写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2009.07.10
今回も、7月22日の日食(天文現象)に関係がありますが、全工程の約3時間をしっかり観測する気はないという方のために、あまり本格的ではない“日食見物”と、写真撮影の方法をご紹介したいと思います。当日、たまたま外出する機会があって、少しの時間だけ余裕があったら、日食でも眺めてみようかというくらいの気分で、参考にしてください。
今回の日食は、日本国内のごく一部にある離島で皆既日食となりますが、それ以外の場所では、部分日食となります。部分日食だけに限れば、一応は日本全国どこでも観測は可能ですから、大多数の人は、部分日食だけを見ることになるでしょう。
ところで、7月22日は平日、日食は、その日の午前中から、正午過ぎまで見られます。ということは、夏休みが始まっている学生さんは特別としても、ほとんどの人にとっては仕事中なので、あまりじっくりと観測することは難しいでしょう。でも、その時間に外出する機会があったら、ちょっとの間だけ、ペットボトルのお茶でも飲みながら、立ち止まって空を眺めてみるのも良いのではないでしょうか。日食の経過を、すべて観測するのは無理でも、欠けている太陽を一瞬だけ眺めるくらいなら、とても簡単なことですから。
部分日食は、最初から最後まで見ると、だいたい2時間半~3時間弱程度の時間です。もしかすると、地域によっては、当日の天気が芳しくない可能性もあるわけですが(こればかりは空模様しだいなので)、でも、日食全体の観測時間が3時間あれば、おそらく日本全国のどこかでは、少なくとも部分日食は見られるはずです。だから、とりあえず、あまり気負わないで日食を見る方法だけ知っておいて、それで、もし良いタイミングで太陽が出ていたら、その欠けている様子を見物することにしましょう。
以下に、特別な機材がなくても、間に合わせの方法だけで、太陽の欠けた様子が安全に見られる方法をガイドします。
日食の観測というと、当日は、絶対に雲ひとつ無いような快晴になる! というつもりで計画を立てることが多いと思いますが、実際には、どのような天気になるかわかりません。また、場所によっても、天気は変わります。雲りや雨の可能性もありますし、肝心の太陽があるところだけ厚い雲がかかっているような、中途半端な天気になることもあり得ます。こればかりは、まさに「お天道様だのみ」なのです。
そんな感じで、パターンとしてあり得る天気の中では、もちろん「薄雲り」という場合も考えられます。「薄雲り」というと、何となく中途半端で残念な感じがしますが、実はこれ、意外と日食の観測には都合が良いこともあるのです。
薄雲りの場合は、太陽の強い光を、雲がほどよく減光してくれるので、肉眼だけでも薄い雲越しに日食を観測できることがあります。そして、NDフィルターがなくても、薄雲りの場合は、普通のコンパクトデジカメだけで撮影が可能です。
もし、薄雲りで雲越しに日食が見られる状態なら、地上の風景との輝度差が少ないので、風景の中に日食の太陽を取り入れて撮影することも可能。そんなことがあるなら、風景派にとっては、薄雲りこそベストの天気かもしれませんね。
アスファルトで舗装された道路が、雨上がりなどで水に濡れている場合、ある程度は光を反射します。そこに、ちょうど良い水溜りができていれば、強い光を抑えながらも、その表面には、太陽の形がわかる程度の映り込みができるので、そこで日食の様子を見ることができます。写真に撮影する場合、一眼レフなら、マニュアル露出に切り替えて、最高速シャッターと、最小絞り(f値が大きい数字)に設定すれば、NDフィルターなしでも、なんとか写真に撮ることは可能です。
部分日食を、道路にできた水溜りに映して見た様子。1990年代に、フィルムで撮影したもの。
大きな広葉樹などの陰にできる「木漏れ日」は、よく見ると、1つ1つの光が、太陽と同じ形をしています。こうなるのは、木漏れ日が、天然のピンホールカメラの像だからです。たくさんの葉っぱどうしがくっついて“絞り羽根”を作り、その小さな孔を通り抜けた光が、地面に像を結ぶことで木漏れ日ができるという仕組み。だから、日食のときには、木漏れ日の形も欠けています。
