写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2009.09.11
現行機種の最新型デジタルカメラでは、被写体別に適切な露出制御を行う、「シーンモード選択」の大部分が自動化されているので、撮影するごとにユーザー自身が、被写体に合うモード設定を考える必要はありません。それでも、自動選択の対応メニューから外れる、特殊なシーンモードもあるので、その場合だけは、従来どおりに手動設定で、モードを選ぶ必要があります。今回は、その一例を取り上げて、実践的な活用の仕方を考えます。
「シーンモード」とは、プログラムAEのバリエーション群です。ちなみに、プログラムAEは、原則として4つある、露出モードの中の1つ。写真の露出(露光量)を決める、絞り値とシャッター速度の2つとも、カメラが勝手に決める露出モードです。その中で、普通のプログラムAEに加えて、幾つか別に用意されている、被写体別のプログラムAEがシーンモード。これは、露光制御系統の全体図としては、露出モードの下に付く、オプション設定に該当します。
シーンモードを使用した撮影の際には、絞りやシャッター速度の数値は、見なくても構わないのですが、シャッターを切る前に、モードメニューから、特定のマークなどを選ぶことで、風景や、人物ポートレート、スポーツなど、被写体の状況に応じた、最適なプログラムAEを設定することができます。ベテランの方は、プログラムシフト機能に代わるもの(シャッターを切ってもキャンセルされないプログラムシフト)が、シーンモードであると考えてください。
このシーンモード機能は、コンパクトデジカメの全機種、およびデジタル一眼レフのうち、普及機と中級機に付いています。フラッグシップ級の一眼レフには、シーンモード機能はありません(プロ写真家はあまり使わないので)。
現行機種(主としてコンパクトデジカメ)の場合、シーンモードは、自動設定と、手動設定のいずれかを選ぶことも可能。風景・夜景・人物・フラッシュ撮影といった、ごく一般的な撮影シーンのみでカメラを利用する場合は、実質的に、手動によるシーンモード設定が必要なくなり、シャッターボタンを押すだけで、適切なシーンモードが、自動設定されて撮影できます。
ただし、カメラの仕様をよく見ると、シーンモード自動設定の選択肢からは外れた、個別のシーンモードが、いくつかあります。この個別のシーンモードを使う場合は、自動設定を解除し、画面を確認しながら、使いたいモードのマークを手動で探して選ぶことになります。こうした個別のシーンモードは、各カメラメーカーごとに少しずつ違いがありますが、ユーザーの意思として、撮影したい被写体が決まっているのであれば、それに適したシーンモードが付いているカメラを購入時点で選んでおけば、期待した通りの写真が撮りやすくなります。
一部メーカーの機種には、「美術館」モード、もしくは、「ミュージアム」モードと呼ばれる個別のシーンモードが付いています。今回は、例として、この「美術館」モードの場合を見てみましょう。
このモードは、「フラッシュを発光させずに、美術館のような屋内の場所で、陳列されたモノを撮るモード」という意味。フラッシュを使わないという部分が、重要です。これは、単に「(展示品を)複写するためのモード」ではないので、なんとなく名前につられて勘違いをしないように、カメラ付属の取扱い説明書を読んで、機能の意味を正しく覚えてください。
言われてみれば当然の話ですが、「美術館」モードは、決して、美術館だけで使う必要はありません。なぜなら、カメラそのものには、レンズの前にある被写体が、美術館なのかどうかまで、認識できる機能などないからです。このシーンモードは、照明のある屋内で、フラッシュを使わずに撮影する状況なら、どのような場所でも応用が可能。美術館だけでなく、博物館や、郷土資料館、あるいは学校の文化祭の展示や、商店のディスプレイなどでも、技術的には、このモードで撮影できます。
