写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2009.01.23
「押すだけ、簡単!」というのは、カメラの宣伝文句としては、昔からある紋切り型のフレーズです。これ、カメラ販売の現場では、どのカメラに対しても使われていることがありますが、機能の点から言えば、実は、まったく違う2つのタイプに、分けることができます。その違いとは何か? お年玉で人生最初のカメラを買うという初心者の方にも、ぜひ知っておいていただきたいポイントを、ご説明します。
コンパクトデジカメでは、「シャッターボタンを押すだけ」という場合に、ピント合わせの方法が2通りあります。いずれも、ユーザーの撮影操作としては、さほど変わらないのですが、カメラの内側での動き方が大きく異なっているのです。初心者の方では、ボディの外見で見分けが付きにくいので、カタログの仕様一覧と、価格水準を手がかりとして、条件に合うカメラを、お間違いのないように選んでください。以下、タイプ別に特徴を対比します。
レンズのピント合わせに、十分な調整の幅があることを大前提として、ピント検出をカメラが自動的に行うもの。カメラを被写体に向けるたびに、正確な距離を測定し、シャッターボタンの操作に連動して、ピントを設定してくれるタイプです。これは一般的に、オートフォーカスと呼ばれています。現在では、スタンダードクラス以上のコンパクトデジタルカメラと、すべてのデジタル一眼レフで、基本的に、この方式を採用。機種の数としても、このAFタイプのほうが多くなっています。
このタイプでは、近くにあるものを撮る場合と、無限大(∞)などの、遠いところにあるものを撮る場合とでは、レンズのピントを合わせる位置が変わります。つまり、被写体までの撮影距離に応じて、その都度、レンズ内の光学系が微調整されます。そのため、最短撮影距離(カメラが接近してピントが合う最も近い距離)も、相当に短くできて、草花など、小さな被写体のマクロ撮影にも余裕で対応できます。また、AF方式はピントが正確なので、レンズにも本格的な望遠まで対応できる、倍率の高いズームレンズが採用されています。
なお、AF方式のカメラには、一部の低価格機を除いて、ほぼ必ず「マニュアルフォーカス(MF)切り替え機能」が付いています。一眼レフの場合は、MF機能を必ず使えます。したがって、被写体の色や形、明るさなどの影響でAFが効かないときにも、手動操作でピントを調整して、撮影に対応することができます。
こちらは、ピント合わせに、選択の余地がないのが大前提となる方式。もともと決まっている、たった1つのピント位置だけがあって、どんなときでも、この設定で撮影します。光学レンズには、正確にピントを合わせた距離の前後にも、ピントが“合っているように見える”範囲が存在するので、その範囲内にある被写体を、一様のピントとみなして撮影することも可能。この効果を「被写界深度」といいますが、その範囲を広くしておけば、ピント合わせを省略できるので、結果として、シャッターボタンを押すだけでも撮影できるわけです。
デジタルカメラの場合、特に値段が安いエントリークラスのコンパクトデジカメや、携帯電話の内蔵カメラに、こちらの固定焦点方式が採用されている例があります。ちなみに、「写ルンです」などのレンズ付きフィルムや、いわゆるフィルム用のトイカメラは、ほとんどすべてがこのタイプです。シャッターボタンを押す感覚は、前述のAF方式と同じような気がしますが、内部構造的に言うと、ピント合わせのやり方は、2タイプの間で、まったく違います。同じ「押すだけ」でも、固定焦点式は、ピントが“カメラ任せ”ではなくて、単に“操作の省略”であることは、覚えておいてください。
こちらの固定焦点方式を採用するカメラは、ピント合わせそのものを最初からしないので、「オートフォーカス」と呼ぶのは、用語として間違っています。でも、広告などでは「シャッターボタンを押すだけでOK!」と、直接言及を避けて表現している場合はあり得ますから、初心者の方は、都合の良い方向に解釈して、AFと勘違いをしないように、気を付けてください。
