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2008.06.27

【続・デジタル一眼レフ乗り換えガイド】
フィルム一眼からのスムーズな移行方法(操作編)

前回から続く、この話題。今回は、ひとまず機材選びの問題はクリアできたものとして、実際に撮影する場合に覚えておきたい予備知識について考えます。デジタルカメラには、フィルムカメラにはない独自の機能があるので、そのあたりを重点的に確認してみましょう。なお、前回分は、WEBサイト上のバックナンバーにて公開していますので、必要に応じてご参照ください。

電源確保の重要性

デジタル一眼レフでは、画像を電子的なデータとして保存するので、その保持・記録動作のために十分な電力が必要となります。よって、ひとたび電池切れすると、大問題になります。フィルムカメラは、どんなに操作系が電子化されていても、正味の記録工程はフィルムの化学反応なので、シャッターが切れさえすれば撮影はできます。一方でデジタルカメラは、光を電気信号に置き換えたデータを、パソコンの文書ファイルと同じように記録しているので、電源がないと、まったく撮影ができません。

フィルム一眼レフの場合、電源には、充電しないタイプのリチウム電池か、単3形電池を使用する例が多かったのですが、デジタル一眼レフの多くは、充電式のリチウムイオン電池が採用されています。これは、各メーカーごとに仕様が異なる専用タイプのバッテリーパックで、撮影の前に、あらかじめ家庭用電源から充電を行い、カメラ本体に入れて使用します。デジタルカメラを使い続ける限り、この充電作業は繰り返して行い、忘れてしまうと撮影ができません。充電完了まで数時間程度かかる場合もあるので、デジタル一眼レフを持って撮影に出かける前には、まず余裕をもって充電することを思い出してください。

デジタル一眼レフを1台購入すると、付属品として専用充電池は1つだけ付いていますが、撮影枚数が多い場合、外出先で電池切れしてしまうこともあります。こうした状況に備えるには、予備の専用充電池を合わせて購入し、出かける前に複数の充電池をフル充電しておく必要があります。また、旅行などの長期にわたる撮影では、充電器も荷物として持っていく必要があります。夜行列車や“駅寝”、またはドライブなどで放浪の旅に出るという方の場合、デジタル一眼レフでは充電がネックになる場合があり得ます。こうした使い方を予定されている方は、電源確保の方法をあらかじめ考えておいてください。また、海外旅行へ行く場合は、コンセントの形状と電圧が日本とは違うので、事前に対応方法の確認をおすすめします。

なお、デジタル一眼レフでも、一部機種には単3形電池だけで動く例があります。また、縦位置グリップなどのアクセサリーを装着した場合に、単3形電池に対応できる機種もあるので、カメラ選びの際は、この点も参考としてください。単3形電池を使う場合でも、十分な量の予備電池を用意しておく必要はあります。

メモリーカードの扱い

デジタル一眼レフのデータ記録には、メモリーカードを使用します。これは、カメラ本体とは別売りです。

撮影した写真(のデータ)をメモリーカードに蓄積していくと、いずれカードは容量いっぱいになりますが、その後は、撮りっぱなしではなく、データの保存作業が待っています。一般的には、メモリーカード内のデータを、パソコンのハードディスクや、CD-Rなどの記録媒体に転送して保存し、カード内の元データは消去。こうして、メモリーカードは撮影時だけの短期記録用メディアとして、1枚を繰り返して使います。つまり、メモリーカードは1枚か2枚あれば、とりあえずは十分。撮った写真のデータをカードのままで保存して、撮影に出るたびにカードが増えていくというような使い方は、普通はしません。理由は、メモリーカードよりも、CD-Rなどの記録媒体のほうが安い上、長期保存に向くからです。

メモリーカードに記録された画像データの転送作業は、自分でパソコンを使って行うこともできますし、またキタムラの店頭でCDへのコピーとしてオーダーすることもできます。自分で作業するのが面倒だという方は、キタムラ各店の店頭サービスをご利用ください。

デジタルへの流用に際して注意すべき機材

直径の大きなレンズとレンズフード

普及型デジタル一眼レフでも、フィルム用一眼レフで使う交換レンズを装着できますが、レンズ鏡筒の直径が大きい、大口径レンズや望遠レンズ、超広角レンズの場合は、取扱いに注意が必要となる場合があります。普及型デジタル一眼レフは、概してフィルム用一眼レフよりも寸法が小さく、デジタル専用のキットレンズも小さな寸法で設計されています。このため、内蔵フラッシュを使って撮影する場合に、レンズの直径が想定より大きいと、それがフラッシュ光を邪魔して、写真の上半分くらいしか正常に写らないことがあり得るのです。これはレンズフードを装着している場合も同様で、フードがフラッシュ光の邪魔になることがあります。デジタル専用のキットレンズでは、こうした問題は設計段階で解決されていますが、ユーザーが所有している古いレンズを使用する場合には、状況に応じてフードを外すなど、撮り方を工夫してください。

