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2009.02.20

【一眼レフ用交換レンズの互換性】
フィルム時代のレンズをデジタルに流用する場合の注意点

一眼レフでは、レンズマウントの仕様が共通であれば、どのレンズでも装着することができます。これは、原則として、同一メーカーのカメラボディとレンズについては、すべての製品に当てはまることです。しかし、そうは言っても、ここで完全な互換性があるというのは、あくまでも「マウントに直接装着できるかどうか」の話だけ。装着したレンズの機能が、実際の撮影時において、ボディ側と完全に連動するかどうかは、別問題なのです。特に、フィルムカメラの時代に作られた古いレンズを、現行のデジタル一眼レフに装着して使いたい場合は、同一メーカーでも、機能が完全に連動しない場合もあり得るので要注意。これは、デジタル一眼レフを買うとき、レンズも一緒に新調する必要があるか? という判断に関わります。

製造年式で変わるレンズの性能

一眼レフのカメラボディは、各メーカーとも毎年1~2回くらいのペースで、次々と新しいモデルに入れ替わり、原則として、同クラスの旧製品は販売を終了します。これほど速いペースではないですが、実はレンズも同様で、交換レンズの性能は少しずつ進化しています。そのため、新しいカメラボディと古いレンズの組み合わせでは、装着はできても、一部の機能に制約を受けるなど、微妙な違いが出ることがあります。以下に、レンズの年式によって影響を受けることが予想される機能を、具体的に挙げてみましょう。

AFとMF

現在、そして過去10年にわたって、新品で売っている一眼レフは、デジタルであれ、フィルム用であれ、基本的には大多数がAF仕様(オートフォーカス)なので、MF仕様(マニュアルフォーカス)のレンズが昔はあったということを、まったく知らない方も増えていると思われます。ところが、中古カメラには、まだMF仕様のレンズだけを使う製品も、かなり多く出回っているので、現行製品に通じるAFレンズと、すでにカメラ史の一部となったMFレンズの区別についても、一応、知識としては覚えておいたほうが良いでしょう。

一眼レフのAF化が進んだのは、まだフィルムカメラしかなかった1980年代の後半ですが、それ以前には、各メーカーとも、数十年にわたって、MF専用のレンズだけを発売してきました。このうち、キヤノンとミノルタについては、MF時代の古いレンズマウントが、AF化された新しいレンズマウントとは、まったく違うので、同じメーカーでありながら、現行機種のボディと、過去のMFレンズとの間には互換性がありません。

これに対して、ニコンとペンタックスは、レンズマウントの形状を維持したままAF化したので、昔のMF専用レンズでも、AF用ボディに装着することができます。

しかし、違った角度から言うと、キヤノンとミノルタについては、古いMFレンズが最新のデジタル一眼レフには付かないので、個別機能の連動について可否を考える必要が、もとからありません。一方で、ニコンとペンタックスについては、古いMFレンズも装着だけはできるので、カメラボディとの関係によって、自動露出など個別機能の連動を確認する必要が生じることになります。当然ですが、AF用のカメラボディに、MF専用レンズを装着しても、オートフォーカスにはなりません。

絞りリング

キヤノンとミノルタは、AF化した当初の時点でレンズの絞りリングを廃止して、カメラボディ側から、電子ダイヤルの操作で、絞り値を設定する方式が採用されました。しかし、ニコンとペンタックスは、AF化の当初では、絞りリングを残す設計としたので、現在でも、絞りリングの付いているレンズと、付いていない最新型のレンズが混在しています。

しかし、カメラボディ側の機能としては、全メーカー・全機種の現行製品が、基本的にカメラボディ側から絞り値を設定する方式に改まりました。これは、レンズに絞りリングがなくても、問題のない設計に変わったということです。したがって、ニコンとペンタックスでも、現行レンズでは、絞りリングがありません。

ここで、ニコンとペンタックスの絞り設定について整理すると、「絞りリング付きMFレンズ」「絞りリング付きAFレンズ」「絞りリングなし現行AFレンズ」の3パターンがあることになります。したがって、過去に発売されたレンズを、現行機種のデジタル一眼レフで使う場合は、「絞りリング側のみの操作」「絞りリングはあるが無視してボディ側から操作」「ボディ側のみの絞り操作」という3通りの絞り設定があり得るので、機能の対応に注意してください。特に、シャッター速度優先AEやプログラムAEが、まだなかった時代のMFレンズを使う場合は、現行機種のボディでは自動露出が連動しない場合があるので、カメラの設定と実際の動き方について、十分な確認を必要とします。

