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2009.01.30

【逆転の発想でカメラ選び】
有効画素数は、どこまで少なくて良いか?

デジカメの有効画素数というと、多ければ多いほど良いという気がするかもしれません。まあ確かに、理論的には、画像センサーの面積(寸法)が同じ場合に、カメラ性能上の有効画素数が増えれば、それだけ記録画質が上がることにはなります。でも、そこで撮った後の写真を、何にどう使うのか? という点まで考えると、実際には、それほど多くの画素数を必要としないことも多いもの。逆に、画素数が多すぎると、画像1点ごとのデータ量が膨張して、メモリーカード代が、かさむことにもなってしまいます。そこで今回は、デジカメ使用時の、画質と効率のバランスを考えて、どこまで有効画素数は少なくても構わないのか? という逆転の発想で、カメラ選びを考えていきたいと思います。

有効画素数をフルに使う機会とは?

有効画素数は、そのデジタルカメラを使って撮影したとき、性能限界として、最も解像度が高い設定状態で、キメ細かく、なめらかな画像が記録される画素数のこと。したがって、製品の仕様に書いてある有効画素数の通りに撮影するには、記録画素数の設定モードを、最大に上げる必要があります。また、一眼レフやコンパクトデジカメの高級機で使用可能な、「RAW」という画像記録形式も、原則としては有効画素数の通りに記録されます。現行機種では、有効1000万画素以上が標準になりつつあり、数年前に比べて、有効画素数(=最高設定時の記録画素数)は大幅に増加しました。

では、実際の写真撮影で、有効画素数を最大まで使う機会とは、どんなときか? これは、写真をプリントする場合の用紙サイズと関係します。つまり、大きな用紙サイズでプリントする場合は、画像を引き伸ばしても1画素ごとのドットが目立たないくらい、キメの細かい画像をあらかじめ撮影しておけば、フィルムで撮った写真と比べても遜色がないプリントを、デジタルカメラでも得ることができるというわけです。逆に言うと、画素数が低いデジタル画像を、大きなサイズに引き伸ばしプリントすると、画質が荒れます。だから、10年くらい前の古いデジカメで撮った画像は、大きなサイズの引き伸ばしプリントには向きません。

このように考えると、デジカメの有効画素数をフルに使うのは、原則として、「大きな用紙サイズでのプリントが想定される場合」ということになります。写真は、撮影した瞬間の時点では、なかなか、その重要性がわからないもの。やがて歳月が流れたとき、記録として価値を増すことも多いのです。これは、お子様の成長記録などの記念写真については、特に当てはまるでしょう。だから、今日のいま撮った写真が、いつか遠い未来に必要となったとき、大伸ばしに耐える十分な画質を確保できているよう、「二度は撮れない大切な写真であれば、撮影時点で有効画素数をフルに使って撮っておきたい」、という判断がはたらきます。

しかし、デジカメで撮る写真は、全部が全部、思い出のいっぱい詰まった記念写真だけではありません。ほかにも、被写体や用途はいろいろあるわけですから、いつもフル画質で撮る必要はないのです。フィルムカメラの場合、何を撮ってもフィルムが同じなら画質性能は変わりませんが、デジカメの場合は、写真の用途に応じて、撮影時に記録画素数と、画質レベル(JPEG圧縮)の設定を変えることが可能。このメリットを活用すれば、デジカメでは、撮影の「効率」や「コスト」を、より重視することができます。アート志向で作品を撮る写真愛好家の方なら、せっかく撮った写真は、最高画素数・最高画質で全コマ保存したいと思うかもしれませんが、一般的なカメラユーザーの方は、必ずしも、写真愛好家と同じ考えではないのが現実でしょう。カメラのユーザー人口的に言えば、写真愛好家以外の“普通の人”のほうが格段に多いわけですから、デジカメの場合は効率的に撮影できる画素数・画質を考えることも、また、機材の活用法としては大切なのです。

背面液晶モニターで表示できる画素数の実力

さて、問題です! 有効1000万画素級のデジカメを使って、最高画質で撮影した画像を、背面に付いている液晶モニターで表示したとき、そのモニター画面上では、どれくらいの画素数が再現されるでしょうか?

