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2011.02.25

【22世紀まで届くかな?】
写真にもある、「著作権」についての話

作品として表現するために撮影された写真には、ほかの文学や芸術作品と同様に、それを撮影した人に帰属する、「著作権」が認められています。著作権は、登録などの手続きを必要とせず、作品ができた瞬間から発生するもので、その著作権が保護される時間的な長さは、撮影した人の一生涯全部と、プラス没後50年間です。では、著作権の所在を認めてもらえるようにするには、どのようにして写真を撮れば良いか? ということを、考えてみましょう。ちなみに、「著作権」とは、自分で作った作品の扱い方は、自分で決めて良いという権利のこと。

写真にも「著作権」はある

「写真に著作権がある」と聞くと、「えっ、そうだったんですか!?」と言う人も、少なからず、いるとは思います。それくらい、写真にも著作権があるということを、知られていないのが現状なのでしょう。なぜならば、そのそも写真が、芸術作品の一種として、創作や表現の技法・手段となり得ることを知らないという人が、意外に多いからであろうと推察されます。

カメラを、「創作・表現の道具」ではなく、対象物を平面に複写するだけの「立体コピー機」のような存在だと思っている人の視点で考えると、おそらくは、被写体となる実物こそがオリジナルで、写真は、どのようなものであれ、その実物に対するコピー(複写したもの)だと、とらえることになるのでしょう。その考え方なら、写真に創作的な表現があるとみなす発想は、まったくありませんから、写真に著作権があることに理解を得るのは、相当に難しい話にもなりそうです。

しかし、写真とは、四角い画面の中に、任意の構図で被写体をとらえるものであり、一方の被写体は、四角ではなく、それぞれにみな違う形をしています。そのため、1つの被写体を写真に撮った場合には、同じ画面内に、別の被写体や、背景が一緒に写ります。このとき、画面内に2つ以上ある被写体の位置関係や、背景の選び方、それから構図として、四角い画面の中で、どこに被写体を配置(レイアウト)して撮影するかといったことは、撮影する人それぞれが、自分で判断して写真にとらえることになります。このような点に、創作的な表現があると考えられるので、写真にも、やはり著作権はあるわけです。

ただし、写真であれば、そのすべてに対して、自動的に著作権が認められるのかといえば、そうではありません。著作権の定義として、「作者が自らの思想・感情を創作的に表現した創作物」という要件があり、写真の著作権は、カメラを手に持って撮影した人に帰属するので、つまり、「作品」としての写真であることが必須条件になります。だから、公表を前提とせず、記録や資料、あるいは身内で思い出として楽しむだけのために撮影した記念写真の場合などでは、著作権が認められない場合もあり得ます。

写真では、1枚ずつに著作権

文学作品などの場合は、意味が通る文章として書かれているものに著作権があって、それを1文字ずつバラバラに分解した、漢字やひらがなといった活字の1つ1つについては、当然ながら、著作権がありません。しかし、写真の場合は少し事情が違っていて、写真の1枚1枚に、それぞれ著作権があります。だから、写真展という展示会や、写真集という本などの形で、複数かつ一定量の写真作品が、まとまった状態で発表される場合は、その、ひとまとまりの写真展や写真集の、全体的な表現に著作権があるのはもちろんのこと、写真展や写真集を構成している中味の写真1枚1枚にも、やはり著作権があるわけです。つまり、写真を1枚ずつバラバラの状態に分けても、依然として写真の著作権は、その作者(撮影者)に帰属していることになります。ということは、写真展が、通例1週間程度で会期を終了しても、書籍として出版された写真集が販売を終了しても、そこにあった写真1つ1つの著作権だけは、消えずに残っていると言えるわけです。

何をしたら、著作権の侵害になるか?

例えば、インターネット上に掲出されている写真をダウンロードして、その写真を撮った人の承諾を得ることなく、ほかの用途のために勝手に利用した場合は、明らかな著作権侵害になります(著作権がある写真作品の場合)。このようなパターンは、いかにも、やり方がセコいので、著作権侵害になることを、一般の方もよくご存知でしょう。なお、インターネット上には、作品を「見せているだけ」のWEBサイト(著作権あり)と、ほかに、閲覧者が作品を使って良い「素材集」のWEBサイト(著作権フリー)の、両方が混在しているので、間違えないように注意して、検索・閲覧する必要があります。