AFモーター

AF一眼レフでレンズ駆動用のモーターを搭載する位置は、2通りあります。カメラボディ側と、レンズ側です。最近では、光学・AF設計の自由度が高い、レンズ側内蔵方式のほうが増えましたが、古い機種では、カメラボディ側にだけモーターを搭載していた例(カプラーでレンズ側に駆動力を伝達する仕組み)が、かなりたくさんありました。

さて、ここで注意する必要があるのは、昔はボディ側駆動だったメーカーが、後にレンズ側駆動に仕様を切り替えている場合です。ニコンとペンタックスは、もともとはボディ側駆動でしたが、現行機種のために用意されている最新型レンズは、基本的にはレンズ側駆動だけです。

特に、ニコンの普及機では、ボディ側の内蔵モーターを完全撤去した仕様になりました。したがって、古いタイプのAFレンズは、名称がAFレンズとはいえ、レンズ内に動力がないので、普及型デジタル一眼レフに付けると、まったくAFが使えません(MFレンズとしての使用は可能)。つまり、ニコンの場合、普及機を買うなら、新しいAFレンズを一緒に買う必要があります。ただし、高級機については、いまのところボディ側モーターが付いているので、古いAFレンズでもAFが使えます。

キヤノンについては、もともとEOSシリーズが登場したときからレンズ側駆動方式なので、こういった問題はありません。また、ミノルタについては、αマウントがソニーに引き継がれた現在でも、基本的にAFはボディ側駆動方式なので(レンズ側駆動の一部レンズにも対応)、古いαレンズも使えます。

距離エンコーダー

撮影時の露出を決めるには、明るさだけでなく、ピントの距離情報を参考にできると精度が増します。例えば、被写界深度の深さは、同じ絞り値であっても、カメラから被写体までの距離によって変化するので、ピント合わせと連携して、絞り具合を変えれば、より細やかな露出のコントロールが実現できるわけです。

従来、こうした撮影テクニックは、絞り優先AEやマニュアル露出などの露出モードを使うことで、撮影者が独自の判断として行っていました。しかし、現行製品のレンズでは、以前ならベテラン写真家の経験則だけに頼っていたテクニックを、カメラが自動露出で代行できるようになっています。そこで使われるのが、ピント合わせで得られた距離情報を、データとしてカメラボディ側に伝送し、自動露出に反映する機能です。

この機能は、メーカーにより「距離エンコーダー」などと呼ばれますが、現行製品のレンズでは、ほぼすべてに搭載されています。一方で、フィルム時代の古いAFレンズとMFレンズでは、距離エンコーダーが付いていないレンズが、たくさんあります。この機能の有無が影響するのは、最新型のデジタル一眼レフを使用する場合に、仕様書の通りの性能が、実践の撮影で発揮できるかどうか? というところです。

装着したレンズが、古い製品の流用だと、レンズからの距離情報が来ないので、フルオートでの露出決定の精度が少し下がります。よほど古いMF専用レンズでない限り、一応、自動露出は使えるのですが、本来あるべき露出制御の性能が、完全にははたらかない場合があり得るのです。この差は、特にフラッシュを使った撮影において顕著で、距離エンコーダーが付いた新型レンズを使ったほうが、発光量の制御が、極めて正確になります。

光学性能

同じ焦点距離の交換レンズでも、その光学性能は、年を追うごとに進化。旧製品に比べると、より新しい製品のほうが、レンズの全長が短くて、質量は軽く、また光学ズーム倍率も高くなっています。

例えば、1980年代には、標準ズームレンズといえば35~70mmが普通でしたが、後には、広角端が28mmのレンズが主流となり、現在では、反対側の望遠端が伸びて、100mmを超えるレンズも珍しくはなくなりました(APS-C専用レンズは35ミリ判換算の画角として)。また、標準レンズや望遠レンズという区別をなくして、1本だけで広角から本格的な望遠まで対応できる、デジタル一眼レフ用の高倍率ズームレンズも、最近ではユーザーの注目を集めています。

