写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2006.07.29
ちょっとした撮影のコツや本格的な撮影方法、最新の写真・カメラ用語解説など写真とカメラに関する最新の話題を毎週さまざまな角度から取り上げていく「写真何でも情報 EXPRESS」。これを読んでスキルアップ!
いま発売されている最新式のカメラでは、いずれにも必ず自動露出機能が付いていますが、このオート機能にまったく頼らなくても、露出値を自分で考えて決められる方法があります。カメラに詳しくない方は、「きっと、そんなことはベテランのプロ写真家だけが経験と“勘”でやっているのだろう」と思われるかもしれませんが、実は、簡単な法則性を覚えておくだけで、露出を判断することは可能。誰でも、“勘”で露出を当てて写真が撮れるのです。その秘訣を、ざっとご紹介したいと思います。
露出について知るには、フィルムカメラの場合で考えたほうが理解しやすいので、ここではフィルムの場合を取り上げます。デジタルカメラも、現行機種はフィルムの感光特性を電子的にシミュレートするような設計でできているので、フィルムの場合を覚えておけば応用が可能です。
まず、フィルムを買ったら、その箱をよく見てみましょう。製品の種類やメーカーによって違いますが、箱を見ると、どこかに露出値の一覧表が印刷されているはずです。一覧表がある位置は箱の外側とは限らず、箱を分解して展開図の状態に広げたとき、内側になる部分に書いてあることもあります。また、使用説明書が別紙で添付されている場合もあります。見当たらなければ、フィルムメーカーのホームページから、各フィルム別のデータシートをダウンロードして見ることもできます。
箱にある露出値の一覧表を見ると、ある一定のシャッター速度の場合に、いずれの絞り値を選べば適正露出になるかという撮影指示が、天気ごとに分類して書いてあります。とりあえず屋外で撮影するのであれば、ちょっと空の様子を見てから、箱に書いてある指示通りにカメラのシャッター速度と絞り値をセットして撮影すれば、それで露出はOK! マニュアル露出とは、知らないと難しそうに思えても、基本的にはこれだけのことなのです。ネガフィルムなら、露出誤差の許容度が非常に広いので、このくらい大ざっぱな露出調節でも、ほとんど失敗することもありません。箱の一覧表を見て露出を調整するだけでも、レンズ付きフィルム(固定露出式)を超える精度で露出のコントロールが可能というわけです。(ポジフィルムやデジタルカメラの場合は、露出誤差の許容度が狭いので、マニュアル露出モードの場合もカメラ内蔵の露出計による確認をおすすめします。)
なお、高感度フィルムでは、屋外での一般的な撮影に用いる露出一覧表と併せて、室内撮影用の露出一覧表が、別途、明示されている場合もあります。
昼間に風景写真を撮るだけなら、“箱露出”そのままの設定でも大丈夫ですが、記念写真などで、近距離に位置する人物と、遠くに見える風景を一緒に撮影したい場合では、指示通りの露出ではなく、2つの被写体の間にある明るさの違いを勘案して、露出の微調整を行うことも考えておく必要があります。ほかにも、撮影条件により、露出決定には、さまざまな例外があることも覚えておきたいところです。一覧表を下のほうまで見ていくと、欄外に注意書きがあるので、忘れずに読んでおいてください。
ここで覚えておきたい基本的な条件は、3つ。
フィルムの箱に書いてある露出一覧表は、基本的には昼間の屋外撮影に合わせたものです。そのため、「デーライトフィルム」という分類名が付いています。太陽の高度が低くて光が赤っぽく見えている場合や、曇・日陰などの場合は、光が弱くて被写体が暗くなることがあるので、適宜、絞りを開けたり、シャッター速度を遅くしたりします。そのときの補正量を知るには、カメラの内蔵露出計か、単体露出計を使用したほうが、まったくの“勘”に頼るより確実でしょう。ネガフィルムを使って暗いところで撮影する場合は、一覧表では最も暗い条件に相当する曇・日陰の露出に合わせてフラッシュを発光させれば、露出計がない場合でも対応可能かと思われます。(ただし、フラッシュの光量に合わせた絞りの調節が必要です。)
記念撮影で人物だけが逆光になる場合は、明るい背景と、その陰になる人物が同じ画面内にあり、部分的に被写体の明るさが違っている状態です。このとき、人物をはっきりと写したいのであれば、露出は人物に合わせることになるので、一覧表の露出値より少し絞りを開くか、シャッター速度を遅くします。快晴や晴のほうが、雲りよりも、日なたと日陰の明るさに差が付きやすいので、背景に太陽の光が当たっているなら、逆光撮影では絞りを多めに(2段程度)開ける必要があります。
露出一覧表を、その都度、撮影現場で見ていると撮影の準備に時間がかかってしまうので、できれば、この表を暗記してしまいましょう。その場合は、単純に数字を覚えていくのではなく、この一覧表ならではの法則性を理解するのがコツです。
