写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2006.12.09
ちょっとした撮影のコツや本格的な撮影方法、最新の写真・カメラ用語解説など写真とカメラに関する最新の話題を毎週さまざまな角度から取り上げていく「写真何でも情報 EXPRESS」。これを読んでスキルアップ!
いま発売されているカメラは、ほとんどすべての製品に、ピント・露出とも全自動モードが搭載されているので、特に専門的な知識や経験がなくとも、シャッターボタンを押すだけで難なく一通りの撮影はできます。
でも、オートマチックにまかせたピントや露出を、実際には、カメラがどのように判断し制御したのか、その動作状況を確認するためには、できれば、これらの設定をマニュアル操作する場合の方法も理解しておいたほうが便利です。また、同じ機材で同じ被写体を撮れば、誰が撮っても同じように写るという状況から一歩先へ進んで、自分なりのアイデアを生かした撮影にチャレンジしたいと思うなら、絞りやシャッター速度の効果を引き出せるように、マニュアル露出モードを使う必要があります。
このとき求められることは、オートマチックが効かないときに、仕方なくマニュアル操作で代替するというだけの、単なる臨時の対応策ではありません。露出の考え方を深く知ることで、まるで自分の眼がカメラであるかのように、見たものすべてを絞りとシャッター速度の数値に置き換えて認識できるくらいになること。
つまり、自分自身が「人間露出計」になり、音楽で言う「絶対音感」のように、撮りたいものの明るさに適した露出を予測し、カメラを自分の判断だけでコントロールして撮影できる特殊技能を身に付けることが最終目標です。一眼レフを使いこなす撮影技術として、最上級のレベルを目指す方のために、その目標への近道をご案内いたします。
いまのカメラは自動露出機能が優秀なので、一般的な撮影の場合は、自動露出を使えば、ユーザーの勘違いによるミスもなく、だいたい9割程度は合格ラインの写真が、誰にでも撮れるでしょう。しかし、マニュアル露出の方法を完璧に理解すれば、メーカーで自動露出の制御プログラムを書いている人と同じか、それ以上のレベルをめざして、独創的な写真を自分の感性と判断だけで撮ることも可能になります。カメラの高度な自動化は、撮影技術のハードルを下げて、ユーザー層の裾野を広げて写真人口を増やす上で、大きな貢献を果たしていることは確かです。しかし、「楽しみ」として写真を撮るのなら、その楽しさの本当の意味は、マニュアル露出を自在に操るという最上級レベルの撮影テクニックにたどり着いたときにこそ、実感できるものでもあります。そこで、まずマニュアル撮影を知る第一歩となることは、カメラの特徴を理解し、その性能を引き出す方法を習得することです。
クルマの性能で最も大切なことが「走る・止まる・曲がる」であるなら、カメラの性能で最も大切なことは「ピント・絞り・シャッター」。写真を1枚撮るたびに反復動作を行うことは、このたった3つだけです。マニュアル撮影では、これら3つの操作をカメラまかせで勝手にやってもらうのではなくて、自分の判断で自在に操作できるようになることが重要。どの設定を動かせば、撮影結果にどう反映するかという因果関係を、一つ一つ経験則で理解していった成果が、いずれはオリジナルの撮影ノウハウとして確立されていくのです。しかし、写真というものは、フィルムあるいは画像として撮った結果しか表に出てこない上、カメラのファインダーも自分1人でしか見ることができませんから、ベテランの撮影者が独自に持っているノウハウやテクニックという技術的な部分が、特別な能力として一般に評価されることは、従来は少なかったのかもしれません。とはいえ、ちょっと考えてみれば、最新式カメラで自動制御のプログラムとして機械化されている部分も、まさしく人の経験則の積み重ねが顕在化したもの。ということは、撮影者がマニュアル露出モードでの撮影に挑戦し続ける限り、また、そこから人それぞれの高度なノウハウが生まれ出る可能性もあるわけです。つまり、マニュアル露出で撮影技法を工夫することには、未開拓の「楽しみ」を発掘する余地があるということ。それを実践するために、まずは基礎である「ピント・絞り・シャッター」の勉強が大切です。