色補正フィルター

レンズ前面にフィルターを取り付けて、微妙な色調を補正するというテクニックが、フィルムカメラにはあります。しかし、デジタルカメラの場合、ホワイトバランス機能があるので、基本的には、このフィルターテクニックは必要ありません。色補正が必要であれば、撮影後にパソコンを使って、画像の発色を微調整する方法も選べます。

フィルム用一眼レフ対応の外付けフラッシュ

デジタル一眼レフで、外付けフラッシュを使用して撮影する場合、フィルム用一眼レフで使っていた旧型タイプのフラッシュを流用すると、自動での正確な調光ができません。つまり、フラッシュだけは流用不可。旧型製品でも発光だけは可能ですが、マニュアル操作で光量を調節する必要があります。

フィルム用一眼レフでフラッシュ撮影する場合、カメラは露光中のフィルム面から反射した光を、センサーで拾って自動調光を制御しますが、デジタル一眼レフでは撮影用の画像センサーが、そのまま調光センサーになるので、仕組みの違いから、フィルム時代の外付けフラッシュでは自動調光ができないのです。デジタル一眼レフに乗り変えるとき、外付けフラッシュが必要であれば、新たに買い直してください。ちなみに、逆はOKで、デジタル対応のフラッシュをフィルムカメラで使うことは問題ありません。

この点から考えると、風景撮影が主体でフラッシュの使用頻度が低い方(それでも使う可能性がゼロではない場合)が、デジタル一眼レフの機種を最初に選ぶときは、プロ仕様の高級機よりも、中級機・普及機のほうが適当かもしれません。なぜなら、高級機には内蔵フラッシュがないので、フラッシュが必要なときにオプション扱いとなる一方、中級機以下なら内蔵フラッシュがあるので、それだけで足りることが多いからです。

フィルムカメラにはない概念

感光するリスクからの完全解放

当たり前ですが、メモリーカードは感光しないので、フィルムほど取扱いに神経質になる必要はありません。空港での手荷物検査で、X線によって感光する心配がない点も、デジタルならではの便利さです。ただし、飛行機の離陸・着陸時には、電子機器であるデジタルカメラ(一眼レフを含む)は安全対策上、使用が禁止されるので、低空飛行時に地上の景色を撮ることはできません。空撮したい場合は、従来のフィルムで撮るカメラを使ってください。なお、メモリーカードは磁気には弱いので、磁石や強力な電波を発する場所に近付けないよう、注意しておく必要があります。また、衝撃による変形、破損や、水濡れにも注意してください。ズボンの後ポケットにしまったのを忘れて、そのまま座ってしまうなど、ちょっとしたうっかりミスでもカードは壊れることがあります。

画像のサイズ調整

デジタルカメラの用語でいう画像のサイズとは、一定のサイズで表示またはプリントした場合の、写真画像の粗さのことです。画角が変わるのではありません(画角を変えるのはデジタルズームで、これは一眼レフにはありません)。デジタル画像は、何百万という数の点の集まり、つまり超微細なモザイクなので、1画面を構成する点の数が多いほど、画像はキメ細かくなり、点の数が間引きされて少なくなるほど、画像は粗くなります。ここで1画面を構成する、「縦×横」の点の多さを、画像のサイズと呼んでいます。パソコンなどで画像を再生するとき、モニターのドット1個の直径が不変だとすれば、キメが細かい画像ほど1画像のサイズは、見た目にも大きくなります。しかし、デジカメの液晶モニターでは、普通は、画像の全体を常に見られるように縮小表示するので、画像本来のサイズを実感することはなく、その設定は、数字だけを見て行うことになります。なお、画像1個のデータ量は、サイズが大きくなるほど、つまり画像を構成する点の数が多くなるにつれて増加し、その分だけメモリーカードの記録スペースを多く使用します。

ISO感度の選択

フィルムカメラでは、フィルムに書いてある感度に合わせて、ISOの数値を設定するだけですが、デジタルカメラでは、ISO感度をユーザー自身が自由に選べます。フィルムの場合、1本を撮り終わるまでは、増感・減感などの途中変更さえできませんでしたが、デジタルでは、同じ感度で延々と撮り続ける必要がないのです。ISO感度の設定を自分で決めることがフィルム交換に相当するので、この特徴を応用すれば、ISO感度の選択を露出制御にも利用できます。しかし、フィルムのように、交換するごとにDXコードが自動設定されることはないので、高感度に設定した後は、自分で常用するISO感度に設定を戻しておく必要があります。なお、デジタルカメラの感度設定は、オートにすることもでき、手ブレの軽減にも効果を発揮します。

