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2008.11.28

【RAWは、何のためにある?】
デジタル一眼レフの画像記録形式

一眼レフタイプのデジタルカメラでは、撮影した写真の画像データを記録するファイル形式として、普通のJPEGのほかに、「RAW」(発音はロー)という選択肢があります。では、これは何のために使うのでしょうか? 今回は、JPEGとRAWを使い分けるコツを考えます。

JPEGの長所と短所

RAW形式の特徴を知るために、まずはJPEG形式について、おさらいしておきましょう。どのデジカメでも必ず使える、標準設定の画像ファイル形式がJPEGです。

JPEGの長所

JPEGの良いところは、汎用性と、データの軽さという2点に集約されます。JPEGは、もともとはインターネットのホームページ上で、色の数が多い画像を表示するときに便利な画像ファイルとして、1990年代の後半に普及し、それが後にデジカメにも応用されました。時代的には、デジカメよりも、インターネットが普及した時期のほうが少し先です(フィルムの写真をWEB用にスキャナ入力していた時期がありました)。このような経緯のため、JPEGは、さまざまなパソコンソフトで開くことが可能で、非常に互換性と汎用性が高い画像ファイルと言えます。そしてJPEGでは、記録されるピクセル数が多いわりには、データ容量を大量に使用しない、つまり軽いデータであることも特徴。JPEGの画像は、適切にデータが圧縮されており、限られた記録容量のメモリーカード内に、なるべく多くの画像を保存するためには、たいへん都合が良くできています。なお、JPEGは、どのデジカメでも記録・再生できるので、あるメーカーのデジカメで撮った画像を、違うメーカーの画像管理ソフト(付属CD-ROM)で閲覧することも可能です。

JPEGの短所

データを圧縮するということは、つまり、見た目の感覚として遜色がない程度に、データを間引きすること。JPEGでは、このようなデータ圧縮処理そのものが、ときに難点となることもあります。それは、データの間引きが、本当に適切に、なされているかという問題です。デジカメで撮影した画像を、パソコンにデータ転送してフォルダを直に開くと、1点ずつのデータ量を知ることができますが、デジカメ側の記録画素数と画質設定を、まったく同じ条件に保って撮影しても、JPEGのデータ量は、被写体や構図などからも影響を受けるため、各画像ごとに違っています。そもそも、画像センサーの画素数が一定なら、画像データも、すべて同じ容量になりそうなものですが、実際には、画像処理エンジンのはたらきによって無駄なデータが整理され、JPEG画像ができた状態では、データ量はばらつくのが普通なのです。しかし、パソコンでもデジカメでも、JPEGの圧縮処理は「元画像→JPEG」の一方通行だけなので、一旦、圧縮保存した画像を、元画像の画質に戻すことはできません。したがって、もしJPEG圧縮のクオリティが気に入らなかった場合に、もう一度遡って、JPEG画像を作り直すということができないのです。これこそが、デジタルカメラでのJPEGの短所と言えます。

RAW形式でJPEGの短所をカバーする

前述のような、JPEG形式ならではの短所を補うのが、RAW形式。こちらのファイルでは、「元画像→JPEG」の圧縮処理を、後から何度でも、ユーザーの気が済むまでやり直せるように、カメラ内でのJPEGの生成処理を保留して、画像センサーが撮像した時点の生データだけを、そのままメモリーカードに保存します。デジカメの中で、カードに画像を書き込む時点では、画像データは生成も圧縮もされていないので、後の手間はかかりますが、結果としては、より高画質の画像を得ることができます。

RAWの活用ポイント

RAWでは、「パラメーター」の設定も後回しにできます。したがって、ホワイトバランスや、彩度、コントラストなどの設定を、撮影時点では決めかねるとき、とりあえずRAWで撮っておいて、詳細な詰めは後でパソコンを使って、じっくりと試行錯誤できるのです。これは、(実際にはあり得ませんが)フィルムに例えると、撮影が全部終わった後で、過去に遡ってフィルムの種類を替えられるようなものです(デーライト・ネガで撮ったものをタングステン・ポジの発色に作り替えるなど)。JPEGの場合、デジカメ本体内では、単純なデータ量の圧縮だけでなく、ホワイトバランスなどの、いわゆる「パラメーター」の適用も、1枚の写真を撮影するごとに、瞬時に自動処理で行っています。これらの各設定についても、JPEG記録では、その都度に確定されるので、一旦、JPEGで記録された画像のパラメーターを、再調整することはできません。したがって、後で画像に手を加える予定があるなら、カメラではRAWで撮っておいたほうが、都合が良いことになります。画像処理ソフトを使えば、JPEGデータの色調などを加工することは可能ですが、圧縮した画質は復活しないので、JPEGは後処理に弱いのです。

RAWの用途

デジカメで撮った画像を、デザインの素材などとして2次的に利用したい場合には、圧縮処理されていない画像のほうが高画質を維持しやすいので、JPEGより、RAWのほうが適しています。また、撮影1コマに対して、パラメーターの設定を複数のパターンで行い、そこから最適なものを選びたい場合にも、RAWで撮っておけば、後々の対応では自由度が増します。デジカメであっても、フィルムから自家現像でプリントしたような、個性ある色調を出したいのであれば、カメラ任せのブラックボックスであるJPEGよりも、RAWを選ぶのが正解と言えます。

