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2009.02.27

【一眼レフ用交換レンズの「逆」互換性】
古いカメラボディで、デジタル対応の新型レンズは使えるか?

今回は、前回の話題とは、正反対の状況を考えます。昔から所有している古いカメラボディに、最近、新しく買ったレンズを装着する場合、その互換性はどこまで保証できるか? フィルムカメラの時代にAF一眼レフが登場してから、すでに20年以上が経過しているので、実際には、こういった使い方をすることは、極めて少ないとは思いますが、一応、知識として覚えておくのも悪くはないですから、一通り、互換性情報を確かめてみましょう。

AF用レンズとMF用レンズのマウント互換性

前回のおさらいになりますが、現在のAF化されたレンズと、かつてMF(マニュアルフォーカス)しかなかった時代のレンズでは、レンズマウントがまったく違う場合があります。一眼レフがAF化された時点で、マウントの形状を変えたメーカーでは、それ以前からあったMF専用レンズは、物理的に装着ができません。

キヤノン、ミノルタ、オリンパスの3社は、MF専用時代のフィルム一眼レフと、現在のAFデジタル一眼レフのマウント形状が違うので、古いカメラに、最新型レンズを取り付けて使うことは、物理的に不可能です。

ニコンとペンタックスについては、AFでもMF時代とマウントの形状は変わらないので、古いカメラに、最新型レンズを装着することだけはできます。しかし、装着はできても、機能が連動しない場合があるので注意が必要です。

【MF→現行AFのマウント形状の変遷】(原則)
キヤノン:   FD→EF
ミノルタ:   MD→α
オリンパス:  OM→OM(AF対応/1980年代)→フォーサーズ
ニコン:    変わらず
ペンタックス: 変わらず

AF化の過渡期だけの例外

1980年代においてAF一眼レフが登場しはじめたとき、その普及の過渡期にだけ登場した、例外的なAFの機種があります。それらは、名称はAFと言っていますが、構造的には、現在のデジタル一眼レフで使われているタイプとは違う方式なので、レンズの互換性はありません。以下は、その代表例です。

キヤノンACレンズ

1985年に発売された、「T80」専用のAFレンズ。モーターは、レンズ側に搭載する方式です。マウント形状は、MF機と共通のFDマウントで、そのままAF機能だけ追加したのがACレンズです。当時のキヤノンも、ニコンやペンタックスと同じ発想で、AF一眼レフを作ったことが、実はありました。しかし、「T80」に続くFDマウント系のAF機が登場することはなく、結局、キヤノンでは、マウント形状を含めた全仕様をAF専用に切り替えてEFマウントを新開発し、EOSシリーズの登場へとつながりました。したがって、ACレンズとEFマウントの互換性はないので、「T80」では、EOS用レンズが使えません。

ニコンF3AF用レンズ

ミノルタ「α-7000」や、キヤノン「T80」の登場に先んじて、ニコンは、フラッグシップである「F3」の特殊仕様としてAF対応モデルを発売していました。それが、「F3AF」です。この機種のために、当時のニコンは、専用AFレンズを2本だけ発売しました。ただし、この機種は、AF以外の操作が電子化されていない時代のAF機だったので、そのレンズも、名前にAFが付くとはいえ、現行のニコンAFレンズとは仕組みが異なります。マウント形状だけは共通なので、現行のデジタル一眼レフに、「F3AF」のレンズを装着することはできますが、AFほか各機能は連動しません。

オリンパスOM用AFレンズ

オリンパスは、レンズ交換式のフィルム用AF一眼レフを、以前、発売したことがありました。そのAFレンズのマウント形状は、MF機と共通でした。しかし、オリンパスの場合、AF一眼レフより、AF対応後も継続販売されていた、MF専用一眼レフのほうが人気は高く、やがて同社のレンズ交換式AF一眼レフは姿を消しました。現在、同社はデジタル一眼レフを発売中ですが、現行のマウント形状は、かつてのAFレンズとはまったく違う、フォーサーズ規格。画面のアスペクト比も違うので、レンズマウントの直接の互換性はありません。

APS-C専用レンズの問題

デジタル一眼レフの時代になってから発売された交換レンズには、光学的に像のサイズそのものが小さくなる、APS-Cサイズ限定のデジタル専用レンズがあります。このレンズは、あくまでもデジタル専用設計なので、35ミリ判フルサイズしかなかった時代のフィルムカメラに装着しても、正常な撮影ができません。そのほか、レンズそのものの制御系等が昔と違うので、実質的には動作もしません。

