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2008.05.23

【「絞り」は、どこへ行った?】
機種ごとに違うF値の設定方法

一眼レフカメラの露出を合わせる場合、シャッター速度は、年式・グレードに関わらず、いずれの機種でもボディ側で調整できます。ところが、絞りに関しては少々、事情が違っていて、年式やグレードによって、調整方法が個別に変化。このためカメラを買い替えると、特に、マニュアル露出で撮影する場合に、戸惑ってしまうことがあります。そんな場合に備えて、絞りの設定方式について、操作方法のバリエーションを挙げてみました。実際にカメラを使ってみると、撮影時には、こんな小さなことでも気になるのです。

いろいろな絞り値の設定方法

レンズ内に入っていて、実際に露出を制御する「絞り」そのものは1箇所だけなので、F値の設定方法に関わらず、絞り機構の動き方と、絞り値の数列の並びは、全メーカー・全機種共通です。しかし、絞り値を設定する操作部のしくみは、機種ごとに変わっています。特に、1980年代の一眼レフAF化以降、絞りの設定方式は激変しました。以下は、一眼レフカメラで使われている、主な絞り設定方法の種類です。

絞りリング方式(レンズ側設定)

絞り値の設定は、本来、レンズ側で行っていました。一眼レフのレンズがAF化される以前は、絞り値の調整といえば、レンズのマウント部に近い箇所に付いている「絞りリング」で行うしかなく、それが当たり前だったのです。現在のAF対応レンズでも、ニコンとペンタックスでは、一部製品に限って、絞りリングを付けた例が見られます。

絞りリング方式が優れている点として、絞り値の数列が、1段刻みでレンズ本体に全部書いてあるので、絞り値の並びを覚える必要がありません。これは、初心者が撮影技術を学ぶには好都合です。また、連続撮影中に絞り値を変えたい場合にも、左手だけで素早く操作することができます。なお、絞り値の設定は、実際には1/2段ごとに調整することができます。

不便な点としては、ズームレンズ、なおかつズームすると開放F値が変わる普及タイプの場合に、設定中のF値がわかりにくくなる問題があります。通例、リング上には、最も明るいワイド端に合わせて全部のF値が書いてあるので、望遠側で使用すると、表示より実際のF値が暗くなります。この点を考慮しながら使わないと、ズームレンズの絞りリングでは設定を間違えやすいのです。

絞りリングが付いているレンズは、マウントが合えば旧式のカメラでも使用可能。完全マニュアル操作の機械式MF一眼レフでは、このタイプのレンズは必携です。また、レンズ単体で絞りを調整できるので、中間リングなどを使用したり、レンズを逆付けして近接撮影するテクニックにも活用できます。

アップダウン・ボタン方式(ボディ側設定)

1980年ごろにMF一眼レフの電子化が始まると、まずシャッター速度の設定を、アナログ式ダイヤルではなくボタン操作で行い、液晶パネルによって数値を表示する機種が登場しました。そして、ミノルタが開発した初のAF一眼レフ「α-7000」では、それまでの常識を打破して、レンズから絞りリングを取り除き、絞り値もボディ側から電子的に集中設定する方式を採用。これが世代交代の契機となり、やがて全メーカーに波及して、現行機種の設定方法として定着することとなりました。

しかし、当初の絞り用アップダウン・ボタンは、現行の最新型機種とは別のところにあり、設置箇所はレンズの着脱ボタンの上側部分。よって、絞り値の設定は、絞りリングと同様に、レンズを持った左手で行っていました。絞り値の設定に使うボタンは絞り専用で、普及機の「α-7000」でも専用ボタンを搭載。これは、マニュアル露出での使用が多い場合には、それなりに使いやすい方式ではありましたが、残念ながら、現在のカメラではまったく継承されていません。

アップダウン・ボタン方式に近いスタイルとして、ミノルタでは、上げ・下げで2つあるボタンを一体操作できるように、スライドレバー方式を採用した機種もあり、上位モデルの「α-9000」などに搭載されました。この方式は、後には、より迅速な操作ができる電子ダイヤル方式へと進化していきます。

ボタン操作により、ボディ側で露出値の集中設定ができる同方式では、レンズを交換しても、設定中の絞り値を維持できます。また、焦点距離によって開放F値が変わるタイプのズームレンズでも、撮影時のミリ数に見合った絞り値が液晶パネルに自動表示されるほか、テレコンバーターの装着時には、光量の低減分を表示に反映可能なので、露出の判断がより正確にできるようになりました。この仕組みが完成して以降、ズームレンズの高倍率化が進み、一般消費者向けにも急速に普及することとなります。