美術館に展示されている美術品の本体については、一般客による撮影を禁止している例が、実際には多くみられます。ただし、撮影禁止かどうかの規定は、各美術館の運営方針や、展示内容によっても異なるので、中には、展示品を撮影可能な美術館も、あるかもしれません。あくまで一般論として考えれば、撮影の禁止と許可は、以下のような対応になっているようです。詳細については、訪れる場所ごとに、撮影が可能かどうか判断してください。
美術作品の本体は、原則撮影禁止の場合が多いのですが、フラッシュ撮影だけを禁止している場合もあります。フラッシュのみ禁止(フラッシュなしの場合は撮影可)という場合であれば、デジカメの個別シーンモードにある「美術館」モードを使って、本当に美術館で撮影することは可能です。そのほか、美術館の玄関ホールや内装など、展示された美術作品の本体以外のエリアであれば撮影できる場合など、個々のケースで対応は異なりますので、実際には、各美術館を訪ねたときに、そこにある掲示を見て確認してください。
美術館には、建物の外で、大型の彫刻作品などを展示している例があります。これについては、美術作品の本体であっても、特には撮影を禁止していないことが多いようです。ただし、こうした屋外展示品を撮影する場合、デジカメで使うべきシーンモードは、「美術館」モードではありません。この場合の正解は、「風景」モードか、「ポートレート」モード、あるいは自動選択など。美術館でも、屋外展示品を撮りたいときだけは、室内用の「美術館」モードは使わないのです。なお、「風景」モードは、美術品を周囲の背景と一緒に、記念写真風に撮りたいとき、「ポートレート」モードは、背景をぼかして、人物像の彫刻などを撮りたいときに使います。
博物館でも美術館でも、展示企画の趣旨が微妙に違うだけで、展示物の撮影状況としては、ほとんど同じ。撮影が許可されている場合、デジカメのシーンモードは、「美術館」モードを選べば、博物館でも問題なく撮影できます。ただし、博物館であっても、歴史系の博物館では、古美術品などが陳列されている場合があり、実態としては美術館と同じなので、貴重な資料を、光に起因する劣化から守るために、撮影禁止またはフラッシュ禁止となっている例があります。博物館で展示品を撮影したいときは、可能かどうか、まず館内の表示を見て確認しましょう。なお、自然科学系の博物館の場合、撮影を禁止している例は、美術館に比べれば、少ないようです。
商店(店舗)の内部は、普通は、一般利用客が、勝手に撮影してはいけません。どうしても撮影したければ、店のスタッフに一声かけて、撮影の目的などを説明し、許可を求めるのがマナーです。しかし、「撮影禁止」という掲示が、しっかり出ている店もあります。写真撮影を禁止する理由は、おそらく、客を装った同業者のパクリ対策、すなわち、価格調査や、店の意匠(内装や商品陳列のデザイン)が勝手に模倣されることを警戒しているからだと思われます。また、書店(本屋)で、本を買わずに、立ち読みで済まして中だけを写真に撮ると、電子万引きという犯罪(窃盗)になるので、そのような目的のためにカメラを悪用しないでください。ちなみに、いわゆる昔からのアマチュア写真愛好家は、主に風景や動物などを撮ることを好むので、商店の内部を撮影する趣味というのは、あまり聞いたことがありません。
デジタルカメラで撮影するとき、普段はあまり使わないような、特殊なシーンモードに設定した場合は、撮影終了後に解除することを、絶対に忘れないように注意してください。撮影前のモード設定は、意識的に行うので、あまり忘れないものですが、撮影が終わると、安心して設定への意識が途切れるので、撮影経験が長い人でも、意外と解除だけは忘れやすいものなのです。
設定解除を忘れると、撮影場所を移動した後も、被写体に適さないシーンモードのまま、延々と撮り続けることになります。設定中のシーンモードは、液晶モニター上のどこかにマークで表示されているはずなので、こまめに確認することをおすすめします。
ちなみに、シーンモード機能がないプロ用の高級一眼レフでは、こういった「モード解除忘れ」のリスクはありません。それ以外のシーンモード搭載機の場合、便利さと操作ミスは、いつも表裏一体になっているというわけです。
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