絞り操作の問題

古いレンズは、レンズ側にある絞りリングを使って、絞り値を操作します。昔は各メーカーとも、この操作方法で共通していました。しかし、レンズの進化が進むにつれて、現在のデジタル一眼レフでは、各メーカーとも、絞りリングを使わない方式に改まっています。絞りは、ボディ側からボタンやダイヤルで電子的に操作し、レンズ側単体では、まったく絞りの操作ができないことが、現在では普通になりました。

この構造の違いで生じる最大の問題は、古いカメラボディに新しいレンズを装着する条件で、絞り値の制御が完全に不可能となること。レンズに絞りリングがある時代のカメラでは、ボディ側に絞り設定の機能が搭載されていませんから、絞りリングがない現行レンズを装着すると、まさしく「お手上げ状態」になります。一応、シャッターは切れますけれど、絞りが制御できないので、極めて実践での撮影は難しくなるでしょう。

キヤノンとミノルタ(現ソニー)の場合は、AF化時点でマウント形状を変えたので、絞りが動かないよりも前に、MF機にAFレンズが取り付けられないので、このような問題を心配する必要がありません。しかし、ニコンとペンタックスの場合は、マウント形状だけは共通していながら、現行の最新型レンズには絞りリングがないので、古いカメラに新しいレンズを付けると、絞り操作が効かなくなるのです。

新しいカメラボディに、古いレンズを付ける場合の互換性については、AF・MF共通のマウントを使うメーカーでは、制約付きながら保証はしており、せいぜい、自動露出が使えなくなる程度の影響で済みます。つまり、絞りリングを使って絞り値を設定し、マニュアル露出で撮影することは可能です。しかし、逆の条件で、フィルム時代の旧式ボディに、デジタル対応の新しいレンズを付ける場合は、絞り操作の点で互換性の保証がなく、マニュアル露出モードに切り替えても、満足な撮影はできません。これは、MF専用として現在も発売されている、ニコンやケンコーのフィルム用一眼レフについても該当しますので、レンズの流用には気を付けてください。

AF動作の相性

現行のデジタル一眼レフで使うAFレンズでは、駆動モーターをレンズ側に搭載する方向へ、全体的にシフトしつつあります。つまり、昔はカメラボディ側にモーターを搭載して、歯車(カプラー)で駆動力をレンズに伝える方式をとった各メーカーでも、現在は、キヤノンが一貫して採用してきた仕組みと同じような、レンズ内蔵モーター方式へと、設計思想を変えています。これらのメーカーでは、従来方式を完全に見切ったわけではないのですが、新製品のレンズでは、原則としてレンズ内蔵の超音波モーター駆動を採用しているので、いずれは、完全に仕様が移行するものと予想されます。

さて、レンズ内蔵モーター方式でも、それが電気モーターであることは変わりませんから、電源だけは必要です。しかし、レンズ内にバッテリーはないので、その電源を何らかの方法で、外側から供給しなくてはなりません。それは、どうやっているでしょう? だいたい察しはつくと思いますが、レンズ駆動の電源は、カメラボディ側からレンズマウント経由で供給しています。現行のデジタル一眼レフでは、いずれの機種でも、マウント部分を見れば、そこにある接点の一部がAFモーター用の電源になっていることがわかりますから、お手持ちの一眼レフについても、レンズを外して確かめてみてください。

しかし、古いカメラボディで、なおかつボディ内蔵モーター方式のAFを採用していた機種(キヤノン以外のほとんどのメーカーが該当)の場合は、マウント部に、モーター内蔵レンズの電源用接点がありません。このため、仮に現行の最新型レンズ(超音波モーターAFタイプ)を、旧式のカメラボディに装着すると、マウント部からAF用電源が供給されないので、AFモーターは動きません。要するに、旧式ボディで、最新型AFレンズは使えないということになります。ただし、MFでのピント合わせだけは可能です。ちなみに、光学式手ブレ補正機能がレンズ側に搭載されたレンズでも、ブレ補正するには電源が必要なので、それを供給できない旧式ボディでは、ブレ補正の効果が得られません。

