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2010.01.29
カメラボディが普及機であれ、フラッグシップの高級機であれ、レンズマウントが共通であれば、理論上は、同じレンズを装着することができます。しかし、実際には、レンズにもグレードがあり、高級機のカメラボディには、高級機にふさわしい上位グレードのレンズを装着して撮影したほうが、より高い性能を発揮することができます。前回は、カメラボディ側に注目して、高級機ならではの機能を抽出してみましたが、今回は、高級機の性能を共に支える、高級機対応の交換レンズが持つ性能について、一通り、確認しておきましょう。
交換レンズの製品ラインアップの中には、ミリ数(mm)で示される焦点距離の性能だけなら、一見、同じような感じでも、よく確かめれば、明らかに値段が違うレンズの例が幾つかあります。そのような、同じ焦点距離でも値段が違うレンズは、実践での能力として見たときに、いったい、どこに差があるのか、ということについて説明します。
デジタル一眼レフでは、普及機の場合、画像センサーには小さなAPS-Cサイズが採用されることが普通なので、レンズもそれに適した、小型・軽量のデジタル専用レンズが用意されます。一方で、高級機の場合は、画像センサーの実効面積がフィルムと同じ、35ミリ判フルサイズの機種があるので、そのレンズも、必然的に35ミリ判フルサイズ対応となります。
ここで一つ、注目するべき点は、現状、35ミリ判フルサイズの普及機というものが、存在しないということ。デジタル一眼レフでは、すべての普及機がAPS-Cサイズであるため、結果として、購入価格が割安な普及タイプのレンズは、デジタル専用の小さなものが多くなり、35ミリ判フルサイズ用の純正AFレンズについては、ほとんど高級機用しか発売されないことになるわけです。
そのため、もし35ミリ判対応で、なおかつ普及価格帯のレンズが必要であるなら、カメラメーカーの純正レンズではなくて、レンズ専業メーカーのマウント対応レンズを探すことになります。特に、近年になって発売されたズームレンズの場合は、この傾向が強くなっていて、高級レンズと普及レンズの関係は、純正レンズとその他のレンズの関係としても、考えることができます。
なお、35ミリ判フルサイズ用のレンズは、過去に発売されていたフィルム用一眼レフでも兼用できますが、現状を見る限り、普及機クラスのフィルム用一眼レフに適した、割安な純正レンズは、かなり減ったようです。それゆえに、古いフィルムカメラに、新しくて安いレンズを装着して使い続けることも、次第に難しくなってきました。
ズームレンズの製品名を見ると、広角端~望遠端の焦点距離(単位mm)に続いて、開放絞りのF値が、広角端~望遠端それぞれの焦点距離に対応して、書いてあります。この開放F値は、絞りを最も開いた状態(径が広い)に設定したときの数値です。
ズームレンズの場合、焦点距離が変わると、普通は、開放F値も連動して変わります。一般的な普及タイプのズームレンズでは、広角側が最も明るい開放F値(数字が小さい)となり、望遠側に進むにつれて、開放F値は暗くなっていきます(数字が大きい)。この開放F値の変動幅は、ズーム倍率が高くなるほど、大きくなります。つまり、広角側で、開放絞りの測光値にマニュアル操作で露出を合わせて、そのまま望遠側へズームすると、露出不足になります。ただし、通常は、自動露出で撮影することのほうが多いので、ズーム操作に連動して、カメラが自動的に露出を調節することができます。このような開放F値の変化は、高倍率ズームならではの弱点とも言えるでしょう。
同じズームレンズでも、高級タイプのズームレンズの場合は、広角端~望遠端まで、まったく開放F値が変わらない製品があります。このタイプのレンズは、特に、マニュアル露出で撮影するとき、シャッター速度を微調整する煩わしさがないので便利です。ただし、ズームレンズでは、開放F値を一定に維持する場合、ズームの高倍率化や、鏡筒の小型化との両立ができません。したがって、いずれの焦点距離でも、最大で3倍程度のズーム倍率となる製品が多く、広角ズーム、標準ズーム、望遠ズームといったように、撮影対象に応じて複数のズームレンズを交換し、使い分ける必要があります。
いずれのメーカーでも普及機用のレンズは、APS-Cサイズ専用のズームレンズであることが多いのですが、高級機用のレンズでは、35ミリ判フルサイズ対応の単焦点レンズを選ぶことができます。単焦点レンズとは、ズーム機能がない、つまり、焦点距離が常に一定であるレンズのことです。ちなみに、「標準レンズ」という用語は、正確には35ミリ判フルサイズで使う、単焦点の50mmレンズのこと。APS-Cデジタル専用レンズの場合、画角を換算してピッタリ50mm相当になるレンズは、ありません。また、見た目の画角は換算できても、光学的な特性だけは、それぞれの焦点距離に固有なので、より厳密に言うなら、APS-Cタイプのデジタル一眼レフで使う本当の標準レンズは、「ない」とも考えられます。
