写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2009.02.13
今回は、万人向けの実用的な話ではなく、「趣味として楽しむなら、こういう機材もありますよ」という話題。数年前までなら、フィルムでの撮影経験が過去にあるユーザーが、その知識を踏まえてデジタルを使うという方向での、カメラの買い替えが普通でした。しかし、いまでは、まったくフィルムカメラを使った経験がない、純粋培養のデジタル世代ユーザーも増えたようです。そんな新世代ユーザーにとっては、少々レトロな感覚のフィルムカメラも、未知なる新しい発見の対象となり得るのかもしれません。実用性だけで判断するなら、過去の遺物であるフィルムカメラは、もはや役には立たないものであるかに思えることでしょう。しかし、趣味の道具として見れば、フィルムカメラは、いまとなっては希少価値の高い、魅力的な撮影機材ともなり得ます。そんなわけで今回は、「フィルムからデジタル」ではなく、「デジタルからフィルム」という逆の順番で、フィルムカメラに出会った方のために、一眼レフにおける、デジタルとフィルムの相違点を挙げてみました。
デジタル一眼レフが使える方であれば、中古カメラとして販売されている、多くのフィルム一眼レフも使えます。なぜなら、1990年代より後の、完全にAF化されたフィルム一眼レフの場合、記録する方法がフィルムか、デジタルか? という点を除外すれば、それ以外の搭載機能は、基本的にデジタル一眼レフと共通しているから。操作感覚という意味で言うなら、デジタル一眼レフと、コンパクトデジカメの違いよりは、一眼レフどうしでデジタルとフィルム用という点だけ違ったほうが、はるかに、隔たりは少ないはずです。例外的に、1980年代以前のフィルム一眼レフについては、まだ自動化できる機能が少なかったので、現在のデジタル一眼レフよりは操作が難しくなりますが、年式が新しいAFのフィルム一眼レフなら、フルオートでも撮影可能。フィルムカメラしかなかった時代にも、初心者にやさしい一眼レフという製品はありましたから、使い方のコツさえ覚えておけば、わりと気軽に撮影を楽しむことができます。
一眼レフは、それが「一眼デジカメ」ではなくて、本当に、内部に「レフ」のある「一眼レフ」である以上、それは、アナログ的な光学系の機能性に、より重点を置いた設計となっています。つまり、シャッターを切る前段階に、撮影する人が行うべき操作は、デジタル一眼レフでも、フィルム一眼レフでも、まったく同じです。だから、フィルムの扱い方さえ覚えれば、デジタル一眼レフしか使ったことがない人でも、すぐに、フィルム一眼レフを使いこなせるようになります。
メーカー・機種ごとにある微妙な性能の違いではなく、その部品が担う役割という意味で言えば、デジタル・フィルムの違いに関係なく、AF一眼レフなら必ず付いている機能というものがあります。まずは、そういった共通する機能に注目してみましょう。
これらの各機能の動き方や、操作の仕方は、すべての機種で条件が共通しています。また、同じメーカーの、同じグレードであれば、基本的には、デジタルでもフィルム用でも、AFや自動露出といった、カメラの性能は同レベルです。
レンズについては、35ミリ判フルサイズ対応(フィルム撮影用)のレンズを、より小型となるAPS-Cサイズのデジタル一眼レフで共用することはできますが、その逆はできません。つまり、デジタル一眼レフ専用レンズ(APS-Cサイズ用)を、フィルム一眼レフに装着して使うことだけは不可能です。
とはいえ、ファインダーの見た目や、カメラを構えた感覚などは、デジタルでもフィルムでも、一眼レフであれば、大きな差はありません。マニュアルフォーカス専用のフィルム一眼レフでは、前述の機能のうち、一部が搭載されていないことがありますが、AF機能が付いている一眼レフなら、操作はほとんど同じです。
以下に挙げる主な機能項目は、デジタル一眼レフのみに限定されたもので、フィルム一眼レフでは機能が付いていませんから、そもそも操作のやり方を考える必要がありません。書き並べてみると、本来のカメラとしての光学性能には、あまり関係がない、電子系統の機能が多いことがわかります。
以下は、フィルム一眼レフだけにある機能です。これらの点は、デジタル一眼レフと使い分けるとき、注意しておきたい重要な部分とも言えるでしょう。しかし、ほとんどは撮影前の準備・設定と、撮影後の整理だけに関わるので、実際の撮影時には、特に負担として感じることなどはありません。
デジタル一眼レフの場合、ボディ背面にあるのは液晶モニターですが、フィルム一眼レフの場合、それはなくて、フィルムを入れる部分の全体を覆う「裏ブタ」になっています。裏ブタは、蝶番の付いたドア方式で開閉し、中にフィルムを入れて撮影します。当然ですが、これを開けるのは、フィルムを装填するときと、巻き戻した後に取り出すときだけ。撮影途中では、何があっても、絶対に開けてはいけません(簡単に感光します)。
フィルムの装填と巻き戻しは、AFタイプの比較的新しい一眼レフであれば、カメラに内蔵されたモーターにより、自動的に行われます。まず、裏ブタを開けて、指定位置にフィルムをセットした後、裏ブタを閉じるだけでフィルムが自動装填され、最終コマまで撮影すると、カメラが勝手に撮影済みフィルムを巻き戻して、取り出し可能な状態になるのが通例です。ただし、手動巻き上げ・手動巻き戻し方式になっている、より古いカメラでは、本体にはこの機能がありません。
