写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2008.11.14
レンズ交換ができることが、一眼レフカメラが持つ最大の特徴。しかし、大多数のユーザーの皆さんは、おそらく、レンズキットとして購入した標準ズームレンズ、あるいは、ダブルズームキットで2本組になっている、標準ズームレンズ+望遠ズームレンズを必要に応じて、交換しながら使うことが、ほとんどではないでしょうか。しかし、ラインアップされている交換レンズはそれだけではなくて、一眼レフであればこそ利用することが可能となる、特殊な撮影目的で使う専用レンズもあります。普通のズームレンズとは、まるで印象の違う写真が撮れる、それらのレンズをご紹介しましょう。
以下に、いろいろな特殊レンズの事例を集めてみました。いずれのレンズも、カメラメーカー各社の純正なので、対応するレンズマウントは、原則として、そのメーカー専用の固定式。使いたいレンズがあるときは、そのレンズの製造元と同じメーカーのカメラボディを揃えておく必要があります。これは、つまりレンズ優先のカメラ選びもあり得るということ。ボディ側のカタログ性能だけでは、機材としての評価が決まらないのも、また一眼レフならではの特徴なのです。操作の難易度は少し高め、価格も高めですが、練習を重ねて使いこなせるようになれば、写真の表現に幅が出てきて、自分なりの技法を生かした作品が撮れるようになります。思い立ったら、ぜひトライしてみてください。
ニコン「PC-Eレンズ」
昔は、カメラ本体とレンズの間に蛇腹が付いてる大判カメラでしかできなかった「アオリ撮影」を、35ミリ判きょう体の一眼レフ(APS-Cサイズも含む)で可能とした、特殊撮影用のレンズ。使用例として最もポピュラーなものは、竣工した新築高層ビルの記録写真(観光案内用の街並み風景写真ではなく土木・建設業などの記録用として撮影される写真)。高層ビルを下から見上げると、人の肉眼では直線距離の違いによる遠近感のため、たとえ本来は各階とも同じ床面積で垂直に建っているビルでも、低層階が大きく見える一方で、高層階になるほど小さく見えることになります。肉眼で仰ぎ見た場合でも、このように高層ビルは“先細り”に見えるわけですが、狭い敷地で地面に立って、普通のレンズで写真に撮った場合にも、レンズの光学特性により、現場の見た目以上に、高層ビルの先細りな感じが誇張されてしまいます。そこで、アオリ撮影ができる専用レンズを使うと、遠近感で先細りになった像を、垂直に立っているように光学的に補正することができるので、写真に撮った状態では、建物を設計図通りの、より実物に近いイメージで記録することができます。このような目的での撮影に便利なのが、ニコンの「PC-Eレンズ」です。このレンズには3本のシリーズがあり、いずれも単焦点で、広角24mm、標準45mm(写真参照)、望遠85mmが用意されています。いずれもマニュアルフォーカスのみの対応で、AFは効きません。なお、キヤノンも同じような機能を備えた、「TS-Eレンズ」というシリーズを発売しており、ほぼ同様の焦点距離構成で、3本のレンズを発売しています。被写体形状のほか、ピントが合う範囲を変えることもできるので、普通のレンズの背景ボケとは違うタイプのボケ味を演出することも可能です。レンズとしての魅力は非常に大きいのですが、しかし、気軽に使うには価格が高いことが、唯一の難点と言えるでしょう。
ソニー「STFレンズ」
STFとは、スムース・トランス・フォーカスの略。わかりやすいように平ったく言うと、「二線ボケ」を解消してくれる機能を持つレンズです。画面の全体が、もやっとして写るソフトフォーカスレンズではないので、お間違いなく。このSTFレンズの場合、ピントが合っているところは、シャープに写ります。写真を見るときに、ピントの合っていない背景ボケや、近距離の前ボケまで細かく見ることは、カメラや写真にそれほど関心がない一般の方の場合、あまり多くはないと思われますが、そこまでこだわって見ると、このレンズで撮影した写真は、普通のレンズで撮影した写真よりも、やはりキレイに見えます。そういった意味では、わざわざ説明しなければ気が付かないような、とても地味な効果のレンズです。しかし、ボケ味に注目するなら、レンズキットの標準ズームレンズでは絶対に得られないような、このレンズが醸し出す柔らかな雰囲気には、最高の魅力があります。