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2008.10.24
一眼レフに装着して使う交換レンズ群には、メーカーごとに違う、レンズマウントの種類があるということは、前回、お話ししました。それは、正味の光学性能とは関わりのない、メカ部分の問題です。しかし、レンズはガラスでできている部分と、ピント合わせを受け持つ部分によって、その性能が決まるので、機材を選ぶときは、こちらにも特に注目しておく必要があります。今回は、そんなレンズ本体の性能を、製品名に書かれた記号の中から知る方法を探ってみましょう。
交換レンズの製品名を見ると、焦点距離を中心として、その前後にいろいろな記号が付いています。記号の付け方はメーカーごとに異なりますが、いずれも、1本のレンズに固有の性能を示しています。これらの記号を覚えておくと、購入するレンズを選ぶときに、判断材料として役立てることができます。値段の高いレンズが、どうしてその値段なのかも、これを知れば納得できるでしょう。では、それぞれの記号や数字の種類を、ざっと見ていきます。
レンズの性能で、最も重要なのがこれ。単位はミリメートルで、その数字が小さいのが広角、大きいのが望遠です。35ミリ判では、標準レンズは50mm。これを基準に、広角レンズと望遠レンズに分けて、製品をラインアップするのが通例です。しかし、最近ではズームレンズのほうが主流になっています。
単位mmの前に、焦点距離の数字が1項目だけ書いてあるのが「単焦点レンズ」、焦点距離の数字が2項目あって、その2つを「~」の記号で結んでいるのが「ズームレンズ」です。普通は、広角側を先に書いて、望遠側が後になります。ここで、注意点。レンズ本体に書いてあるのは、どんな場合でも、光学上の実質焦点距離だけです。APS-Cサイズなどのデジタル一眼レフでは、35ミリ判換算焦点距離という数字もありますが、それはカメラ本体の仕様書にある倍率を、実質焦点距離にかけて計算してください。例えば、デジタル専用ズームレンズで広角端18mmの場合、APS-Cサイズの換算倍率を適用すると、だいたい28mm相当くらいが、ファインダーでの見た目の画角になります。これは、フィルム用一眼レフでの標準ズームレンズの広角端と、ほぼ同じくらいの焦点距離です。
キヤノン「EF-S」、ニコン「DX」、ソニー「DT」などの、デジタル専用レンズの場合は、換算倍率を見越して、実質焦点距離を短く設計しているので、フィルム用レンズの感覚で数字だけを見ると、広角レンズのように錯覚しますが、カメラに装着すると特に違和感なく撮影できます。ただし、これは光学性能として焦点距離が伸びるのではなく(物理学でいうレンズ1個の「焦点距離」が使い方の都合だけで伸びることは絶対にあり得ません)、35ミリ判に「例えて言えば」、写る範囲は、レンズに書いてあるミリ数に、一定の倍率を乗じたくらいの見た目になるという意味です。なぜ、デジタル専用レンズが望遠寄りのように写るかといえば、そのわけは、ボディの画像センサーが35ミリ判より小さいので、実際に写った部分だけを取り出して、共通の用紙サイズでプリントしたときには、APS-Cサイズのほうが、トリミング(拡大倍率が上がった状態)になるからです。
レンズの絞りをいっぱいまで開いたとき、つまり、絞り羽根が動かない状態で、絞り値がいくつになるかを表す数値。表示するときは、「F」に続けて開放絞り値を書きます。これは、数字の小さいほうが、絞りの開き具合は大きくなるという対応で、F値が小さいレンズほど、光をよく通すので、ファインダーでの像の見た目も明るくなります。そのため、F値が小さいレンズを、「大口径」「明るいレンズ」などと言うことがあります。