さて、デジタル一眼レフをはじめとする各種カメラの最新機種では、ほとんどの製品が電子制御式になっています。これらは、ボディ側の液晶モニターに全撮影データを集中表示する設計となっており、マニュアル露出モードの場合は、ボディ側のボタンまたは回転式電子ダイヤル(目盛りがなく無制限に回転する構造のダイヤル)を使用して、シャッター速度と絞り値を設定します。また、一眼レフの普及機の場合では、絞り値を直接操作できる専用の入力キーがなく、シフトボタンを押すと同時にシャッター速度と兼用の入力キーを動かすことで、絞り値をマニュアル設定する構造の機種もあります。いずれの場合も、マニュアル露出モードを使用するとき、液晶モニターで表示できるのは現在選択中の設定値1つだけで、絞り・シャッター速度とも、設定可能範囲の全体(性能上の限界値)を見渡すことはできません。これが電子制御式カメラの宿命で、現在のカメラは、基本的にはフルオートで使う場合に都合よくできていると考えて良いでしょう。
このような特徴がある電子制御式カメラを使って、マニュアル露出モードで撮影したいとき、最大の問題となるのは、ユーザー自身の頭の中に、絞りとシャッター速度両方の数値の並びを、概念として覚え込んでおかなくてはならないこと。特に、絞り値については、レンズ1本ごとに開放と最小側(数字が大きい方)の数値が変わるので、撮影に使える絞り値の範囲を、持っている交換レンズの本数だけ個別に暗記する必要もあります。また、多くのカメラでは、絞り・シャッター速度とも、設定値は本来の露出1段分の1/3刻みで、細かく連続的に数値表示されるので、露出1段分の概念をしっかり覚えておかないと、肝心の撮影データも、“不規則な端数”がズラズラと出てくるだけに見えてしまいます。一眼レフ初心者の方にとっては、これらの数値のどれが、本来の露出1段刻みの「正位置」(規則的な数列を構成し1/3単位の微調整がない数値)なのか、電子制御式カメラでは非常にわかりにくいでしょう。さらに面倒なことに、普及機のズームレンズでは開放F値(最も小さい数字の絞り)が「3.5」とか「4.5」となっていて、必ずしも1段刻みの正位置に合わない場合が、実はかなり多く見られます。この場合、絞り開放から1/3刻みで3回分のキー操作を行って数値を上げるだけでは、どこまでいっても、本来の1段刻みの正位置には一致しません。こうした点からも、露出1段分の概念は、マニュアル露出を使うなら、必ず基礎知識として覚えておくべきなのです。そして、露出1段分の間隔で並んだ、正位置の絞り値とシャッター速度について、その数列の全体像を知っておけば、マニュアル露出による撮影時にも設定値を適切に予測して「絶対音感」的な判断ができるようになるでしょう。
では、マニュアル露出の初心者が、露出の感覚を身に付けるためには、どんな練習をすれば良いでしょうか? ここで上達への近道となるのは、少々、時代錯誤に思えるかもしれませんが、あえて機械操作方式の独立したダイヤルで露出を設定できるアナログ式カメラを使って、マニュアル露出モードで撮影経験を積むことです。なぜアナログ式が良いかというと、写真撮影に必要な基本設定を、1機能ずつ別々のダイヤルで動かすことができるから。アナログ式カメラは、1ダイヤルに複数機能を割り当てることはなく、電子制御式カメラのようにシフトボタンを押して機能を呼び出してから行うような操作は一切ありません。初心者のうちは、調整すべき項目を瞬時に意識することさえ難しく、表に出ていない機能に気が付かない場合もあると思いますが、アナログ式なら、慣れるまでは撮影の都度、片っ端から全ダイヤルを確認すれば、設定忘れによる撮影ミスも防げることになります。
ダイヤル設定式のカメラの場合では、設定可能な絞り値とシャッター速度の範囲が、すべてダイヤルの上に書き並べてあるので、どちらも露出1段刻みの正位置を暗記しなくてもOK!電子制御式カメラでは、液晶を使って撮影データをデジタル表示するので、現在選択中の数値1つ以外は見えませんが、ダイヤル設定式なら、露出値にどんな選択候補があるのか、またいろいろな撮影状況(被写体の明るさ)において、カメラの限界性能との比較では、どれくらいのポジションに露出をセットしているのかという感覚が、いちいち頭の中で思い出して考えなくても、ダイヤルを見るだけで直感的にわかります。これで、しばらくマニュアル露出の設定と撮影を繰り返しているうちには、自然と露出1段刻みの正位置になる数値の並びも覚えられると思います。時計に例えて考えると、3針式のアナログ時計と、数字式のデジタル時計では、使う目的がそれぞれに違うということに、誰でも納得がいくでしょう。これはカメラの場合も同じで、絞りやシャッター速度の全体を見渡して、露出を感覚的に判断するには、実はアナログ式のほうがわかりやすいのです。