αシリーズで使えるソニーの「STFレンズ」の場合、設計としては、アポダイゼーション光学エレメントという部品が内部に付いていて、これでボケ味をコントロールします。なお、この装備を使うと、絞り値(F)が一定不変であっても、ボケ具合によってレンズを透過する光量が減るので、露出(シャッター速度の対応)には調整が必要です。そのため、このレンズに限っては、F値(=絞りのみ)ではなく「Tナンバー」(=絞り値に対してボケの強さに応じた減光分を補正)という数値を当てはめて、露出を決定します。ただし、数字の意味はF値と同じなので、そのまま自動露出で撮影できます。このレンズは、点光源のボケ像が円形にならず、少し欠けてしまう「口径食」の防止にも有効。ソニーでは、「STFレンズ」を単焦点135mm/F2.8の中望遠レンズ1本のみで発売しています(写真参照/APS-Cサイズの換算焦点距離は約200mm)。ちなみに、ニコンにも「DCニッコールレンズ」という製品があり、同様の機能を持っています。こちらは、105mm/F2と135mm/F2の2本がラインアップされています。ニコンのレンズは、超音波モーターを内蔵していないので、デジタル一眼レフの場合は、ボディ側にモーターがある高級機だけでしか使えません。凝った撮影なら、カメラは高級機に限るということのようです。
ケンコー「ミラーレンズ」
カメラ用の望遠レンズは、構造としては、天体望遠鏡と変わりません。普通の望遠レンズは、屈折式望遠鏡と同じ。対してミラーレンズは、反射式望遠鏡と同じ原理を用いて、通常のレンズと同等以上の長い焦点距離を得ています。ただし、原理が同じとはいっても、反射式天体望遠鏡の接眼レンズが横に付いているのに対して、カメラ用のミラーレンズでは、レンズの内側で光が往復し、屈折式のレンズと同じように像を結ぶので、実際の構造は、まったく同じではありません。ミラーレンズでは、ミラーという名前が表す通り、中に反射鏡が入っています。レンズの鏡筒に入射した光は、最も奥にあって、望遠効果を生じさせる凹面鏡に当たって反射。その光を、前方の中央部にある、サイズがより小さな合わせ鏡に集めて方向転換すると、この段階で、撮影可能な像が現れます。さらに、ピント合わせを受け持つ光学レンズ部を通過すると、光がカメラボディ内に到達するという仕組みです。レンズの中で光が往復し、凹面鏡が対物レンズ(凸レンズ)の代わりを果たすので、焦点距離が長いわりには、鏡筒の全長が短く、質量も軽い望遠レンズを作ることができるのです。光学特性としては、ガラスレンズを通して光を屈折させないので、原理的に色収差が発生しないという利点があります。このミラーレンズに独特な描写の特徴としては、前方にあって、2回目に光の向きを反転する小さな鏡が、鏡筒の中央部分に付いているため、この部分だけ、外からの入射光を遮るので、背景ボケがリング状に写ります。その効果を積極的に使った表現も可能で、実際に撮影すると、空中にシュガーコートしたドーナツが浮いているような、なんとも“おいしそうな”写真に。なお、ピントが合っている部分の像が欠けることは、まったくありません。なぜそうなるかは、中学校の理科の知識だけで理解できますから、興味のある方は作図して考えてみてください。このミラーレンズの長所は、持ち運びに便利なこと。短所は、絞り値が開放絞りだけ、しかもかなり暗めで、それ以外には変更できないことです。写真用品メーカーのケンコーでは、現在は、500mm/F6.3(写真参照)と、800mm/F8という、2本のミラーレンズを発売中。AF不可のマニュアルフォーカス専用ですが、いまどきのレンズでは珍しく、マウント部のみ交換可能としているため、専用のマウント部品を購入すれば(必須)、全メーカーのカメラボディで使うことができます。これは、絞り値が固定式のミラーレンズならではのこと。ただし、ピント・露出の調整については、あくまでマニュアルのみとなります。なお、ソニーにもα用のミラーレンズがあり、「500mm F8 Reflex」というレンズ1本が発売中です。こちらはαマウント専用ですが、AF・AEの全機能に対応。中央部のフォーカスフレームでも、AFが効きます。
☆各レンズのご購入については、キタムラ各店の店頭にて、スタッフにお尋ねください。
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