写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2007.08.31
ちょっとした撮影のコツや本格的な撮影方法、最新の写真・カメラ用語解説など写真とカメラに関する最新の話題を毎週さまざまな角度から取り上げていく「写真何でも情報 EXPRESS」。これを読んでスキルアップ!
デジカメに付いているレンズの性能は、ほぼすべての場合において、最も一般的なフィルム用カメラで撮影した場合の画角に置き換えた「35ミリ判換算焦点距離」(この35ミリ判とはフィルムの幅のこと)で表現されています。しかし、カメラ本体の表示を見ると、どこにも、その換算焦点距離の数字は書かれていなくて、ただ本来からある、光学上の実焦点距離のみが明記されています。そして、換算焦点距離が同じになる複数のカメラについて、光学上の焦点距離を比べると、そのミリ数が実は大きく違っていたりすることがあります。このようになる理由は、画像センサーのサイズが機種ごとに異なるという一点にあり、画像センサーが小さくなるほど、それに合わせてレンズの焦点距離は、相対的に短い(ミリ数が小さい)、広角寄りに設計する必要があるのです。したがって、写る画角だけでなく、レンズの描写まで考えてデジカメを選ぶなら、本来の光学上の焦点距離も注意して見ておく必要があります。今回は、同じ画角でもカメラによって変化する、レンズの描写特性について解説します。
レンズの焦点距離は、通った光が集まって1つの焦点に収斂するとき、そのレンズの中心から、焦点までの長さを示したものです。より簡単にいうと、理科の実験で、虫眼鏡を使って太陽の光を集め、それで黒い紙が焦げるときの、虫眼鏡から紙までの距離のこと。焦点距離は、個々のレンズによって変化します。レンズ単体だけで見た場合、焦点距離が短い、つまりレンズから焦点までが近い場合は広角レンズになり、遠い場合は望遠レンズになります。レンズの焦点距離は、本来このようなものなので、光学性能的には一定不変。レンズの光学性能だけを見ている限り、基本的に「換算する」ということはありません。些細なことに思えますが、この点をしっかり覚えておかないと、混乱のもとになります。
しかし、こうした光学特性を持っているレンズを、写真撮影で使う場合は、レンズが結ぶ像を記録するためのフィルムまたは画像センサーが必要になり、そのサイズ(面積)によって、実際に写る範囲が限定されます。これが、写真の画角です。普通、レンズは円形なので像の形も円形になりますが、写真は四角いので、像の全体は記録していないことになります。このとき、レンズ本来の丸い像から、どのくらいの大きさの四角で、写る画角を切り取るかによって、写真の上に記録される被写体の大きさが決まります。よって、焦点距離が一定不変でも、レンズの像全体に対して写る面積を少なくすれば、拡大率が高くなって、被写体は大きく写るわけです。
従来は、カメラといえば、一般的には35ミリ判フィルム用しかなかったので、感覚的には、そのレンズの焦点距離と、それで撮影した写真の画角との関係が、レンズの性能を表す普遍的なスケールであるように思われていました。ところが、デジタルカメラの場合は、画像センサーの面積が、フィルムの実効画面より小さい場合がほとんど。しかも、いろいろなサイズが、機種ごとに混在しているのが現状です。したがって、デジカメでは、フィルムカメラならミリ数が広角に相当する焦点距離のレンズでも、撮影した被写体の拡大率が高くなり、画角が狭くなった分だけ、望遠レンズ的な効果が生じることが多くなります。つまり、焦点距離と画角の関係が、デジカメの場合では、必ずしも一定ではないのです。そこで、デジカメでは、「35ミリ判換算焦点距離」という数字を出して、フィルムしかなかった時代の、焦点距離と画角の感覚的な関係に、デジカメの見た目の画角を合わせています。
