写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
※掲載されている情報(製品の価格/仕様、サービスの内容及びお問い合わせ先など)は、ページ公開日現在の情報です。予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
2006.12.02
ちょっとした撮影のコツや本格的な撮影方法、最新の写真・カメラ用語解説など写真とカメラに関する最新の話題を毎週さまざまな角度から取り上げていく「写真何でも情報 EXPRESS」。これを読んでスキルアップ!
デジタルカメラで、最も普及台数が多く、ユーザー層も幅広いのがコンパクトタイプ。
歴史の流れとしては、デジカメはコンパクト機が先に誕生して、フィルム用コンパクトカメラのニーズを代替しながら広く普及が進み、その後、デジタル一眼レフが登場しました。したがって、デジカメの普及は、フィルム時代に一眼レフを使っていなかったとみられる、コンパクトカメラの「ユーザー層」(おそらくはカメラに詳しくない方や、機械としてのカメラに深い興味はないが写真を撮ったり撮られたりすることは好むという方も多く含まれる)が、真っ先にフィルムからデジタルへ乗り換えることからスタートした経緯があります。
こうした社会現象が与えるイメージから、一般消費者の方には、コンパクトデジタルカメラの「構造」そのものも、フィルム用コンパクトカメラの撮影機構を、そっくりそのままデジタルに移し変えたものであるかのように思われているフシがあるかもしれません。しかし、どちらも同じように「コンパクト」というネーミングが入っていながら、カタログを詳しく見比べてみると、コンパクトデジタルカメラの実態としては、フィルムかデジタルかという違い以上に、まるで構造が異なるカメラであることがわかります。つまり、昔のように、「一眼レフ=専門家のカメラ」「コンパクト=初心者と素人のカメラ」という図式は、すでに崩れているのです。しかし、コンパクトデジカメは、名前の語感と小さいボディサイズゆえに、もしかすると、まだ十分な評価をされておらず、その性能の高さが一般ユーザーまで伝わっていないのではないでしょうか?
というわけで、ここで改めて、コンパクトデジカメの実力をフィルム用コンパクトカメラと比較してみたいと思います。
製品例/キヤノン「IXY DIGITAL 1000」:
ボディサイズはフィルム用コンパクトカメラより小さく、撮影機能は一眼レフに迫るほどの高性能を誇る、最新の10メガコンパクトデジタルカメラ。
同機の背面:
液晶モニターがあることが、フィルム用とは最も大きな違い。その上の光学ファインダーは、フィルム用と同じく前面に貫通していますが、液晶モニターには、画像センサーを経由した動画像がリアルタイムで表示され、正確な画角が撮影前に確認できます。
ボディの外形だけ見れば、フィルム用コンパクトカメラとあまり変わりません。でも、フィルムを格納して反対側に巻き取っていく必要がないので、コンパクトデジカメでは、その分だけ、サイズは小型化されています。主な違いとなるのが、撮影用レンズ以外のファインダーや測距用の「小窓」。ファインダーは背面から前面を透過する実像式が基本ですが、最近は、液晶モニターのみを構図の確認に用いて、光学式ファインダーそのものがない機種も増えています。フィルム用にはある測距用の「小窓」も、デジタルカメラではAF方式がまったく異なるため、基本的に必要がないので付いていません。
現行機種のコンパクトデジタルカメラでは、すべての機種において撮影用レンズを通った像を、そのままAF制御にも使っていると思って間違いありません。正確には一眼レフカメラのAFとは違う仕組みですが、TTL方式(レンズを通して測距・測光すること)であることは確かなので、フィルム用コンパクトカメラよりは、はるかに精度の高いピント合わせが可能です。測距時は、画像センサーに届いたレンズ像のコントラストを検出して、その演算結果をもとにAFでレンズを動作させています。デジタルの場合、液晶モニターを使えば、ピントのズレ具合を画像のボケとして目で確認できるほか、撮影用レンズとファインダーの間で視野のズレも生じないので、コンパクトカメラでも一眼レフと同じように、撮影する写真とまったく同じ見た目でAF制御が可能になります。もちろん、ほとんどの機種で、マニュアルフォーカスも可能です(電動式のパワーフォーカスの場合もあります)。それだけでなく、画像センサー上から得られたリアルタイムの画像データを、高度に解析処理することも可能なので、自動追尾AFや顔認識AFといった、デジタル一眼レフにもできない斬新な機能の搭載も可能となっています。
