写真何でも情報 EXPRESSコラム・ギャラリー
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2011.01.14
インターネットのWEBサイトを利用して、デジタルカメラの話をしていると、デジタルカメラという機材そのものが、インターネットの一部であるかのように、錯覚してしまいやすい場合もありますが、実際には、そうではありません。なぜなら、デジタルカメラは、インターネットに接続していない、オフラインの状態でも利用できるからです。したがって、デジタルカメラの場合、インターネットに画像をアップロードすることが、写真のIT化を直接意味しているのではありません。(インターネットに関係しているのは、デジカメという機材そのものの存在ではなくて、撮影された画像のファイル形式が汎用的なJPEGであることです。)それでは、デジタルカメラの登場は、いったい、写真の何をIT化したのか? 今回は、デジカメ誕生以前の、フィルムしかなかった時代と比較して、この素朴な疑問について考えてみましょう。
デジカメ誕生以前、フィルムしかなかった時代には、写真を撮る前に、一度、カメラ店かDPE店へ、ユーザーが自分で出向いて、必要な分量のフィルムを買う手間がありました。また、フィルムの購入に際しては、フィルムのメーカー(富士フイルム・コダックなど)や、ネガ・ポジの別、ISO感度、そして1本の撮影コマ数(24枚撮・36枚撮)などを、自分で考えて選んでいました。当然ながら、フィルム1本ごとに、購入コストもかかります。デジタルカメラの場合は、画像の記録用に、フィルムではなくてメモリーカードを使うので、こうした事前準備の手間は、最初の機材購入時を除けば、それ以降は、ほとんどありません。そのため、ユーザーは、写真を撮りたいと思ったときに、すぐ撮影に取り掛かることができます。忙しいときに、単にフィルムを買うだけのために1回、わざわざ出かけなくて良いことは、デジタルカメラが持つ、最も大きなメリットでしょう。
フィルムは、カメラに装填するときと、取り出すときに、感光してしまうリスクと、常に隣り合わせになります。感光とは、強い光がフィルムに直接当たって台無しになり、通常の撮影・現像ができなくなることです。デジタルカメラで使うメモリーカードは、データを電子的に記録する仕組みのため、光には反応しないので、感光するリスクは皆無です。この点は、初心者にとっては難しい、フィルムの装填と、巻き戻しの操作に関わる負担を省くことになり、デジタルカメラは、カメラユーザーの裾野を大きく広げることにもなりました。デジカメは、画像の記録を、光学・化学反応に依存する方式(フィルムの露光と薬液による現像処理)から、電子的に情報処理が完結する方式(デジタル)へと変革させた点において、写真のIT化をもたらしたのです。
フィルムは、ベース素材の上に、光に反応する特性を持つ物質を塗布した製品であり、その物質がナマものであるために、未現像状態で保存できる時間的な長さに、有効期限がありました(現像後は有効期限に関わらず長期保存可能)。その有効期限は、フィルムの箱に日付として明記されていましたが、そのような有効期限が、デジタルカメラのメモリーカードには、一切ありません。フィルムに有効期限があると、「その期限の日付までにフィルムを使い切らなくてはならない」という、プレッシャーをユーザーに与えますが、デジカメの場合なら、その類のプレッシャーがないので、ユーザーは有効期限を気にせず、いつでも撮りたいときに写真を撮ることができます。
連続して写真を撮ることができる最大コマ数は、フィルムの場合、どんなに多くても普通は36コマまで。つまり、36コマ撮影するごとに巻き戻して、新しいフィルムに交換する必要があります。そのため、一度に大量の写真を撮ることは、かなり手間のかかることでした。また、フィルム交換にかかる時間を見越して、連続撮影のコマ数も加減する必要があったので(シャッターチャンスに備えるための連写機能でもフィルム交換時にチャンスを見逃しては意味がないから)、フィルムカメラの場合、実は、カタログスペックの性能を、実践で十分には生かしきれていないことが多かったようです。しかし、デジタルカメラの場合は、大容量のメモリーカードを使用すれば、フィルム換算で十数本にもなるコマ数でも連写できるので、大量撮影、特にシャッターチャンスを生かした連続撮影が実用的になりました。
デジタルカメラでは、1コマだけ写真を撮って、その1コマだけ使うことも簡単にできます。しかし、フィルムの場合は、最もコマ数が少ないフィルム製品でも12枚撮だったので(一般用の35ミリ判カラーネガフィルムの場合)、費用を節約してコマ数を少なく撮りたいときでも、12コマが最小単位でした。それだけフィルム時代には、ムダが多かったとも言えます。カメラが趣味や仕事ではない人の場合、被写体1つに対する撮影コマ数が少ない場合があるのですが、そのような使い方でも、デジタルカメラならば費用負担を気にせず、より気軽に撮影することができるわけです。
フィルムは、撮影した後、巻き戻してカメラから取り出し、DPE店がある場所まで自分で行って、現像・プリントをオーダーする必要があります。そして、最短でも1時間程度は経過しないと、現像処理された写真を見ることができません。つまり、フィルムを1本撮り終わって、撮影現場からDPE店まで移動し、現像の仕上がりを待つまでの時間を合計すると、フィルムで撮影した写真を本当に見られるまでの待機時間は、相当に長いことになります。しかし、デジタルカメラの場合は、撮影した写真は、シャッターを切った直後に、カメラ背面の液晶モニターで再生して確認できますから、撮影してから写真を見られるまでの待機時間が大幅に短縮されて、実質的には解消されたことになります。この待ち時間の短縮こそが、デジタルカメラによる写真のIT化として、最大の成果でしょう。ちなみに、フィルムしかなかった時代にも、江戸時代末期から続く約150年にわたる歴史の中で、露光時間の短縮(高感度化)や、ロールフィルムの開発(当初は1コマずつ撮影する写真用のガラス板を使っていた)、現像・プリントサービスの高速化など、写真の撮影から仕上がりまでの所要時間を短縮する、技術開発の流れがありました。その究極の進化形が、フィルム現像の手間を必要としない、デジタルカメラなのです。