そのほか、最短撮影距離については、新しいレンズのほうが短くなり、AFでのマクロ撮影が、以前より気軽に楽しめるようになりました。まだフィルムカメラしかなかった当時の、初期型AF一眼レフでは、AF測距点が中央部に1つのみでしたが、現在のデジタル一眼レフでは、AF測距点が非常に多くなったので、近接撮影時でも、シャッターボタン半押しでフォーカスロックしてから構図を変える手間がなく、ピントがズレやすいマクロ撮影にも有利となっています。そのため、最短撮影距離が近い現行製品のレンズでは、設計通りの光学性能を十分に生かして、AFでのマクロ撮影が可能となるわけです。

しかし、昔の古いレンズでは最短撮影距離が遠いので、現行機種のカメラボディならではの、こうしたメリットを生かしきれません。保守的にフィルムカメラ時代の撮り方だけを続けるのなら、昔のレンズを流用するのも問題ではないのですが、カメラボディ側に備わっている新技術の恩恵を受けるには、やはりレンズは、新しいものを選ぶ必要がありそうです。

なお、デジタル一眼レフができて以降に発売されたレンズでは、レンズ内部の光学設計そのものも、デジタルの画像センサーで撮りやすいように調整されていますから、それは、フィルム時代とは、基本的に違うものだと言うことができるでしょう。この点は、APS-Cサイズのデジタル専用レンズに限らず、35ミリ判フルサイズのデジタル一眼レフで使うレンズについても、デジタル対応の光学設計に切り替わっています。つまり、フィルムカメラ時代のレンズは、デジタル一眼レフに流用することはできても、最新仕様のレンズが持つ実力には及ばないのが実情ということです。となると、新しいレンズを購入するべきかどうか、という判断が、これからは重要になります。

カメラボディ購入時、新しいレンズは買うべきか?

デジタル一眼レフを買った場合、フィルム時代のレンズを流用すれば良いか? それとも、新しいレンズを買うべきか? その答えは、機能性を考えれば、原則としては「なるべく買うべき」です。

現行機種のデジタル一眼レフは、基本的には、レンズキットなどで販売される、現行製品のレンズと一緒に使うことを大前提として設計されています。だから、フルオートで撮影する予定があるなら、メーカーが設計時に想定しているレンズやアクセサリーと一緒に使うべきなのです。ただし、主にマニュアル露出で撮影することが多いなら話は別で、古いレンズでも、ボディに装着さえできれば、自分で考えて設定した任意の数値で撮影できます。

風景写真を撮る写真愛好家の方の場合、もともと自動露出だけに頼らないことが多いので、その撮り方として、古いレンズを流用できる機会も増えます。しかし、マニュアル露出で風景写真だけを専門に撮る愛好家が、全カメラユーザーの中に、いったいどれだけいるのでしょう? おそらく、写真愛好家ではない、一般ユーザーの方の場合は、風景よりは記念写真などで人物を撮ることが多いはずです。その場合は、必然的にフルオートで撮ることが増えますから、レンズもフルオートに対応できる新製品のほうが、機材としての汎用性は高くなります。

一眼レフは、既に所有しているレンズを資産として活用できるのが魅力の一つ。しかし、そういった年式が古いレンズについての「魅力」を認識しているユーザー層は、実際には、それだけカメラ歴が長く、保有レンズの数が多いベテランの方が大半を占めます。そうであるなら、一眼レフシステムの現状は、「新しいレンズを買わなくて済む」のではなく、「古いレンズの用途も確保できるボディがある」と考えたほうが、おそらく、実態に合っているでしょう。

となると、デジタル一眼レフを、本来その機種が持っている性能の通りにフル活用するためには、装着するレンズも、新型ボディ購入時に、一緒に新しい製品に切り替えるべきという結論になります。カメラに買い替えどきがあるように、レンズにも、やはり買い替えどきというのはあるわけです。普及型デジタル一眼レフのキットレンズは、ビックリするほど高い値段ではないですから、「出費を惜しまずに専用レンズを調達したほうが撮りやすいはず」というように、ここは、実践重視で考えてみてください。

 
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