写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2008.01.18
ちょっとした撮影のコツや本格的な撮影方法、最新の写真・カメラ用語解説など写真とカメラに関する最新の話題を毎週さまざまな角度から取り上げていく「写真何でも情報 EXPRESS」。これを読んでスキルアップ!
コンパクトデジカメというと、その名称や、「安い、簡単、誰でも撮れる!」という宣伝文句からの連想で、昔、“素人専用”といわれたフィルム用コンパクトカメラが、そのままデジタルになったような先入観を持たれがちです。しかし、実際の中身は似て非なるもので、構造、機能、精度のどれをとっても、格段にデジカメは高性能化されています。その点から考えれば、「コンパクト」という名前が付けられているおかげで、コンパクトデジカメは実力を過小評価されてしまい、「簡単」と言えば言うほど、かえって損をしている可能性すらあるようです。そこで、コンパクトデジカメだけを使って実際に撮影した場合、どこまで極端な状況に対応できるか、実写テストしてみました。使用した機材は、自動露出しか使えない、ごく一般的な700万画素級スタンダードモデルの製品です。
公園にある建物と、大きな植物の葉を、同じ1つの画面に取り入れて撮影した写真です。ズームレンズをワイド側いっぱいに引いて、植物の葉に近付き、その全体像を大きくとらえた、やや奇抜な構図になっています。建物の上の空が明るく、天気も晴れなので、光線状態は逆光。しかも、右側は白い壁なので、露出決定は比較的難しい状況です。しかし、全体としては、オートフォーカスと自動露出だけで、問題なく写っています。現行機種のコンパクトデジカメだけでも、このくらいなら奇抜な構図であっても、十分に対応できるレベルの実力はあるというわけです。
この写真だけを見ても、初心者の方は、とりたてて撮影が難しい状況だとは、思えないかもしれません。しかし、フィルム用コンパクトカメラでは、実は、この種のシーンは非常に苦手な状況。コンパクトでも簡単に撮れたのは、デジカメだからこそなのです。
この写真のような撮影状況における、コンパクトデジカメの、フィルム用コンパクトカメラに対する優位性としては、以下のような点が挙げられます。
内蔵レンズがピントを合わせることのできる最短距離は、フィルム用コンパクトカメラの場合、通例1メートル程度、高性能機種でも50センチ程度です。一方で、コンパクトデジカメの最短撮影距離は、通例50センチ程度、マクロモードの場合、ズームレンズがワイド側なら10センチ以下まで寄れる機種もあります。被写体に近付いて、どれだけ大きく撮れるかという点では、画角が同じなら、明らかにデジカメに軍配が上がります。
コンパクトデジカメは液晶モニターを使用して、実際にレンズを通った像を直接確認できるので、結果として、デジタル一眼レフにライブビュー機能が付いた機種と、同じ使い勝手が得られます。画面の左側下の部分に狛犬が写っていますが、その頭に植物の葉は、まったく被っていません。また、葉の左側はフレームから切れない範囲に収まり、後ろにある建物の左側も、フレームの左側にほぼ一致しています。このように撮影できたのは、液晶モニターでフレーミングを微調整できるからです。
かつてのフィルム用コンパクトカメラの場合は、撮影用レンズと目視用のファインダーが、それぞれ別々の光学系となっていたので、厳密に言えば、両方の視野にズレがあります。近接撮影時は、特にこのズレが目立ちやすく、事実上、正確なフレーミングはできません。したがって、昔は、広角レンズでの近接撮影という奇抜な構図では、必ず一眼レフを使用するしか方法がありませんでした。
コンパクトデジカメのAFでは、画像センサーでとらえた、撮影用と同じ画像をもとに測距・演算を行っています。その精度は、近接撮影時でも極めて正確です。
これに対して、フィルム用コンパクトカメラでは、撮影用レンズ、目視用ファインダー、AF用距離計の3つが、すべて別系統なので、被写体との間に、誤差を許容できる程度の十分な距離がないと、正確なピント合わせができません。フィルム用コンパクトカメラの最短撮影距離が比較的長いのは、こんなところに理由があります。
コンパクトデジカメの自動露出は、画像センサーでとらえた画像を部分ごとに分割し、それぞれの明るさのばらつきを把握した上で、総合的な判断として、撮影時に設定する露出を算出しています。その分割の細かさは、デジタル一眼レフを上回る機種さえあるほどです。したがって、前景・遠景の両方があり、逆光で、なおかつ広角レンズの画角という、露出決定が非常に難しい状況でも、プログラムAEのみで撮影できています。