アナログ式のカメラを選ぶ原則的な条件は、ボディーにシャッターダイヤル、レンズに絞りリングが付いていれば良く、本当に年式の古い旧型カメラである必要はありません。また、条件が合えば、中古ではなく現行機種でも、もちろんOKです。露出だけでなくピントも、自分の感覚で調節できることを求めるなら、カメラはマニュアルフォーカスで、なおかつレンズは、距離目盛りが付いている単焦点式がおすすめ。レンズのピントリングは、無限大側と最近接側では、距離目盛りの間隔と回転角の関係が大きく変わります。最近発売された安価なAFレンズでは、距離目盛りが省略されている場合があるので、目盛りと、ファインダーや肉眼の見た目を対比して距離感を訓練することができません。また、単焦点レンズであれば、絞り値の変化に対応した被写界深度を、距離目盛りを頼りとして知ることができます。しかし、ズームレンズの場合は、焦点距離によって被写界深度そのものも変化するので、距離目盛りが付いていても、絞り値毎の被写界深度は表示されていません。昔は直進式ズームという製品があり、これの場合は焦点距離の変化に応じた被写界深度表示も付いていましたが、最近のズームレンズは、ほぼすべてが回転式ズームとなっているため、現状では単焦点レンズでしか、絞り値と被写界深度の関係がわかりにくいのが実態です。
現行機種のプロ用高級一眼レフでは、ほとんどの機種が電子制御式を採用していて、露出設定も液晶表示式。プロ用では、シャッター速度の選択幅が非常に広くて、もはやダイヤル1個の小さな面積には書ききれないので、これが液晶表示式となるのは必然です。それでも、これを使うユーザーは、プロ写真家やベテランの写真愛好家が多く、もとから露出1段刻みの正位置を覚えているので、設定可能な範囲の全体を見渡せなくても、特に不都合はないようです。こうした露出値を液晶表示するカメラは1980年代以降に登場したのですが、いまプロやベテランと呼ばれる人たちが初心者だったころには、ダイヤル設定のアナログ式カメラ(もちろんフィルム用)しかなかったので、その当時は、「普通のカメラ」を使うことが、期せずして絞りやシャッターの数値を覚える訓練にもなっていました。また、標準レンズは単焦点の50mmが当たり前だったので、画角や距離感、被写界深度についても、撮っているだけで感覚を習得できました。その経験があるから、現在のように、液晶画面に選択中の数値が1つしか出ない表示でも、ベテランユーザーは各設定を概念的に理解して、何ら戸惑うことなくマニュアル露出で撮影できるのです。いまの時代に初心者である方の場合、カメラの操作を覚える環境そのものが変わってしまったので、オートマチックのみに頼ることなく、自分で露出の感覚を覚えようと思ったら、カメラの自動化が進む以前からあった機能に立ち返り、現在までのカメラの発展史を追体験していくしか方法がありません。でも、ひとたびマニュアル撮影に必要な「絶対音感」を習得できたなら、それを現在の最新機種に応用することで、さらに高度な撮影テクニックを駆使することも可能となります。
現行機種の一眼レフカメラに付いている露出値の液晶表示では、絞り・シャッター速度のすべてを一覧できなくなった一方、設定値をより微細に調整するための性能が向上しています。デジタル一眼レフの場合、普及機でもキー操作1回の最小調整幅は、絞り・シャッター速度とも1段の1/3単位。マニュアル露出モードの場合、ファインダー内にはユーザーが設定した任意の露出値と、内蔵露出計による測光値との差も、1/3段単位で表示されるので、これを確認すれば適正露出をより正確に判断することができます(メータードマニュアル)。また、ほぼ全機種に測光モード切替機能も付いているので、「スポット測光」に切り替えて、写し込みたい被写体一つ一つの露出値を別々に測ってから、総合的に判断してマニュアル露出の最終的な設定値を決めることもできます。つまり、ダイヤル設定式のカメラが、ユーザー自身の判断による露出の「絶対音感」を志向するものだとすれば、電子制御式のカメラは、露出計の実測値を基準として調整する「相対音感」のような性質のもの。名前は同じマニュアル露出でも、基本的な考え方が正反対なのです。