固定焦点方式の特徴としては、次のような点が挙げられます。まず、レンズの焦点距離(ピント位置の撮影距離ではなくてミリ数のこと)は、光学ズームではなく、広角系の単焦点が多くなります。これは、ピントの被写界深度を、できるだけ広く確保するためです。そのため、固定焦点式のデジカメでは、デジタルズームしか使えない機種が存在することになります。また、ピントの固定位置は、被写界深度が無限大(∞)まで届く程度に近い距離が選ばれています。そのため、近接性能ではAFタイプに及ばず、比較的、最短撮影距離が長めになります。つまり、固定焦点方式は、マクロ撮影が苦手なのです。ちなみに、固定焦点方式に、マニュアルフォーカスへの切り替えはありません。
ところで、固定焦点方式の場合は、ピント合わせに取られる時間が完全にゼロになるというメリットがあります。そのため、被写体まで一定の撮影距離をとって、スナップ撮影などに利用すると、シャッターチャンスを生かした写真を、気軽に撮影することも可能です。そのほか、AF系統の部品がいらないので、カメラの値段が安いことも特徴です。
ピント合わせについて言えば、コンパクトデジカメには、AFタイプと固定焦点タイプの2つがあるわけですが、露出に関しては、いずれも自動制御となっています。この点では、フィルム用のコンパクトカメラやレンズ付きフィルムで、露出も固定されている例とは、少し事情が異なります。
フィルムで撮る場合、コンパクトカメラでは基本的にネガフィルムを使用しますが、ネガフィルムは露出を外しても、それなりに何とか写ってくれるので(露出誤差の許容度が広い)、だいたい通常の撮影であり得る平均的な明るさに露出設定を固定しておけば、ほとんど撮影ミスがありません。また、フィルムの場合は、濃度や発色の偏りがあっても、プリント段階で、いかようにも補正は可能ですから、あまり撮影時の露出が厳密でなくても、それほど困らないのです。
これに対して、デジカメは、ネガフィルムに比べて露出誤差に弱いので、固定露出にすると、画像は簡単に白トビ・黒ツブレしてしまいます。だから、デジカメは安くてもAF&AE方式のほうが多く、ピントが固定焦点の機種でも、露出だけは自動制御なのです。逆に言うと、デジカメは、ピントや露出に「ゆるさ」がないので、フィルム派のユーザーからは、撮った画像が味気ないと言われてしまうことがあるらしいです。
シャッターボタンを押すだけで撮影できるというデジタルカメラには、このように大きく2つのタイプがあるわけですが、中身の動き方は、カメラのタイプによって、それぞれ異なります。そこで、デジタル一眼レフではなく、特にコンパクトデジカメを買う場合は、仕様一覧を読んで、以下の項目も確認してみてください。以下の項目が、1つもない機種は、固定焦点方式です。
オートフォーカス(AF)の場合は、はっきり、そのように書いてあるので確認してください。AFでは、ピントを検出する方式も併記されており、コンパクトデジカメの場合は、「コントラスト検出方式」などと書かれています。
顔認識機能は、AFの1モードです。つまり、顔認識機能は、AF方式を採用しているデジカメだけに付いています。そのほか、機種によっては、画面内でピントを合わせる基準の位置を、中央以外の任意点に変えるモードなどがあります。
固定焦点式の場合は、測距点そのものが必要ありません。測距点の数がいくつと書いてあれば、それは明らかにAFタイプです。
シャッターボタンを半押しして、ピント位置を一時的に固定する機能をAFロックといいます。ロックするAFがないと存在し得ない機能なので、これがあれば間違いなくAFです。
MF機能は、基本がAFであり、なおかつ、MFでピントを目視確認できる程度に質が高いファインダーや液晶モニターが付いていないと成り立ちません。この機能がある機種は、AF性能も高いと判断できます。
※デジタル一眼レフの場合は、固定焦点式は存在しないので、いずれの機種でも、必ずAF方式となります。
※これらのポイントは、デジタルカメラの場合のみを想定しています。
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