絞りの数値を見ると、左から右へ1段ずつ、絞った状態から開けた状態に向かって数列ができています。これは、機械式カメラの絞りリングに刻印してある1段ごとの表記に対応したものです。デジタルカメラを含む最近の電子式カメラでは中間絞りがあるので、液晶表示される絞りのステップが細かいように見えますが、基本的に絞り1段ずつの並び方は、機械式と何ら変わりません。
そして、一覧表でそれぞれの絞り値のすぐ上を見ると、対応する天気が書いてあります。この天気の並び方は、基本的にはすべてのフィルムに共通のもの。ということは、天気の並び方を覚えておけば、絞り値の増減は、天気に対応して1段ずつ、ずらしていけばよいことになります。
いちばん左側にある、「快晴時の海岸・山・雪景色」は、風景写真用の特例なので、こうした場所へ出かけて風景を撮る予定がなければ、無理に覚えなくてもOK! 強いて暗記するなら、海岸・山・雪景色は、それ以外の場所より明るくなるという点を覚えておきましょう。こうした場所は、白い砂浜や光る水面の影響を受けて、天気が快晴でなくても反射光が強くなることがあります。
必ず覚えなくてはならないのは、「快晴」の露出。この条件(日中・屋外・快晴)のときが、使用するフィルムの基準露出で、その性能がフルに発揮されます。逆に言えば、この基準値を超えた露出で撮影することは、一般的にはあり得ないということ。カメラの設定範囲としては、絞り・シャッター速度とも、選択の幅が非常に広いので、マニュアル露出初心者の方は、この数値を全部覚えなくてはいけないのかと思われるかもしれませんが、実際に設定する露出値の選択範囲は、フィルムの性能以下となる一定の範囲に収まるので、実践的な撮影では意外と覚えることは少ないのです。ここにある例では、ISO100のフィルムを挙げているので、シャッター1/250秒としてf/11が基準。とりあえず、これだけ覚えておけば、ほかの天気については推定が可能になります。
そして、次に覚えておくべきことは、一覧表に書いてある天気の「並び方」。
快晴 | 晴 | 明るい曇 | 曇・日陰 |
---|---|---|---|
基準 | 1段開ける | 2段開ける | 3段開ける |
この天気の並び方は、どのフィルムの露出一覧表でも基本的には変わらないので、たった4つだけですから暗記してください。そして、撮影時の天気を見て、基準露出(快晴の露出)から、どれくらい絞りを開ければよいか考えれば、露出の推定ができます。
なお、ここでいう天気とは、「太陽の光が被写体に当たっているかどうか」という意味で、天気予報でいう天気とは、意味が異なる場合もあります。気象用語では、空全体に対して雲が占める割合で天気の呼び方が変わりますが、写真の場合は、実際の天気が「お天気雨」であっても、光の当たり方によっては「晴」の露出に相当することもあります。つまり、注目するのは、より正確に言えば天気そのものではなくて、被写体を照らす光の明るさというわけです。
ここでは昔から一般的に使用されることが多かったISO100のフィルムを例に挙げましたが、ISO感度の違うフィルムの場合は、基準になる「快晴」の露出値も、その感度に応じて変わります。当然、快晴以外の天気に対応した露出も変化します。この例にある露出一覧表が、すべてのフィルムでそのまま使えるわけではないので、実際に一覧表を使って撮影するときは、カメラに入れたフィルムに付いているもの(製品には「露光ガイド」などと書かれている)で確認してください。
ところで、各フィルムの基準露出になる快晴の露出値は、実は、覚えなくても割り出す方法があります。フィルムのISO感度は、基準露出(快晴)で撮影するとき、f/16に対応したシャッター速度の分母になる数。よって、ISO感度だけわかっていれば、一覧表を見なくても露出値を知ることはできるのです。快晴以外の天気についても、すべてのフィルムに共通である天気の並び方をもとに、必要に応じた量だけ絞りを開けて調整すれば良いので、この方法を使えば一覧表がない場合でも問題なく撮影できるでしょう。
ここで例に挙げたISO100の場合、f/16に対応するシャッター速度は、理論上では1/100秒になるので、最も近いシャッター速度である1/125秒を選べば、快晴時の適正露出になります。これは、露出一覧表に書いてある、f/11・1/250秒という露出値にもピッタリと一致します。絞りとシャッター速度は1段ずつ反比例し、一方を1段上げ、他方を1段下げた場合の露出値(露光量)は一定。この点を応用すれば、絞りとシャッタースピードの組み合わせを変更して、いろいろな撮影効果を写真に与えることも可能となります。
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