり、これを絞り込んで使っていることになるので、ピントの調節ができない固定焦点式でも、指定された撮影距離の範囲内にあれば、被写体のすべてにピントが合うわけです。表現方法としては、広角レンズの性能を引き出すような撮り方が適当なので、最も撮りたいと思う被写体に十分近付いて、画面に大きくとらえる構図で撮影するのがコツです。一般的な、フィルム用コンパクトカメラより、内蔵レンズはさらにワイドなので、室内や狭い場所(引きがないところ)での撮影では、レンズ付きフィルムが意外な活躍をしてくれるかもしれません。<
なお、レンズが小さいので、撮影するとき、指がかからないように気を付けるのも、注意しておきたいポイント。指がレンズを隠してしまうと、後で現像したとき、ピンボケの指が写真に写っていてビックリします。一眼レフと違って、レンズの前に指があっても気が付かないので、シャッターを切る前に、忘れずに再確認しておけば安心です。
撮影を終えたレンズ付きフィルムは、そのまま本体ごと持ち込んで、DPE店に現像・プリントを注文してください。キタムラ各店でも、もちろん対応可能です。自分で本体を分解して、フィルムを取り出す必要はありません。本体内には、フラッシュを充電するための高電圧部品もあるので、分解するのは危険な場合もあります。現像後は、普通のカメラで撮った写真と同様に、シート入り35ミリフィルムの状態になります。お店では、フィルムの画像を入力してデジタルデータ化することも可能。これを、デジタルカメラで撮った画像と同様に、パソコンで活用することもできます。
あなたの大切なお写真の現像・保存・プリントは写真専門店カメラのキタムラにおまかせください。