写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2005.11.26
ちょっとした撮影のコツや本格的な撮影方法、最新の写真・カメラ用語解説など写真とカメラに関する最新の話題を毎週さまざまな角度から取り上げていく「写真何でも情報 EXPRESS」。これを読んでスキルアップ!
前回から続く、「趣味」としての写真の楽しみ方をご提案するシリーズ。今回は、少し趣味の世界を深めて、より専門的なスタイルでの楽しみ方をご紹介したいと思います。
前回で取り上げたパターンは、撮りたい被写体があらかじめ決まっていて、写真を「メディア」または「ツール」として利用することで、人やモノの様子を伝えたり、記録に残すといった目的に役立てるという趣味のスタイル。今回は、何よりも写真表現そのものを第一の目的とする、芸術志向のスタイルです。
被写体を伝えるための「メディア」として写真を使うのではなく、一枚の写真そのものを、絵と同じように作者の感性を体現し、本来の被写体の見かけとは別個の、独立した存在意義を持つ「作品」とみなして、そこに芸術的な表現の価値を求めること。初心者の方には、ちょっと難解かもしれませんが、そんな奥深い趣味の世界へ、皆さんをご案内します。カメラや写真にあまり深い関心がない方も、一つの雑学としてお付き合いください。
「作品」としての写真は、単にカメラで被写体を美しく撮る技術を考えることだけでなく、撮った写真をプリントして、自分以外の人にも見せることを意識するところからスタートします。趣味の「写真」とは、狭義では、このように人に見せる「作品」をつくること。前回ご紹介した趣味のスタイルは、狭義では、趣味の「カメラ」ということになり、それぞれ微妙に目指すところが異なります。
「作品」としての写真を撮影する際のポイントは、被写体の見た目をそのまま記録するのではなく、「被写体を利用して撮影者の考えるイメージを画面に描き出す」という感覚を持つことです。これは要するに、いろいろな被写体が持っている色彩や形、そして空間を組み合わせて、フレームの中に作者が思い描いた一つの世界観を構成すること。より具体的に言えば、主題の被写体と、点景となる被写体、背景などの、画面の中での位置や大きさ、視点、遠近感などを、レンズ選びやフットワークなどで工夫して、より魅力的な被写体の「見方」を写真によって示すのが、作品づくりのコツと言えます。
理屈で言うと難しくなりますが、実際には、場数を踏んでたくさんの写真を撮影してみるのが、良い作品を撮るための近道。同じ被写体でも、見る位置が変わると、表情が大きく変化します。その変化が、単なる写真を「作品」に磨き上げるわけです。プロ写真家でも、発表する作品一つを撮影するまでには、同じ被写体に対しても数多くのシャッターを切り、その結果として、多数の写真の中から最高の一枚を選んでいます。良い作品を撮るためには、それだけ努力が必要で、納得のいく作品を完成するまでには何かと苦労も伴うもの。「作品」の写真を撮ることとは、「趣味」とはいっても、精いっぱい頑張った後で、達成感を味わうようなスタイルの趣味であると言えるでしょう。
「作品」の写真が、人に見せるものであるという目的から発展して、このスタイルの趣味に参加する人どうしの間では、作品のアピール度や、趣味のグレードを高めていくことを、ゲーム感覚のように競う一つの習慣・文化が存在しています。初心者から始まって、一つ一つのステップを上がっていくプロセスは、だいたい以下のような順序になっています。関心のある方は、機会があればチャレンジしてみてください。
初心者の方が、講師の指導を受けながら、「作品づくり」の実際に触れることができる場。カメラメーカーや、カメラ雑誌などが実施する例が多く、講師としてプロ写真家が指導に当たります。
誰でも気軽に応募できるフォトコンテストに応募して、ほかの人が撮った作品とアピール度を競い、入選での作品発表をめざします。
写真愛好家の間で権威があるとされる公募フォトコンテストに応募し、入選をめざします。見事入選すれば、写真愛好家の間ではステイタスシンボルとみなされます。
自信作を集めて、写真仲間と一緒に、グループで写真の展覧会を開催。いろいろな来場者に、ギャラリーで作品を見てもらって感想を聞くことで、その反応を直に知ることができます。また、新しい写真仲間との出会いもあります。
発表スタイルはグループ展と同じですが、ギャラリー内を自分一人で撮影した作品で埋め尽くすので、写真の点数が極めて多くなります。自信を持って発表できる作品を一定数まで集めるまでには、時間も手間もかかります。
写真の「趣味」としては、難易度最上級の最終目標。作品を厳選して一つのテーマで編集し、撮影活動の成果を集大成します。写真展以上に、大量の作品が必要になることが多いようです。
以上のうち、難易度3のフォトコンテストまではアマチュアの写真愛好家どうしだけがライバルですが、それ以上では、プロ・アマチュアの別なく作品が競演する“激戦区”になります。初心者から始めて、難易度6まで到達するには、短くても5~10年くらいはかかるので、焦らずに、写真撮影そのものを楽しみながら気長に取り組んでください。
自分の感性を表現する「作品」を撮るとき、その被写体は、何でも自由に選んで構いません。被写体として、何に注目するかを自分で考えるのも、また表現の一部なのです。ただし、被写体選びにもコツはあります。
そのコツとは、他人の写真作品を見て、その被写体を単純にマネしないということ。着眼点が同じ作品を撮っても、フォトコンテストの場合などでは、競争率が上がって不利になることもあります。他人の作品のマネではなく、自分が本当に好きなモノを現実の世界から探してカメラを向けることが、より評価の高い作品を撮影し、趣味のグレードを上げることにつながります。
カメラを持ち歩いているときでも、たまたま持っていないときでも、無意識のうちに眺めてしまうようなものが、あなたにとって一番好きな被写体です。その被写体を、時間をかけてじっくり撮り続ければ、必ずお気に入りの「作品」に巡り会うことができます。
「作品」としての写真は、一朝一夕には撮ることはできません。じっくり構えて、気長に撮り続けることが、この趣味を極めるための王道です。でも、楽しみがあってこその「趣味」ですから、あまり難しく考えないで、あなた自身に最もふさわしい、カメラや写真とのつきあい方を見つけてください。
今回ご紹介した趣味のスタイルと、前回の趣味のスタイル(バックナンバー参照)では、どちらがお好みでしょうか? ここでお伝えしたいことは、写真の趣味のスタイルが決して一つではないということです。どのスタイルを選んで写真を趣味にするのも、それは、すべて撮る人の自由。ですから、どうぞ自由な発想で、「写真生活」を楽しんでみてください。
(このシリーズは今回で完了です)
あなたの大切なお写真の現像・保存・プリントは写真専門店カメラのキタムラにおまかせください。