写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
※掲載されている情報(製品の価格/仕様、サービスの内容及びお問い合わせ先など)は、ページ公開日現在の情報です。予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
2007.02.10
ちょっとした撮影のコツや本格的な撮影方法、最新の写真・カメラ用語解説など写真とカメラに関する最新の話題を毎週さまざまな角度から取り上げていく「写真何でも情報 EXPRESS」。これを読んでスキルアップ!
一眼レフカメラを買うと、ストラップなどの付属品と一緒に、ファインダーのサイズにピッタリ合うプラスチック製の「フタ」が付いていることがあります。これは、三脚などにカメラをセットして、自分の眼では直接ファインダーを覗かない状態で撮影するとき、本当に「フタ」としてファインダー部分にかぶせて使うアクセサリーです。しかし、これって一体、何の役に立つもの。。。? この謎の「フタ」の正体を探り、疑問をスッキリ解決したいと思います。
一眼レフのファインダー接眼部は、専門用語で「アイピース」と呼ばれます。最近のカメラでは、通例、ここにゴム製の「アイピースカップ」が付いていて、ファインダーを覗いたとき眼のまわりがぶつかっても痛くないようにできています。「アイピースカップ」は、溝にはまっているだけなので着脱は自在。外すと接眼部のアイピースがむき出しになりますが、代わりに、アイピースにフタをすることができます。このフタとなるものが、「アイピースキャップ」です。「カップ」と「キャップ」では、発音が非常に良く似ていますが、いずれも形は異なり、それぞれ違う役割を担っています。
では、この「アイピースキャップ」は、一体、何のためにあるのか? さほど使用頻度の高いアクセサリーではないので、使ったことがない方のほうが、むしろ多いかもしれませんが、これは、一眼レフカメラの自動露出機能が誤作動することを防ぐためのもの。とは言っても、この説明だけでは、さらに謎が深まってしまいそうなので、まずは一眼レフの内蔵露出計の構造からお話ししたいと思います。ちなみに、この露出計の話は、カメラの取り扱い説明書には、記載されていないことのほうが多いようです。
フルマニュアル操作のクラシックカメラを除く、ほとんどの一眼レフカメラには、自動露出機能が必ず搭載されていますが、この自動露出機能を動かすためには、判断の拠りどころとして、レンズを通った光を測るTTL方式の内蔵露出計が必要になります。その露出計の測光センサーが本体内のどこにあるのかというと、ほぼすべての一眼レフカメラにおいて、ファインダー部分、つまりボディ中央に位置する山なりの部分の内側に付いています。この構造は、デジタル一眼レフであっても、現在発売中の各機種については同様です。通常の撮影では、ファインダーに接眼してカメラを構え、撮影者の頭でアイピースをふさぐ形になるので、このファインダー測光方式でも何ら問題はありません。
ところが、三脚を使って撮影する場合は、撮影者の眼がカメラから離れてファインダーが空中に出るので、遮るものが何もないため、ファインダー側からもカメラ内に光が入ってきます。これを「ファインダー逆入光」といいますが、カメラの設定がマニュアルモードではなく自動露出モードになっていると、逆入光がファインダー内にある露出計に直接作用し、測光値に影響を受けることもあり得るわけです。逆入光による露出誤差は状況にもよりますが、とにかく明るさは余分に増すことになるので、本来あるべき測光値に対してマイナス0.5~2段程度のズレ(順光の被写体で多分割測光モードにおける実測値比較※)となって現れることとなり、結果、写真は適正値を外して露出アンダーになります(想定より暗い感じに写る)。フィルムカメラの場合、ネガを使っている限りは露出許容度の範囲内に誤差が収まるので、あまり影響を実感することはありませんでしたが、デジタルカメラでは、この程度の誤差でも許容度を超えてしまい、写真の見た目で違いがわかるレベルに相当するので要注意です。