ここで一つ、覚えておきたいのは、AFの電源供給と、絞り値の制御は、多くのメーカー(キヤノンを除く)で、それぞれ構造が別系統であるということ。したがって、旧式ボディと、新型レンズの組み合わせでは、メーカーや機種ごとに、いろいろな動作状況が考えられます。その中でも特に注意したいのが、ニコンとペンタックスの場合。ニコンでは、超音波モーター内蔵で、なおかつ絞りリングなしの最新レンズを、フィルム時代に登場した初期型AF一眼レフに装着すると、最悪の場合、AFと露出の両方について、機能の連動が全滅してしまう状況が考えられます。また、自動露出は使えても、マニュアル露出が使えないという特殊な例もあるので、もし、このような条件で使用することがあるなら、あらかじめ機能の対応を確認しておいてください。

同じくペンタックスについても、デジタル一眼レフの一部に、カプラー式のボディ内蔵AFだけしか使えない機種があったので(現在は生産終了)、年式の新しい超音波モーターAFレンズを組み合わせて使うときは、ボディとの相性を事前に確認する必要があります。ちなみに、ペンタックスの現行レンズにも、絞りリングはありません。しかし、現在のペンタックスでは35ミリ判フルサイズ対応のカメラボディを作っていない関係で、レンズの新製品は、すべてがデジタル専用のAPS-Cサイズ限定仕様となっています。そのため、同社の旧式フィルム一眼レフに、絞りリングのない新型レンズを付ける組み合わせは、前提条件として成り立たないので、絞り機能の連動について、問題が生じることもありません。

このほか、ミノルタ系のαレンズについては、外見では絞りリングがないので、キヤノン同様の電子マウントであるようなイメージがありますが、AFは原則的に、ボディ側内蔵モーターによるカプラー方式。そして、ミノルタブランドで製造された、αシリーズの古い一眼レフには、レンズ内蔵AF方式でモーターを駆動するための電源の接点が、レンズマウント部に付いていません(現行機種には搭載済み)。よって、現行製品となるソニー製の超音波モーター内蔵αレンズを、旧ミノルタの機種に装着して、AF機能を使うことはできません(MFは使用可能)。

以上をまとめると、要するに古いカメラボディでは、結局、古いレンズを探して使うしか、有効活用の方法がない。というのが、大原則のようです。

距離エンコーダーの連動

デジタル一眼レフで使用する現行製品のレンズには、「距離エンコーダー」が付いていますが、フィルム時代の古いカメラボディには、距離エンコーダーの情報を受信する機能がありません。したがって、レンズだけ最新型にしても、ボディが古ければ、被写体までの撮影距離の情報を、露出制御に反映することができません。せっかくの先進機能であっても、それが役に立たないカメラボディとレンズの組み合わせがあるという意味なので、この点も知っておいてください。

古い仕様のレンズを調達するには?

古いカメラボディは、当然ながら、現在では新品の生産がないのですが、そのボディと同じ時代に発売された古いレンズも、やはり製品の年式が古くなっているので、新品は存在しません。しかし、だからといって、現行製品の新しいレンズを買えば、古いカメラでの撮影が続行可能なのかと言えば、前述のように、AF機能や露出機能の連動という点で細かな仕様変更がなされている以上、実際のところは、いろいろな問題が生じます。

このような現状から、古い一眼レフの場合は、既に所有している古いレンズを、今後も大切に使っていくか、もしくは、中古品から相性の良い交換レンズを調達する方法をとらなければ、将来的には、使い続けることが難しくなります。しかし、すでに旧仕様のレンズは生産が終了しているので、中古カメラ市場からも、いずれは程度の良いレンズが枯渇することは確実です。これからも、古い仕様のレンズを使い続けていきたいのなら、良質の中古レンズは、見つけ次第、確保しておいたほうが良いのかもしれませんね。

フィルム時代のAF一眼レフや、ボディ内蔵AF限定の少し古くなったデジタル一眼レフを持っていて、その機種に最適なレンズが故障した場合は、新型のレンズだけを買い足しても、AFや露出設定が、元のように使えないことは、キヤノン以外の多くのメーカーにおいて、ほぼ確実。だから、もし旧式レンズが故障したら、その時点で、交換レンズだけではなく、カメラボディも含めて、全面的に買い替えを考える必要性も出てくるでしょう。つまり、レンズの故障が契機となる、一眼レフの丸ごと買い替えというのもあり得るのです。その場合は、どのメーカーの製品を買っても、コスト的には同等。もし、メーカーを乗り換えるなら、このタイミングが最適になるかもしれません。

中古レンズ探しか、丸ごと買い替えか? 実質的には、二者択一です。

 
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