マニュアル露出で撮影したいとき、露出計がなく、全設定を自分の頭で考える状況があるなら、「絶対音感」型の使い方ができる必要があり、その技術の習得にはダイヤル設定式のカメラが便利です。これに対して、原則として内蔵露出計で測光するなら電子制御式のカメラが不可欠で、より細かな露出調整による「相対音感」型の使い方を実践することで、自動露出の補完目的としてマニュアル露出を有効に活用できます。そして、これら両方の使い方をともに習得できれば、さらに高度な最上級の表現として、自分なりの個性を写し出すことも可能となるでしょう。
一眼レフ方式でありながら液晶モニターでフレーミングできるライブビュー機能があるとか、レンズに光学式手ブレ補正機構が内蔵されているとか、家電メーカー系が一眼レフに新規参入した初めての製品であるといった話題性のほうが目立っているようですが、よく外観デザインを見てみると、実はマニュアル露出モードでの設定方式が、基本に忠実なダイヤル式となっています。ボディのシャッターボタンの周囲にシャッタースピードダイヤルが、レンズ側のマウント部に近いところに絞りリングを搭載。カメラ全般の操作に関わる基礎を習得しつつ、撮った写真の仕上がり具合は、現行機種のデジタルカメラとして十分なレベルで結果を残したい場合におすすめの1台です。現行機種のAF一眼レフとしても、これだけ完全な形でアナログ式の操作を採用した機種は、非常に少ないでしょう。ちなみに、レンズはライカ製。デジタルから入って、将来はフィルム撮影にも挑戦したいという方の入門機にも向きます。
パナソニック LUMIX DMC-L1における 各部名称
完全機械式、自動機能一切なし、マニュアル操作のみのフィルム用一眼レフカメラ。広告や雑誌などでは、「入門用」として紹介されていることもありますが、それはより詳しく表現するなら「絶対音感型マニュアル露出入門者向け訓練用カメラ」のような意味で、オートマチックに頼ることなく、自分の頭にマニュアル撮影向きの概念を叩き込むための“教習機”としての役割も果たします。誰にでも気軽に使いこなせるカメラではありませんが、フィルム一眼レフの生産終了が相次ぐ中でも、この機種が残されたことの価値は大きいでしょう。なぜなら、未来の世界で、さらに進化したカメラの開発・製造・販売を続けるためには、カメラの原理的な構造を熟知している人も育て続ける必要があるからです。本機では、一応は中央部重点測光の内蔵露出計が付いているので、露出決定の参考にすることができます。なお、露出計を使わなければ、電池がなくても写真を撮ることは可能です。現行機種としては、いまでは非常に貴重なアイテム。マニュアル撮影の「絶対音感」がある人には、これだけで充分というくらいに、“ぜい肉”のないシンプルさが特徴です。かつて、一眼レフカメラといえば、すべてがこんな感じでした。
すでにカメラ事業を終了したコンタックスの製品は、もはや中古市場でしか手に入りません。「Aria」は、コンタックスブランドとしては、最もお手軽な価格帯となる“末っ子”的な存在のマニュアルフォーカス式フィルム一眼レフカメラで、発売は1998年。お手軽とはいえコンタックスなので、フラッグシップと同じ血統の操作性を受け継ぎ、レンズはカールツァイス製を使用可能です。機能的には、フィルムの巻き上げ・巻き戻しが自動化されているほか、プログラムをはじめ各露出モードに対応、測光方式の切替も可能とするなど、アナログ感覚のカメラとしては中身はかなりの未来系。でも、マニュアル露出モードで使うときには、シャッター速度はボディ上面のダイヤルで、絞りはレンズの絞りリングで設定する方式を採用しており、外観のデザインとしてはクラシックな風貌です。このタイプのカメラは、20世紀にしかない貴重な遺産。中古カメラで見つけたら、迷わず「買い!」でしょう。写真の製品は、2002年に発売された限定モデル。ほかに量産モデルも、発売されていました。
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