写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2007.09.14
ちょっとした撮影のコツや本格的な撮影方法、最新の写真・カメラ用語解説など写真とカメラに関する最新の話題を毎週さまざまな角度から取り上げていく「写真何でも情報 EXPRESS」。これを読んでスキルアップ!
写真撮影が趣味というアマチュアの方には、被写体の好みで大きく分けると、芸術系と、自然科学系という2つのタイプがあるようです。そして、自然科学系の写真ファンにとっては、最も魅力的な撮影テーマの一つとなるのが天文現象。つい先日も、8月28日の夜に皆既月食がありましたが、じっくり撮影された方も多いのではないかと思います。タイミング的に夏休みの最後でしたから、小中学生の皆さんには、ちょうどよい自由研究のネタにもなったことでしょう。月食や日食などのいわゆる「天体ショー」は、時事的な話題性があって先生ウケも良いので(?)、自由研究のテーマとしては、昔からわりと定番。夏休み期間中に観測できて、さらに当日の天気さえ晴れてくれれば、短期決戦で宿題を片付けた上、手堅く「A評価」も狙えるということで、学生さんにとって天文現象は、なにかと旨みのあるイベントでもあります。今回の皆既月食では、当日の天気が良かった場所が限られたようですが、好天に恵まれた地域では、キタムラ各店のスタッフも月食の撮影に挑戦しました。その写真を通じて、皆既月食の模様を眺めてみたいと思います。
そもそも月食は、満月のとき、地球の影が月面を横切って動くことで、月が連続的に欠けて見える現象。瞬間的な見た目では、普通の月の満ち欠けと似た感じがしますが、月食のときは、数時間で月面を地球の影が通り抜けていきます。普通の月の満ち欠けでは、同じ日には、時間が経ってもずっと同じ欠け具合のままですが、月食はずっと見ていると、3時間くらいの間に、だんだん月が欠けていって、やがて完全に地球の影に入り、その後、だんだん元の満月に戻っていきます。したがって、月食の観測は、一瞬だけのチラ見ではあまり意味がなくて、始まりから終わりまで全部見ていないと様子がわかりません。なお、月食には部分月食と皆既月食の2つがあって、今回は皆既月食。皆既とは、月が完全に地球の影に隠れる状態です。ただし、皆既状態になる前後は、部分月食も観測できます。
一連の皆既月食のうち、完全に皆既状態になっている正味の時間は、だいたい1時間強。皆既中の月面は、真っ暗になるのではなく、地球の外側から回り込んだ太陽光で淡い赤銅色に光って、夜空に古い10円玉を浮かべたような印象になり、一種独特な雰囲気を醸し出します。写真撮影は、部分月食となっている状態のほうが簡単で、皆既中については月面が暗いため、三脚の併用などで少々手間がかかります。
太陽の前を月が横切る日食に比べると、月食は、イベントとしては地味な感じもしますが、時間が自由になりやすい夜間に、肉眼でも観測できるので、誰でも気軽に楽しめます。(日食観測の場合は、太陽の強い光から目を保護するために、十分な対策が必要です。望遠鏡で観測する場合、太陽を直接見るのは危険なので、専用の装備を併用します。)月食の場合、地球の影が大きいため皆既状態が長く続いて、のんびりとビール片手にお月見気分で眺められるのも、それなりに面白いところでしょう。
今回の月食では、観測時間に晴れていた場所が限られましたが、北海道、東北、四国あたりの各地域では、しっかり見られたようです。ここでは、キタムラの店舗ブログより、山形県酒田市で撮影された、月食の写真をご覧ください。皆既状態から部分食を経て、満月に戻るまで、15分間隔での撮影です。
カメラのキタムラ酒田・酒田店の店舗ブログより引用
http://blog.kitamura.co.jp/202/4661/2007/08/_269134.html
次の機会に備えて、月食の撮り方を簡単に解説しましょう。月食は、満月から欠けていくので、とりあえず皆既に入る前の部分月食については、一般的な月の撮り方を考えて、そこからアレンジすればOKです。皆既中については月面が暗くなるので、撮り方が変わります。
月や太陽にカメラを向けると、そのとき使ったレンズのミリ数を、およそ1/100にした寸法で、フィルム(または画像センサー)の上に像が投影されます。焦点距離300ミリの望遠レンズなら、月の像の大きさはフィルム上で約3ミリ。35ミリ判フィルムの場合、実効画面部分の短辺寸法が24mmですから、画面内では縦1/8相当くらいの直径で写ります。この場合、見た目の印象は、かなり小さいです。月を画面いっぱいに撮るには、2000ミリくらいの望遠レンズが必要な計算になりますが、これくらいの超望遠レンズになると取扱いが大変なので、専門家ではない一般の方の場合は、ほどほどの望遠レンズで撮影して、あとでトリミングするほうが現実的でしょう。