開放F値は、単焦点レンズがほうが小さく、ズームレンズのほうが大きくなります。ズームレンズの場合は、開放F値が、どの焦点距離域で撮っても一定不変のものと、選んだ焦点距離域によって変わるものがあります。開放F値が変化するタイプでは、製品名でも、焦点距離の表示に対応させて、広角端~望遠端のF値をともに表示。その場合、普通は望遠側のほうが、F値は大きく(暗く)なります。望遠側で絞りを開放にすると、F値は望遠側の数以下にはなりません。つまり、広角側でしか、そのレンズの最も明るい絞りは使えません。
現行機種のレンズでは、カメラ側の液晶モニターにF値を表示します。よって、ズームレンズの焦点距離を広角から望遠へ向かって動かすと、広角端でF値開放にしていた場合は、絞り表示がズームにつられて自動的に変化します。ちなみに、絞りリングがあるレンズの場合は、F値を読むための指標が2つ用意されていて、広角側と望遠側で使い分けます。なお、ズームレンズにも普及タイプと高級タイプがあり、高級タイプのほうが大口径で、値段も高くなります。全域開放F2.8のものが、高級ズームレンズの定番性能です。
デジタル一眼レフの場合、手ブレ補正機能は、レンズ側に付けているメーカーと、カメラボディ側に付けているメーカーの2通りがあります。レンズ側に付けているキヤノンや、ニコンなどでは、レンズの製品ごとに、手ブレ補正ユニットが付いているものと、付いていないものが存在しますが、付いているものには、それを表す記号が書いてあります。キヤノンでは「IS」、ニコンでは「VR」、パナソニックでは「OIS」など。レンズメーカー製のレンズにも、各社それぞれの呼び名で、手ブレ補正機能を意味する記号が記載されています。なお、こうした表示がないレンズは、レンズ側に手ブレ補正機能の搭載がないという意味です。
「マクロ(MACRO)」は、近接撮影用レンズのこと。普通のレンズ同様に撮影できますが、特に近い位置までピントが合うように設計されています。このタイプのレンズには、単焦点マクロレンズのほか、「MACRO」の表示があるズームレンズもあります。これは、普通のズームレンズでありながら、近接撮影を可能とするため、最短撮影距離の性能を向上したもの。どれくらいまで近寄れるかは、焦点距離や製品の年式によって違うので、レンズのカタログで確認してください。製品名に「MACRO」と書いてあるズームレンズでは、被写体の実寸を1とすると、レンズを通ってできた像の大きさ(撮影サイズ)は、最大で1/2~1/4程度(撮影倍率)になります。接写専用の単焦点マクロレンズでは、等倍(被写体の大きさ=画像の大きさの原寸大)での撮影に対応できます。
レンズには、一般用と、高級タイプの2種類があります。ご想像の通り、高級タイプのほうが価格は高額です。一般用レンズは、APS-Cサイズのデジタル一眼レフをレンズキットで買ったとき、一緒に付いている標準ズームレンズのグレード。高級タイプは、レンズキットではなく、特定のレンズを選んで、ボディとは別に購入します。
一般用と高級タイプの最大の違いは、使用される素材や部品。高級タイプでは、蛍石や非球面レンズといった、光学性能が極めて高い素材を使用し、その分だけ値段も高くなります。写真の仕上がりとしては、解像度や各種収差の補正といった性能において、高級レンズで撮影したほうが高品質になります。しかし、高級レンズの性能を使いこなすには、カメラボディの有効画素数が十分であることや、撮影後に画像を大きなサイズでプリントすることなど、それなりの条件が揃うことも大切。被写体を日の丸構図(画面の中央部)で普通に撮影して、Lサイズでプリントするだけなら、高級レンズはオーバースペックとも言えます。一方で、絵画の構図のように、空間構成の見せ方に芸術的な価値を求めるなら、隅々まで画質が良い高級レンズを選んだほうが、納得のいく写真作品を撮影しやすくなるでしょう。あえて被写体を画面中央から外すような撮り方を好むなら、周辺部でも画質が低下しない、高級タイプのレンズが最適というわけです。
どのグレードのレンズを選ぶかは、ユーザーの皆さんのお好みです。とはいっても、デジタル一眼レフ用のAFレンズであれば、どんなに値段が安かろうとも、トイカメラのような極端に外れた描写になることはあり得ないので、とりあえず安心してください。高級タイプのレンズを意味する記号として、キヤノンでは「L」、ニコンでは「ED」、オリンパスでは「SH」などの表記があります。
