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写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー

※掲載されている情報(製品の価格/仕様、サービスの内容及びお問い合わせ先など)は、ページ公開日現在の情報です。予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

2009.04.03

【美しい思い出よ、いつまでも。】
世界でいちばん小さな、タイムカプセルの作り方

早いもので、もう4月。卒業、そして進学、就職、転職など、人それぞれの新しいステージが始まります。その前に、これまでの思い出を、何か記念に残しておきたいという方のために、カメラと写真を使って、とても簡単にタイムカプセルを作る方法を、ご紹介します。春休み中に時間があったら、最後のチャンスに友達を誘って、挑戦してみてくださいね。

大切な思い出は、フィルムでも残そう!

デジタルカメラで撮った画像は、一応は「写真」と呼ばれていますが、本当はJPEG形式の画像データです。だから、1つずつの写真が、モノとして存在しているわけではありません。ということは、データを残しておいても、それを保存してあるディスクが丸ごと壊れてしまうと、写真を見ることが、永久にできなくなる可能性もあるということ。そうならないように、大切な写真は、デジタルカメラだけでなくフィルムでも撮っておけば、バックアップができて安心です。だから、後々、思い出にするための写真は、ぜひフィルムカメラでも撮っておいてください。

撮るだけで“タイムカプセル”になるフィルムがある

フィルムには、一般的な35ミリ判のほかに、APSフィルムという規格(正式にはIX240)があります。これは、1990年代後半に登場して注目を集めましたが、結局は、ほぼ同じ時代に開発されたデジタルカメラの普及とともに、表舞台からは姿を消しました。このAPSフィルム、実は、現在でも売っているのですが、35ミリ判フィルムとは構造が違って、撮影後の保存の仕方も、APSフィルムならではの方法となります。

35ミリ判フィルムもAPSフィルムも、撮影前の生フィルムはパトローネ(カートリッジ)に入っています。しかし、現像後、35ミリ判ではパトローネを捨てて、フィルムのみカットした状態でシートに収めるのに対して、APSフィルムでは、フィルムをカットしないでカートリッジに巻き戻します。要するに、フィルムが存在する限り、外側のカプセルが、中身のフィルムを、キズやホコリから守ってくれるというわけです。

ということは、APSフィルムを使えば、写真を撮るだけで、世界でいちばん小さなタイムカプセルができます。APSでも中身は銀塩フィルムなので、本当に土の中に埋めたりはしないほうがいいですが、普通に屋内で保存しておけば、10年後、20年後まで、必ず、美しい思い出を残すことができます。

現在発売中のAPSフィルムには、富士フイルム製の「フジカラー nexia 400」(ISO400カラーネガ)があり、コダックからも、ISO200のAPSカラーネガフィルムが発売されています。ちなみに、APSフィルムは構造的に自家現像ができないので、白黒用はありません。

APSフィルムの例。撮影には、APS専用のカメラが必要です(35ミリ判カメラには装填できません)。

APSフィルムが使えるカメラ

デジカメが普及して以降、APSフィルムが使えるカメラは激減しましたが、いまでも少しだけ残っています。

レンズ付きフィルム「写ルンです デート1000」(富士フイルム製)

おなじみ「写ルンです」の、APSフィルムバージョン。「写ルンです」では35ミリ判が標準仕様ですが、このモデルだけはAPSフィルムが入っています。感度は、単品フィルムより高感度のISO1000。いわゆる使い捨てカメラでありながら、日付け写し込み機能(オートデート)が付いていて、思い出のタイムカプセルを作るには好都合です。これならフィルム内蔵なので、APS専用カメラの調達は、考える必要がありません。ちなみに、いまでも新品で購入できる現行製品のAPSカメラは、これ1つを残して絶滅しました。

