写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2010.10.01
このところ、雑誌の「時刻表」を、列車の旅に活用するための話題が続いたので、おまけとして今回は、鉄道写真を撮る場合の基本的な知識についても、ざっと解説しておきたいと思います。小学生くらいの子供の頃から、カメラを使い始めたというような、年齢が若いわりには写真歴が長い人の場合、最初に撮った被写体が鉄道だった人は多いでしょうし、また最近では、鉄道マニアというほどではなくても、旅行のついでに、鉄道車両を撮ったりすることは多い様子。そこで、興味を持つ人の数が増えてきた「鉄道・列車」という被写体の撮影を、安全に気を付けながら楽しむために、覚えておきたいポイントを挙げておきます。
鉄道車両を撮影するとき、最も多いパターンは、どこかへ出かけるとき、乗る予定の列車の出発時刻より早めに駅へ行って、これから乗る列車の先頭部を撮影することでしょう。つまり、停車している列車を、駅のホームで撮るというパターンです。旅行ついでの記録として、こうした写真を撮ることは、よくあると思います。停車している列車であれば、撮影時に接触する危険はないので、特に何の問題もないでしょう。ただし、列車を正面から撮ろうと、ホームから身を乗り出して、そのまま線路に転落しないように注意してください。線路から見たホームは、意外と高い位置にあるので、本当に転落すると、自力で上がってくるのは、かなり大変そうです。駅のホームで撮影する場合、ある程度、車両の下部が隠れるのは仕方がありません。反対側のホームに回れば、車両の下部まで撮影できる場合もありますが、対面側のホームに入線してくる、ほかの列車に接触しないよう、しっかりと安全を確認しておきましょう。
撮影する列車が停車していても、線路内に立ち入ってはいけません。許可なく線路内に入ると、法律により罪に問われる場合があります。鉄道写真では、基本的に、「車両を真正面から撮ることはないもの」と、理解しておいてください。この基本は、駅で撮る場合でも、駅ではない走行区間で撮る場合でも同様です。なお、鉄道における「線路内」とは、2本あるレールの幅のことではなくて、枕木や砂利があるところまで含めた、「線路用敷地内」のことを表していて、複線の線路では、上下線を合わせた全体が該当します。車両の幅のほうが、線路の幅よりも広いので、敷地内に人が立っていると接触しますから、走行中の列車を撮影する場合は、必ず柵の外まで離れてください。また、路線によっては、レールに電気が流れている場合があるので、踏んだり、触れたりしてはいけません(感電します)。
鉄道の駅や、鉄道の車両に付いている備品は、運行のために必要なものなので、勝手に触ってはいけません。これも、線路内に立ち入らないことと同様に、重要な基礎知識です。また、電柱や工事用のはしごなどに、勝手に上ってはいけません。
鉄道車両は、撮るためのものではなく、乗るためのものです。つまり、写真の被写体になるために運転されているのではなくて、乗客や貨物を輸送することを目的に運転されているのですから、通常の運転を妨げるようなことを、撮影者が絶対にしてはなりません。鉄道の写真を撮ることは、昔から趣味の分野として知られてはいますが、鉄道会社が、鉄道写真の撮影を公式に奨励したことは、実は一度もなくて、鉄道が公共性の高いものであることから、日本では、撮影する自由が制限されていないだけなのです。(外国でも、鉄道を自由に撮影できる場合のほうが多いですが、撮影許可が必要となる例外もあり得ます。)
鉄道にも、道路と同じように信号があり、光の色などを運転士が識別することで、安全に運転されています。そのため、線路脇からカメラのフラッシュが発光されると、残像で信号が見えにくくなるので、列車を撮る場合はフラッシュを使わないということが、昔から守られている暗黙のルールです。これは、夜間でも、地下鉄でも同様で、ルールに例外はありません。デジタルカメラができて以降は、ISO感度の選択・途中変更が容易になったので、高感度に設定すれば、フラッシュがなくても、撮影には支障がないと思われます。なお、駅構内では三脚の使用も、好ましくない場合があり、特に混雑時には、三脚の使用を遠慮するべきです。
駅に停車している列車ではなく、駅を通過する特急列車などを撮影する場合は、走行中の列車に接触しないように注意しましょう。時刻表には掲載されていなくても、回送列車や、臨時列車、団体の貸切列車、そして貨物列車などが通ることは、よくあります。鉄道を撮影する場合は、周囲の音などの変化にも注意を払い、安全確認を励行してください。
被写体を大きく写すために、自分で被写体に近付くという撮り方は、主に、人物を撮影する場合だけに限った、カメラマンの基礎知識です。鉄道の場合は例外で、近付き過ぎると危険ですから、適度な距離感を保つために、望遠レンズを使用します。特に、走行している列車に対しては、望遠レンズを使ったほうが撮りやすいので、原則として、望遠レンズや、望遠ズームレンズの使用をおすすめします。
プロ写真家が撮影した写真では、走っている列車を正面から撮影したり、トンネルから出てくる列車を撮影した写真がありますが、それらは、超望遠レンズを使って、安全な場所から撮影したものです。決して、線路内に入り込んで、カメラマンの度胸で撮ったものではないので、誤解のないようにご注意ください。正面から撮影する場合は、線路がカーブしているところで、カーブの外側からカメラを構えて、曲がり始める前の列車を超望遠レンズでとらえています。また、トンネルから出てくる列車の場合も、同様にして、短いトンネルを出たところにカーブがあるような場所で、カーブの外側から撮影しています。そのような撮影しやすい場所を自分で探して、適切な機材を使用することで、安全に鉄道を撮影することができるのです。
人気のある列車を撮影するために、たくさんの鉄道ファンが、発着駅や通過駅に集まっている様子を見ることがありますが、場所取り合戦などのないよう、ファンどうし譲り合っての撮影をお願いします。万が一に、事故などが起こると、撮影禁止、駅構内カメラ持ち込み禁止などの措置がとられることも考えられ、写真撮影の機会そのものがなくなります。このような事態を避けるためにも、写真撮影は、自主的にマナーを守って行いましょう。
鉄道写真を撮るときに役立つ情報は、鉄道専門の雑誌を参照することで入手できます。書店で売っている主な鉄道趣味の雑誌として、「鉄道ファン」「鉄道ダイヤ情報」「レイルマガジン」があるので、興味のある方は購入してご覧ください。なお、駅に電話をかけて、乗車には関係がない、写真撮影だけの相談をすることは、鉄道会社の通常営業に迷惑がかかるので遠慮しましょう。鉄道の駅で回答できることは、あくまで列車に乗客として乗車する場合の問い合わせだけで、乗車はしない人が、沿線で列車の写真を撮ることに関しては、駅に聞かれても答えようがないのです。
埼玉県に、「鉄道博物館」という専門の博物館があるので、鉄道に関する基礎知識を学びたいときは、そちらを見学されることも、おすすめします(JR大宮駅でニューシャトルに乗り換えて「鉄道博物館(大成)駅」下車、火曜休館、一般入場料1,000円)。この博物館は、写真の展示スペースではなくて、現在は現役を引退した、本物の鉄道車両が保存展示されている施設です。旅行のついでに列車の写真も撮るというだけでなく、鉄道そのものをじっくり見たいという方には、ここの利用をおすすめします。見学の際は、「スイカ」をお忘れなく。
あなたの大切なお写真の現像・保存・プリントは写真専門店カメラのキタムラにおまかせください。