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2009.09.18

【シーンモードの応用】
コンパクトデジカメを自在に操るコツ

コンパクトデジカメの多くは、一眼レフとは違って、露出モードの切替ができません。基本的に、露出制御はプログラムAE1つだけで、シーンモードはそのオプション。つまり、露出モードそのものは、プログラムAEに限定されています。一眼レフの場合、露出モードは、プログラムAEのほかに、絞り優先AE、シャッター速度優先AEと、マニュアル露出の4択。どの機種でも基本的には、この4モードが必ずあります。これらの特徴のため、一眼レフを使い慣れた人が、普及タイプのコンパクトデジカメを使うと、プログラムAEしかないので、勝手が違うことがあるわけです。そうしたときに、どのような代替手段をとれば、コンパクトデジカメを自在に操れるか? ということを、今回は解説したいと思います。

プログラムAEで撮る場合

基本的に、コンパクトデジカメは、プログラムAEだけで撮ることが多いものなので、この使い方に関しては、何の問題もありません。むしろ、プログラムAEに限れば、コンパクト機のほうが、一眼レフより高性能な場合があるほどです。(例えば、人物を撮る場合、コンパクト機では、ほぼすべての機種で顔認識機能が使えますが、一眼レフの場合は、ライブビュー機能搭載の最新機種のみ、顔認識機能を使用して撮影することができます。

絞り優先AEの代わりになる機能

絞り優先AEは、一眼レフの場合、背景をぼかすか、被写界深度を効かせる(手前から奥まで幅広くピントを合わせる)ために使います。それと同じことを、コンパクトデジカメで実行するには、以下のような機能を使います。

背景をぼかすとき(絞りを開く)

一眼レフと比較すると、コンパクトデジカメに付いているレンズは、光学上の実質的な焦点距離(換算しない焦点距離)が、その構造上、極めて短くなっています。それは、数字だけを見ると、超広角レンズのようなミリ数なのですが、レンズが像を結ぶ部分にある画像センサーの面積が、一眼レフ用やフィルムよりも極度に小さいので、撮影した結果としては、コンパクトデジカメでも、ほかの種類のカメラと同じような画角(写る範囲)になるわけです。
ただし、ここが重要ですが、35ミリ判換算しても、光学上の焦点距離が、物理的には伸びるはずがないので、レンズだけに注目した場合の光学性能は、短焦点距離なら、一眼レフ用の超広角レンズと同じ。だから、コンパクトデジカメでは、基本的な設計の問題として、背景はボケないのです。
それでも、一応それなりに、背景をぼかして撮るには、次のようにコンパクトデジカメの機能を設定します。

【1】光学ズームレンズを望遠で使う

ズームの全体にわたって、一眼レフ用のレンズより焦点距離が短いといっても、やはり望遠側のほうが、光学レンズの焦点距離は長くなります。したがって、広角よりは望遠を使ったほうが、幾分、背景はボケやすくなります。なお、デジタルズームは電子像を部分拡大しているにすぎないので、光学レンズの被写界深度には関係がありません。

【2】ポートレートモードを使う

コンパクトデジカメのシーンモードを、人物ポートレートに設定します。こうすると、プログラムAEであっても、最も絞りを開いた設定にできます。人物ではなく、動物や模型を撮る場合にも、ポートレートモードが使えますが、人物以外の場合、顔認識機能だけは連動しません。この場合、前述のように、レンズは望遠側で使ったほうが効果的です。

【3】ISO感度を適度に下げる

必要以上にISO感度が高い場合、プログラムAEは、シャッター速度を上げ、それでも露出オーバーになる場合は、絞りを絞ってきます。この逆の感度設定を行えば、必然的に絞りは開くので、背景をぼかしやすくなるわけです。背景をぼかす撮り方は、普通は、動かない被写体に対して使うものですから、シャッター速度は、あまり速くなくても問題がありません。現行機種では、本物の手ブレ補正機能(「軽減機能」ではないもの)が付いている機種が多いので、ほとんど手ブレはしませんから、夕景や夜景でもない限り、ISO100程度までなら、感度を下げても大丈夫です。

【4】電子的に背景をぼかす機能を使う

最新機種の一部には、レンズの光学性能だけに頼らず、カメラ内の電子的な画像処理で、人工的な背景ボケを自動生成する機能の搭載が始まっています。これと同じ画面効果は、撮影した画像を、後でパソコンを使って加工しても得られます。しかし、カメラ側に搭載された新しい機能を使えば、従来あった、パソコンを操作する手間と時間を省略して、誰でも瞬時に、背景ボケを演出できるというわけです。

ピントを深くするとき(絞りを絞る)

この目的であれば、コンパクトデジカメは、もともと構造的に適しています。なぜなら、光学ズームレンズの焦点距離が、全体的に超広角レンズ並みなので、好むと好まざるとに限らず、ピントは深くなってしまうからです。ただし、万全を期するとすれば、背景をぼかす場合に対して、逆の設定を行ってください。

【1】光学ズームレンズを広角で使う

もともと短い、コンパクトデジカメ内蔵レンズの特性を、フルに使って、ズームの広角端で被写界深度を稼ぎます。主要被写体が小さく写って困るときは、自分が歩いて被写体に近付くことで、より大きくとらえることができます。