ドライブ設定

巻き上げるフィルムがなくても、連写機能とセルフタイマーの設定は、「ドライブ」で行います。この概念は、フィルムカメラの使用経験がある方のほうが、わかりやすいでしょう。

仕上がり画質の調整(パラメーター設定)

デジタルカメラの画像は、標準的には、JPEGと呼ばれるファイル形式で保存されています。これは、ホームページで使われている静止画像と、基本的には同じもの。もともと点の集合である画像を、効率良く解析した状態で保存するため、JPEGでは、1画像の記録容量を小さくできるのです。この保存プロセスをデータ圧縮といいますが、一度圧縮してしまった画像は元の画質に戻せないので、JPEGでは、被写体の形や質感、色彩などに合わせて、画像生成とデータ圧縮のレベルを先に決める必要があります。そこで、デジタルカメラの場合では、画像のサイズや、パラメーターと呼ばれる仕上がり画質設定を調整して、写真の画像を作るプロセスをコントロールするわけです。これには、フィルムの種類や銘柄を、撮影目的によって使い分けるのと似たような意味があります。パラメーターには、初期設定(ノーマル、スタンダードなどと呼ばれる)のほか、風景用、人物のポートレート用などがあり、ユーザーが個別項目をマニュアル操作で設定することも可能。普及機の場合、撮影モードダイヤルを回すだけで、被写体に合ったパラメーターが自動設定される機能も付いています。

ホワイトバランスの設定

フィルムでは、光源によって、デーライト用とタングステン用の2タイプが選べます。また、色補正フィルターによって、蛍光灯などの光源下でも、色カブリを防いで撮影することができます。これらと同じことを電子的に行って、フィルム選びや、色補正フィルターの使用と同じ効果を得る機能が、デジタルカメラのホワイトバランスです。ホワイトバランスは、ほとんどの場合、自動設定を利用すれば十分なので、実際の撮影時には、あまり深く考えなくても構いません。しかし、フィルムとまったく同じ発色傾向を再現したい場合には、ホワイトバランスを「太陽光」に設定する必要があります。このほかにも、光源別の選択設定が可能。また、白い紙などを使って、ホワイトバランスを正確に測定してセットすることもできます。基本的な考え方は、従来からある家庭用ビデオカメラのホワイトバランスと同じです。ホワイトバランスは、間違えて撮影すると、JPEGでは後から修正しにくいのでご注意ください。

画像の再生・削除

デジタルカメラでは、撮影した写真を、直後に再生して確認できます。これが、現像するまで結果がわからないフィルムカメラと明らかに異なるところです。フィルムカメラの場合、露出ミスを警戒して、1シーンを段階露光で大量に撮影することもあり、これがコストアップにつながっていましたが、デジタルカメラでは気軽にテスト撮影ができるので、より効率的に露出の判断ができます。テスト撮影やミスショット分の画像は、デジタルカメラなら、すぐにデータ消去できますから、撮影コストの削減にもつながります。しかし、デジタルカメラでは、誤操作によって、消さないでよい画像を消してしまうミスも発生します。この点は、撮影したすべての写真が保存されるフィルムとは大きく違うところなので、取扱いに注意が必要です。

フィルムカメラを超えた機能

カメラボディ内蔵型手ブレ補正

手ブレ補正機能はフィルム時代にも一部にありましたが、レンズ側に補正機構を内蔵した、高級タイプのレンズでしか実現されていませんでした。しかし、デジタル一眼レフでは、レンズが像を結ぶ部分を縦横に動かすことができるので、レンズの光学系ではなく、ボディ内の画像センサー部分に、手ブレ補正機構を搭載できるようになりました。コニカミノルター・ソニーと、ペンタックス、オリンパスなどのメーカーで、デジタル一眼レフに採用されている、ボディ内蔵型の手ブレ補正機能は、デジタルだからこそ実現できたもの。この方式であれば、普及型レンズから高級レンズ、レンズメーカー製レンズまで、装着するレンズを選ばずにブレ補正効果が得られます。

電子的な明るさ補正

フィルムの場合、写真の明るさを補正するには、露光量を調整して全体的に明るくしたり、暗くしたりする、ハイキーとローキーしかありませんでした。しかし、デジタル画像では、1画面内の各エリアを輝度の違いで分けて、明るすぎるところ、暗すぎるところだけを選んで、カメラが自動補正することができます。これは、単純な露出補正とは違います。例えて言えば、暗室作業でプリント時に行うテクニックだった、焼き込み、覆い焼きを撮影時点で、カメラが自動的に実行してくれるようなものです。この機能の実現によって、最近のデジタル一眼レフは、露出誤差に対する許容度も飛躍的に向上しました。

 
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