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2009.10.02

【デジカメにしかない機能】
フィルム時代の経験則が通用しないテクニックを使いこなす

デジカメは、いかにデジタルとは言っても、カメラ内で画像センサーより前の位置にある、光学レンズ周辺の部分は、ほとんどフィルムカメラと構造が変わっていません。また、実際に撮影するときも、シャッターを切る瞬間より前の時点では、フィルムカメラもデジタルカメラも、同じような動作をしています。だから、撮影操作の大部分で、ユーザーは、フィルム時代の経験則を生かすことができます。しかし、逆に言えば、画像センサーより後ろの部分は、ベテランも知らない未知の世界。そこで、こうした経験則が使えない、デジタル独自の部分について、使いこなすための基本テクニックをまとめてみました。

カメラの仕組み

一眼レフを例に、まずはカメラの構造をおさらいします。カメラには、完全に外部の光を遮断できるハコのほか、光学レンズ・絞り機構・シャッター部品の3点セットが必要で、フルマニュアルで操作するなら、これだけあれば撮影はできます。あとの部品は、操作しやすくするための付属品です。

現在のカメラでは、露出を自動化するために、測光機能が付いています。一眼レフの場合、測光を担うTTL露出計は、ファインダー部分の内側にあります。したがって、デジタル一眼レフでも、原則的には、露出制御系統と撮影用の画像センサーに関係はなく、シャッターが開くまで、画像センサーは遮光されています。(コンパクト機では、画像センサーが露出計を兼用します。)

また、ピントを自動的に合わせるため、AF測距機能が付いています。一眼レフの場合、原則として内側の底に測距センサーがあって、マウント部から見えるメインミラーの裏に付いた、もう1つの小さな鏡が、半透明であるメインミラーを素通りした一部の光を、下側に誘導してAF測距に利用します。したがって、デジタル一眼レフの場合、測距センサーも、撮影用の画像センサーとは、関係がありません。(ライブビュー時と、コンパクト機では、画像センサーがAF測距にも使われます。)

以上の点から、カメラの中でも、「露光」に直接関わらない「機械の調節」を目的とする部分に関しては、フィルム用でもデジタルでも、基本的に同じとみなすことができます。したがって、デジタルカメラで、撮影用の画像センサーが担っている機能とは、フィルムカメラの場合でいうフィルムに相当するわけです。デジタルカメラの場合は、フィルムを交換しませんから、フィルム交換をシミュレートするために、いろいろな補助設定があります。つまり、昔ならフィルムを買う段階で、その種類や感度を選ぶときに必要だった知識が、デジタルでは、撮影直前の設定で使う知識に切り替わったので、そのための設定方法を覚え直す必要があるのです。このあたりが、慣れないと難しく思えるかもしれません。ただし、デジタルカメラには、色が反転した「ネガ像」はないので、その点だけは、フィルムよりも、わかりやすくなったと言えます。

■デジタルのISO感度設定

フィルムには、それぞれ固有のISO感度があります。撮影時は、フィルムのパッケージに書いてある感度の数字を、そのままカメラにセットすることで、内蔵露出計が正常に動いて自動露出ができます(1980年代以降の機種ではカメラが自動的にフィルムの感度を読み取って設定するのが普通です)。そして、違う感度のフィルムを使いたい場合は、フィルムを巻き戻してカメラから抜き取った後、別のフィルムに交換することになります。このため、原則としてフィルム1本を撮り終わるまで、ISO感度の途中変更は一切できません。

デジタルカメラの場合は、フィルム交換と同じ効果が、ISO感度の設定変更のみで代替できます(メモリーカードの種類とISO感度は、関係がありません)。つまり、フィルムのように、最大36コマを同じ感度に揃えて撮るのではなくて、被写体に合わせて、1コマずつISO感度を変更できます。

また、デジタルカメラには、自動的にISO感度を設定できるモードがあり、被写体の明るさ・暗さと、絞りやシャッター速度の効果を総合的に判断して、カメラ任せで、最も効率的なISO感度を選ぶこともできます。要するに、デジタルなら絞り値やシャッター速度に加えてもう1つ、ISO感度も、露出制御のために随時利用できるわけです。

こうした点から、デジタルカメラでは、ISO感度の使いこなし方が、フィルムカメラの場合よりも重要になります。具体的に言うと、全部を同じ感度で撮る必要はないということ。