富士フイルムの「写ルンです デート1000」。使い方は、ほかの「写ルンです」と同じなので、特別な知識は必要なく、気軽に撮影できます。

中古機

APSフィルムを、フィルムのみ単品で購入する場合は、撮影用のカメラもAPS専用を選ぶ必要があります。もともとAPSカメラを持っている方は、それを使えばOK。しかし、それを持っていない方は、新品の購入が極めて難しいので、新たに調達するなら、中古の製品を探すことになります。

【APSコンパクトカメラ】

いまではコンパクトデジタルカメラとしておなじみの、キヤノン「IXY」も、実は、APS用コンパクトカメラシリーズのブランドとして登場したものでした。ほかのメーカー各社も、1990年代後半には、こぞってAPSフィルム用カメラを発売しました。

キヤノンが1996年に発売した、初代のAPSフィルム用コンパクトカメラ「IXY」。外観デザインだけは、現在の「IXYデジタル」にも受け継がれています。

【APS一眼レフカメラ】

APSカメラにも、レンズ交換ができる、一眼レフタイプが幾つかありました。キヤノン、ニコン、ミノルタなどの各社が、APS専用一眼レフを発売。結局、あまり普及はしませんでしたが、APSフィルムの性能を、最大限に引き出して撮影できる高機能を持っていたのが特徴です。

ニコンが1998年に発売した、「プロネアS」。APSフィルム用の一眼レフは、各社とも、外観が丸みを帯びた宇宙船のようなデザインを採用していたのも、一つの特徴です。

APSフィルム規格ならではの性能

APSフィルムは、伝統的な35ミリ判とは違った、オリジナルな性能を備えています。それは、アナログからデジタルへの過渡期に当たる、1990年代ならではのユニークな機能で、結局はデジカメに淘汰されたものの、まったく新しい技術を創造しようという開発姿勢だけは、仕様から読み取ることができます。いま思えば、APSフィルムという存在そのものが、まさにタイムカプセル的で、レトロフューチャーなテイストを持っていました。APSフィルムの特徴となる主な機能は、次の通りです。

アスペクト比の切替

APSフィルムは、銀塩フィルムでありながら、アスペクト比の切替が可能。撮影時の画像そのものは、横長画面の16:9(最大面積)で露光されますが、磁気データを同時記録する機能があることで、トリミングを事前設定して、35ミリ判フィルムと同じ3:2や、パノラマ画面の6:2(3:2の横2倍サイズとしてプリントが可能)で撮影したことにできます。ちなみに、いまデジタル一眼レフの規格になっているAPS-Cサイズとは、本来は、APSフィルム規格のCモード(3:2画面のクラシックモード)という意味でした。

撮影の中断と再開

APSフィルムでは、フィルムの“途中下車”が可能。撮影途中のコマで、フィルムを一旦巻き戻してカメラから取り出し、別のフィルムで撮影した後、また元のフィルムをカメラに戻して、中断したコマまで自動的に送って、撮影を再開するということができました。こうした機能は、APSフィルムが、磁気記録層を持っていることで実現されたのです。

フィルムスキャナとの連携

APSフィルムは、35ミリ判に比べて、フィルムスキャナで写真をパソコンに取り込むときに、装填の手間が少ないという特徴があり、まだデジカメがないという大前提では、パソコンとの相性は、比較的良好でした。ほぼ同時期に、ダイヤルアップ方式でインターネットの普及が始まり、ホームページ作りがブームになったことも、APSフィルムにとっては追い風だったようです。しかし、それは、やがてデジカメに淘汰される宿命を、最初から暗示する現象でもありました。

APSフィルムの現像と、写真の保存

APSフィルムは、あくまで銀塩フィルムなので、撮影後、キタムラをはじめとするDPE店にオーダーして、必ず現像してください。タイムカプセルを作るのが目的でも、撮りっぱなしの未現像で放置しないよう、ご注意を。現像していないフィルムには、有効期限(賞味期限のようなもの)があるので、そのままで放置すると品質的に劣化します。また、将来、仮にAPS用のフィルム現像サービスそのものを、廃止するようなことがあった場合(いまのところは、あくまで「仮に」という予想だけです)、未現像フィルムを残すと、永久に現像できなくなる可能性も考えられますから、撮影済みAPSフィルムの現像は、絶対に忘れないでください。