基本的には、液晶モニターを使用。モニター表示されるレンズ像は画像センサーを経由しており、実際に撮影される写真とも完全に一致します。これは、ある意味で一眼レフと同じ状態です。また、光学ズームレンズによる画角変化だけでなく、デジタルズームの効果も反映して、被写体をとらえることができます。液晶モニターにおける画角表示の正確さは、フィルム用コンパクトカメラの光学ファインダーをはるかに超越しており、カメラボディのサイズをフィルム時代より小さくしながら、同時に正確な画角の表示さえも可能としたことは、まさしくデジタル時代ならではの革命的なイノベーションであったとも言えそうです。なお、デジタルカメラでも光学ファインダーが付いている機種では、デジタルズーム機能を併用していないことを条件に、ファインダー側で、光学ズームレンズと連動した画角を直接確認することもできます。バッテリーを節約するためには、液晶モニターよりも光学ファインダーを利用したほうが有利です。
デジタルカメラに付いている画像センサーのサイズは、35ミリフィルムのフルサイズ画面に比べれば、非常に小さいものです。これは、カメラボディの小型化や内蔵レンズの設計においても都合が良く、結果としてコンパクト機では、内蔵レンズの開放F値を明るく保つことにも成功しています。フィルム用カメラと同じ画角に合わせるには、35ミリ判換算したときの焦点距離が一致するようにレンズの焦点距離を決めるわけですが、その場合には、デジタルカメラでは小さな画像センサーのサイズに合わせて、よりワイドな画角のレンズを採用。このため、フィルム用コンパクトカメラのように、レンズの明るさを犠牲にしてまで、光学ズームの望遠側ミリ数を大きく伸ばす必要がありません。コンパクトデジカメの内蔵ズームレンズでは、開放F値は、だいたい暗くても望遠端F5.6くらいには収まる例が多いようです。さらに望遠効果が必要なら、画像センサーの画素数を上げて、デジタルズームで部分拡大するという、デジタルならではの設計対応も可能。この場合、電子的に望遠効果を得ているので、光学レンズ部分の開放F値には影響はありません。こうした点から、内蔵レンズの明るさを、一眼レフ用交換レンズ並みに確保でき、その上、高感度機能との連携によって望遠撮影時にも高速シャッターを使いやすくできた結果、「ブレ軽減機能」も比較的簡単に実現されることとなりました。ただし、レンズが明るいとはいえ、あくまでコンパクト機専用の小型部品なので、大口径の一眼レフ用交換レンズと比べると、背景のボケ味などにはやはり差が出ます。
コンパクトデジタルカメラでは、シャッター制御に、機械式シャッターと、画像センサーそのものが機能する電子式シャッターを併用する機種が多いようです。このため、フィルム用コンパクトカメラ以上にシャッター速度の高速化が可能で、最高速度は機種によって、1/1000秒、あるいは1/2000秒という高速性能を実現しています。これは、一昔前のフィルム一眼レフの最高シャッター速度と同じで、動いている被写体を静止して写したい場合にも必要かつ十分な水準です。コンパクトカメラのシャッターは、デジタル化により露出制御における弱点を、見事に克服したと考えることができるでしょう。
現行機種では、測光にもAFと同様のTTL方式を採用しており、露出値の判断に、撮影用レンズを実際に通った光が使えるので、露出制御は極めて正確です。しかも、コンパクト機では、撮影する写真と同じ画面の全体をリアルタイムで動画として捕捉できるので、測光系システムと撮影系システムが別構造の一眼レフよりも、撮影状況次第では、高精度な露出制御ができる場合もあり得ます。また、最近のコンパクトデジカメでは、以前のフィルム時代には高級一眼レフでしか使えなかった、測光方式の切替も実現されており、被写体に合わせて、より高度な露出制御にも対応できます。