なお、1990年代に発売されたフィルム一眼レフの一部機種には、パノラマ機能というモードがあります。これは、本来の35ミリ判フルサイズに対して、1コマの一部を物理的に覆い隠すことで、通常とは違った横に長い撮像面を作り、それで「パノラマ写真」が撮れるというものです。ただし、実際には、フルサイズ時より画角が狭まるので、画面は長くなっても、写る範囲としてはワイドになりません。これは、当時、新登場した印画紙サイズの「パノラマ」を使うための専用撮影モードでした。しかし、この機能がデジタル一眼レフに受け継がれることはなく、いつの間にか姿を消したようです。
そのほか、フィルム一眼レフならではの作業として、ユーザー自身で、撮影前にフィルム(ネガ・ポジの別やISO感度などによって商品を選択します)を購入しておき、撮影が終わった後は、そのフィルムを写真店に持ち込んで、現像・プリントする必要があります。現像した写真の受け取りまで含めて、写真店には合計3回行くことになるわけです。
デジタル一眼レフとフィルム一眼レフの間で、設定操作の方法だけは同じでも、内部での動き方が違う機能というものがあります。この点だけは、実際の撮影時に、少しだけ注意する必要があります。
ISO感度設定のやり方は、手動操作の場合、デジタル一眼レフでも、フィルム一眼レフでも同じです。しかし、デジタルでは、1コマ単位で、自分が使いたいと思う感度を自由に選んでセットする一方、フィルムの場合は、フィルムの箱に書いてある数字に合わせて、カメラのISO感度をセットするのが原則で、装填したフィルム1本分を、すべて同じ感度で撮影します。増感・減感現像はできますが、あくまで1本単位の処理になるので、1コマごとに感度を変えることは、ロールフィルムでは絶対にできません。
なお、AF一眼レフの場合、フィルムのISO感度は、カメラに装填した時点で、自動的にパトローネからDXコードを読み取ってセットされることが普通。よって、本当に自分でボタンを押して感度を合わせなくても、特に問題はありません。ただし、「自動感度設定」というとき、デジタルとフィルムで、その機能が与える効果が違うことは、理解しておいてください。デジタルの自動感度は、自動露出機能を補助するためにあるもの。フィルムの自動感度は、フィルム固有の感度に、ユーザーがカメラの設定を合わせる操作を代行するためにあるもので、こちらは、自動露出のはたらきとは一切連動しません。
ところで、感度設定を間違えた場合、デジタル一眼レフでは、シャッター速度か絞り値が変わるだけで、写真の露光量そのものに影響はありません。しかし、フィルム一眼レフで感度設定を間違えると、フィルムの感光性能との間に誤差が生じて、写真の露光量が変わってしまい、適正露出が得られなくなります。これは、不用意に露出補正がかかったことと同じ状態です。(未現像段階であれば、増感・減感現像での補正も可能ですが、一旦、現像してしまったら何も対策がないので、ご注意ください。)
連続撮影する場合、「ドライブモード」を操作するという点は、デジタルもフィルムも同じ。ただし、デジタルでは、シャッターチャージを繰り返して、同じ画像センサーで、写真を次々と撮影していくだけですが、フィルムの場合では、カメラの中で、1コマ撮影するごとにフィルムが順次、物理的に巻き上げられていきます。そのため、フィルムの場合は、1秒間に連続して撮影できるコマ数の性能が、相対的にデジタルを下回ることになるわけです。また、フィルムの場合は、連続撮影が上限36コマ(フィルム1本分)までに制限され、1本分を撮影するごとに、巻き戻しと、フィルム交換が必要になります。デジタルと違って、フィルムでは失敗カットにも撮影コストはかかりますから、連続撮影機能の使用時は、撮り過ぎないように意識して使ってください。
そのほか、日付写し込み機能の仕組みにも違いがあります。デジタル一眼レフでは、JPEG画像とは別のデータとして、撮影時点の日付・時刻や、露出設定などを一緒に記録しています。これらの付属データは、ただ関連付けて存在するだけで、画面に直接、写し込まれるわけではありません。写真プリントの中に日付が必要であれば、プリント段階で、データを参照して出力時に刷り込むことになります。
これに対して、フィルム一眼レフにも日付を記録できる機種がありますが、その場合は、フィルムの上に、日付の数字を光の像として直接、焼き付けることになります。これは、つまり数字の形になるように、フィルムの一部を感光させる仕組みです。しかし、一旦、フィルム上に記録してしまった数字は、たとえ不要であっても、後で取り除くことができません。作品のための写真など、日付がいらない場合、フィルム一眼レフで撮影するなら、日付写し込み機能をあらかじめOFFにしておきましょう(高級機などには日付写し込み機能がない機種もあります)。
デジタル一眼レフのほうを先に使っていて、それからフィルム一眼レフも使ってみようとする場合は、なるべく、使い慣れているデジタルの機種と、同じくらいのグレードとなるフィルムの機種を選んだほうが、操作に違和感を感じないで済みます。
しかし、フィルム一眼レフは、現在では、新品として生産されている機種の数が著しく減少したので、過去に発売された機種を、中古カメラから選ぶ例が多くなる点は、承知しておいてください。現状、フィルム一眼レフの中級機・普及機は、中古品しかありません(AFの新品は高級機のみ)。とはいえ、キタムラでは中古カメラも扱っていますので、フィルム一眼レフに関心を持った方には、お気軽にフィルムでの撮影をお楽しみいただけます。
趣味として写真に親しむのが目的なら、あえてフィルムという選択も「あり」。デジタルかフィルムの、どちらか一方を絶対的に選んで、残りを完全に否定するのではなく、両方の良いところを使い分ければ良いだけですから、これからも、デジタルとフィルムは共存できると思います。
あなたの大切なお写真の現像・保存・プリントは写真専門店カメラのキタムラにおまかせください。