しかし、著作権の侵害になる場合は、これだけではありません。例えば、インターネットや、写真集(本)、雑誌などで見た、他人の写真作品を単純に模倣して、それが撮影された場所に自分で行って、そっくりそのままの構図を、寸分たがわず再現して撮影した場合でも、著作権の侵害を疑われる場合があります。これは、著作権を持つ人に、許諾を得たり、著作権使用料を支払うのが面倒だからと、類似作品をもう一つ勝手に作ってしまうのは、著作権侵害に当たるということ。それゆえに、フォトコンテストでも、模倣作品や類似作品は、審査で落選させる規定になっています。

ただし、現実に存在する被写体は、時間が経過すれば、その実物の見た目も変化するので(例えば季節や天候の違いなど)、どのようなケースが、著作権の侵害に当たるかということは、具体的には判断が分かれることもあります。なお、写真展の会期が終了した後や、写真集が完売となった後でも、写真作品の原板1枚1枚の著作権は、継続して作者が持っているので、一度公開された写真作品を、公開終了後になってから勝手に流用すると、著作権の侵害になります。写真展や写真集などでは、同じ作品を見た人の数が相当に多いので、他者による模倣や流用があれば、必ずその中の誰かが気付くものです。

著作権が認めれる写真を撮る方法

それでは、著作権の存在を認めてもらえるような写真作品を撮るには、どうすれば良いでしょうか? 簡単に言うと、「普通の写真」ではなく、「作品として表現した写真」を撮ればよいのですが、これでは話が抽象的で、つかみどころがないですから、いろいろと具体的な条件を考えて、実践に反映してみましょう。

自分が写ってはいけない

どのような写真であれば、著作権が認められるのか? ということを考えたとき、最も重要なことは、「自分が写っていないこと」でしょう。これは、ちょっと考えれば、簡単にわかるようなことですが、写真に写った人ではなくて、カメラを持ってシャッターを切った人に著作権が与えられるのであれば、カメラの向こう側に立って、写真に登場してしまったら、その時点で、著作権はあり得ないのです。だから、著作権が欲しい写真なら、とりあえず、自分が写ってはいけません。

誰が撮っても同じように写る写真ではいけない

例えば、10円玉を白い紙の上に置いて、それを単純に、真上から全体像のアップで撮っただけの写真に、著作権はあり得るでしょうか? この場合、被写体がどこにでもあるようなもので、それを、誰が撮っても同じように写しただけですから、撮影者に著作権が認められる可能性は、ゼロに等しいはずです。となると、写真の著作権を認めてもらうためには、被写体の選び方や、その被写体にカメラを向けるときの角度、構図、ほかの被写体との組み合わせ方、背景のとらえ方、機材の活用で得られる光学的な表現技法などによって、「ありきたりの撮り方」との違いを出さなくてはなりません。つまり、撮影者が、自分なりに撮り方を工夫して表現し、撮影された写真であることが明確であるという点が、写真の著作権を主張する上では重要だということです。こうした撮影者の努力は、単に「個人的なこだわり」という言葉だけで片付けられてしまうことも多いようですが、著作権を認めてもらえる写真作品を撮るには、やはり必須の課題となっているでしょう。

写真として、可視的な状態で保存すること

写真は、形のある可視的な状態で保存したほうが、著作権を認めてもらうためには有利です。なぜなら、デジタルカメラで撮影した写真を、撮りっ放しにした場合、そこで表面的に見えているのは、カメラの外観か、メモリーカードだけで、写真の画像は見えないものだから。やはり、写真の著作権を主張するのであれば、印画紙などにプリントしておいたほうが安心でしょう。フィルムの場合は、撮影後、現像してあれば、そこに写真が、物理的に存在していることは明らかなので、デジタルよりフィルムのほうが、著作権の発生、帰属を証明しやすいと考えることもできます。

写真作品の公表を前提とすること

著作権というものは、原則論として、作品を公表するからこそ、それを管理するための権利として、あり得るものです。もしも、撮影した写真を、自分が後で眺めるだけの記録・資料として、ただ保存しているだけなら、著作権の有無を考える必然性は低くなります。著作権そのものは、作品ができた時点から発生するので、写真の場合は撮影した瞬間から権利は存在し得るのですが、著作権の存在が本当に重要となるのは、写真作品を公表・発表したときのこと。具体的には、写真展や写真集(書籍)、フォトコンテストなどといった、一般的に作品発表の機会として認知されている形式をとり、写真作品を公表したときに、撮影者の著作権が顕在化します。

自分が撮影した写真だと証明できること

写真の場合は、1つの原板(元画像)からプリントを何枚でも作ることができるので、著作権の帰属を主張する場合は、撮影したときの原板を持っているかどうかが重要となります。これは、原板であるフィルムや画像データを保存していることが、撮影者であることの証明となり得るからで、確実に、自分が撮影した写真だと立証できてこそ、著作権を保有することも可能となるのです。だから、大切な写真作品のフィルムや画像データは、捨てないで残しておきましょう。この場合、デジタルデータを保存した記録媒体そのものが、破損しないように注意することも必要です。

