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2010.02.19
「デジタルカメラの種類が多すぎて、どれを選んで良いかわからない!」という方は、実際には多いことでしょう。そこで、人それぞれに違う使用目的に合わせて、選択候補となる機種を大胆に絞り込み、迷うことなく、最適な1台を選ぶ方法を解説したいと思います。一度、適切な選び方がわかれば、「価格の安さだけでテキトウに選んだ結果、使い始めてから後悔する」といったことは、防止できるはず。この春に向けて、新しいデジカメを買おうという方は、ぜひ、ご一読ください。
コンパクトデジカメでも、デジタル一眼レフでも、デジタルカメラの機能のうち、その難しい話の大半は、カメラボディ側に関する事柄だけに集中しています。この点を逆手に取って考えるなら、レンズの性能を手がかりにして粗より(機種選択の予選)をすれば、かなり大胆に、候補の数を絞り込むことができます。レンズの機能は、要するに、物理的な光学性能だけですから、カメラの専門用語や、複雑な理論に振り回されることはありません。だから、レンズから先に考えたほうが、初心者の方にとっても、わかりやすいはずです。
ここでは、まず、レンズの性能として、「35ミリ判換算焦点距離」に注目します。これは、カメラやレンズのカタログや、メーカーWEBサイトなどを見れば、必ず書いてあります。その数字を読む基礎知識として、35ミリ判フィルムカメラの場合は、標準レンズ=50mmで、それ以下なら広角、それ以上なら望遠になるということを、覚えておいてください。カメラとレンズを同時に購入する場合(レンズ内蔵のコンパクトデジカメ、または、デジタル一眼レフのレンズキットのいずれか)、選択候補となるレンズには、メーカー・グレードに関わりなく、次のようなものがあります。
-広角~中望遠(標準ズームレンズ) → フラッシュ撮影時に有利
-広角~超望遠(高倍率ズームレンズ)→ 主に晴天時の屋外撮影に有利
-単焦点レンズ(パンケーキレンズ) → レンズが明るい(光を良く通す)
これらの大きく分けて3種類のレンズのうち、どれを選ぶかによって、機種選択の方向付けが変化します。例えば、フラッシュ撮影では、フラッシュ光の到達距離に限界があるので、あまり高倍率となる望遠レンズは使いません。逆に言えば、高倍率ズームレンズを使うような機会は、屋外撮影で、しかも天気が良い場合がほとんどとなります。このほかに、単焦点のパンケーキレンズも選択候補となりますが、これは、ズームレンズに比べて全長が短いのが特徴で、開放F値が明るく、光を良く通すため、速いシャッター速度が設定可能になるという利点もあります。
デジタルカメラのレンズには、その性能を示す数字として、「35ミリ判換算焦点距離」のほかに、換算しない焦点距離もあります。このうち「35ミリ判換算焦点距離」は、見た目の画角を知らせるためのもので、あくまで写真に撮った後を想定した、感覚的な換算値。もう一つある、換算しない焦点距離が、実際の光学性能で、レンズに固有の物理的な焦点距離を表しています。ここで注目するのは、換算しないほうの焦点距離です。両者の数字を区別する場合は、広告だけに書いてあるのが換算値、製品に直接書いてあるのが実性能だと判断してください。
レンズの焦点距離は、換算したからといって、本当に、焦点までのミリ数が伸びるわけではありません。ここでいう換算とは、画像センサーサイズの大きさに起因する、拡大率の違い(プリント時の引き伸ばし倍率)の換算であって、レンズだけを取り出して見た場合の光学的な性能は、何も変わらないのです。では、「換算焦点距離」と、本物の35ミリ判専用レンズとの間では、いったい何が変わるのか? それは、見た目で換算される「画角」を基準とした場合に、実際には換算されていない光学性能との間に生じる、写り方のギャップ。具体的には、「ピントが合っていない部分」の写り方です。
いずれの場合も、「35ミリ判換算焦点距離」が同じ数字になるレンズは、たとえ、実際の光学性能のミリ数が違うものでも、画角(=写る範囲)だけは一致します(アスペクト比が一定の場合)。したがって、画面に収まる被写体のピント位置が、全体的に均一となるような場合、つまり、同じ位置にある平面を撮った場合には、さほど描写性能の違いは出ません。ピントが合っているところだけに限定して、レンズの性能を評価すれば良い条件であれば、「35ミリ判換算焦点距離」だけを手がかりにしても、構わないことになるわけです。
しかし、実際に撮影する被写体の大半は、立体的で、奥行きがあることのほうが多く、そのほかに背景もあるので、「ピントが合っていないところ」の写り方も、一緒に考えた上で、レンズを選ぶ必要があります。具体的には、背景まで一様にピントが合ったように見せるのか(被写界深度が深い)、それとも、背景をぼかすのか(被写界深度が浅い)といった、求める描写性能の違いを判断します。