フィルム用コンパクトカメラの場合は、撮影用レンズを通った光を測光できないので、別系統の測光用センサーが付いている機種が大半です。この場合、逆光の影響を受けやすくなり、主要被写体が予想より暗く写ってしまうことが多くなります。よって、ユーザーの判断によるこまめな露出補正も必要となり、求められる撮影技術も難しくなります。
高層ビルが建ち並んだ街の灯りを遠く望み、日没を過ぎた空が蒼く染まる風景を、道路わきから撮影したものです。すでに周囲は暗くなってきて、使えるシャッター速度も遅くなり、通り過ぎる自動車のブレーキランプもブレて、その軌跡だけが写っています。この写真はフラッシュを使用せず、その場の光だけで撮影。こうしたシーンで、気軽に手持ち撮影ができるという点も、コンパクトデジカメであればこそ実現できることなのです。
この写真では、低速シャッターのため、わずかに手ブレが発生しましたが、パソコンの画面で見る限りは、なんとか許容できる程度の写真となりました。また、縦位置の画面で、空の明るさと、道路上の明るさに大きな違いがあり、露出の演算が難しいシーンではありますが、これも自動露出のみで特に問題なく撮影できたようです。
この写真のような撮影状況における、コンパクトデジカメの、フィルム用コンパクトカメラに対する優位性としては、以下のような点が挙げられます。
レンズの性能では、焦点距離やズーム倍率だけでなく、開放F値の数字で示される明るさが、撮影時には重要な意味を持ちます。コンパクトデジカメの内蔵レンズは、通例、光学ズームの広角側で開放f2.8前後と概して明るいので、この夜景のような暗い場所でも、比較的速いシャッター速度を維持しやすく、手ブレを抑えることも容易です。
フィルム用コンパクトカメラの場合は、開放F値が広角側でf5.6前後、望遠側でf11以上になる例も多いので、被写体の周囲が暗くなってくると、自然光だけで対応するシャッター速度は著しく低下した数値になるので、手持ち撮影は難しくなってしまいます。ちなみに、夜景に向かってフラッシュを発光するのは、光が届かないので使う意味がありません。
コンパクトデジカメは、フィルム用コンパクトカメラに比べて、自動設定できるシャッター速度にも余裕があります。一例として、キヤノンの機種では、1秒よりも長い、15秒という超低速まで対応しているので、デジカメの場合は、初心者向けといわれるコンパクト機であっても、その場で見た通りに撮影できる状況対応力には、より優れていると言えます。
フィルム用コンパクトカメラでは、低速側の限界が2秒程度までしかなく、前述のようにレンズも暗いので、夜景の撮影などでは、構造的に十分な露光量が得られない場合があります。したがって、たとえ三脚を使用したとしても、思い通りの写真が撮れないことがあります。フィルムで撮影するには、一眼レフと大口径レンズが不可欠です。
この夜景の撮影時に設定したISO感度は1600です。スローシャッターを使う状況ですが、開放F値が明るいレンズと高感度設定の効果で、かろうじて手持ち撮影に耐えられる、ギリギリのシャッター速度を確保しています。ただ、高感度撮影に特有のノイズだけは、少し残ってしまいました。
一方、フィルム用コンパクトカメラの場合は、フィルムを交換しない限り、ISO感度を上げることはできません。また、もともとレンズの開放F値が暗い機種が多いので、いかにフィルムが高感度でも、その性能を引き出して使うことは難しくなります。
いつでも必要なときにISO感度を調整して、フィルム交換と同様の効果をもたらし、絞りとシャッター速度に次ぐ、第3の露出制御キーとして活用できるのは、デジカメだけの利点。この機能を機動的に使えることが、コンパクトデジカメに、「コンパクト」という名前以上の実力を与えています。
ここで例示した写真には直接関係ありませんが、コンパクトデジカメではシャッター速度の高速限界も、フィルム用コンパクトカメラより、1~3段くらい速くなっています。機種によりますが、1/2000秒前後の高速シャッターが使える例が多いようです。これは、一昔前のフィルム用高級一眼レフをしのぐ高速シャッター。現行機種のコンパクトデジカメであれば、デジタル一眼レフに比べたクオリティはともかくとして、とりあえず撮影不能な被写体は何もないと言えます。
しかし、フィルム用コンパクトカメラの場合は、その構造上、最高でも1/500秒程度が限界となり、機種によっては最速で1/300秒程度という場合もあります。よって、海辺や雪景色などの極端に明るい場所や、動いている被写体を撮影したい場合などには、シャッター速度が十分に対応しきれないこともあります。シャッターについて言えば、デジタルはフィルムより格段に選択の幅が広く、実用性も極めて高いと言えそうです。
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