撮影した日がわかること

日本をはじめ、世界中の国々の多くでは、著作権の発生を「無方式主義」としているので、作品を創作した時点で、何も登録などの手続きをせずに、著作権が発生します。この著作権は、有名人ではない一般の人にもあり、権利が発生するための条件に、プロやアマチュアの区別もありません。だから、アマチュア写真愛好家の方でも、著作権に関する知識を、ある程度は、覚えておいたほうが良いと言えます。写真の場合は、撮影した時点が、著作権発生の起点になると考えられ、それを基準に、著作権の保護期間も起算されます。だから、その写真を、いつ撮ったのかということが、著作権を保護していく上でも重要となる場合があるわけです。それゆえに、撮った写真は、しっかり整理して、撮影者名(著作権が帰属する人)とともに、撮影した日付(年月日)も書き留めておくべきと言えます。

作品に思想・感情が表現されること

写真に限らず、どのような種類の文学作品や芸術作品でも、著作権が認められる作品では、「思想・感情が創作的に表現されること」が条件となっています。つまり、誰が見ても、「これは文学作品だ」、「これは芸術作品だ」と、思ってもらえることが前提になって、作品に著作権があるという社会的合意が得られます。

したがって、言い替えると、何も考えないで、たまたま偶然に写っただけの写真では、著作権が認められないこともあり得るわけです。それは、例えば無人の監視カメラが、自動撮影した記録画像には、おそらく著作権がないといったようなことです。

すると、撮影者が、作品として撮影した写真の著作権を、他人に認めてもらうためには、「その作品を通じて何を表現したのか?」という、表現意図の説明が、自分でできることも大切。つまり、何を撮りたい、あるいは伝えたいと思ったのか、撮影者が自分自身でよくわかっていることが、写真作品の著作権を主張する上では重要だと考えられるのです。

したがって、カメラの操作テクニックだけで、必ずしも、著作権が認められるような写真作品が撮れるわけではありません。写真の場合、文章と違って、思想や感情は見えにくいですが、フォトコンテストを例にとれば、タイトルを、作品ごとに付ける習慣(義務)があるので、そのタイトル欄を利用することで、思想や感情の一端を撮影者が表現することは、十分に可能でしょう。

著作権を長く持ち続ける方法

著作権は、創作時点で自動的に発生します。そして、その著作権は、作者の一生涯すべてと、さらに没後50年間にわたって保護されることが、国際条約で認められています。つまり、作品を作った人が死んでしまっても、作品の著作権だけは50年間、作者本人の代わりに生き続けます。

昔は、写真の著作権が、撮影してから10年くらいしか保護されなかった時代もありましたが、現在では、ほかの分野の文学や芸術と同じように、写真の著作権も、一生涯プラス50年にわたって保護されるので、ある程度は、写真家の社会的地位も向上したと言えるでしょう。

以上のような著作権の決まりをフルに活用するなら、写真作品は、なるべく年齢が若い時代に撮影・公表し、作者自身の一生涯の中において、その著作権を自分自身で管理し得る保護期間を、できるだけ長く確保するほうが有利。作者本人の没後には、著作権が保護される期間は一律の同年数となるので、結果としては、人生の前半にある若い時期から作品を制作・公表したほうが、トータルでの著作権保護期間も長くできます。

作品の魂を22世紀へ残せ!

現在は、2011年。年齢が若い人ならば、没後50年分の著作権保護期間を差し引いた、2051年の時点でも、生きている可能性は十分に高いですから、いま写真作品を撮っておけば、著作権が確実に保護された状態で、その権利は、22世紀に届くでしょう。

人間の体と生命には、確かに限りがありますが、やがて自分が消えていなくなった後でも、プラス50年間、作品だけは自分の分身として、この世に生き続けます。おそらくは、読者の皆さんの多くも、そして、これを書いている私自身も、生きたままで22世紀を見ることは、ないと思います。それでも、自分が撮った写真作品だけなら、著作権が生きたままで22世紀を迎えることも、わりと簡単にできるのかもしれません。

著作権のある作品が、思想や感情の表現だとすれば、自分の体がこの世から失われた後も、その魂だけは、姿を変えて、90年後、22世紀の未来まで必ず届く。文学や芸術には、その力があり、そして写真にも、それと同じ力があるのです。

 
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