レンズの性能である「換算しない焦点距離」は、レンズの製品本体を見れば、どこかに記載されています。(「35ミリ判換算焦点距離」は、本体には記載されないことが普通です。)この「換算しない焦点距離」は、画像センサーの実寸サイズによって左右され、35ミリ判フィルムの露光サイズに比べて、画像センサーのサイズが小さいと、換算倍率が大きくなります。そのため、コンパクトデジカメでは、「換算しない焦点距離」の広角端が、数字1桁になることがあるというわけです。
機種のタイプ別に、「換算しない焦点距離」の描写特性を比べると、次のように類型化することができます。「換算しない焦点距離」の数字が小さいほど、光学性能としての焦点距離が短いことになり、それは、画角に関係なく、フィルム用一眼レフでいう、広角レンズの性能に近付くことになります。したがって、撮影したときピントが合っていない背景部分の写り方は、ミリ数が小さいレンズほどボケにくく、ミリ数が大きいレンズほどボケやすいことになります。これが原因で、コンパクトデジカメと、デジタル一眼レフでは、同じような構図で撮った場合でも、背景の写り方が変化するのです。
-背景がボケにくい → コンパクトデジカメ
-背景ボケ・小さい → ミラーレス一眼デジカメ・フォーサーズ
-背景ボケ・中くらい → 普及型デジタル一眼レフ(APS-Cサイズ)
-背景ボケ・大きい → 高級デジタル一眼レフ(35ミリ判フルサイズなど)
この4パターンの背景描写を考慮すると、背景をぼかさないで、とにかく画面内のすべてが鮮明に写ったほうが良いという場合は、コンパクトデジカメの描写特性が適しているので、一眼レフを選ばなくても、特に問題はありません。しかし、注目するべきは、少しでも背景ボケの表現を求めるなら、画像センサーの寸法が大きな、一眼レフまたはミラーレス一眼デジカメを選ぶことになるという点。そこで、各種の一眼レフタイプを選ぶ場合、そのレンズは、取り外し可能なレンズ交換方式だけになりますから、好むと好まざるとに関わらず、必然的に、選ぶものはコンパクトデジカメではなくて一眼レフとなり、購入候補が確定します。
以上、ステップ1、ステップ2を通じて、候補となる機種を絞り込むと、ズームレンズの倍率や、背景ボケの大きさなどで、コンパクト機、一眼レフのどちらを選んだ場合でも、かなり詳細なところまで、機種の選択ができているはずです。この順番で考えるなら、漠然として、何を選んだら良いのか理解しにくいデジカメも、具体的に、ほしい機種を見つけやすくなったのでは、ないでしょうか。少なくとも、コンパクトデジカメと、デジタル一眼レフのどちらを選んだら良いか? という判断は、比較的、簡単にできていると思います。
レンズの性能が同じような機種でも、カメラ部分の撮影性能には、それぞれ違いがあります。この点が、高級機や普及機といった、カメラのグレードを決定付けることが多いので、自分自身の撮影目的に合わせて、購入を検討する機種のグレードを選びましょう。
価格が最も安い普及機と、それより高額になる中級機や高級機では、特に、各種機能をマニュアルモードで使用した場合の使い勝手に違いがあります。現行機種では、いずれのグレードにもフルオート機能があり、ピントや露出については、カメラ任せでの撮影が可能ですが、カメラ任せにはしないときに、設定の融通が利くかどうかという点では、グレードによって違いが現れるわけです。
マニュアル機能の使い勝手という点で、カメラのグレードを分類すると、以下のようになります。価格帯に置き換えると、普及機が最も下のクラス、高級機が最も上のクラスに相当します。
-マニュアル機能を使わない(フルオート) → 普及機
-マニュアル機能も使用する場合がある → 中級機以上
-周辺機器を含めてマニュアル機能を使う → 高級機
マニュアル機能を使用せず、原則的にフルオートだけで使用する場合は、初心者ではなくても、普及機を使ったほうが、値段はお買い得です。その一方で、マニュアル露出や、マニュアルフォーカスをはじめとする、各種のマニュアル設定を利用する予定がある場合は、中級機・高級機を選ぶ必要があります。その中でも、カメラに内蔵されている機能だけでなく、別売りの周辺機器(カメラアクセサリー)も使いたい場合は、高級機を選んだほうが便利な場合があるので、使用目的に応じて選択しましょう。なお、一眼レフの場合では、最も価格が安い普及機にもマニュアル機能は搭載されていますが、実際にカメラを構えて使うときの便利さでは、中級機や高級機のほうが優れています。
以上のステップ1~3の手順で、購入するカメラの候補を絞り込むと、条件に該当する機種は、各メーカーごとに1機種ずつ程度となります。あるいは、条件に合うような製品を、もとから作っていないメーカーも見られるかもしれません。このようにして、1メーカーごとに1機種ずつの最終候補を抽出できたら、後は、価格や、外観デザインの好み、防水(または防滴)機能の対応状況といった点で、主観的に最終決定すれば、自分にとっての最適なデジタルカメラを、簡単に選び出すことができます。
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