逆に問題点として、絞り値の一覧性がなく、開放値・最小値がわかりにくいという点があります。絞りの並びを書いたリングがないので、ユーザーは、使える絞り値をあらかじめ覚えなくてはなりません。また、開放から最小絞りまでの移動にかかる時間が、リング方式よりもやや長くなってしまう場合があり、登場した当初は賛否両論あったようです。

サブ電子ダイヤル方式(ボディ背面設定)

ボディ側から絞り値を集中設定する方式は、現在では、全メーカーが取り入れるまでになりましたが、具体的な設定方法は、メーカー・機種ごとに違っています。ミノルタαシリーズで搭載された、アップダウン・ボタン方式、およびスライドレバー方式は、操作スピードの問題から、あまり長くは続かず、代わって素早い回転操作が可能な電子ダイヤル方式が主流になりました。これは、現在のデジタル一眼レフでも使われています。

このうち、かつての絞り専用アップダウン・ボタン方式に近い操作性を残して、主に高級機で採用されているのが、サブ電子ダイヤル方式です。高級機には電子ダイヤルが2つあり、シャッターボタンに近い部分にあるのがメイン電子ダイヤル、ボディ背面に付いているのがサブ電子ダイヤルと呼ばれます。いずれも、パソコンのマウスで中央部に付いている、スクロール用のホイールと同様、機構的には無限回転します。基本的には、メインがシャッター速度専用、サブが絞り専用です。かつての、アップダウン・ボタン方式と比較して、設置場所が移動しました。

サブ電子ダイヤルは、マニュアル露出での撮影時に便利で、シャッター速度と絞り値をそれぞれ別々の操作部で、混乱することなく設定できます。ただし、自動露出の場合は、絞り値かシャッター速度のいずれか一方を変えるだけで良いので、サブ電子ダイヤルは使わなくても構いません。ちなみに、サブ電子ダイヤルの登場で、絞りリングのような迅速な操作性が回復した結果、絞り値を設定する最小ステップは、1/3段刻みへと微細化が進みました。

さて、サブ電子ダイヤルはボディ背面にあるので、カメラの携行中に体に当たって回転し、不用意に設定値が変わってしまうことがあります。そのため、サブ電子ダイヤルがある機種では、ダイヤル機能をロックする機能も、一緒に付いている例が多いようです。なお、普及機にはサブ電子ダイヤルがないので、普及機と高級機の違いは、このサブ電子ダイヤルの存在で分けられると言っても良いでしょう。

絞り用シフトボタン方式(専用ダイヤルなし)

製品例:キヤノンEOS Kiss X2

製品例:キヤノンEOS Kiss X2
カメラを構えたとき、親指がかかる位置に、絞り設定用のシフトボタンが付いています。サブ電子ダイヤルはないので、そのロック機能もありませんが、シフトボタンの存在によって、絞り値がロックされていると考えることもできます。ほかのメーカーでも、普及機では、ほぼ同じような絞り設定方式を採用しています。

普及機の多くでは、絞り設定用の専用ダイヤルが付いていません。絞り優先AEに切り替えた場合にも、1つだけある電子ダイヤルが、そのまま絞り設定用として機能します。自動露出しか使わないのであれば、これだけでも機能的には十分なのです。

しかし、マニュアル露出モードで撮影する場合には、絞り値を設定する機能も必要。そこで、1つしかない電子ダイヤルの機能を補助するために、ボディ背面に絞り設定用のシフトボタンが付いています。通常、自動露出モード時には、露出補正の設定に使っている小さなボタン。これを親指で押し込みながら、電子ダイヤルを回転させると、絞り値が変化します。ただし、これはマニュアル露出モード時のみ有効。自動露出モードの場合は、同じ操作で露出補正となります。

このシフトボタン方式は、絞り値の設定操作が面倒なので、マニュアル露出モードでの撮影が多い方には、少々、使い勝手が悪いかもしれません。しかし、絞り値をほとんど変えずに、シャッター速度だけを調整することが多い場合、この方式であれば、ボタンを押さない限り、設定した絞り値が不用意に変わることは極めて少なくなるので、使い方によっては便利でもあります。

シフトボタン方式は、押し込みが弱いと、絞り値を変えたつもりが、いつの間にかシャッター速度も一緒にズレてしまうミスが多発します。マニュアル露出での撮影時には、シャッターを切る瞬間まで、設定値の確認を徹底してください。

 
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