なお、フィルムとデジタルでは、カメラのISO感度切替の目的が大きく変わっていますので、勘違いのないよう、ご注意ください。フィルムカメラの場合、中に装填したフィルムに固有のISO感度と、カメラのISO感度設定値の数字が違うことは、内蔵露出計への指示だけが変わることを意味するので、要するに露出補正したことになります。一方のデジタルカメラでは、カメラのISO感度設定を変えることは、フィルムを交換したことと同じで、内蔵露出計は指示通りの感度だけで動作します(露出補正は別機能)。

ホワイトバランスの設定

「ホワイトバランス」は、ビデオカメラを長く使っている人なら慣れている機能だと思いますが、写真撮影用のカメラでは、あまり馴染みがない用語かもしれません。これを理解するには、まずカメラの感光材料と、人間の目(視覚認知)の違いを知っておく必要があります。

人間の目では、屋外の太陽光の下でも、電灯の灯った室内にいるときでも、同じように、白いものは白く見えます。ものを見るには、それを照らす光が必要で、ものの色彩は、光が反射した結果ですから、ものを照らす光源の色が違えば、基本的に色彩は変わるものです。しかし、人間の目では、そうした光源の変化を無意識のうちに修正して見ている(脳内で色補正処理して認識する)ので、いつでも白いものは必ず白く見えます。

しかし、感光性能が一律であるフィルムの場合は、人間の目のような、器用なことができないので、光源の変化は、写真に写された色に大きく影響します。このため、普通のフィルムで撮影した場合、特に白熱電球の下で撮った写真などでは、画面全体の色が赤っぽくなってしまうわけです。

普通のフィルムは、正式には「デーライトフィルム」(昼光用)といって、晴れた日の屋外で、太陽光のもと、順光で撮った場合に、最も適切な発色となるようにできています。このほかに、白熱電球(写真撮影用)で撮影するフィルムとして、「タングステンフィルム」があるほか、デーライトフィルム用に、いろいろな色補正フィルターが用意されています。これらの特殊フィルムや色補正フィルターを使い分けることは、考え方としては、デジタルカメラやビデオカメラの「ホワイトバランス」と同じで、製品ラインアップとしても、昔からあるものです。しかし、従来の写真用語では、「ホワイトバランス」とは言っていませんでしたから、言葉に馴染みがなくてわかりにくいことだけは、あるかもしれません。

現在のデジタルカメラでは、ビデオカメラと同じような「ホワイトバランス」という機能があるので、光源の変化に対しては、フィルム交換や、色補正フィルターではなく、カメラの機能設定だけで、おカネをかけずに対応することができます。「ホワイトバランス」も、設定は1コマごとに変えられますから、この点では、非常に便利で、低コストになりました。

デジタルカメラの「ホワイトバランス」は、いくつかの使い方を選ぶことができ、すべてカメラ任せの自動設定のほか、光源の種類に応じてユーザーがモードを選ぶ使い方、そして、白いもの被写体として、実際に測定することで厳密に設定する使い方が、いずれのカメラでも用意されています。普通は自動設定で構いませんが、デジタルカメラなら、フィルム以上に正確でキメ細かな発色設定を得やすくなるというわけです。したがって、「ホワイトバランス」も、デジタルカメラの機能を深く理解するためには重要と言えます。

「フィルムと比べて、デジタルには味がない」という意見も耳にしますが、被写体の輪郭線や、背景のボケ味の描写についてだけ言えば、デジタルカメラで撮った画像のほうが硬質で、多少、ぎこちない印象は受けるかもしれません。しかし、フィルムの種類や、色補正フィルターまで含めて、色彩の発色という点でフィルムの味にこだわって撮っていた人は、フィルムだけしかない一昔前の時代でも、決して多くはなかったはずです。デジタルカメラでは、「ホワイトバランス」というデジタルだけの機能によって、1コマずつ写真の発色を微調整できるのですから、これは、ある意味において、「フィルムより、デジタルのほうに味がある」と考えられることにもなりそうです。デジカメ食わず嫌いのフィルム派の方でも、「ホワイトバランス」で変わる、色彩の再現性に注目してみると、フィルムとは違う魅力がある、デジタル時代ならではの撮影テクニックを生かすことができるのではないでしょうか。

 
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