写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2008.07.18
デジタル一眼レフのボディを前側から眺めると、レンズマウントに並んだ左下または右下あたりに、機能の名前が特に書かれていない、謎のボタンが付いていることがあります。このボタン、カメラ用語では「プレビューボタン」といいますが、いったい何のために使うものなのか? ヒントは、「風景撮影で便利なもの」。撮影する被写体のジャンルによっては、使う機会が少ないこともあるのですが、今回はこのプレビューボタンの実践的な活用法について取り上げたいと思います。
予備知識として、まず先に、一眼レフ特有の絞りの仕組みから説明しましょう。
一眼レフカメラにレンズを装着し、ボディ前面側(被写体の視点)からレンズを覗いて、その状態で絞り値を変えてみてください。何か、変化はありましたか? もちろん、何も起こらないですね。では、絞り値を大きな数にセットして、自分自身に向かってシャッターを1回切ってみてください。今度はどうですか? シャッターが開いているときだけ、レンズの絞り羽根が動きましたね。このように一眼レフカメラでは、絞りはシャッターを切った一瞬だけ動くようにできていて、それ以外のときは常に開放状態になっています。
では、どうして撮影時以外は、絞りを開放しておくのか? それは、そのほうが内蔵露出計の測光や、AFの測距、そして撮影者の目視確認に好都合だからです。レンズの像は、絞り開放のときが最も明るく、絞り込むにつれて暗くなります。撮影時には、この暗くなる効果を利用することにより、絞りで露光量をコントロールするわけです。しかし、シャッターを切る前には、ファインダーを見て被写体を確認し、構図やピントを合わせる必要があるので、その時点では、像が明るいほうが操作は快適。そこで、ファインダーでは基本的に絞り開放の像を見られるようにして、露光量のコントロールが必要なときだけ、絞りを動作するようにしたのが、一眼レフに特有の仕組みなのです。
しかし、この場合、ファインダーでは絞り開放の像しか見えないので、絞り値の設定・演算は電子的にできても、絞りの直接的な効果である被写界深度までは、容易に確認できません。これだと、風景撮影や記念撮影などの場合に、どれくらいの絞り値を選んだら良いか迷うこともあります。そんなときに使いたいのが、前述した、あの謎のボタンです。
あの謎のボタンは、正しくは「プレビューボタン」または「絞り込みボタン」と呼ばれます。このボタンを押し込むと、シャッターとミラーはそのままで、レンズの絞りだけを設定値まで実際に動かすことができます。ここでファインダーを覗けば、絞りの効き目が一目でわかるのです。いまでこそ、デジタルカメラの利点を生かして、テスト撮影した画像を液晶モニターに表示して被写界深度を確認することも可能ですが、フィルムカメラの時代には、このプレビュー機能こそが、撮影時点で絞りの効果を確かめる唯一の方法でした。
普通、ファインダーで見ている像は絞り開放なので、ピントを合わせた被写体以外は、大きくボケて見えています。ところが、プレビューボタンを押し込んでみると、設定してある絞り値に応じて、ピント位置の被写体のほか、その前後までピントが合っている様子を見ることができます。こうして絞り開放状態と絞り込み状態を比べてみると、ファインダーで普通に見た像と、実際に撮影して写る画像との間で、ピントの深さにどれくらいの違いが出るのか、テスト撮影なしで確認できるというわけです。
実際の撮影では、絞り優先AEやマニュアル露出など、絞りを自分で判断して設定する場合に、F値を選ぶための参考として、プレビュー機能を利用します。経験則に応じて自分の好みでセットした絞り値が、目の前にある被写体の場合でも適切かどうか判断できるように、プレビューボタンを押してみて、絞りの効き具合を試すといった感じです。被写界深度は、レンズの焦点距離や、被写体の近さなどによって、その都度ごとに変わるので、常に同じ絞り値で撮ったとしても、それが同じ程度の背景ボケとして写る保証はありません。そこで、設定値に見合った絞りでの被写体像を実際にファインダーで見ることができれば、より理想の写り方に近付くように、絞り値の微調整が可能となるのです。
プレビュー機能を利用すると、ピントが「点」ではなく、幅のある「区域」として把握できるので、厚みや奥行きのある被写体の撮影には重宝します。風景写真だけでなく、品物を撮影する場合にも応用できるので、お使いのカメラにプレビュー機能が付いていたら、ぜひ使ってみてください。
フィルムカメラの時代には、プレビュー機能は一部の高級機にしか付いていないことも多かったのですが、現在のデジタル一眼レフでは、普及機でもプレビュー機能が搭載されている例があります。こうした機種では、絞りの効き目を見極めながら、じっくりと絵柄を作り込んで作品を撮るといった使い方ができて便利です。
1980年代に一眼レフがAF化されてから、ズームレンズが常用レンズとなりましたが、その影響で単焦点レンズを使う機会が減った結果、ピントリングの距離目盛りを見て被写界深度を知るというテクニックは使いにくくなってしまいました。昔のMF専用レンズでは、直進式ズームという、被写界深度目盛りが付いたズームレンズもあったのですが、現在のAFレンズでは、ほとんどすべてが回転式ズームに改まったので、昔のテクニックはまったく使えません。そして、最近のデジタル専用レンズでは、ズームのミリ数を表す目盛りはあっても、ピントリングにメートル表示を付けた距離目盛り(~無限大)がない製品も存在するので、指標を見て被写界深度を推定するのは難しくなっています。
とはいえ、デジタル一眼レフでは、昔のフィルム用一眼レフよりも、プレビュー機能の搭載例が増えたので、レンズ側での距離目盛りの不便さを、カメラ側のファインダーで補うことが可能となりました。ファインダーでは、実際に写る被写体像と背景のボケ具合を確認できるので、こちらのほうが、距離目盛りからの推定よりも、より正確に絞り値の判断ができます。
プレビュー機能は、全機種に必ず搭載されているわけではないようですが、風景など絞りの効果が必要な被写体を自動露出以外で撮るなら、もちろん、あったほうが良いことは確かです。カメラ選びの際は、この機能についても、カタログで確認してみてください。
ソニーα700のプレビューボタン。搭載位置は、メーカーや機種によって異なります。普及機では、プレビュー機能を持たない機種もあります。
プレビュー機能は、デジタル・フィルムとも一眼レフカメラだけにあり、光学ファインダーを覗いて使う機能。プレビューボタンを操作すると、メカニカルな動作によって、レンズ側の絞りだけに変化が生じます。原則として、デジタルカメラならではの、電子的な機能には関係がありません。
ところで、プレビューボタンを押すと、絞り機構が通す光の量が減るので、普段の絞り開放状態よりファインダー内は暗くなります。マニュアル露出で、絞りを絞ったらシャッター速度を遅くするのも、この理由からです。プレビューを試してみれば、百聞は一見にしかずで、露出の考え方も体感的によくわかります。
プレビュー機能は、レンズを装着してあり、なおかつ絞り値を最低でも開放から1/3段以上は絞って設定している条件のときだけ作動します。カメラボディ単体(レンズがない状態)の場合や、レンズの絞りが開放にセットされている場合には、まったく動きませんが故障ではありません。プレビューの動作を試す場合は、まず、大きめのF値に設定してください。
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