【2】風景モードを使う

シーンモードを「風景」にすると、画像の全体にピントが合った写真になります。

【3】ISO感度は自動で

コンパクトデジカメの場合、ISO感度を上げても被写界深度の向上には、あまり効果がないので、設定は慎重に。コンパクト機の絞りは、最小まで絞っても、f8か、f11くらいしかありません。また、絞り羽根がなくて、減光用のNDフィルターで明るさだけを変えている機種も、エントリークラスなどには見られます。つまり、普通に風景や記念写真を撮る状況を考えるなら、レンズの光学性能だけでも、もともと深いコンパクトデジカメの被写界深度が、感度設定に連動するくらいの絞りの効果によって、さらに深くなる可能性は低いのです。ISO感度を上げすぎると、画面にノイズが入って不鮮明になることがあるので、逆効果にならないよう、ほどほどの高さに設定しましょう。基本的には、普通のオート感度で構いません。

シャッター速度優先AEの代わりになる機能

一眼レフの場合、シャッター速度優先AEは、高速シャッターを使って動く被写体を止めて写すか、逆にスローシャッターを使って、被写体のブレや軌跡を描きたいときに選びます。これと似たことを行う、コンパクトデジカメでの設定は、次の通りです。

高速シャッターを使うとき

コンパクトデジカメでは、開放F2.8~5.6くらいのレンズを、実際の設定値で、f8~11くらいを上限として使うしかないので、一眼レフよりも、絞り値の選択可能域が狭くなります。そのため原則として、露出(露光量)のコントロールは、シャッター速度で行うことが多くなります。つまり、コンパクトデジカメのプログラムAEは、構造的に言って、もともと絞り値が限られた、特殊な絞り優先AEのような傾向を持っていることになるわけです。ここで、自動設定されるシャッター速度を、間接的に支配しているのがISO感度設定なので、ユーザーがISO感度を変えると、シャッター速度優先AEがないコンパクトデジカメであっても、使いたいシャッター速度を、ある程度は選べるようになります。細かな設定方法は、以下をご覧ください。

【1】光学ズームレンズを中程度に

ズームレンズでは、望遠側のほうが、開放F値は暗くなります。よって、あまり暗くなり過ぎない程度のズーム位置にして使えば、同じ露光量でのシャッター速度は、より速くできます。

【2】スポーツモードを使う

シーンモードを「スポーツ」にすると、高速シャッターが切れます。スポーツ以外の動くものも、シーンモードはスポーツで構いません。走っている動物や、鉄道写真を撮る場合などでも、これを使えばOKです。

【3】ISO感度を上げる

シーンモードの「スポーツ」で自動設定されるISO感度は、実は、そのカメラの最高感度ではないという例があります。その場合、シーンモードは解除して普通のプログラムAEを選び、手動でISO感度を上げて使ったほうが、より速いシャッター速度になります。ただし、高感度撮影では、画面にノイズが入ることもあるので、撮影目的を選んで、適切なISO感度に設定してください。

スローシャッターを使うとき

基本的には高速シャッターと同じ考え方ですが、高速シャッターとは、逆の効果が出るように設定します。

【1】ISO感度を下げる

自動感度を解除して、手動で低いほうのISO感度に設定すれば、シャッター速度も下がります。流し撮りなどの場合に、この方法が応用できます。

【2】フラッシュを発光禁止にする

暗い場所で、ISO感度を下げると同時に、フラッシュも使わない設定にして撮影すると、自動的にスローシャッターになります。この場合、三脚の使用をおすすめします。

マニュアル露出の代わりになる機能

ほとんどのコンパクトデジカメには、マニュアル露出モードが付いていないので(搭載例は高級機のみ)、基本的には、前述のような方法をとって、プログラムAEとシーンモード選択だけで、あらゆる撮影に対応することになります。しかし、それでも露出(露光量)を、ある程度は微調整できるので、撮影者の表現意図を反映することは、コンパクトデジカメでも可能です。露出の微調整には、以下のような方法をとります。

【1】露出補正機能を使用

露出補正は、全メーカー・全タイプ・全機種のデジカメに搭載されている機能です。これを使って、必ずシャッターを切る前に、任意の補正値を設定することで、測光値(露出計の出た目)と、実際に撮影するときの露出設定値を、意図的にズラすことができます。露出補正機能は、プログラムAEの、どのシーンモードに対しても併用できます。何も露出補正しない状態が、「プラス・マイナス0」で、そこからプラス側に補正すると、画面全体が普通より明るく写り、マイナス側に補正すると、普通より暗く写ります。デジカメなら、実際の補正量は、試しに1コマ撮って、アフタービューで再生画像を確認した後、自分の好みで適当に決めればOK。露出補正を設定した後は、必ず、もう1回、シャッターを切って撮り直します。(露出補正は、撮影した後の画像を自動加工する機能ではありませんから、露出補正だけセットしてもシャッターを切らなければ、失敗したコマしか残りません。)このとき、最初にテスト撮影したコマは、消去しても可。補正量は個人的な好みで変わるので、いろいろと試してみてください。なお、露出補正すると、実際には、シャッター速度もしくは絞り値の、どちらか一方が微調整されて、露光量そのものが変わることになります。露光量(写真の明るさ)を一定に保って、シャッター速度と絞り値の組み合わせだけを変えるのがシーンモードですから、露出補正とシーンモードは、まったく違う機能です。

【2】長秒時露光機能を使う

普通のプログラムAEとは別に、長秒時露光専用の機能が付いた機種もあるので、その場合は、バルブ(B)に準じたスローシャッターでの撮影が可能です。

 
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