写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2007.03.17
ちょっとした撮影のコツや本格的な撮影方法、最新の写真・カメラ用語解説など写真とカメラに関する最新の話題を毎週さまざまな角度から取り上げていく「写真何でも情報 EXPRESS」。これを読んでスキルアップ!
デジタル一眼レフが急速に普及する一方で、だんだんと影が薄くなるフィルム一眼レフ。それが、市場シェア的に少数派となりつつあることは事実です。
しかし、だからといって、フィルムカメラが、このまま消えてなくなるのを喜ぶ人が多いのかといえば、決してそんなことはありません。 カメラ雑誌の月例フォトコンテストで、入選作品の撮影データから使用されているカメラの名前を読み取ってみると、まだまだ趣味の写真愛好家層にはフィルム支持者が多数存在することがわかります。
つまり、フィルムカメラにも、まだ明らかにニーズはあるのです。そんなわけで、現在のフィルム一眼レフ事情はどうなっているか、ちょっと調べてみました。
まずは、デジタル一眼レフカメラに対する、フィルム一眼レフカメラのメリットを、ざっとおさらいしてみましょう。
同じグレードで比較した場合、デジタル一眼レフよりもフィルム一眼レフのほうが、実売価格は割安です。なぜかといえば、画像センサーや液晶モニター、カードスロットなど、画像記録・再生系統の電子部品を搭載する必要がないから。画像記録そのものも、フィルムの場合は化学反応であるゆえ電力を必要としませんから、電池代も少なくて済みます。ただし、フィルムの購入費と現像代は、別途必要です。また、デジカメのように撮ってすぐに写り具合を確認することはできませんから、この点は好みが分かれるところでしょう。
デジタル一眼レフのほとんどは、画像センサーがAPS-Cという小さなサイズとなっています。つまり、設計上は35ミリフルサイズの画角が確保できるレンズマウントを使用していても、実際にデジタル一眼レフで撮影できる範囲は、35ミリフルサイズの枠に比べて一回り小さくなってしまうわけです。なぜ、画像センサーのサイズが小さいかといえば、一つは部品コスト的な問題として、一般の方でも購入しやすい水準に価格を抑えるため。
もう一つは、カメラ内部の部品搭載スペースの問題です。ちなみに、キヤノンでは、もともと1980年代に一眼レフシステム全体の大改革を断行したおかげで、一眼レフをデジタル化しやすい設計になっていたゆえ、35ミリフルサイズ仕様のデジタル一眼レフも存在します。ただし、気軽に趣味で使う機材としては、35ミリフルサイズ機は、かなりぜいたくなお値段になります。35ミリフルサイズの描写を、なるべくお金をかけずに体験してみたいと思う方は、現状では、フィルム一眼レフを使うのが最も現実的でしょう。
画像センサーがAPS-Cサイズの場合、最大で35ミリフルサイズの画角が確保できる光学システムを使って、その真ん中の一部分しか記録に使わないわけですから、要は画像を撮影時点でトリミングしたことになります。これを例えて言うと、実効面積的には、ゆで卵の白身を全部捨てて、真ん中の黄身だけ取り出して使っているような状態。
そんなわけで、35ミリフルサイズのフィルムからプリントしたときの引き伸ばし倍率を「1」と仮定すると、対してAPS-Cサイズの小さな画像をもとに、フィルム用と同じサイズの印画紙に引き伸ばす条件では、見た目のプリント倍率は「1」よりも大きくなります。こうした見た目の拡大率での違いを表すのが、「35ミリ判換算焦点距離」というもの。
写真をプリントしたときの拡大率の違いは望遠効果となって現れるので、これは便宜的に、レンズの焦点距離(画角)が変化したものとみなして考えます。 通例、普及型デジタル一眼レフでは、レンズに書いてある焦点距離のミリ数に対して、1.5倍前後の数をかけた実効焦点距離となる例が多いようです。ただし、35ミリ判換算は、レンズの光学系性能の変化とは無関係なので、レンズに固有のF値や最短撮影距離などには影響しません。
デジタル一眼レフには、このような画角の変化が常にあるわけですが、フィルム一眼レフの場合は、35ミリフルサイズの画角を性能いっぱいに使うので、どんなレンズを装着しても、35ミリ判換算する必要はありません。また、どんな安い一眼レフカメラでも、フィルム用の場合は35ミリフルサイズで撮れる設計なので、カメラのグレードによる画角の違いもありません。
デジタル一眼レフの場合は、約1.5倍の35ミリ判換算焦点距離に対応するため、レンズは逆に1.5で割った短い焦点距離(広角寄り)のものを使用しています。それは従来の感覚でいえば超広角レンズなのですが、実際に撮影したときには実効焦点距離が伸びるので、フィルム用の標準ズームに相当する画角として写ります。その点、フィルム一眼レフでは、どの機種でも焦点距離が変わることはなく、超広角の光学性能があるレンズなら、そのまま超広角レンズなりのワイドな画角で写ります。
ネガフィルムを使う場合、露出設定が多少“いい加減”でも、ほとんど問題なく適正露出として撮影できます。ネガフィルムは、正確な測光値からのズレに対する露出許容度が非常に幅広く設計されているので、撮影時の露出補正が面倒ならば省略し、自動露出機能だけに頼っても大半の状況では、ほとんど問題はありません。