フィルムには、製品の種類ごとに固有のISO感度があり、普通に現像する場合は、その感度でしか使えません。現像時に増感処理または減感処理を行う方法で、ISO感度を変えた効果を得ることはできますが、いずれにしても、フィルム1本ごとの処理となりますから、同じフィルムで撮影した写真は、すべて同一のISO感度に統一されます。これに対して、デジタルカメラの場合では、カメラのボタン操作だけで、ISO感度を1コマずつ変更することができます。この特徴を利用することで、デジタルカメラでは、手ブレ軽減や、露出効果を得る目的のために、ISO感度の設定を任意で調節できるようになり、フィルム時代にはなかった、ISO感度設定の自動化(オート感度)も実現されました。
写真が期待通りに写っているかどうか確認するために、フィルムの場合は、現像を待つ必要がありました。旅行先で写真を撮影した場合、普通は、帰るまで写真を見ることは不可能だったわけです。それは、露出決定が難しい撮影状況の場合、ユーザーにとっては大きな心配ごとになっていました。しかし、デジタルカメラの場合では、撮ったその場で、すぐに撮影結果を確認することが可能となり、撮影ミスにも気付きやすくなっています。それは、その場で撮影ミスの原因に対策をとって、撮り直しができるということですから、カメラの主流が、フィルムからデジタルに替わったことで、撮影ミスの心配が減り、ユーザーの負担も軽減されたわけです。かつて、フィルムしかなかった時代には、現像するまで見えない撮影結果を、露出計の数値だけから予測して撮影する専門的なテクニックが、写真家個人が持つ能力の証として評価されていたものですが、そういったエキスパートの能力までもが、IT技術によってカメラ製品の内側に取り込まれ、高度な技術を誰もが利用できるようになった点も、デジタルカメラの時代ならではの成果と言えるでしょう。
デジタルカメラの画像は、フィルムと違って物理的に存在しているのではなく、仮想的なデジタルデータとして、パソコンのファイルとまったく同じように、メモリーカードに保存されているだけなので、撮った画像のデータは、不要であれば1コマ単位で消すことができます。その点で言えば、デジカメは、もはや従来の意味での写真機ではなくて、レンズが付いた画像専用パソコンなのです。パソコンを使ってできる作業と同様にして、カメラで画像ファイルを扱えることは、デジタルカメラにしかない画期的な機能の一つです。なお、デジタルカメラでは、メモリーカードを容量いっぱいまで使用した後でも、いらない画像データを消去すれば空き容量を確保できるので、その同じメモリーカードを繰り返して使用し、新たに撮影した画像データを保存できます。
デジタルカメラでは、画像ファイル1つずつに、撮影時の設定情報を関連付けて、付帯的に記録することができます。これは、写真の画面内に写し込むという意味ではなくて、画像本体とは別に、文字や数字による情報を付加するという意味です。同時に記録される情報には、撮影した日付や時刻、画像に固有のコマ番号、露出データ、カメラの機種名や設定状態など。機種によっては、GPSの位置情報を記録することもできます。このような情報は、パソコンでも確認できるので、フィルムの場合と比べて、デジタルカメラでは画像1つずつを別々にした場合の取り扱いが、非常に楽にできるようになりました。フィルム時代には、こうした付帯情報の記録は、撮影者の記憶や推測に頼るか、あるいは鉛筆とメモ用紙を使って、ユーザーが自分で書き留めるしかありませんでしたから、この点においても、デジタルカメラは写真の情報化、すなわちIT化において大きな進歩を遂げたわけです。デジタルカメラを使うことで、付帯情報の正確な記録が可能となった結果、写真が持つ役割も、フィルム時代からあったような、見る人の想像力を喚起する芸術的な価値だけにとどまらず、被写体となったモノや人の、実在証明としての信頼性を求められる資料的な価値へと、大きく広がりました。
高画質なデジタルカメラが、まだ普及していなかった頃(西暦2000年より以前)、写真をパソコンで表示するためには、まず普通のフィルムで撮った写真を現像した後で、専用の機材を使ってスキャンする必要がありました(その当時にも低画質のデジカメは存在していましたが画質を維持するにはフィルムで撮影してからスキャンする方法が適していました)。そして、その写真画像を、JPEG形式で記録するには、スキャンした写真画像を、パソコンソフト上でJPEG圧縮してデータ保存するという手順をとりました。デジタルカメラの場合は、レンズを通して撮影された画像が、そのままJPEGのデータとしてメモリーカード内に保存されるので、フィルムと違って、スキャンと圧縮保存の手間もありません。JPEG画像さえあれば、それはすぐにインターネット上で閲覧可能な状態にできるので、デジタルカメラの時代になって、写真をインターネットで扱う場合にかかる、準備の手間も軽減されたのです。ちなみに、デジカメとインターネットは、ともに一般市場で普及した時代が偶然、重なりますが、最初から両方が仕様的に連携していたわけではなくて、最初のデジカメは、パソコンを使ってオフラインで画像を表示したり、用紙に印刷して使うワープロ文書などに、写真画像を取り込む用途で使われていました。したがって、デジカメとインターネットは、必ずしもイコールなルーツを持つ存在ではないことになります。もちろん現在でも、デジカメで撮影した写真画像を、ネットとは関係のないオフラインの用途で使うことは可能です。
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