答を知ると、おそらくは、ビックリする人のほうが多いかもしれませんが、液晶モニターのサイズが何型かに関係なく、だいたい23万画素くらいの表示性能が普通です。ただし、高級デジタル一眼レフの場合は、例外的に90万画素程度でモニター表示できる機種もあります。しかし、いずれにしても、カメラ側で撮影できる有効画素数に比べると、撮った画像を再生表示するときの液晶モニターの画素数は、大幅に減ることは確か。23万画素の表示画面というと、実質的には、カメラ側の最低記録画素数モード(640×480ドット=30万7200ドット)よりも少ないわけですから、その画質レベルは、相当に粗いと言えるでしょう。ISO1600以上の超高感度で撮影したときに、液晶モニター上の画像を見ただけでは、なかなかノイズに気が付きにくいのも、撮影性能と再生表示性能に、解像度での大きな差があるからです。

この数字から判断すると、2つのことが言えます。まず1つは、デジカメの写真は、せっかく高画質で撮ったのなら、紙にプリントするべきであるということ。そうしないと、有効画素数の高いデジカメを使っている意味がないからです。そして次の1つは、逆に、もし液晶モニターに画像を表示して見るだけで良いのなら、それほど高い記録画素数は必要ではないということ。23万画素でモニター表示ができれば十分である場合に、有効1000万画素をフルに使うのは、オーバースペックです。つまり、デジカメで撮った写真を、後でどのように使うのかによって、撮影時に選択するべき記録画素数は変わるわけです。現状では、有効画素数が多い機種のほうが、実売価格も高めですから、実際に自分で撮影するときに必要となる記録画素数を考えてみれば、おのずと、どのカメラを選べば、コスト的に有利なのかも判断しやすくなります。

プリントに必要な画素数

デジカメのプリントでは、使う用紙のサイズによって、写真をキレイに見せるために必要な画素数が変わります。言い換えると、大原則としては、デジタル画像の記録画素数が多いほど、大きなサイズにプリントしても、写真の画質を荒らさずに済みます。ただし、記録画素数が多すぎてもプリント画質の向上にはつながらず、結局、余分なデータがムダになってしまう場合もあるので、使う用紙のサイズごとに適した、ほどほどのバランスが大切です。

キタムラでは、デジカメで撮った画像をプリントする場合に、注文するプリントサイズに応じた推奨画素数を、ホームページ上で、ご案内しています。
//www.kitamura-print.com/info/index.html

通例、一般のお客さまがオーダーされるプリントは、Lサイズ(コンパクトデジカメ用のDSCサイズも含む)が最も多くなりますが、Lサイズ相当の場合、推奨画素数は200万画素。いまのデジカメの有効画素数に比べると、かなり少ない数字である印象を受けるのではないでしょうか。ちなみに、1990年代の初期型デジカメでは、Lサイズのプリントに耐える有効画素数は、ありませんでした。この10年の間に、デジカメの撮影性能は、随分と進化したものです。

参考までに、大伸ばしプリントの推奨画素数も確認しておくと、ネットプリント注文の最大仕様となる、W4切サイズで400万画素。これ以下のプリントサイズも、すべて400万画素あれば十分ということになりますから、いまのデジカメなら、有効画素数の性能については、あまり神経質に考えなくても良いと言えそうです。

パソコンやテレビでの画像再生に必要な画素数

いま発売されているパソコンやテレビは、ハイビジョン画質の放送や、DVDソフトを再生できるようになっているので、その16:9画面の表示画素数としては、1920×1080=207万3600ドットが必要になります。これは、つまり200万画素程度ということですから、アスペクト比の違いはあるものの、Lサイズ相当の写真プリントに耐えるデジタル画像の推奨画素数と、解像度のレベルはだいたい同じです。

しかし、それでも200万画素ですから、カメラ側での静止画(写真)の有効画素数に比べれば、格段に低画質。パソコンやテレビにデジカメをケーブル接続して、画像を再生して眺めるだけなら、記録画素数モードの設定は、かなり低めでも問題はないと言えます。

