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2008.05.16
各メーカーから発売されているデジタル一眼レフのうち、普及機・中級機では、モードダイヤルを使って、露出制御系統の撮影モードを複数の候補から選べます。ここで設定する一つ一つの撮影モードは、それぞれに違った効果として反映されるもので、フィルムカメラの露出モード選択と、まったく同じというわけではありません。ここでは、キヤノンの「EOS KissデジタルX」を普及機の代表として、撮影モードを選ぶ際のポイントについて考えます。
端的に表現すると、コンパクトデジカメっぽい撮影モードを集めたのが「簡単撮影ゾーン」で、従来のフィルムカメラっぽい撮影モードを集めたのが「応用撮影ゾーン」です。キヤノンでは、このような名称が付いていますが、ほかのメーカーの製品でもデジタル一眼レフなら、ほぼ同じ構成です。ただし、プロ仕様の高級機では、普及機でいう「応用撮影ゾーン」しか付いていません。「簡単」と「応用」の主な違いは、絞りのF値やシャッター速度などの制御について、数字を見ないで自動露出だけに任せるか? 数字で判断して露出を決めるか? です。
簡単撮影ゾーンにある各モードは、すべてプログラムAEの下位に属するバリエーションです。ノーマルなプログラムAEは、「P」という名称で、応用撮影ゾーンに入っています。簡単撮影ゾーンでは、単なる「P」と比較して、自動設定される機能が増えます。ここで選んだモードごとに、フラッシュの自動ポップアップ、ISO感度の自動設定、AFモードの選択(フォーカスロック/自動追尾の区別)、JPEG画像の生成処理プロセスなどが変わります。なお、測光モード選択、AFフレーム選択、MF切替については、連動しないので必要に応じて、別途確認してください。
露出制御は普通のプログラムで、さらにフラッシュ発光・感度設定・AFモード選択もカメラ任せ。画像の仕上がりは、「スタンダード」に設定されます。シャッターボタンを押すだけで撮影したい場合、もしくは被写体の動きや明るさなどが、撮影中にどう変わるかわからない場合などは、このモードを選びます。ただし、オート感度はISO100~400の範囲に限られるので、高感度で撮影したい場合は、モードを切り替える必要があります。これに加えて、測光モードを評価測光(多分割系)とし、AFフレーム選択とホワイトバランスも、それぞれ自動とすれば、カメラボディ側の全機能が自動制御になります。
露出がプログラムであることに変わりはありませんが、人物のみの撮影に最適となるよう、絞りを開放近くに自動設定して、被写界深度を浅くします。望遠寄りのレンズと組み合わせれば、背景をぼかすことができる特別モードです。必要に応じて、フラッシュが自動発光。感度は全自動モードとは違って、ISO100に固定され、ノイズが最も少ない画像になります。低感度なので、撮影時は明るい場所を選んだほうが賢明でしょう。AFモードは、ワンショットに固定され、自動的にフォーカスロック(評価測光時は自動AEロック連動)が設定されるので、人物の位置が動いた場合は、シャッターボタンを解放して、もう一度、ピントを合わせます。画像の仕上がり画質は、ポートレート専用に自動設定。このモードの使用後は、解除忘れに注意してください。
自然景観や建物などの風景写真を撮影する場合に、最も向いている撮影モードです。奥行きのある被写体に対して、全体的にピントが合って写るように、絞り気味の露出に制御されます。人物撮影でも、人の顔を撮るだけでなく、その後ろにある景色まで一緒に写したい場合には、こちらのモードを使います。風景が撮影対象なのでフラッシュは発光せず、静物なのでAFはワンショット、感度制御は全自動モードと同じです。画像の仕上がり画質は、風景専用です。逆光や斜光線の記念写真で、人物も一緒に撮る場合では、全自動モードを選んだほうが良い場合もあります。
花などの近接撮影に適した、特別な撮影モードです。ほとんど全自動モードと同じ制御を行いますが、AFモードだけが、ワンショットに固定されます。ピントが合うと必ずフォーカスロックする点は、ポートレートモードと同じです。解除忘れに注意。
競技中のスポーツ選手を撮る場合に選ぶ、動くもの専用の撮影モードです。鉄道や野鳥などにも、応用できます。感度設定は自動、画像生成はスタンダードで、フラッシュを発光しません。また、AFモードをサーボ(コンティニュアス)に固定するほか、連続撮影も可能となります。露出は、高速シャッターに自動設定され、被写体ブレの軽減をめざします。なお、このモードのISO感度は、自動設定で400が上限なので、室内スポーツやナイトゲームの場合は、「応用撮影ゾーン」で最高感度に設定する撮り方も知っておいたほうが便利です。