超音波モーターは、AF駆動をレンズ側で行うレンズの動力として、近年、ポピュラーになりました。ピント合わせが高速かつ静粛で、大型の望遠レンズやズームレンズにも適しています。また、AFでピントを検出、レンズを駆動した直後に、モード切替の操作なしで、マニュアルフォーカスによる微調整を可能とした製品もあります。
ところで、超音波モーターと、そうでない普通のモーターの区別は、メーカーによって異なります。キヤノンEOS用のEFレンズでは、1980年代に誕生した当時から全レンズにモーターを内蔵したので、超音波モーターの「USM」レンズでも、そうではないモーターを使っているレンズでも、操作方法に違いはありません。ただし、「USM」のほうが、AFがキビキビした動きになります。一方で、一眼レフのマウントをAF化したとき、カメラボディ側に内蔵したモーターから、カプラーを介してレンズ側に動力を伝える方式を採用した、ニコン、ペンタックス、ミノルタα系(コニカミノルタ・ソニー)については、普通のモーターはボディ側駆動、超音波モーターはレンズ側駆動といったように大別されます。
最新型カメラボディと古いAFレンズ、古いカメラボディと最新型AFレンズの組み合わせで、AFだけ効かない例があるのは、駆動モーターがボディ側から、レンズ側の超音波モーターへと仕様変更されたからです。超音波モーターを表す記号は、前述のキヤノン「USM」のほか、ニコン「AF-S」、ペンタックス「SDM」、ソニー「SSM」など。超音波モーターという意味は同じでも、メーカーごとに記号だけは違います。
いまどきのレンズは、大多数がインナーフォーカスになっています。インナーフォーカスとは、ピント合わせの際にピントリングが回転しても、レンズの前側は回転せずに、垂直方向へ繰り出しができるもの。レンズの全長も変わりません。リアフォーカスも同様で、レンズの後ろ側を使って、ピントを合わせる仕組みになっています。リアフォーカスは、カプラー方式のAFでも、スピードを維持できます。昔は、レンズの前側を動かしてピントを調節するレンズのほうが普通だったので、ピントリングが回転すると、フィルター枠まで一緒に回っていました。これは、PLフィルターなど、被写体や光線状態に応じてフィルター枠を回す必要があるアクセサリーを装着した場合に、非常に操作が面倒だったものです。しかし、インナーフォーカスが定着したことで、PLフィルターを装着した撮影でもユーザーの負担が軽減されました。また、フィルター枠がピントにつられて動かないので、レンズフードも、表面積が広くて四隅に切り込みがある花形フードとしたレンズが多くなりました。
一般撮影用レンズのほか、メーカーによっては、特殊用途のレンズをラインアップしている場合があります。例えば、メーカー各社が用意している「FISHEYE」は、魚眼レンズのことです。このような特殊レンズにも、それを表す記号が付いているので、詳しくはカタログを参照してください。
レンズの性能を表す記号は、メーカーごとに意味が違います。ということは、あるメーカーの製品に出てくる記号が、ほかのメーカーでは、違う意味で使われているといったことがあり得るので、焦点距離や開放F値などの超・基本部分はともかく、それ以外の部分では、一度覚えた知識が、そのままでほかに流用できるとは限りません。こうした記号と意味の定義の多様性を原因として、レンズ選びを間違えないために、購入を考えるときは、ほしいレンズに書いてある記号の意味を、そのレンズのメーカーのカタログやホームページなどで、一度は確認しておいてください。レンズは、店頭で買う時点では、実際に撮る被写体に向けた使用実感がわかりにくいので、この事前確認は重要です。
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