趣味としてカメラ・写真に親しむ写真愛好家の間には、根強い人気のあるフィルムカメラ。その特徴を上手に引き出して撮影するためには、フィルムそのものについても、いろいろな知識が必要です。前回から続く、フィルム企画シリーズ。今回は、実際にフィルムを購入、そして使用するとき知っておくと便利な情報を取り上げたいと思います。前回のバックナンバーと、合わせてご覧ください。
フィルム選びのポイント(続き)
サイズで選ぶ
デジタルカメラで、対応するメモリーカードの種類が機種によって異なることと同様、フィルムの仕様でもいろいろと異なるサイズがあり、それぞれに対応するカメラに装填して撮影します。フィルムとカメラのサイズが違う場合、装填することはできません。現在、一般用として発売されている、主なフィルムのサイズは次の通りです。デジタルカメラに対して、単に「フィルムカメラ」という場合は、35ミリサイズのことを意味します。
- 35ミリサイズ
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最も一般的に普及しているサイズ。一般の方が単に「フィルム」といえば、このサイズのことです。製品の種類も多く、一眼レフやコンパクトタイプなど、使用できるカメラも豊富にあります。35ミリとはフィルムの幅のサイズで、両脇(上下各2列)にはカメラの中でフィルムを送るための小さな穴が並んでいるため、実際に写真が写る範囲は、縦24×横36mm(全幅35mmのうち24mmが縦側の実効寸法)。デジタルカメラ用レンズで、「35ミリ判換算焦点距離」という場合に、比較の基準になっているのがこのフィルムサイズに対応する画角です。
- 中判サイズ
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35ミリより画面サイズが大きい、フィルム幅6センチのタイプで、中判カメラ専用。35ミリ判のカメラには入りません。風景写真を撮影する写真愛好家や、大きなサイズの広告用写真を撮影するプロ写真家などが、主に使用します。35ミリサイズに比べて、フィルムの元画像が大きくなる分、プリントしたときの拡大倍率は低くなり、高画質を保てるのが特徴です。撮影画面で縦になる側の寸法は6センチですが、横の寸法は装填するカメラによって異なり、撮影時の画面サイズは、6×4.5判、6×6判、6×7判などとなります。35ミリフィルムとは装填の方法がまったく違うので、使いこなすにはちょっとしたコツが必要です。
- APSサイズ
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フィルムに磁気記録層があり、撮影データの記録やプリントの管理ができるタイプ。デジタルカメラが登場する少し前に、APSカメラ専用のフィルムとして登場しましたが、本格的な普及を待つことなく、カメラシステムそのものがデジタルカメラに取って替わられました。銀塩フィルムのアナログ的な撮影特性に、デジタル的な画像管理機能を加えた、“デジアナフィルム”といった印象です。サイズは、35ミリサイズより、一回りコンパクト。APSカメラの新製品は、いまではほとんど皆無ですが、過去に対応カメラ本体を購入した方のために、現在でもAPSフィルムは供給が続けられています。
- 撮影枚数で選ぶ
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一般的な35ミリフィルムの場合、いずれのタイプにも、撮影枚数は12枚撮り、24枚撮り、36枚撮りの3タイプがあります。撮影に必要な枚数に応じたフィルムを選べば、フィルム代、現像代、プリント代の各コストが節約できます。フィルムは有効期限のある“ナマモノ” で、古くなると発色に影響するため、枚数の多いフィルムを長期間にわたってカメラに入れっぱなしにせず、撮影の機会があるごとに必要に応じた枚数を使い切って、すぐに現像したほうが安心です。
- メーカーで選ぶ
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日本国内で発売されているフィルムは、富士写真フイルム、コダック、コニカミノルタと、計3つのメーカーが主流。このうち、コニカミノルタは写真事業を撤退し、順次、フィルムの生産も終了する予定なので、今後は実質的に富士とコダック、どちらかの選択になります。各メーカーとも、いろいろなタイプのフィルムを揃えていますが、メーカーによって発色特性に若干の違いがあるので、お好みの銘柄を探してみてください。
- プロ用と一般用で選ぶ
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ポジフィルム(リバーサルフィルム)には、特に「プロフェッショナルタイプ」という製品が用意されており、同じ感度でも、一般用とプロ用の2系統があります。プロ用と一般用の違いは、広告や雑誌といった印刷物の原稿として写真を使うかどうか。プロ用では、ベースカラー(フィルムの地色)が少し異なっています。また、発色特性についても、両方を並べて比較すると多少の違いがあります。
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スライド映写用やフィルムスキャン用、印画紙プリント用としてのみ使うなら、一般用の方が都合が良い場合もあるので、撮った写真の使用目的、および被写体や色彩の好みに応じて使い分けてください。なお、価格はプロ用のほうが割高です。
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カメラ雑誌の月例フォトコンテストでは、入選すると誌面に作品を印刷するのでプロ用のほうが見栄えがしますが、フィルムの種類は審査の当落に関係ありません。「プロっぽくてカッコいいから」という理由だけでプロ用フィルムを選ぶと、写真代の負担が必要以上に増えるのでご注意を。