フラッシュを使って、人物と風景をスローシンクロ撮影する記念写真専用のモードです。このモードは、通常、日が暮れてから使います。昼間の場合は、全自動モードか風景モードを使ってください。機能設定は、風景モードとだいたい同じですが、フラッシュの自動発光がプラスされるほか、画像の仕上がりが風景専用画質ではなくてスタンダードになります。夕方以降に屋外で撮影する場合、全自動モードでは、人物だけはうまく撮れても、背景が暗くて写らないことがありますが、こちらのモードを選択すれば、フラッシュ光が当たる人物だけでなく、背景もつぶれずに写し込めるよう、スローシャッターに自動制御。夜景などと一緒の記念撮影でも、見た目の通りに写ります。手ブレ補正機能付きのレンズで撮影すると、さらに良い効果が得られます。
全自動モードで、フラッシュの自動発光だけ止めるモードです。フラッシュが勝手にポップアップしては困るときに、このモードを使います。フラッシュの代わりにスローシャッターを使いたい場合も、このモードを選んでください。
一般的な4種類の露出モードが選べます。こちらの「応用撮影ゾーン」を選んだ場合、「簡単撮影ゾーン」で自動設定されていた露出以外の機能は、すべて手動設定になります。フラッシュ発光の有無、AFモード、ISO感度は、すべて自分で手動設定。初心者の方も、暗い場所で撮影する際に、ISO400を超える高感度を使いたい場合は、「応用撮影ゾーン」の使い方も知っておいたほうが便利です。なお、ポートレートや風景を撮影する場合は、JPEG画像の仕上がり設定も、必要に応じて自分で調整する必要があります。仕上がり設定は、解除忘れが生じやすいのでご注意ください。
自動制御の対象を、露出だけに限った撮影モード。全自動モードより、機能設定の自由度が高くなります。「自動露出で高感度だけ使いたい」という方は、このモード(P)だけを、とりあえずは覚えてください。絞りとシャッター速度の両方とも、カメラが設定します。設定値は、ファインダー内で確認可。
使いたいシャッター速度を電子ダイヤルで設定すると、対応する絞り値が、測光結果に応じて自動制御される露出モードです。「簡単撮影ゾーン」にあるモードに例えると、高速シャッターを選んだ場合はスポーツモードと同等の機能になります。手ブレを避けたい場合や、逆に、三脚を使って低速シャッターで撮影したい場合にも、このモードが使えます。キヤノンのカメラでは、「Tv」と書いてあります。
絞り値を自分で設定すると、シャッター速度が自動になる露出モードで、被写界深度を意識した撮影に向きます。絞りの数字を下げると、「簡単撮影ゾーン」でいうポートレートモードと同等になり、逆に、絞りの数字を上げると風景モードと同等に使えます。絞りの効き目は、プレビュー機能を使ってファインダーで確認できます。画像の仕上がり設定は手動になるので(何もしなければ初期設定)、ポートレートまたは風景を撮る場合は、事前に設定を調整してください。「簡単撮影ゾーン」なら、仕上がり設定も全自動です。
絞りとシャッター速度の両方を、ユーザー自身で決めて設定する露出モードです。全自動モードの対極として、自分で設定する箇所が最も多くなります。星空や花火を長時間露光で撮影する場合には、このモードを選んでシャッター速度をバルブに設定します。
EOSシリーズだけで使える、特殊な露出モードです。多点測距AFを利用して、被写界深度がわかりにくいAFズームレンズでも、画面内に入る被写体のすべてにピントが合った写真を撮影可能。絞り優先AEの進化形で、自分で絞りを考える手間を省いて、必要な被写界深度に合う絞り値と、対応するシャッター速度の自動制御を実現しています。
「簡単撮影ゾーン」では、数値での微調整が効きませんが、ポートレートと風景の各モードでは、画像の仕上がり設定(パラメーター)を、撮影モードダイヤルに連動して、ワンタッチで切り替えることができます。「応用撮影ゾーン」では、フィルムカメラ同様に露出にこだわることはできますが、デジタルカメラに特有となる画像の仕上がり設定も自分で調整する必要が出てくるので、急いでいるときには、確認が手薄になってしまうことがあり得ます。
本来、市販されているカメラは、人物を撮ることを優先して作られているので、風景を撮る場合には、画像の仕上がり設定を微調整したほうが、写りは良くなります。となると、デジタルカメラでは、パラメーターの設定がより重要であるとも言えるでしょう。「応用撮影ゾーン」しかない高級機は、一見するとフィルムカメラとまったく同じモード群のようですが、パラメーターは調整したほうが良いのです。
しかし、写真撮影は露出に凝るだけでなく、シャッターチャンスを確実にとらえる必要もありますから、あまり事前設定に手間をかけると、せっかくの被写体を撮り逃がして本末転倒になるリスクもあります。だとすれば、パラメーターまで自動化できる普及機の「簡単撮影ゾーン」にも、単に初心者用の自動機能としてではなく、デジタルに必要なスピード操作を支援する機能として、常用するだけの価値を認められます。両ゾーンの撮影モードは、いずれも同じダイヤルで一続きに選択可能ですから、撮影時の時間的余裕なども考慮して、柔軟な発想で切り替えて使うのが、最も現実的な活用法になると思われます。
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