一眼レフの場合、単焦点レンズが使えるということは、コンパクトデジカメと比較した、特徴の一つです。単焦点レンズは、光学的な描写力、開放F値の明るさ、近接撮影の限界距離などが、ズームレンズの性能を上回るので、被写体の形状や色彩を忠実に再現したい場合に使用すると、妥協のない成果を得ることができます。また、単焦点レンズでは、断続的に撮影しても、確実に同じ焦点距離を保てるという利点もあります。ズームレンズの場合、正確に焦点距離をセットできるのは、広角端と望遠端の2つだけ。その中間で、いつも確実に、まったく同じ焦点距離をセットすることは、おそらく無理でしょう。しかし、単焦点レンズであれば、レンズを交換する手間があるものの、いつでも必ず、同じ焦点距離を保った撮影が可能。この点で、画角や遠近感の描写に凝る場合などには、単焦点レンズが重宝します。
ただし、弱点として、単焦点レンズには、手ブレ補正機能を搭載しない製品例が多いということもあるので、購入の際は、ご承知おきください。レンズ側に手ブレ補正機能を搭載する方式を採用したカメラメーカーの場合、純正ズームレンズの大半が、手ブレ補正対応となっている一方で、単焦点レンズの場合は、一部の望遠レンズやマクロレンズを除いて、手ブレ補正機能が搭載されていません。しかし、ボディ側に手ブレ補正機能を搭載する方式のカメラメーカーでは、構造的に、どのレンズを装着しても手ブレ補正はできるので、単焦点レンズを装着して、手ブレ補正機能を利用することも可能です。
ちなみに、三脚を使用して撮影する場合、手ブレ補正機能はOFFにするので、そのような用途では、単焦点レンズならではの光学性能のほうが、手持ち撮影に最適化されたズームレンズの便利さを、確実に上回ります。
高級レンズの特徴として、ズームレンズでも、単焦点レンズでも、開放F値が極めて明るいという点が挙げられます。35ミリ判マウント用(APS-Cを含む)のズームレンズであれば開放F2.8、単焦点レンズではF1.4といった数値を実現している製品があり、暗い場所での撮影や、背景を大きくぼかした撮影などに、これらのレンズならではの性能が役立ちます。
ところで、一眼レフのオートフォーカス機能(AF)は、装着したレンズが開放F2.8以下の明るいレンズであるという条件の場合に、最も高いAF測距性能を発揮できるように設計されています。高級機のカメラボディでは、AF測距点の数が普及機よりも多く搭載されていますが、そこにある各AF測距点を、100%の能力で利用するには、レンズも大口径の高級レンズである必要があるわけです。AFでピントを合わせる速度を、さほど気にしなければ、開放F8未満くらいまでのレンズなら、十分にピント検出は可能ですが、動いている被写体を追尾する場合などには、明るい大口径の高級レンズを組み合わせたほうが、AFの追尾性能も飛躍的に向上します。
ところで、大口径レンズの明るい開放絞りを利用し、屋外で、背景ボケを生かして撮る場合には、カメラボディ側でも、露出を対応させる高速シャッターが必要です。そのため、選択可能なシャッター速度の上限が速い高級機の性能が、実力を発揮します。
普及タイプのズームレンズでは、レンズのピント合わせを手動操作に切り替えて行うためのピントリングに、距離目盛りの数字が書かれていない場合があります。一方で、高級タイプのズームレンズでは、ピントリング上に距離目盛りが必ず書いてあります。距離目盛りは、最短撮影距離(単位m)~無限大(∞マーク)の間で、ピントが合った被写体までの距離を表す数字が書かれたものですが、これがあると、風景撮影などでは確実に無限大にピントを合わせたり、暗い場所などで、ファインダー像ではピントが合わせにくい被写体に対して、目測だけで適当に見当を付けてピントを合わせることができます。
レンズのピントを手動で合わせるとき、左右どちらの方向へピントリングを回せば良いか? という操作のやり方は、メーカーによって違うことがあります。つまり、最短距離と無限大のピント位置が、メーカーによって逆になる場合があるということです。複数のメーカーの機材を同時に使っている場合、マニュアルフォーカス時の操作感覚として、ピントリングの回転方向を、瞬間的に間違えてしまう場合もあり得るわけですが、その対策として、レンズ上にピントの距離目盛りがあると、回転方向を確認できるので便利です。
また、単焦点レンズの場合は、ピントリングの目盛りを見るだけで、絞り値に対応した被写界深度を読み取ることができます。露出モードを絞り優先AEで使う場合などには、こうしたテクニックを応用すると、絞りの設定値を判断しやすくなります。「絞り優先AE」という露出モードが、最初に登場した時代には、ほとんどの一眼レフ用レンズは単焦点だけだったのですから、絞り優先AEを使うなら、単焦点レンズが最適というわけです。
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