しかし、ここで気を付けるべき点は、「35ミリ判換算焦点距離」はレンズの光学性能とは直接関わりがなく、写真に撮ったときの見た目の画角を表すために用いる、あくまで比喩的なスケールであるということ。画角というくらいなので、素直に角度で表しても良さそうなものですが、慣用的に、フィルムカメラを使った場合の見た目に例えて、“焦点距離”で画角を表現しているというわけです。まだフィルムカメラよりデジタルカメラのほうが少なかった10年前くらいなら、このほうがわかりやすかったのかもしれませんが、現在では、フィルムに触ったことがないという人も決して珍しくはない時代。「35ミリ判換算焦点距離」というスケールが形骸化して、一般ユーザーには理解しにくいばかりでなく、レンズの機能を判断する上でも、いろいろと誤解のもとになっている可能性があります。
コンパクトデジカメや普及型デジタル一眼レフで撮影した写真は、フィルムカメラと同じつもりで考えていた、レンズの光学上の焦点距離(機材に書いてあるミリ数)よりも、被写体が拡大されて、見た目が少し望遠寄りで撮ったように感じられます。これを逆に考えると、サイズの小さな画像センサーで、従来のフィルムカメラなら広角に相当する画角を得たい場合は、光学上の焦点距離を極端に短く(ミリ数を小さく)しなければなりません。それゆえに、コンパクトデジカメのボディに書いてあるレンズのミリ数は、広角側が1ケタの数字になることもあるのです。1ケタの焦点距離を見て、「デジカメのレンズって魚眼?」なんて思ったことがあるかもしれませんが、画像センサーが極端に小さいがために、こんなミリ数でも実際に撮影すると、換算値35mm相当くらいになります。
余談ですが、カメラ内部のフィルムや画像センサーがある位置は、レンズの焦点部分ではなくて、焦点に収斂した光が反転して広がり、レンズの後ろに像を結んだところになります。
35ミリ判換算焦点距離に条件を揃えた状態で、「広角35mm」に相当する画角を得たい場合、実際に使うレンズの光学上の焦点距離はどうなるか? 画像センサーのサイズが異なる、いろいろなデジタルカメラの例を挙げて、比較してみました。「広角35mm」は、コンパクトデジカメの内蔵ズームレンズでは、広角端(換算値)となっていることが多い焦点距離(画角)です。一眼レフ用の交換レンズでは、超広角ズームレンズで、最も焦点距離が長いほう(“望遠”側)が35mmに相当する製品もあります。また、レンズによっては、換算値が35mmピッタリではない場合もあります。なお、「35ミリ判換算焦点距離」というときの「35ミリ」はフィルムの規格(横幅寸法)のことで、「広角35mm」というときの「35mm」はレンズの焦点距離です。語感は似ていますが別の意味なので、「35ミリ判換算で35mm」などと言ったとき混乱しないように、それぞれ分けて覚えてください。
種別 | メーカー | 製品名 | 画像センサー | 光学上焦点距離 | 換算焦点距離 |
---|---|---|---|---|---|
コンパクト | ニコン | COOLPIX S500 | 1/2.5型CCD | 5.7mm | 35mm |
コンパクト | キヤノン | PowerShot G7 | 1/1.8型CCD | 7.4mm | 35mm |
コンパクト | ソニー | DSC-W200 | 1/1.7型CCD | 7.6mm | 35mm |
一眼 | ペンタックス | DA12-24mmF4 | ED AL APS-CサイズCCD | 24mm | 37mm |
一眼 | キヤノン | EF20-35mm F3.5-4.5 USM | 35ミリサイズCMOS | 35mm | 35mm |
中判 | マミヤ | AF45mm/F2.8 | 48×36mm中判バンCCD | 45mm | 32mm |