RAWの短所

活用の可能性だけを言えば便利そうなRAW形式ですが、実際の撮影では短所もあります。まず、画像を圧縮しないので画像1つ当たりが重く、つまり、データ量がJPEGと比べて大きくなるので、データ記録容量を多く使います。また、原則として、画像センサーの有効画素数いっぱいでしか撮影できません(最近の高級機では記録画素数を選べる場合もあります)。よって、メモリーカードの消費が早くなり、予備のカードを用意するコスト負担が増えます。また、RAWファイルは、カメラ付属の専用ソフトを使わないと、画像を再生して見ることもできません。

RAWのデータは、カメラの画像センサーが、レンズの光を3原色に分解してできたデータを、そのまま保存しただけのもの。当然ながら、まだ写真としての階調がないので、生データをJPEGやTIFFなど、汎用性が高い画像データに変換する作業が必要になります。

この作業工程を、デジタルでも慣用的な表現で「現像」といいますが、その処理は、原則としてパソコンにRAWデータを転送してから、ユーザー自身で設定・操作して行います。つまり、JPEGならカメラが勝手にやってくれる画像生成処理を、パソコンのモニターを見ながら、自分で一つ一つ調整するわけです。これなら、納得するまで調整のやり直しができるので、より画質や発色の好みが合う写真を作り上げることができます。ただし、作業はかなり面倒なので、RAWでの撮影は、写真に芸術的価値を求める方に向いています。なお、RAWの現像にはカメラ付属のソフト、または別売りされている、より専門的な現像ソフトが必要ですが、最近ではデジカメ本体内に、RAW現像機能を搭載した機種も登場しています。

JPEGとの使い分け

さて、ここでデジカメがデジタルであるがゆえの、本質的な便利さがどこにあるかと改めて考えれば、その一つの解答は、「撮ってすぐに見られること」です。しかし、RAWの場合に限ると、実は、撮ってすぐには見られないほうが普通なのです。当然ながら、お店プリントや、家庭用のプリンターは、JPEGで記録されたデジカメ写真をプリントするようにできているので、RAWの状態では、撮影直後にプリントすることはできません。だから、より画質を良くできる可能性があるとは言いながら、写真の使用目的によっては、RAWは後処理に時間がかかって、むしろ面倒であることも多いのです。したがって、あくまでフィルムの代用という目的で、単純にプリントだけのために撮影する写真では、RAWモードは選ばずに、JPEGモードでの撮影に徹したほうが便利だと考えることもできます。RAWでは、撮影完了後の現像処理にも、ある程度の専門的な知識が必要となる、上級者向けの機能。その技能を、原則として自分自身で習得できていないと、RAWは使いこなすのが難しくなってしまいます。芸術作品の創作や、デザインの仕事には必要な機能であるRAWも、気軽な記念撮影や、資料用の記録撮影に限ってカメラを使う方の場合、「そこまでやる必要はないだろう」と思うこともあるでしょう。だから、RAWでの撮影は、人それぞれに重要度が異なるので、面倒だと感じるなら、無理して覚えなくても特に問題はありません。デジカメの画像生成機能も進化しているので、JPEGだけでも、満足できる画質を得ることは可能です。

RAW形式とはどのようなファイル形式か?

デジタル一眼レフのカタログでは、一口に「RAW」といいますが、実は、そういう名前のファイル形式はありません。この点は、非常に重要なので覚えてください。「JPEG」は、パソコン用語として、汎用的な画像ファイル形式の規格を指していますが、「RAW」は、あくまでもデジカメ限定の用語。「RAW」だけは、画像記録モードの名前でこそあれ、ファイル形式の規格ではないのです。

デジカメでは、画像センサーを使って、光学像を電気的なデータに変換することで写真の画像が撮影されますが、露光した時点では、まだJPEG画像はありません。画素から取り出した生の撮像データから、JPEGとして見られる画像を作るのは、画像処理エンジンの仕事です。したがって、どのデジカメでも、画像処理エンジンを通る前の生データが存在するわけで、その生データのことを区別して呼んだのが「RAW」というもの。だから、より正確に言えば、「RAW」と総称されるデータには、メーカーの数だけ異なるファイル形式があります。

デジカメに付いている画像センサーには、CCDやCMOSなど、いろいろなものがあります。ということは、生データにも多様な種類があります。それは、つまりRAWデータにも、いろいろな規格があるという意味です。だから、JPEGと同じような感じで、「RAW」という汎用ファイルがあると思い込むと、抜け出せない誤解のもとになってしまいます。

実際のRAWファイルは、カメラメーカー各社ごとに違うデータ形式なので、違うメーカーのカメラ付属ソフトでは、RAWで撮った画像を見ることは不可能。そのため、いずれのデジカメでも、汎用的なJPEGを標準のファイル形式としているわけです。なお、デジカメの画像を再生して見たり、プリントなどに使う場合は、RAWで撮っても、最終的にJPEGやTIFFに変換する必要があるので、何でもRAWで撮れば良いというわけではありません。実際の撮影では、JPEGが標準、必要に応じてRAWというように、目的次第で使い分けるのが得策でしょう。

 
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