コンパクトデジカメなら、デジタルズームも重宝します。デジタル一眼レフでは、デジタルズームがないので、後で背景部分をカットすることを前提に画質を確保するため、画素数設定は最高モードを選んだほうが何かと便利です。
部分食だけなら、比較的明るいので手持ち撮影でも対応可能ですが、皆既食も撮影したい場合は、露光時間が長いので三脚も必要となります。ピントは無限大。月以外の被写体は存在せず、ピントは無限大に固定するので、被写界深度を考える必要はありませんから、絞りは開いて撮ってもOKです。なお、フォーカスモードはMFに切り替えます。
太陽系宇宙を大きなスタジオに例えた場合、太陽という光源に対して、地球と月がある位置は、それほど大きくは変わりません。そして、満月は、ピーカンの順光です。ということは、月面の明るさは、地球で直射日光が当たっている自然風景と、だいたい同じ。よって、フィルムの箱に書いてある、天気が晴れのときの基本露出に合わせてマニュアルで露出を設定すれば、満月の月面は、ほぼ適正露出となります。
地上で快晴の露出は、絞りf16に対して、「1/ISO感度」の分数となるシャッター速度。これをもとに、月食で欠けた月面の暗さを勘案して、絞りを開いていけば、常に最適な露出値を探せます。デジタルカメラの場合は、実際に撮影して、モニターで確認してみると良いでしょう。月食の欠けた部分が大きくなると、明るさが減っていくので、それに応じて露出を多くかける必要があります。露出の補正量は、20%欠けるごとに1段プラスが目安です(絞りを開く、またはシャッター速度を下げる)。
通例、月食は欠け始めから終わりまで全部通して観測すると、だいたい3時間くらいかかります。その間には月の高度も変わりますから、位置による明るさの違いに配慮した露出設定も必要。月が昇ったばかりのときや、沈む直前では、月の光は弱くなるので(夕日が赤いのと同じ原理)、高い位置にあるときより、絞りを開いたり、ISO感度を上げるなど、適宜調整して撮影しましょう。月が欠けたままで低い空に出てきた場合は、食分と高度の両方を考慮した上で露出を決めます。
月の撮影では、月だけを画面内に大きく取り入れることができるなら、自動露出でもある程度は対応できますが、月が小さく写って、周りの黒い空のほうが多くを占める場合は、背景に影響を受けて露出オーバーになりやすいので、マニュアルモードに切り替える必要があります。詳細な露出値については、天文関係の専門雑誌や、「天文年鑑」などを参考としてください。
皆既中の月は極端に暗くなるので、部分月食の場合とは、露出値も大きく異なります。目安としては、レンズのF値によって変わりますが、絞り開放で10~30秒程度。露出秒数を変えて何枚か撮影し、後で最適なものを選べば失敗を防げます。月食の皆既状態は長いので、ゆっくり確認しながら撮影しても大丈夫です。ただし、地球は回っているので、あまり露光時間が長くなると月も被写体ブレしますから、ほどほどの時間で。なお、デジタルカメラの場合、ホワイトバランスは「太陽光」に設定しておいたほうが、仕上がりは良いと思われます。皆既月食中の月面は赤銅色なので、その色を忠実に写すには、ホワイトバランスの自動補正から影響を受けないほうが都合が良いからです。ちなみに、月面の光源は太陽光です。
学校の自由研究などの材料として、学術的な価値がある記録を目的に、月食を撮影したい場合は、月食の始まりから終わりまで、すべての経過を写真で押さえるのが理想です。欠け始め、皆既の始まり、皆既の終わり、欠け終わりという、4つのタイミングは確実に撮影したいところ。ただし、この4つだけでは月食の様子がわかりにくいので、途中経過となる部分月食も撮っておくと、観測記録としてのクオリティが上がります。天文雑誌などを参考として、食分(欠け具合)のパーセントに対応した記録を押さえていくか、あるいは時刻の推移に合わせて一定間隔で撮影していく方法のいずれかで、月食の一連の流れがわかるように撮ると、観測結果をレポートにまとめやすくなります。
この場合、月食が観測される時間全体にわたって、月が確実に見えているような、空が開けた場所をあらかじめ探しておく必要があります。観測している途中で、月がビルや山の陰に隠れてしまうと、かなり面倒なことになりますから、事前に観測場所の下見をしておきましょう。そして、当たり前ですが、月食が始まるより前に余裕を持って現地入りし、機材のセッティングを完了して観測に臨む必要があります。遅刻しても、月は待ってくれませんから。
なお、観測当日は、メモリーカードやフィルム、予備電池などの忘れ物をしないように、念入りな確認をおすすめします。月食がスタートした後に、忘れ物を取りに戻るのは難しいので、事前準備が肝心です。
あなたの大切なお写真の現像・保存・プリントは写真専門店カメラのキタムラにおまかせください。