なお、ファインダー逆入光によって、フィルムあるいは画像センサーが感光してしまうことは、カメラに故障がない限り、特に心配する必要はないと思われます。シャッターを開いているときには、一眼レフのボディ内にあるミラーは、跳ね上がってファインダースクリーンにフタをした状態になるので、この構造特性から考えて、ファインダー部からフィルムまたは画像センサーに光線が届くことは、まずあり得ないからです。しかし、ミラーを上げた状態でも、ファインダー部に露出計が付いている以上、露出制御だけは逆入光の影響を直接的に受けやすくなるので、露出誤差への対策だけは、物理的な方策をもって何とかしなくてはなりません。
さて、「アイピースキャップ」の話に戻りますが、このように一眼レフなりのファインダー測光という構造特性が持つ弱点を補うため、シャッターを切るときに、必要に応じてファインダーにフタをするのが、この謎めいたアクセサリーの役割というわけです。使用例としては、セルフタイマーによる記念撮影や、長時間露光などの場合が挙げられます。このアクセサリーを使うのが面倒な場合は、自動露出を解除してマニュアル露出モードに切り替え、ファインダーに接眼した状態で露出を設定してからシャッターを切れば、逆入光が露出に影響することはありません。ちなみに、このような露出誤差が逆入光によって生じるのは、自動露出機能を持つ一眼レフカメラだけ。液晶画面しかないコンパクトデジカメや、もともとTTL露出計を装備しないレンジファインダー式カメラなどでは、内蔵露出計が搭載されている位置が一眼レフと異なるので、ファインダー逆入光の問題はありません。
※注釈: 夜景を撮影する場合や、天気が悪い場合、またはカメラを下に向けて撮影する場合(マクロ撮影・複写)など、被写体側よりもファインダー側のほうが極端に明るくなる状況では、ファインダーを覗かずに測光すると、逆入光に影響を受ける割合が増えて、内蔵露出計が正常に動作しない可能性が高くなるため、特に注意する必要があります。順光では、光がファインダーに直接入る状態になる場合も想定されるので、測光するときは必ずファインダーを覗き、ファインダー内のスクリーン画面下に出るデータ表示に沿って露出調整を行ってください。
普及機の一眼レフカメラでは、ファインダーにフタが必要なときは、付属品の「アイピースキャップ」を手作業で取り付けるわけですが、プロ用高級機の場合、その必要はありません。なぜなら、ファインダーの内側に「アイピースシャッター」というフタを内蔵しているから。これは、指1本でレバーを操作するだけで、ファインダーを遮光できるという便利な機構です。もちろん、普通の撮影で使うゴム製の「アイピースカップ」は、付けっぱなしでOKです。
「アイピースシャッター」をセットすると、ファインダーは赤色などの色が付いた状態に見えます。これは、「アイピースシャッター」が使用中であることが、一目でわかるようにするための目印です。使用中に黒色の幕を出しておくと、レンズ前面キャップの取り忘れや、露光中のミラーアップ状態で真っ暗になっているのだと、勘違いしてしまう原因にもなりかねないので、こうしてわかりやすい色で区別しているようです。
三脚を使用して撮影する機会が多い方は、ファインダーの遮光を要する機会も多くなると思われますから、その点では普及機より高級機を使ったほうが、撮影時のストレスや人的ミスは少なくできます。普及機で使われる「アイピースキャップ」は、撮影が終わった後で元通り「アイピースカップ」に手作業で付け変える作業も必要となるので、交換頻度が増えると面倒に感じることも多くなります。また、常用の「アイピースカップ」は小さい部品なので、外したときに紛失してしまうリスクも、実際問題、かなり高くなります。普及機と高級機、そのお値段の違いは、こんなところにも現れているのです。
アイピースシャッターを内蔵している一眼レフカメラで、同機構を使用中の状態[右図]。ファインダー部分が、赤色の幕によって遮光されています。ゴム製のアイピースカップは、付けたままで使用可。この写真に登場した機種はフィルム用ですが、各メーカーから発売されているデジタル一眼レフカメラの高級機(フラッグシップクラス)でも、同機構が搭載されています。なお、安価な普及機では同機構は省略されており、代わりにプラスチック製の「アイピースキャップ」が、カメラを購入したとき一緒に箱に入っているので、それを使って同じ効果を得ます。ちなみに、手持ち撮影の場合では、この機構はほとんど使いません。
あなたの大切なお写真の現像・保存・プリントは写真専門店カメラのキタムラにおまかせください。