＊＊＊　上杉家の情緒が残る数々の史跡　＊＊＊
奥羽、米沢市の史跡・温泉・祭を訪ねて

「いもにかい」を知っていますか。芋煮と書きます。かなり古い話ですが、まだ東北新幹線もできていない頃、列車が福島から東北本線と分かれて奥羽本線に入り、紅葉のきれいな山地の中の川原で、数人が飯盒炊飯をしているのが見えました。「あんな川原でうらやましいナ」と眺めていたところ、数人のかたまりがあちらこちらで散見されるようになり「祭りでもやっているのかナ。それにしてはおかしいナ」と、不思議に思っていました。米沢について知人に「この土地の人は飯盒炊飯が好きなんですネ」と問うたところ「あれは［いもにかい］といって稲刈りが終わり、ホッとしたひと時を楽しんでいるのです」とのこと。ノンビリとしたひとつの風物詩のように感じまオた。芋煮は、里芋、しらたき、豆腐、牛肉、長ねぎ、旬のきのこなどを入れて煮たもので、置賜（おきたま）地方の芋煮は、醤油、酒、砂糖で味付けするのが一般的だそうです。一度、味わってみたいものです。
その米沢の地は「上杉家」の城下町で、史跡も多く残っています。また、紅葉は10月末現在で、高い山の頂上には雪が積もりはじめ、里はこれからだそうで、今後の気象状況によって変わってきますが、例年ならば、11月中旬まで見ごろのようです。 ところで、上杉家といいますと、上杉謙信を思い浮かべる方も多いと思います。謙信と武田信玄との川中島の合戦は、戦国史上最大の戦いとして、歴史に刻まれています。謙信の跡を継いだ景勝は、慶長三年（1598）秀吉の命で、それまで居城としていた越後の春日山城から、会津百二十万石に転封されました。その後、景勝は関ヶ原の戦いで石田三成との密約で西軍に加勢したために破れ、家康によって慶長六年米沢三十万石に減封され、初代米沢藩主上杉景勝が誕生、以降、幕末の十三代茂憲まで上杉氏の居城として発展してきました。

山伏の姿も見られる“越年例大祭”（11月19日）

史跡としては上杉神社、上杉家廟所、春日山林泉寺、笹野観音、甲子大黒天本山などがあります。上杉神社の近辺には米沢城跡、松が岬公園、宝物殿として創設された稽照殿（けいしょうでん）や上杉博物館、福徳稲荷神社、春日神社、旧上杉伯爵邸があって散策コースに適しています。
時期が外れますが、笹野観音は境内いっぱいに咲き誇る紫陽花は見事で、別名「あじさい寺」とも呼ばれています。本尊は、千手観音で、 806年に弘法大師の高弟、徳一上人の開基と伝えられる古刹ですが、御堂は、天保4年（1833年）の火災によって、現在の御堂は、天保14年（1843）に再建されたものです。
また、甲子大黒天本山は西の出雲大社とともに、福禄寿（福＝心、禄＝物質、寿＝心身の健康）授与の二大霊場と称され、弘法大師が湯殿山開創のとき、霊感によって甲子大黒尊像を刻んだとも、空海の作とも伝えられています。小野川温泉西端の小野山宝珠寺に甲子大黒天が安置されており、毎年11月19日の“越年例大祭”には山伏による霊験あらたかな特別祈祷も行われます。大黒様のように笑顔で過ごせるように守っていただけるとのことです。

かやぶき入母屋造りの温泉も

米沢で忘れてならないのが吾妻十湯と呼ばれている温泉でしょう。十湯それぞれ効能が異なりますが、山形美人はこの温泉から産まれたともいわれています。小野川温泉は美人の誉れ高い小野小町が父を訪ねる途中に発見し、開いた湯ともいわれています。またかやぶき入母屋造りの宿が残る白猿の里などは被写体に収めておきたい景色でしょう。
吾妻十湯とは白布温泉、新高湯温泉、姥湯温泉、五色温泉、大平温泉、湯の沢温泉、笠松温泉、滑川温泉、小野川温泉、白猿の里ですが、それぞれに子宝が授かる湯や絶景が楽しめる露天風呂、渓流に近く魚釣りに向いている湯などがあります。
【交通アクセス】
東北新幹線　東京駅から米沢駅まで2時間10分
米沢駅から各温泉までは車が便利です。
【問い合わせ】
米沢市観光物産課　0238-22-5111