標準の測光モードは、画面各部の露出のバラつきを総合的に判断して自動演算を行う「多分割測光」(メーカーにより呼び名が異なる)で、このほか、「スポット測光」や、かつてフィルム一眼レフでの採用例が多かった「中央部重点平均測光」なども装備。また、顔認識AFなどの高度なピント調節機能を使用するモードでは、露出も、その検出結果を反映してコントロール可能です。撮影した画像は液晶モニターですぐに表示できるので、露出結果を撮影現場で確認したり、ヒストグラム表示で、画像の明るさ分布を分析することも可能。その結果次第で、必要があれば露出補正を行って撮り直すという判断もできます。フィルム用コンパクトカメラでは、ネガフィルムが持つ露出許容度の広さが、比較的大ざっぱな露出制御をカバーすることで、露出誤差を吸収して結果的に適正露出を得ていましたが、コンパクトデジカメの場合は、精度の高いセンサーと高度な演算処理によって、ピンポイントで露出を決定。また、それの露出制御に応えるために十分なレベルで、シャッター機構や絞り機構などの機械性能も備えています。露出に関しては、コンパクトデジカメは、もはやフィルムを使うコンパクトカメラの同類ではないと言って良いでしょう。
デジタルカメラの場合、コンパクト機が一眼レフに対して、明らかに劣る部分は少なくなっています。よって、ごく一般的な記念写真などの撮影で使うだけであれば、ほとんどのシーンにおいてコンパクトデジタルカメラだけでも対応可能です。現在のデジタル一眼レフの多くは、その構造上、デジタルズーム機能や動画撮影機能が搭載されていないので、こうした機能を使いたい場合は、コンパクトデジタルカメラのほうが、便利に思えるかもしれません。対して、デジタル一眼レフのメリットには、レンズを交換できることや、絞り値の選択可能範囲が広いこと、連写するときのレスポンスが良いこと、AFが効かないときにも光学ファインダーを確認しながらMFで高精度なピント合わせが可能なこと、外部フラッシュ、フィルターなどのアクセサリーを装着して、特殊効果を狙った撮影ができることなどがあります。
コンパクトカメラを、フィルム用とデジタルで比較すると、その機能性と効率性などの点から、デジタルのほうが有利であることは明らか。つまり、「コンパクト」という名前が付いていても、コンパクトデジカメは、フィルムを入れて使っていた昔のコンパクトカメラとは、まるで違うタイプのカメラであることがわかります。
ただし、フィルム用コンパクトカメラでは、弱点となることのほとんどが、ズームレンズの搭載に起因していることも注意したいところ。もともと、1980年代前後に普及が始まった当初のフィルム用コンパクトカメラには、ズームレンズは付いておらず、すべての機種で比較的明るい単焦点式レンズが採用されていました。ちなみに、このころよりも前の時代は、一眼レフの標準レンズも単焦点50mmが主流でした。その後、AF一眼レフがズームレンズとセットで登場するわけですが、フィルム用コンパクトカメラにズームレンズが内蔵されたのも、実はそれ以降です。ただし、ズーム付きコンパクトカメラは、AF一眼ブームとバブル景気でぜいたくに進化した消費者ニーズに対応すべく、メーカー各社が頑張って製品開発した結果としてできた、いわば“マーケティング主導型商品”のようなもの。小さなボディに沈胴式の高倍率光学ズームを取り付けることは、フィルムカメラのあるべき技術仕様としては、最初からやや無理があったかもしれません。いま発売中のフィルム用コンパクトカメラでも、一部にある上級者向け高級タイプの製品がズームレンズを内蔵しないのは、こんなところにも理由があるからなのでしょう。
とはいえ、一般消費者の方が求めるニーズの中心にある、光学ズーム3倍以上、ブレ補正(軽減)機能付きという条件にピッタリな設計が無理なくできるのは、やはりデジタルカメラだけなので、こうした汎用性の高いコンパクトカメラに限るなら、デジタルが現在の標準であることは確実なようです。それでは、デジタル一眼レフとコンパクトデジカメを選ぶならどちらが良いかというと、これは一概に決めることが難しい状況になりつつあり、人それぞれの撮影目的に合う機能が付いているほうがおすすめということになります。初心者にも向く普及型一眼レフがある一方で、プロ仕様の撮影機能を持つコンパクト機もあるというのが、デジタルカメラの現状なのです。
あなたの大切なお写真の現像・保存・プリントは写真専門店カメラのキタムラにおまかせください。