趣味としてカメラ・写真に親しむ写真愛好家の間には、根強い人気のあるフィルムカメラ。その特徴を上手に引き出して撮影するためには、フィルムそのものについても、いろいろな知識が必要です。フィルム企画シリーズの最終回は、撮影から現像までの流れを、フィルム使用未経験の方にもわかりやすいように解説したいと思います。バックナンバーと、合わせてご覧ください。
フィルムの使い方
フィルムを購入してから、カメラに装填して撮影、現像し、仕上がった写真を保存するまでの一連の流れについて、詳しく解説します。
- 管理
-
フィルムは化学物質を使った製品なので、鮮度を保つため、気温・湿度ともに低い場所で保存する必要があります。家庭での長期保存なら、冷蔵庫での保存が最適。フィルムには有効期限があるので、有効期限内に使用することをおすすめします。フィルム撮影未経験の方のためにお知らせしておきますが、フィルムは直接光に当たると、感光して撮影ができなくなります。興味本位で、むやみにフィルムを引き出したりしないようにご注意を。なお、有効期限とは撮影する期限ではなく、未現像状態で品質を維持できる期限です。現像後は、状態が良ければ半永久的に保存可能です。
- 装填
-
カメラの説明書に従った方法で、フィルムを装填します。1990年代より後に発売されたフィルムカメラでは、フィルムの先端を指定位置に合わせて裏ブタを閉じれば、ワンタッチで自動装填できる機種が多いようです。古い機種では、フィルムの入れ方がカメラによってそれぞれ違うので、取り扱い説明書を参照するか、中古機の場合はカメラを買った店でフィルムの装填方法を確認してください。なお、フィルム装填の際は感光に注意し、なるべく日陰で行うことをおすすめします。
- 撮影
-
撮影作業としては、デジタルカメラとほとんど変わりません。ただし、フィルムカメラでは、どのカメラにも液晶モニターはなく、必ず光学ファインダーを使った撮影になるので、カメラの構え方からデジタル機とは異なる場合があります。フィルムを現像するまで、撮影の結果を確認することはできません。ポジフィルムの場合は、露出の設定を厳密に行う必要があります。デジタルカメラでは、光が電気信号に変換されて記録されますが、フィルムの場合、光によって化学変化が生じることで、画像が記録されます。
- 巻き戻し
-
35ミリフィルムを例にとると、最終コマを撮影した時点では、通常、カメラの中にフィルムがすべて引き出されているので、巻き戻しが必要です。比較的新しいカメラでは、自動で巻き戻しができるモデルもあります。巻き戻さずに裏ブタを開けると、せっかく撮ったフィルムが感光してしまうので要注意。巻き戻しの際は、フィルムの先端部まで、全部を巻き取って構いません。むしろ、先端部を出しておくと、撮影済みフィルムと未使用フィルムの区別がつかなくなり、1本丸ごと多重露光してしまうミスの原因になります。
- 現像
-
キタムラなどのDPE店に撮影済みのフィルムを持ち込み、フィルム現像やプリントをオーダーします。撮影で生じたフィルム上の化学変化を、薬品を用いて、目で見える状態に加工処理するのが現像という工程。現在では、すべて機械で処理しています。現像後のフィルムは、画像が定着されているので、光に当てても感光する心配はありません。
-
ネガフィルムの場合
フィルム現像だけを行う「現像のみ」、プリントまで行う「同時プリント」、現像済みフィルムからプリントする「焼き増し」のサービスがあります。ネガフィルムの場合、だいたい1時間以内には現像・プリントが完了します。ご注文時に引換証をお渡ししますので、仕上がり予定時刻以降、ご都合のよいときにお受け取りください。
-
ポジフィルムの場合
現像の方法と、仕上げの形式を注文時に指定します。現像は、増感もしくは減感を指示することも可能。フィルムの表示感度どおりの場合は、「ノーマル現像」と店頭で伝えればOKです。仕上げの形式は、ネガの場合と同じようなフィルムシートに収めた状態となる「スリーブ仕上げ」か、プラスチック製または紙製の枠に、1コマずつカットしたフィルムを収めた「スライドマウント仕上げ」を選べます。ポジフィルムからプリントを作ることも可能ですが、通常はネガのような「同時プリント」は行う必要がありません。
- 保存
-
現像済みのフィルムも高温・多湿を嫌いますので、フィルム保存用のファイルや、大きめの箱などを利用し、カビ防止剤と一緒に保存しておくと安心です。紙のプリントは、アルバムなどを使って整理したり、フレームに入れて飾ります。フィルムを保存しておけば、紙のプリントは何枚でも作成することができます。デジタルカメラのように、画像を消去するという考え方はなく、一度撮影した写真は、フィルムを捨てない限り、すべてを保存することになります。
ひとこと
普通のフィルムの使い方を、これほどまで詳しく説明するときが訪れることなど、デジタルカメラがまだ普及していなかった10年前には、まったく想像もつきませんでした。テクノロジーとは、やはり時代とともに、大きく変わり行くものなのですね。カメラ・写真は、いまだ立ち止まらずに進化を続けているのだと、思いを新たにしました。