なお、フィルム現像は、1本単位で料金が決まるので、撮影時には全コマを使い切ったほうが得です。未露光部分があると、そこにも現像代がかかって、もったいないですから。

フィルム現像が完了すると、APSフィルムはカートリッジ内に巻き戻った状態で返ってくるので、そのフィルムは、丸ごと保存してください。35ミリ判のように、フィルムを切って透明シートに詰めた状態にはなりませんが、そういう構造ですから心配無用です。とはいえ、興味本位でカートリッジ内のフィルムを引っ張り出したりすると、故障や破損の原因になり、プリント時にも支障が出ます。当然ですが、自分でフィルムを引っ張り出して、カットしないでください。フィルムが未現像か現像済みかということは、カートリッジ底面にある表示を見るとわかります。それから、いつ何を撮ったフィルムなのか、忘れないようにするため、カートリッジの余白部分に、メモを書き込んでおくのもおすすめです。

APSフィルムをDPE店で現像すると、その中身の写真すべてを縮小して、全コマを1枚の印画紙に焼き付けた、インデックスプリントが付いてきます。焼き増しするときは、これを見本として使うので、35ミリ判のように、フィルムシートを透かして、ネガ上から該当の写真を探す作業は、まったくありません。しかし、インデックスプリントは、うっかり紛失しやすいので、ご注意を。印画紙の裏面に、フィルムのカートリッジと同じメモを書き込んでおくと、紛失対策になります。また、APSフィルムで撮った写真がたくさんある場合は、インデックスプリントと、フィルムの入ったカートリッジを照合できるように、重複しない番号や日付で管理しておくのも良いでしょう。混ざると、後で探すのが大変です。

いつか、タイムカプセルを開ける日のために

APSフィルムは小さいので、しまった場所を忘れないように、記録を残しておきましょう。いまから10年後にも、おそらくキタムラでは、現像済みAPSフィルムからのネガプリントなら、受け付けていると思います。でも、将来がどうなるか心配な方は、一応は全コマを、いまのうちにプリントしておいてください。

さて、これで一通り、APSフィルムを使ってタイムカプセルを作る方法が、わかりました。あとは、これを読んだあなた自身が、「自分の場合は何を撮ろうか?」と、考えるだけです。作るのは、あなた自身のタイムカプセル。学校の勉強ではないので、お手本はありませんし、テストではないので点数も付きませんし、これが正解とか、こうすれば無難といった方法は、まったく存在しません。ほかの誰かに評価される必要はないのですから、とにかく面白いかどうかが問題です。だから、自由に発想して、アイデアに詰まったら自力で悩んで、思い出に残る写真を撮って、あなただけのタイムカプセルにしてください。

いまは、くだらない写真だと思うようなものでも、時が経てば、きっと懐かしくなるものです。仲の良い友人との記念写真はもちろん、目に止まったものは、風景でも、持ち物でも、何でも撮っておきましょう。自分なりの感覚で面白ければ、撮り方はそれでOKですから、普段は写真にあまり興味がないという方も、この機会にタイムカプセル作りに挑戦してみてください。

この春、卒業を迎えたという学生さんなら、最後のチャンスで、春休み中の誰もいない母校に友達を誘って、桜の花を背景に記念写真をとっておくのも良さそう。いまではなくて、この瞬間を懐かしむであろう、とある未来の日のために、いましか撮れない写真を撮るのです。そんな楽しみ方ができるのも、写真が形として実在するフィルムならでは! そして、そんな写真を、仲間が全員そろって撮れる機会があるのも、学生時代だけです。タイムカプセルは、若いときにしか作れません。いつか、そのタイムカプセルを開ける日のために、今日のいまを写真に残しておきましょう。

 
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