写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2007.10.08
ちょっとした撮影のコツや本格的な撮影方法、最新の写真・カメラ用語解説など写真とカメラに関する最新の話題を毎週さまざまな角度から取り上げていく「写真何でも情報 EXPRESS」。これを読んでスキルアップ!
「軽くて、小さい!」ということが、最大のセールスポイントであるコンパクトカメラ。レンズとフラッシュをカメラ本体に内蔵した、その独特のスタイルが確立されてから、早いもので30年もの歳月が過ぎ去ろうとしています。当初は、もちろんフィルム用だけでしたが、本体が軽くて、持ち運びに便利という特徴は、誕生から現在まで、ずっとアピールされ続けています。しかし、軽い軽いと言っても、現在のコンパクトデジカメの質量は、初代のフィルムコンパクトカメラの4分の1以下。時代の流れと共に、コンパクトカメラは、どんどん軽くなっているのです。ということで、「重さ」という切り口から、現在のデジカメに至るまでの、発展の足跡をたどってみました。
現行機種のデジカメは、フィルムコンパクトカメラの実績を土台として、形成されたものです。そこで、現行機種のデジカメから、少しずつ時を遡って、歴史的な転換点となったカメラにスポットを当て、さらにデジカメのルーツである、初期のフィルムコンパクトカメラまで、発展の流れを逆にたどっていきたいと思います。製品例として挙げた各機種は、キヤノンの製品。歴史を遡っていくと、カメラが少しずつ重くなることに、気が付くでしょう。
2007年3月発売の現行機種となる、コンパクトデジタルカメラです。まずは、この125グラムという重さを覚えてから、時代を遡っていくとしましょう。
2000年5月発売、いまから7年前の初代イクシデジタルです。重さは、現行機種に比べると約1.5倍ほど。これだけ、最新型のコンパクトデジカメは軽くなりました。初代モデルは、光学2倍ズームレンズで、有効画素数は約202万画素。液晶モニターは現在より小さな1.5型で、記録媒体は現在のデジタル一眼レフと同じ、コンパクトフラッシュカードでした。現在の最新機種では、光学ズーム倍率が上がって、液晶モニターが大型化しても、逆に、本体は軽量化されているというわけです。デジカメで進化しているのは、決して、有効画素数だけではありません。
1996年5月発売、デジタル版のイクシより、遡ること4年前に発売された、APSフィルム用のイクシです。イクシのブランド名は、もともとは、フィルムカメラに付けられた名称でした。APSがフィルムの規格としては事実上の失敗例になったことは歴史が証明するところですが、このキヤノン製のイクシだけは別格で、フィルムコンパクトカメラとしては世界最小のボディサイズと、斬新な外観デザインが注目を集めて、APSカメラでは唯一とも言える大ヒット商品になりました。これ以前の製品と重さを比較すると、APS版イクシの軽さは、やはり特別なもので、いま思えば、後のデジカメ時代を迎えるために、これは意義の大きなステップでした。ちなみに、APSフィルムの実効画面は、普及型デジタル一眼レフカメラと、だいたい同じくらいです。APS版イクシでは、フィルムの重量を除く本体のみの重さ(電池は含む)が、デジタル版イクシと一致する点に注意。デジタル化に際しては、CFカードドライブと液晶モニターが搭載されたわけですが、イクシデジタルは、それだけ本体が軽くなっていたことになります。
1994年10月発売、APSフィルムができる前の、35ミリ判フィルム全盛時代に登場した製品です。「オートボーイ」は、フィルムコンパクトカメラの代名詞とも言える有名ブランド。ちなみに、「オートボーイ」シリーズは、現在でも発売されています。ルナのレンズは、28~70mm。これより前の製品に比べて、広角側がよりワイドになりました。なお、35ミリ判フィルム用なので、焦点距離の35ミリ判換算はしません。現行機種のデジタルカメラ「IXY DIGITAL 10」と比較すると、本体の質量は2倍以上になります。