デジタルカメラは、画像センサーに通電して撮影するので、実は長時間露光が得意ではありません。しかし、フィルムは化学反応で撮影するので、天体写真や夜景などの長時間露光では、まだまだデジタルより有利な面もあります。画像記録そのものには電力を使わないので、メカ式シャッターのカメラなら、電池寿命による露光時間の制限もありません。北極星を中心に、星が軌跡を描いてグルグル回っている天体写真などを撮りたいときには、フィルムカメラという選択がベターです。
プロ用フラッグシップ機のEOS-1v、中級機のEOS7sに加えて、お手軽普及機のEOS kiss7&Liteの2つをラインアップ。年式が最も新しい製品は、2004年3月発売のEOS7s。キヤノンではEOSデジタルシリーズでも35ミリフルサイズ機があるので、将来にわたって、フィルムに適する35ミリ判対応レンズの供給が確保される見通しが明らかであることも、大きな魅力です。
プロ用フラッグシップ機のAF一眼レフであるF6と、電池がなくても動くMF一眼レフのFM10の2つが発売中。F6は、現行プロ機としては、全メーカーを通じて最も年式が新しい2004年10月登場のモデルで、フィルム派の注目を一手に集めています。MF機は、電池切れ対策としてデジタル一眼レフのバックアップにも有効ですが、FM10よりも発売年月が新しかった高性能MF機のほうが、先に生産終了となってしまったことがとても残念! なお、過去のニコンFシリーズユーザーも多いため、当面、レンズの供給について問題はなさそうです。ただし、ニコンでは、デジタル一眼レフの画像センサーが、プロ機まで含めてすべてAPS-Cサイズなので、画角の特性を考慮すると、遠い将来における35ミリ判対応レンズのラインアップおよび価格動向については、注目しておきたいところでしょう。
デジタル一眼レフカメラでも、同じ名前のシリーズがある「*ist」のフィルムモデル1機種のみが発売中。いよいよ、これが同社の35ミリ判フィルム一眼レフカメラとしては、最後の1台となってしまいました。ペンタックスの場合も、デジタル一眼レフの画像センサーはすべてAPS-Cサイズなので、将来的な35ミリ判対応レンズのラインアップ、および価格の動向については注目しておきたいところです。
デジタル一眼レフを使うことで、自動制御だけではない、フルスペック仕様のカメラを操作することに慣れた方は、相当数、増えていると思われます。それでは、まず普及型のデジタル一眼レフで写真に「入門」された方にとって、次の1台では、どんなカメラが選択肢として候補に上がるか? 幾つかのパターンに分けて、考えてみましょう。
上位機種のデジタル一眼レフカメラ: マニュアル操作での使い勝手が良い中級・上級機で趣味の世界を極める
高機能のコンパクトデジタルカメラ: 一眼レフとコンパクトの両方を所有して、撮影目的や行き先などにより使い分ける
ビデオカメラ: 動画は撮れないデジタル一眼レフと並行して、動画撮影用のビデオカメラも使用、画面比率16:9のハイビジョンタイプも魅力です
フィルム一眼レフカメラ: デジタル一眼レフと同じレンズマウントを共有するフィルム一眼レフで、フィルムならではの描写を楽しむ
高機能のフィルムコンパクトカメラ: 単焦点レンズでF値が明るく、任意の露出調整にも対応できる上位機種なら、これからも趣味の1台として大活躍
こんな感じで、デジタル一眼レフと合わせて使いたいカメラには、いろいろな種類があります。ここで、デジタルかフィルムか、どちらか一方だけを二者択一で選ぶというのではなく、2台以上のカメラを手元に持っておいて、両方を撮影目的によって使い分けるという発想にするならば、フィルム一眼レフという選択があっても、また良しでしょう。デジタル一眼レフを最初に使った方の場合、たいへん都合がよろしいことに、「一眼レフ」全体の操作にも、「デジタルカメラ」全体の操作にも、幅広く習熟できています。つまり、2台目以降のカメラは、何でも自由自在に選んで使える状態なので、そのとき、どのタイプをセレクトするかは、使う人それぞれのお好みしだいです。
なお注意点として、普及型デジタル一眼レフに使うレンズで、APS-Cサイズのみに対応した「デジタル専用」を使っている場合、35ミリ判のフィルム一眼レフに流用すると、正常な機能としては撮影できません。ただし、「デジタル・フィルム両対応」となっているレンズなら、普及型デジタル機でもフィルム機でも使えるので、両方で兼用可能です。なお、デジタルで使用する際は、実効焦点距離の変化を伴います。また、デジタル一眼レフの登場以前に、フィルムカメラで使っていた交換レンズも、同じメーカー系列でマウントが合うものは、デジタル・フィルム間で共用は可能。しかし、フィルム兼用タイプでも、旧式のレンズよりは、デジタル対応型の新しいレンズのほうが、光学性能的にはデジタル一眼レフボディでの撮影に向いています。
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