もともとピンホールカメラで減光された光を、地面に投影された状態で見るわけですから、木漏れ日を通して日食を観察すれば、強い光で目を傷める心配は、まずありません。日食グラスがあっても、長時間にわたって太陽を見続けると目が疲れますから、たまには木陰で休憩して、木漏れ日を眺めるのも面白いでしょう。
木漏れ日を撮影する場合は、普通に自動露出で撮ると、日陰の全体に露出が対応して、木漏れ日の部分が白とびしてしまいますから、マイナスに露出補正するか、マニュアル露出モードで明るいところに露出を合わせて撮影します。
ちょうどよい木漏れ日ができる木を見つけたら、お花見のように、弁当やお菓子持参で日食を眺めるのも、また趣きがあるかもしれませんね。
ND400フィルターを使って日食を撮影する場合に、シャッターを切らないでファイダー越しに様子を見ているときは、プレビュー機能を使って、レンズの絞りを効かせておくと、NDフィルターの効き目以上に、ファインダー像の減光効果を得られます。この方法は、写真撮影を行う方に限って、露光中以外に実行可能です。
一眼レフは、写真用語で言うと「完全自動絞り」という機構が付いていて、シャッターを切って露光している瞬間以外は、装着したレンズの絞り羽根を、完全に開いているもの。通常の撮影では、このほうが光学ファインダーの像を明るくできるので、ピントを確認しやすくなるのです。しかし、普段どおりに絞り開放状態でファインダーを覗くと、日食の場合は、少しまぶしく感じることがあるかもしれません。
そんなときは、カメラボディに付いているプレビューボタンを押しておくと、絞り羽根が設定したf値まで動くので、露光中と同じ状態になります。この機能は、通常は被写界深度の確認に使いますが、レンズを通る光が少なくなって、ファインダー像が暗くなる効果もあるので、太陽のまぶしさを抑えられます。
ただし、プレビュー機能だけに頼って、カメラの光学ファインダーで太陽を見るのは危険ですから、ND400フィルターは付けておいてください。この方法は、撮影時のまぶしさを軽減するための補助的な方法であって、これが日食グラスの代用になると言っているわけではありません。撮影せずに、望遠鏡の代わりとしてファインダーを見るだけの目的で、日食観測に一眼レフカメラを流用しないでください。
日食の観察用としては向かない例を、挙げておきます。良かれと思っても実際には危険なので、おすすめしません。科学的根拠がない、単なる俗説の道具は、使用しないでください。また、光がまぶしいと感じたときは、我慢して見ようとしないでください。
サングラスは可視光線を減光するので、見た感じでは暗くなったように思えますが、赤外線や紫外線は透過してしまいます。したがって、目を保護していることにはなりません。
これも、サングラスと同じ理屈で、目を保護できません。
現像したフィルムの先端などにある感光部分で減光できるという話は昔からありますが、これも、まぶしくないだけで、目の保護にはなりません。ちなみに、未現像のフィルムは、そもそも光を通さないので、観測の役には立ちません。
これも、サングラスと同じ理屈で、太陽光からは目を保護できません。スモークガラスは外側から見ると暗そうですが、自動車の内側から外を見たときには、さほど減光されないものです。
ろうそくなどを燃やしたときに出るススをガラスに付けて、それで減光すれば良いという話も昔からありますが、これも、まぶしくないだけで、目を保護できるほどの効果はありません。また、ススは手や顔に付きますから、後始末も大変です。わざわざススをガラスに焚き付けるだけの手間をかけるのであれば、キタムラでも販売している「日食グラス」※の使用をおすすめします。
※注:日食グラスは現在品薄ですので、キタムラの各店頭にて在庫をご確認ください。
日食観測では、普通は、太陽を接眼レンズで見ることはなく、必ず像を投影します。このことを知らないで、他人が架台にセットしてある望遠鏡の接眼レンズを、許可を得ないで勝手に覗いたりすると、目に強いダメージを受けることにも、つながりかねません。観測以前にマナーの問題でもありますが、好奇心が仇になることもあり得るので、ご注意ください。
あなたの大切なお写真の現像・保存・プリントは写真専門店カメラのキタムラにおまかせください。