1988年4月発売、コンパクトカメラにもズームレンズが搭載された、初期の時代の製品です。ズーム倍率は、35~70mmの2倍。現在では、光学3倍ズームが標準的ですが、当時の内蔵ズームレンズは2倍が普通でした。この頃より前のコンパクトカメラには、まだズームレンズがなくて、単焦点レンズが内蔵されていたものです。コンパクトカメラでは、撮影用レンズとは別に、ファインダーもズームに対応する必要があったので、実は、ズーム化が一眼レフより、かなり遅れていました。フィルム用一眼レフの「EOS Kiss Lite」(2003年9月発売)の本体質量は340gですから、最近の一眼レフボディより、昔のコンパクトカメラのほうが重かったことになります。なお、39~85mmレンズを内蔵した、いかつい外観デザインが特徴の「オートボーイズームスーパー」も1年半後に登場し、その重さは、レンズを付けた一眼レフと同等の640gでした。コンパクトカメラは、進化するほど軽くなるのが大原則ですが、この1980年代後半という時代に限り、ズームレンズの搭載に対応するため、コンパクトカメラは、それ以前の製品よりも一時的に重くなる傾向があったようです。当時は、フィルム用AF一眼レフの大ブームが到来したので、基本的には一眼レフより軽ければ、メーカーもユーザーも、特に支障がなかったのかもしれません。
1986年10月発売、ズームレンズ搭載機の登場より、少し前の一時期だけにあった、標準・望遠2段切替式のレンズを内蔵した、コンパクトカメラです。いま、このタイプのカメラは存在しないので、単焦点からズームへの過渡期を代表する、特徴的な製品として注目に値します。ズームレンズでは、無段階で連続的に焦点距離を変えることができますが、2段切替式レンズでは、標準・望遠の両極だけが使えて、途中がありません。この方式を使えば、ファインダーも2段切替のみの簡易な機構で済むので、撮影用レンズとファインダーが別々となるコンパクトカメラには好都合でした。また、2段切替式の場合、レンズの開放F値を、ズームレンズより明るくできるメリットもありました。当時、一般に使われていたフィルムは、まだネガでもISO100が多かったので(ISO400は割高だった)、コンパクトカメラのズームレンズ対応は、数年後に高感度フィルムが普及するまで待つことになります。なお、現行機種の「IXY DIGITAL 10」と比べると、フィルムを入れた撮影時の重さは3倍以上です。
1979年11月発売、AF機能が搭載された、「オートボーイ」ブランドとしての第1号機です。レンズは、38mmの単焦点。AFの測距方式は、現在のデジタルカメラとは、まったく別の仕組みで、カメラから赤外線を投射し、被写体に当たって返ってきた光を手がかりに、AFでピントを合わせるという仕組みが採用されていました。「オートボーイ」シリーズの最も新しいモデル(「オートボーイ N130 II」/2005年3月発売)は、38~130mmのズームレンズ内蔵でも185gなので、当初は、コンパクトカメラと言っても、意外と重いカメラではあったようです。しかし、この当時は、重さよりもシャッターボタンを押すだけで写るという、革命的な撮影しやすさのほうが世界的な注目を集めて、この製品は史上空前の大ヒットを記録しました。
1977年10月発売、いまからちょうど30年前に登場した、本当に初期のコンパクトカメラ。現在のデジカメにも通じる、レンズとフラッシュを内蔵したスタイルの原点です。ただし、AF機能と、フィルムの自動巻き上げ・巻き戻し機能は、まだ搭載されておらず手動操作でした。レンズは、初代「オートボーイ」と同じ単焦点です。コンパクトカメラと、そうではない小型カメラとの相違点は、内蔵フラッシュがあることと、そして日付の写し込み機能があること。製品名の「デート」とは、フィルム上に小さく日付を写し込む機能のことですが、その真意を知らなかった一般ユーザーも、かなり多かったかもしれません。この超初期型コンパクトカメラと、現在のデジタルカメラ「IXY DIGITAL 10」を単純に比較すると、重さの違いは4倍以上ということになります。実際には、電池とフィルムを入れて使うので、もっと重くなりました。フィルムとデジタルの違いというと、画質とか色再現だけに目が行くことが多いですが、デジタル化で最も恩恵を受けたのは、やはり「カメラの軽量化」。記録媒体(フィルムとメモリーカード)や電池などの消耗品まで含めた、持ち運びの手軽さという一点に尽きるのではないでしょうか?
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