写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2006.07.15
ちょっとした撮影のコツや本格的な撮影方法、最新の写真・カメラ用語解説など写真とカメラに関する最新の話題を毎週さまざまな角度から取り上げていく「写真何でも情報 EXPRESS」。これを読んでスキルアップ!
写真撮影では、ピントや露出も大切ですが、さらに大切な要素として「構図」(フレーミングも同じ意味)があります。ピントや露出は、最近ではカメラが勝手に調整してくれるので、あまり気にしなくても済むようになった一方、この「構図」だけは、使うカメラが最新型でも、撮る人が自分で考えて決めなければなりません。つまり、どんな高級なカメラであれ、自動化のしようがない部分なのです。これは簡単なようでいて、実は写真撮影で最も難しい課題の一つ。今回は、構図決定の“基本中の基本”を取り上げたいと思います。
当たり前の話ですが、カメラのファインダーには写る範囲の「枠」があります。これは、写真全体をトリミングなしでプリントしたときには、印画紙の「枠」になるところです。したがって、この「枠」の中に撮りたいものをしっかり収めなければ、満足のいく写真は絶対に撮れません。これは、写真撮影の基本中の基本です。撮りたいものを「枠」の中に収める方法は3つ。(1)カメラを上下左右に動かしてみること、(2)自分が撮りたいものに近づくあるいは遠ざかること、(3)ズームレンズを望遠・広角の各方向に操作して画角を変えることです。こうした3つの方法を組み合わせて、撮りたいものをファインダーの中に収めることができれば、初めてAFや自動露出も正常に動作します。それだけ、自動化ができない「構図」というものが、写真撮影の現場では重要なのです。
カメラを初めて使う方の場合、いきなり野山に出かけて自然風景写真を撮るということは少ないでしょう。おそらく大多数の方は、友人・家族の記念写真やペット、あるいは花などといった身の回りにある被写体を撮影されることが多いと思います。これらの身近な被写体は、その特徴として、輪郭と背景の区別がはっきりと付くという点があります。
こうした被写体にカメラを向けて撮影する場合、まず最初は、被写体をファインダーの枠内にとらえて、確実に真ん中にくるようにフレーミングし、実際に1回以上シャッターを切ってみてください。そして、ここからが肝心ですが、デジタルカメラであれば撮影された写真を液晶モニターで再生して、自分自身が「真ん中で撮った」と思っている通りに、本当に撮りたいものが真ん中にある状態で撮れているかどうか確認してみてください。どうですか? しっかり、センターにとらえられていますか?
これで、もし真ん中で撮ったはずなのに、上下左右、どちらかに被写体が偏って写っているようなら、構図の決定に失敗しているということになってしまいます。偏る原因は、ファインダーで構図を決めた後、シャッターを切るまでの時点で、カメラが微妙に動いて構図が狙いからズレてしまったことなどが考えられます。高速シャッターや手ブレ補正機構があれば、画像全体のブレだけは防げますが、手ブレと同じ原因で起こる構図のズレは自分でしっかりカメラを構えて操作するよりほかに、対応する方法がありません。
狙ったものを狙った通りに撮れるということは、写真では基本中の基本。真ん中で撮るだけでは面白くないと思われるかもしれませんが、狙い通りに“命中させる”技術だけはしっかり習得しておかないと、芸術的な表現を意図して奇抜な構図で撮影したいときでも、狙いが外れて思い通りにイメージを構成できない原因となります。だから、カメラ初心者の方は、真ん中で確実に撮る練習は、ぜひ一度はやってみてください。
被写体を真ん中でとらえた作画法を、写真の世界では俗に「日の丸構図」といいます。これは、日本の国旗のようなデザイン構成で、四角い枠の真ん中に被写体をとらえるということに由来しています。ちなみに、「和風のわびさびを感じる構図」という意味ではありません(笑)。この構図でバランス良く撮影するには、国旗に例えれば赤丸に相当する部分の被写体を、ズレないように真ん中にとらえるのが至上命題です。
「日の丸構図」では、真ん中にくるメインの被写体1つ(あるいは1群)が引き立つように撮れば良く、それ以外の周囲の部分は一律に「背景」として扱うことが多くなります。背景部分に対して、メインの被写体を目立たせるわけで、これならカメラ初心者の方でも、複雑な画面構成に悩まされることもほとんどありません。この場合、露出設定はカメラのプログラム露出に任せれば十分でしょう。なお、背景全体をぼかしてメインの被写体だけ浮かび上がるように撮りたいのであれば、絞り優先モードに切り替えて、絞り値を開放(数字が最も小さいほう)あたりにセットしてみましょう(この撮り方は特に一眼レフで有効)。
一般の方が、日常生活や旅行などのシーンで、あるいは業務記録などで写真を撮影する場合は、芸術作品を撮ろうと意識することは少ないと思われますので、この「日の丸構図」を習得するだけで、ほとんどの場合、満足がいく写真を撮ることができると思います。そこで、上手に画面を構成するには、被写体をファインダー内で、なるべく大きくとらえるように、カメラの向きや撮影距離、ズームレンズなどを調整するのがコツです。
写真で芸術的な表現を意図する場合には、ストレートな「日の丸構図」を脱して、より複雑で高度なフレーミングを行う必要があります。例えば、自然風景写真の場合では、海や山などの雄大な空間を撮影対象にすると、被写体の輪郭には、どこまでいっても限りというものが存在しないことになるでしょう。すると、撮影時には自分自身の判断に基づいて、風景を部分的に画面内に切り取り、自分だけの視点でオリジナルの構図を作ることが必要になります。この場合、いわば画面の中にとらえたあらゆるものが“メインの被写体”となるわけで、「背景」として一律に区別できるようなものがありません。
そうなってくると、風景写真では「日の丸構図」という考え方そのものが通用しなくなるので、風景の構図を決めるには、一般的な記念写真・記録写真とは、まったく異なる方法で画面を構成していく発想が必要になります。このような芸術表現としてのフレーミングの方法に関しては、単純な撮影テクニックだけでは説明しきれないので、またいずれ機会を改めてご紹介したいと思います。
カメラを使って写真を撮影する機会があっても芸術作品を撮るわけではないという方は、「日の丸構図」を知っているだけで大半の撮影シーンに対応できるので、まずは「日の丸構図」で実際にいろいろな写真を撮ってみてください。
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