また、このような画像再生に限定した用途であれば、ちょっと古い年式のデジカメでも、十分に現役として使用可能。デジカメは、古くなったからといって、まったく使えなくなるわけではありませんから、そのような機種があれば、画面表示用に限って使用を継続し、プリント画質が高い新機種と使い分けてください。そもそも、1990年代にコンパクトデジカメが初めて登場したとき、それは、パソコンに静止画像を入力して再生するための周辺機器でした。ということは、パソコンやテレビでの表示用、つまりブログやホームページなどの画像を撮るものと割り切れば、古いデジカメにも、まだまだ活用の道は残っているのです。

※注釈
少し複雑な話ですが、写真プリント用紙として「ハイビジョンサイズ」と呼ばれるサイズを使う場合は、印画紙の面積が、物理的にLサイズより大きいため、推奨画素数が230万画素に上がります。これは、つまり、お店プリントの「ハイビジョンサイズ」という規格が、あくまで、画面比率16:9である印画紙のサイズを指す商品名であって、動画規格のハイビジョンとは違うということ。したがって、テレビ放送をはじめとする動画用の規格である、本来のハイビジョン解像度で撮影した画像を、商品名が「ハイビジョンサイズ」の印画紙にプリントすると、画質維持に必要な画素数が、少し足らなくなります。それゆえに、画面比率16:9で、なおかつハイビジョン動画よりも記録画素数が多い静止画記録モードを持つデジカメが、各メーカーから発売されているわけです。どうして、同じハイビジョンという名前を使っていながら、印画紙と動画では画素数が違うかというと、印画紙の「ハイビジョンサイズ」は、画素数を考えなくても良かったフィルムカメラだけの時代に、16:9の横長画面を意味する用語として命名されたからです。これが、ほとんどデジカメだけしかなくなった現在も、商品名としては踏襲されているので、撮影したデジタル画像のほうがハイビジョン規格になっていると、カメラの記録画素数と、プリント推奨画素数が一致しないことになります。

実用上、必要となる最低の有効画素数は?

これらの点から、プリント・画像再生に使う装置の性能に照らし合わせた実用上では、一般的な撮影用としてのデジカメの記録画素数は、500万~600万画素程度で十分ということになります。しかし、現在では有効画素数がほどほどに少ないデジカメが減って、ほぼすべての機種が有効1000万画素級の画像センサーを搭載するようになっていますから、効率を考えるなら、撮影時の記録画素数モードを適度に下げたほうが良さそうです。

では、ちょっと古くなったデジカメは、どれくらいの有効画素数があれば、現役で実用に耐えるか? 有効画素数だけで考えれば、多少は古くなったデジカメでも、記録画素数を最高モード(=有効画素数)に設定したとき、前述のように500~600万画素での撮影できるのなら、引き伸ばしプリントを含めて、まったく問題のない程度の画質を確保することが可能です。ただし、古い機種は画像センサーだけでなく、画像処理エンジンの性能も低いので、画質性能を上限いっぱいにして使うと、1コマ撮影するたびに演算処理に時間をとられます。具体的には、連続撮影ができなかったり、メモリーカードへのデータ書き込みが遅くなったりします。

こういった問題点を考慮すると、人物や風景などの動かない被写体を、1コマずつ撮影するだけなら、古い機種を上限性能で使っても構いませんが、しかし、激しく動く被写体を、何コマも続けて撮るような場合は、有効画素数に余裕のある新しいデジカメを使いつつ、記録画素数モードだけは600万画素程度に抑えたほうが、撮影時の動作は軽快になります。つまり、どんなものを撮るかということも、デジカメを最新機種に買い替える決め手になるわけです。

デジカメの性能としては、現行機種でいちばん低いグレードの製品でも、有効画素数のレベルが、数年前の同クラスの機種より相当に高くなっています。よって、プリント画質の点から言えば、上位機種に比べて、写った写真そのものに遜色はありません。だから、カメラを選ぶときは、有効画素数ではなく、それ以外のAF機能や顔認識機能、あるいは光学ズームレンズの性能など、付加価値の部分を重視するのが、最近では現実的なようです。

 
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