現在発売中のデジタルカメラでは、普及価格帯となる有効800万画素前後のコンパクトデジカメで多く使われている「1/2.5型」の小さなCCD、有効1000万画素クラスの高画質コンパクト機で使われている「1/1.8型」程度のやや大きめのCCD、そして、普及型デジタル一眼レフ用の「APS-Cサイズ」のCCD/CMOS、それから、フィルムと同じ画角となる「35ミリフルサイズ」のCMOS、さらに、それより実効面積が大きな中判デジタルカメラ用のCCDなどが、それぞれの機種に搭載されています。そこで、各製品について、換算値「広角35mm」の画角を得たい場合に対応するレンズの焦点距離を、一覧表にまとめてみました。
これで比較すると、APS-Cサイズの普及型一眼レフの場合は、レンズの光学上の焦点距離を約1.5倍にすると、35ミリフルサイズ相当の画角に一致することがわかります。これは、デジタル一眼レフユーザーの間では、既に良く知られていることですね。
では、最もお手軽なコンパクトデジカメの場合。光学的には5.7mmであるレンズの焦点距離を、35ミリフルサイズ相当の画角に合わせるための換算倍率は、およそ6倍になります。コンパクトデジカメを使って、フィルムカメラの「広角35mm」と同じ範囲を写したい場合は、レンズが持つ光学性能としての焦点距離を、これほどまで短くする必要があるわけです。
ほかの、いろいろなタイプのデジカメと比較してみると、同じ「広角35mm」相当の画角でも、画像センサーのサイズが変われば、対応するレンズの実際の焦点距離も大きく変化することが一目瞭然。機種ごとに光学上の焦点距離がこれだけ違っているなら、画角だけは共通でも、その写り方については、使用レンズごとに差が出ることが明らかでしょう。
コンパクトデジカメのズームレンズでは、光学3倍程度の倍率のものが多いですが、広角端の換算しない焦点距離が6mm程度の場合、望遠端は20mm程度になります。これは、フィルムカメラなら超広角レンズに相当するミリ数。コンパクトデジカメでは、35ミリ判換算焦点距離が望遠相当になる場合でも、内蔵レンズの光学的な焦点距離としては、ズームレンズの全域が広角レンズの特性を持っているのです。
広角レンズは、近接性能の高さや、大きな被写界深度が特徴。これらの点を踏まえると、コンパクトデジカメのレンズでは、1センチ程度までの接写ができることや、背景がボケにくいことなども納得がいきます。コンパクトデジカメの絞り値は、上限がF8かF11くらいまでしかない例が多いですが、内蔵レンズが広角の描写特性を持っているのであれば、このくらいの絞り値があれば十分とも言えます。この特徴を利用して、旅行などにコンパクト機を持っていけば、荷物を軽くしながら、被写界深度を効かせた風景撮影が気軽に楽しめそうです。
この反対に、デジタル一眼レフでは、画像センサーのサイズがコンパクト機より大きいため、レンズの焦点距離もコンパクト機よりは一律に長くなり、標準ズームレンズの望遠端は、換算なしで50mmを上回る焦点距離となります。そして、デジタル一眼レフであれば、望遠レンズを使ったときには、望遠本来の焦点距離に応じた光学特性を発揮することが可能。絞りを開いて撮れば、コンパクトデジカメ以上に、より大きな背景ボケを、レンズの描写力によって得ることができます。すると、人物のポートレートなどで、背景をぼかしたほうが良い場合は、一眼レフがダンゼン有利ですね。一眼レフでは、大口径単焦点レンズが使えるのも強みです。
よって、コンパクト機と一眼レフでは、たとえ見た目の画角が同じように写る場合でも、レンズに固有の光学的なミリ数は違うので、マクロ撮影の使い勝手、背景のボケ具合などに明らかな差が出ます。となると、デジタルの場合は、コンパクト機と一眼レフのうち、どちらがより優れているかとは、一概には言えないのかもしれません。この2タイプのデジタルカメラの違いは、決して大きさや重さ、価格の違いだけにとどまらないので、目的に応じて使い分けると、これまでにない斬新な撮り方も楽しめそうです。
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